1 改正法にノイローゼになることはない |
宅建の基本書が書店に並び始めた。例年、トップ・バッターなのは「らくらく宅建塾」らしい。宅建試験前(10/15)に発行された他の本と一緒に、元気に何冊も平積みされている。要約本の「まる覚え宅建塾」とともに、配色は2000年版と同じようだが、表紙のキャラクターが卵顔から下駄に変わり、30代後半から40代に入りかけたような印象を受ける。何が言いたいかといえば、本文そのものに大きな変更は無かったということだ。表紙は本の顔だが、これが余り変わり映えがしないということは、本文そのものも大きく変わっていないことを暗示させている。本文を見ると、権利の変動分野で第1章の中の「行為無能力者」が「制限能力者」に変わり、成年被後見人・被補佐人・被補助人という名称変更が行われているほかは、大きな変化はなく(ちなみに、この辺は2000年版の法改正対策ブックという小冊子と全く同じように見える)、例えば、定期借家契約などの重要事項説明書での解説に文言の追加があるように、変更というよりは文の中に追加のものを滑らせる方式で法改正に対処している。
私には、2001年の基本書にある予想があった。出版社系、新聞社系、予備校系とも大きくは変わっていないだろうという読みである。20日になれば、宅建受験界では権威ある基本書が出版されるが、同じようなものだと思う。
今年の宅建受験の試験会場で、2・3年前の基本書を読んでいる方がいて唖然とした思い出があるが、今年度版のものも大きくは改定されているはずが無いという確信犯であったと思う。(私個人としては、どうかなと思うが。)
法改正があっても、宅建の試験にはまだ出題されていない場合、ことごとく基本書に載せるのは出版社にとっては、冒険である。法改正と一口にいっても、改正になった法律だけでなく、施行令や関連法令など膨大な資料に当たらなければならない。出版社のご苦労は大変なものと思う。ある掲示板で、法改正の対策処理を出版社の方がどうしているかを編集の方からレスしてもらったことがある。その方の話では、試験ぎりぎりまで、施行令や建設省通達など細かく多方面に渡って見ているという。
譬えて言えば、一万以上の情報からテキストに掲載されるのは、ごく僅かなのだと思う。編集部、著作者の目というフィルターを透過して、過去問などを考慮し、重要度に応じて改正法情報はテキストに反映されることになる。(実際、過去問などで見ると、改正法からの出題は50問のうちの多くて3問程度である。)
基本書は、もともと「これまでの試験傾向から見た頻出重要項目集」という位置付けを持っている。したがって、改正法一覧をもともと基本書は目指していない。改正法の全貌を知りたければ、結局は自分で資料を集めていくしかないのである。(後述する直前問題集などでも、十分対処できる。)
ただ、そうは言っても、私は来年受験される方は、新年度版の基本書はやはり、購入するべきだと考える。省庁統合や新たな法改正―都市計画法など−があり、自分で調べると言っても、重要度や問題傾向から見た改正の分析は、自分1人では難しい。基本書についているハガキを出せば、基本書に間に合わなかった改正情報は7月には届くので、それも判断材料にはなると思われる。
基本書の役割は、あくまでも、効率的に重要項目を整理して受験者の学習に資するという点にある。新規の改正法については、学習者が総合的に判断すればよいのである。
(基本書によっては、4月以降に出版するものもあることをお断りしておきます。)
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2 改正法への対応の違い |
2000年の宅建試験では、'98年改正の建築基準法での単体規定、2000年改正の定期建物賃貸借での重要事項説明義務が出題された。大方が予想された制限能力者制度は出題されなかった。これは成年後見登記制度とも絡んでおり、制度が定着してからという配慮があったのだと思うが、実は私は、今年や来年の法改正が受験者に周知かという点だけでなく、過去における法改正の対処は十分かということにも重大な懸念を持っている.
例えば、国土法や今年出題された建築基準法の改正は、1998年だった。今年の問22の肢1などは基本書においても格差が激しかった(はっきり言えば、出ていない基本書もあった)が、似たようなことは他にも十分考えられる。基本書は、毎年のように法改正対策に追われており、過去の法改正でも、本によっては対処しないまま版を重ねていく場合もある。
名前をいうのは憚られるが、今年の問題集などでおととし改正前の記述をしていたものが複数あり、たまたまそういう問題集ばかりを不幸にも揃えていた筆者は、相当に頭を悩ませた覚えがある。ハガキで指摘はしたが、今日までそのことに対し、正式な返事は来ていない。これらの本には、根本的な対処をお願いしたい。(なお、このレポートの末尾の問題集は、この記事とは関係ありませんので、ご注意を。)
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3 このレポートの位置付け |
このレポートは、おととし改正のものから、来年4月1日での法改正のものについてレポートをしていきたいと思っている。また、新しい統計資料なども、扱っていく予定である。緊急の改正などは、メルマガでの「速報! 法改正」で扱い、詳しいものをこのレポートでご報告するということになる。ただ、ご注意願いたいのは、このレポートは、今年実際に受験してみて改正法というノイズに悩まされた立場からのものだということをお忘れなきように。誰でも気になる改正法だが、準備さえしておけば、不安は無いということをお伝えしたいと思っている。その意味で、このレポートはあくまでも、すでにお持ちの基本書の学習効果を高める為のものであって、決して基本書の代りをするものではないということも申し添えておきます。
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4 2000年の直前問題集での改正法の扱いについて(出版社の名誉の為に)
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どの出版社でも、直前対策問題集は、改正法を一通り載せている。
来年の動向を知る上でも、今年はどうだったのかということをレポートして、今回のファイルを締めくくることにしたい。各出版社とも、相当、頑張っていることがおわかりいただけると思う。7月に出すというのは大変なことである。
また、2000年の改正法には、どんなものがあったのかを知る上でも一覧しておいて損はない。(税法などについては略)
『A…』 ページ数 4頁,2色刷りで図表もわかりやすい。
■ 民法など
制限能力者制度の創設と遺言の方式の改正、制限能力者の権能の一覧表
定期借家権の創設
■ 法令上の制限
都市計画法 各種指定・決定手続の改正
建築基準法 建築確認の改正
(指定確認検査機関・中間検査・道路内の建築制限の規定)
■ 宅建業法
免許換えの申請手続の変更
業務を行う場所(案内所など)の届出に関する手続の変更
重要事項説明での定期借地権の設定、定期借家権の適用の説明義務
※ これ以外にも、本文の問題で解説しているものもある。
『B…』10頁 予想問題も例示。実戦的な説明。
■ 民法の制限能力者に関する改正 制限能力者の権能の一覧表
■借地借家法(借家)に関する改正 定期建物賃貸借の概略と重要事項説明
■ 地方分権推進法に基づく改正 都市計画区域の指定、都市計画の決定
■ 建築確認に関する改正
指定確認検査機関、確認済証の交付の新設、中間検査
建築確認後の建築計画の変更で軽微な変更は改めて建築確認を受けなくてもよい
■ 宅建業法に関する改正
免許の基準、登録の基準、免許の取消、登録の消除での制限能力者の用語変更(被補助人が欠格事由になっていないことを明記)
都道府県は、知事免許の業者と大臣免許の業者を備える
重要事項の説明で、定期建物賃貸借の設定を説明義務
※免許換えの申請手続の変更、業務を行う場所(案内所など)の届出に関する手続の変更は、
シリーズ内のほかの問題集で既述のため、特に説明はない。本文中の解説でも説明。
※これ以外にも本文の問題で解説しているものもある。
『C…』ページ数 6頁 統計データつき オール・ラウンドに解説している。
■権利関係
(1) 成年後見制度の創設
開始の裁判手続のほかに権能・居住用不動産の処分の裁判所の許可
(2)遺言方式の変更
(3)定期建物賃貸借制度の創設
■法令上の制限
(1)都市計画法
(2)建築基準法
指定確認検査機関・連たん建築物設計制度・道路内の建築制限・建ぺい率の緩和の一部変更
■宅建業法
(1) 業者免許、主任者の登録の欠格要件
(2) 定期借地権の設定、定期借家権契約の重要事項説明の追加
(3) 誇大広告の禁止(定期借家契約の明示)
(4) 免許換え、業務開始の届出
■住宅の品質確保の促進などに関する法律
(1) 瑕疵担保責任10年
(2) 住宅性能表示制度の整備と紛争処理機関
※これ以外にも本文の問題で解説しているものもある。
ちなみに、3誌とも、改正法の予想問題は、本文の問題で出題され、解説の中でも、改正法を詳述していることは言うまでもない。直前期にこのような改正法のまとめがあることは、受験者にとっては資するところ大である。(例に挙げたものの他にも、有益な直前問題集は出ているが、自分で実際に使ってみたものに限定した。)
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