改正法レポート・8
 消費者契約法ー民法の特別法
●契約の取消と無効について

 (2001年4月1日施行)

消費者契約法の立法趣旨
 消費者契約法とは、消費者と事業者との契約や取引に関して、情報の質や量、交渉力の2者の格差があることを考え、消費者に契約通りに債務の履行を求めるのが適切でない場合に、消費者からの契約の取消権契約を無効にすることを認め、消費者の利益の保護を図っています。 

 ただ、契約の取消権は、事業者が勧誘したときの事情に限定されており、また、罰則などがないため、事業者と消費者で解除理由をめぐる裁判も起きるのではないかと言われています。

 → 施行1年間の消費生活相談と裁判の概況

消費者契約の定義
・「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約のことです。(第2条3項)

・消費者は、個人のことをさしますが、「事業として」又は「事業のために」契約の当事者になった場合は、「事業者」として扱います。

 注1 現在は事業をしていなくても、事業を始める準備としての契約は「事業者」としての扱い

    になります。

 注2 消費者契約をして、契約締結後に事情が変わって事業のために使うことになった時

    は、契約締結時を基準とするので、消費者契約です。

・事業者は、法人その他の団体、事業として又は事業の為に契約の当事者となる場合における個人(第2条2項)をいいます。事業とは、営利目的とは限らず、宗教法人・学校法人も事業者になります。

・このため、契約内容が同じであっても当事者が誰かによって消費者契約とみなされる場合とそうでない場合とわかれることになり、法的効果が異なります

消費者契約法の適用されないもの
・消費者どうしの契約

・事業者と゛うしの契約

・個人でも事業として、又は事業の為に(未開業でも開業準備のための契約を含む)契約の当事者になる場合の個人と事業者との契約

不動産売買における消費者契約
・土地又は建物を、消費者Aと消費者Bが売買契約するなら、「消費者契約」にはなりません。

・不動産取引の実務においては、媒介契約を考えてみますと、

  消費者A(売主)―媒介業者C―消費者B(買主)

 この場合、AとBの売買契約は「消費者契約」にはなりませんが、AとC、BとCの媒介契約は「消費者契約」になります。

宅建業者がみずから売主で、買主が消費者の場合は、当然、「消費者契約」になります。

  事業者A(売主)―消費者B(買主)

  事業者A(売主)―媒介・代理業者C消費者B(買主)

消費者契約法での無効と取消の事由
無効 ・事業者の損害賠償責任を免除する条項(第8条)

・消費者が支払う損害賠償額を予定する条項などのうち一定のもの(第9条)

・消費者の利益を一方的に害する条項(第10条)

取消 消費者の誤認(重要事項の不実告知・不利益事実の不告知・断定的判断の提供)

困惑による場合(不退去・退去妨害)

・事業者から媒介の委託を受けた事業者が取消事由となる行為をした場合

消費者契約における取消事由
(1) 誤認による取消

 事業者が契約の勧誘をするときに、事業者に次の事実があって、消費者が契約の申込または承諾の意思表示をしたときは、消費者は取り消すことができます。(法第4条1項・2項)

・重要事項の不実告知

・不利益事項の不告知

・断定的判断の提供

(例外) 不実の告知について消費者が悪意であった場合、また消費者が「不利益事実の情報」を拒んだ場合は、消費者契約法による契約の申込や承諾を取り消すことはできません

(2) 困惑による取消

 事業者が契約の勧誘をするときに、事業者が次の行為をしたことによって、消費者が困惑し、

契約の申込または承諾の意思表示をしたときは、消費者は取り消すことができます。(法第4条3項)

不退去 事業者が勧誘にあたり、消費者の住居やその業務をしている場所に行ったときに、消費者が事業者に対してその住居や業務を行っている場所から退去してほしい旨の意思を示しているのに、退去しないこと。

退去妨害 事業者が契約締結の勧誘をしている場所から、消費者が退去したい旨の意思を示しているにも係わらず、退去させないこと。

消費者契約法での取消権の行使期間ー民法の取消との違い1
 消費者契約法では、取消権の行使期間として、追認することができる時から6月間、又は契約締結のときから5年間と規定されています。(法第7条1項)

  追認できる時とは、「消費者が誤認に気がついたとき」、又は「不退去・退去妨害から脱したとき」を意味します。

 この消費者契約法に規定のある場合以外の、消費者契約の申込・承諾の意思表示の取消は、民法あるいは商法が適用されます。

 民法では、取消権の行使期間は追認できるときから5年、又は契約締結から20年のどちらか早いほうとなっています。(民法126条)

 消費者契約法の規定によらない取消は、民法の規定に従います。

善意の第3者への対抗ー民法の取消との違い2
 民法の強迫を理由とする取消では、取消し前の、善意の第3者に対抗できますが、「消費者契約法」による取消(誤認や困惑を理由とする消費者契約の申込またはその承諾の取消)の場合は、取消前に取引関係に入った善意の第3者に対抗できません(法第4条5項)
民法の詐欺を理由とする取消との違い
 民法の詐欺による取消の場合、相手方の故意を立証する必要がありますが、「消費者契約法」の誤認(重要事項の不実告知・不利益事項の不告知)を理由とする取消では、相手方の故意を立証する必要はないとされています。

 また、これに限らず、民法の規定による取消、無効は、消費者契約法とは別個にすることができます。(法第11条1項)

クーリング・オフ制度との違い
 民法や商法以外の法律(例えば、宅建業法・住宅品質確保促進法など)に、消費者保護法と別段の定めがある場合には、その法律の規定が消費者契約法に優先して適用されます。

 現在、12種類の取引、8法でクーリング・オフ制度が取り入れられていますが、このクーリング・オフ制度も消費者契約法に優先して適用されます。(クーリング・オフ制度適用期間のみ)

 宅建業法では、書面で告げられた日から起算して8日以内で、一定の要件があればクーリングオフできます。

 クーリング・オフできる期間が過ぎたときに、消費者契約法で取消ができる場合(要件・取消権の行使期間内)であれば、消費者は解除できます。

 また、クーリング・オフ制度では、契約の申込・契約締結の場所によっては、クーリング・オフできない規定になっていますが、消費者契約法では、契約の申込・契約締結の場所にかかわらず不実告知・断定的判断の提供・不利益事項の不告知、困惑などの取消事由であれば、取消できることになります(クーリングオフの期間であっても、消費者契約法による解除は可能ですが、クーリング・オフできる場合は、より強制力のあるクーリング・オフによる解除のほうが消費者にとっては無難だと思われます。)

 クーリング・オフとの違いとしては、

取消期間

・契約場所などの制限がない

などがあることになります。

 これまで、クーリング・オフの制度では解除できなかったものまで、消費者の取消権が広がったという見方もできると思います。

・ クーリングオフ → 発信主義  

  消費者契約法 →  到達主義(民法の原則に立ち帰る)

消費者契約法での取消は、口頭でも構わないものとされています。(電子メール・電話など意思表示の媒体は問わない。)

「消費者契約法」については、以下のHPをご覧下さい。

消費者契約法に関連する消費生活相談と裁判の概況(PDF文書)

http://www5.cao.go.jp/99/c/shouhi/keiyaku.html

http://www5.cao.go.jp/2000/c/0512c-keiyakuhou.html

http://www.consumer.go.jp/

経済産業省消費経済政策課

電話 03−3501−1511 内線4271〜3

   03−3501−1905(直通)

◆特定商取引に関する法律(2001.6.1施行)も、新たに改正・施行されています。

http://www.tohoku.meti.go.jp/syohisya/tokuteishotorihiki.htm

http://www.meti.go.jp/policy/consumer/tokusho_amend.html

http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0001398/0/010322houmonhanbai.html


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