改正法レポート・5 |
借地借家法、宅建業法 |
●定期建物賃貸借(2000年改正、施行) |
昨年、定期借家の制度が始まりました。昨年版の基本書では、編集に間に合わなかった
為、大半の基本書では、定期借家の説明がありませんでした。(編集は一昨年の秋でした。) 気になったので、今年出版されたいくつかの基本書をみたのですが、叙述に不足の 点のある本が一部あるようです。制度が定着するまではやむを得ないとは思いますが、 定期借家に絡んでは昨年の宅建試験でも出題されており、万一今年も出題となればと 危惧し、まとめてみました。 |
定期建物賃貸借は、平成11年に制定された「良質な賃貸住宅等の供給の促進に
関する特別措置法」により、従前の借地借家法の第38条が改正され、平成12年3月
1日より施行されました。[期限付建物賃貸借」として他には、「取壊し予定の賃貸借」
(第39条)があります。
●要件 1 貸主からの事前説明・事前交付 (借地借家法38条2項) → しなかったときは更新ナシの定めは無効 (38条3項) 2 公正証書等の書面によって契約 (38条1項) 3 期間が1年以上の定期建物賃貸借においては、賃貸人は期間満了の1年前から 6ヶ月前までの間に、契約が終了することを通知しなければならない。 この通知をしなかったときは、通知したときから6ヶ月を経過するまで、契約の 終了を賃借人に対抗できない。(期間満了の通知をして6ヶ月経てば、賃貸借の 終了を主張できる) (38条4項) ●期間 期間を1年未満とする定期建物賃貸借も可。(38条1項) ●家賃の増減 「賃料の改定にかかる特約」がある場合は、公序良俗違反等、他の事由によって 無効とされないかぎり、当事者(賃貸人と賃借人は賃料増減額要求(32条)をすることができないち。 (38条7項) ●賃借人の期間内解約権 期間内解約権は、原則的には、定期借家権も従来の借家権の規定と同じですが、 居住用に供する建物(あるいは建物の一部を目的とする場合は当該一部分)の床面積 が200平方メートル未満のものについての定期借家権の契約をする場合は、「転勤、 療養、親族の介護、その他やむをえぬ事情により、借家人が建物を自己の生活の 本拠として使用することが困難になったときは、解約の申込をすることができる。 この申し入れの日から1ヶ月が経過すると契約は終了する。(38条5項) ●賃借人の期間内解約権の規定は「強行規定」 上記より建物の賃借人に不利な特約は無効。(38条6項) 例えば、「賃借人からの解約申し入れの日から3ヶ月経過しなければ賃貸借契約は 終了しない」、とか、「賃借人から解約申込できない」とか、「賃貸人の期間満了 の通知が三ヶ月前でも賃貸借契約は期間満了により終了する」とかの、賃借人に 不利な特約は無効であるということです。 |
●定期借家の盲点● |
事前説明の義務 |
1 代理人による事前説明は可能か? 定期借家については、次の規定があります。 定期借家契約をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、その賃貸借は更新がなく、期間の満了により終了する旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。(借地借家法 第38条第2項) 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは無効とする。(借地借家法 第38条第3項) ▲もし、貸主がこの説明をしなかったり、説明しても書面の交付をしないで行った 場合は、貸主からの更新拒絶に正当事由が必要という従来からの借家契約になっ てしまうという見解が多数を占めています。 (1) では、貸家の賃貸人から、事前交付と事前説明を委任された人(代理人)が行うこ とは法的に可能なのでしょうか? 答・可能 (書面の交付・説明は準法律行為のため、代理の規定が類推される) (2) その代理権の授与は「委任状」ではなく、「口頭」でもかまわないのでしょうか? 答・口頭でも構わない。 2 賃貸借の媒介を依頼された宅建業者が事前の書面の交付・説明をする場合 実務の上で、定期建物賃貸借の交付・説明を賃貸人が成約前に、賃借人に行うと いうのは、賃貸人が媒介を宅建業者に依頼している場合は難しく、賃貸人から 説明・交付の代理権を授与された宅建業者が行なうことが多いものと思われます。 ここでの注意として、宅建業法35条の重要事項説明との関連が問題になります。 (3) 賃貸人本人から説明・交付の代理権を授与された者が媒介契約をしている宅建業者 の場合、書面による重要事項説明をしたことで、賃貸人の代理人として定期借家で ある旨の事前説明・事前交付をしたことになるのでしょうか? 答・したことにならない。 いくら委任を受けていても、重要事項とは別に説明・交付しなければならない。 重要事項の交付・説明は定期借家の事前交付・説明をしたことにはならない。 重要事項説明では、定期借家であることを記載した書面を交付して説明する ことになっているが、定期借家の事前交付・説明に替わることはできない。 借地借家法第2条第1号に規定する借地権で同法第2条の規定を受けるもの を設定しようとするとき、又は建物の賃貸借で同法第38条第1項の規定の 適用(註・定期建物賃貸借)を受けるものをしようとするときは、その旨 (建物取引業法施行規則第16条第4項の2) |
定期賃貸借のその他の盲点 |
●貸主の事前説明のための書面● 「契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借が満了する」旨の記載 された書面ならどのような書面でもよい。(実務では、事前説明書の受領書を相手から とっておくことが推奨されている。後日賃借人から、事前説明・交付を受けていな かったと主張されるのを防ぐ為。同様のことが、宅建業法35条書面でも受領書をとる ことが行われているがこれと同じ趣旨。法的に定められているわけではない。) ●契約書面● 38条1項では、「公正証書による等書面によって契約をするときにかぎり」と なっており、「契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借が満了する」旨 の記載された書面なら、必ずしも、公正証書でなくてもかまわない。 ●再契約は可能か● 賃借人は、契約期間が満了しても、定期借家の再契約をしていれば、明渡しをしなくて もよい。再契約には、賃貸人と賃借人との合意が必要。 ●2つの借家権の並存 従来の借家権、定期借家権いずれでも、賃貸人は選択できる。平成12年3月1日 以降の建物の賃貸借がすべて「定期建物賃貸借」になったわけではない。 ●非居住用建物は「合意解約したあと、定期借家契約を締結」できても、 居住用建物はできない 当事者間で従来の既存契約(定期賃貸借ではない賃貸借契約)を合意解約し、その後 同一当事者間で同一建物を目的とする定期借家契約を新たに締結できるのは、非居住 用建物だけで、居住用建物はできない。 |
誇大広告等の禁止について(2001.6.28追加) |
●誇大広告等の禁止について(定期借家) 2000年施行 宅地建物取引業者が、改正後の借地借家法第38条に定められた定期建物賃貸借 についての代理又は媒介に係る広告を行う際において、下記に該当する場合は 「建物の現在若しくは将来の利用の制限」に係る誇大広告等として宅地建物取引 業法第32条違反となることがあります。 1通常の建物賃貸借契約であると人を誤認させるような表示をした場合 2当該定期建物賃貸借契約の内容(期間、賃料等)について、著しく事実に 相違する表示をし、又は実際のものより著しく有利であると人を誤認させ るような表示をした場合 |
予想出題 | |||
借地借家法第38条第1項に規定する定期建物賃貸借に関する次の記述は、 ○か×か。
【正解】1 × 2 ○ 民法第644条不動産の媒介は委任の規定が準用される。 (=準委任、656条)、 2の補足 善管注意義務違反の責任は、債務不履行責任になります。(415条) 参考【昨年の第39問 肢1】 宅地建物取引業者が、宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項について説明を する場合に関する次の記述は正しいか。
【正解】 ○ |
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