法改正・創設

 資料

マンションの建替えの円滑化等に関する法律

―審議状況・参議院―

 参議院議事録より、転載しました。

2002/06/12 参議院 本会議

2002/06/11 参議院 国土交通委員会

          附帯決議

   ☆☆☆

2002/06/12 参議院本会議

○議長(倉田寛之君) 日程第四 マンションの建替えの円滑化等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。

 まず、委員長の報告を求めます。国土交通委員長北澤俊美君。

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   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕

    ─────────────

   〔北澤俊美君登壇、拍手〕

○北澤俊美君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過と結果を御報告を申し上げます。

 本法律案は、マンションにおける良好な居住環境の確保を図るため、法人格を有するマンション建替組合の設立、権利変換計画に基づく関係権利の再建マンションへの変換、危険又は有害な状況にあるマンションの建替えの促進のための特別の措置等マンションの建替えの円滑化等に関する措置を講じようとするものであります。

 委員会におきましては、参考人からの意見聴取を行うとともに、本法制定の目的とその社会的背景、マンション建替えについての合意形成の在り方とその促進方策、建替え決議の要件、売渡し請求権行使の際の時価の算定基準、建替えに参加が困難な高齢者等の居住の安定の確保方策、既存不適格マンションと団地型マンションの建替えの円滑化方策、危険又は有害なマンションの建替えのための勧告制度、マンションの耐久性の向上その他について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。

 質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定をいたしました。

 なお、本法律案に対して附帯決議が付されております。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

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○議長(倉田寛之君) これより採決をいたします。

 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。

   〔投票開始〕

○議長(倉田寛之君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。

   〔投票終了〕

○議長(倉田寛之君) 投票の結果を報告いたします。

  投票総数         二百二十九  

  賛成           二百二十九  

  反対               〇  

 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)

     ☆☆☆☆

2002/06/11 国土交通委員会

第154回国会 国土交通委員会 第19号

平成十四年六月十一日(火曜日)

   午前十時開会

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  出席者は左のとおり。

    委員長         北澤 俊美君

    理 事

                鈴木 政二君
                脇  雅史君
                藤井 俊男君
                弘友 和夫君
                大江 康弘君

    委 員

                荒井 正吾君
                木村  仁君
                月原 茂皓君
                野上浩太郎君
                野沢 太三君
                松谷蒼一郎君
                森下 博之君
                森山  裕君
                吉田 博美君
                池口 修次君
                佐藤 雄平君
                谷林 正昭君
                藁科 滿治君
                続  訓弘君
                大沢 辰美君
                富樫 練三君
                田名部匡省君
                渕上 貞雄君

   国務大臣

       国土交通大臣   扇  千景君

   副大臣

       国土交通副大臣  佐藤 静雄君

       国土交通副大臣  月原 茂皓君

   大臣政務官

       国土交通大臣政務官  森下 博之君

   事務局側

       常任委員会専門員   杉谷 洸大君

   政府参考人

       法務省民事局長      房村 精一君

       国土交通省住宅局長   三沢  真君

    ─────────────

  本日の会議に付した案件

○政府参考人の出席要求に関する件

○マンションの建替えの円滑化等に関する法律案

 (内閣提出、衆議院送付)

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○委員長(北澤俊美君) ただいまから国土交通委員会を開会をいたします。

 まず、委員の異動について御報告をいたします。

 去る六日、岩本司君が委員を辞任され、その補欠として佐藤雄平君が選任されました。

    ─────────────

○委員長(北澤俊美君) 次に、政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りをいたします。

 マンションの建替えの円滑化等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に法務省民事局長房村精一君及び国土交通省住宅局長三沢真君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(北澤俊美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。

    ─────────────

○委員長(北澤俊美君) マンションの建替えの円滑化等に関する法律案を議題とし、質疑を行います。

 質疑のある方は順次御発言を願います。

○吉田博美君 自由民主党の吉田博美でございます。よろしくお願いいたします。

 省庁再編以前の総理府におきまして、かつて国民に対しまして調査をいたしました、国政に対する最も大きな課題は何かと。そうしたとき、最も多かった答えは食糧の安定的供給と安心して住める国土づくりでございました。国民の皆さん方にとりまして安心して住むということはいかに重要なことだということを改めて感じたわけでございます。

 私たちは忘れてならないのは、阪神・淡路大震災のときに老朽化したビルあるいはマンションが崩壊をしている姿というのをテレビ等で目の当たりに見まして、本当に都市での生活の不安というものをそのとき改めてまた感じたわけでございます。また、私はさきの委員会でも申し上げましたが、本当に、築三十年を経過したマンションが平成二十二年度には九十三万戸に急増しますし、また一九八一年に現在の耐震基準というものが作られたわけでありますが、それ以前の建物が百万戸あるわけであります、約。しかし、すべてのマンションを建て替えろというんではないんですけれども、かなりのマンションが老朽化して建て替えをしなきゃいけないんじゃないかなと思っておるところでございます。

 よく災害は忘れたころに来るというようなことを言われますが、いつ来るか災害というのは分からないわけでありまして、大震災の後に、あのときにマンションを建て替えておればよかったのになという、被害の後に反省するんではなくて、備えあれば憂いなしということが言われますが、正しく適切にマンションの建て替え等について対応していかなきゃいけないんじゃないかと。そうした中で、本法律案は誠に時期を得たものではないかと思うわけであります。

 この非常に、何日かにわたっての委員会での審議の経過等、いろんな中で見、そして反省し、いろんな考えの中で、参考人質疑の中で、参考人の先生方からいろんな意見を寄せていただきました。特に、私は、本法律案が成立して、これを施行するいろんな中で、一番大きな、一番大事なことになるのはやはり区分所有法ではないかなと思いました。建て替え決議の要件につきましては、法務省お見えになっていますが、法務省にもお願いを申し上げて、本当に分かりやすく、明確にしていただきたいということを申し上げたわけでありますが、参考人の先生方から言われましたのは、やはり団地での建て替えがより分かりやすい仕組みのような方法の中でやっていかなきゃいけないんじゃないかと。そうしたことを含めた中で、総括的な質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、先日の参考人質疑の際にも触れられていたのですが、団地の建て替えに関して本法案では何らかの対応を考えておられるのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。

○政府参考人(三沢真君) いわゆる団地型のマンションでございますけれども、特に建築時期の古いマンションでその割合が高いという実態がございます。例えば、建築後三十年を経過したストックで見ますと、棟数で見て約半分程度が団地型というふうになっているという実態でございます。

 こういう団地型マンションの建て替えにつきましては、その敷地が複数の棟のマンションの区分所有者の全員の共有になっているということから、やはり権利関係の調整が複雑となるということとか、それから、やはり建て替えに合わせて建物の共同化とか敷地の高度利用などいろいろなニーズへの対応がその際求められるということから、マンション建て替えの制度化に当たりましては、団地型マンションの建て替えについても円滑に対応できるような配慮が必要であるというふうに考えております。

 この法案の中では、団地の中の複数の棟について建て替え決議が行われた場合に、これは複数棟の区分所有者が一つの建替組合を設立いたしまして、複数棟の共同建て替えなど、一体的な計画に基づいて事業が実施できるように法律上の手当てをしているところでございます。

○吉田博美君 本法案の対応はおおむね理解をするところでありますが、しかし区分所有法というものがございまして、次に法務省にお尋ねいたしますが、団地の建て替えについては法務省の中間試案では敷地利用者の全体の四分の三の同意が必要とされていますが、例えば大規模団地等で、十棟もあるような中で一棟だけの建て替えをしようとする場合も団地全体の四分の三の同意を得なければならない、これは大変なことだと思うわけですよね。

 この四分の三の同意を必要とすることの根拠はどういうことなのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。

○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、複数の建物が建っております団地、その団地の敷地をそれぞれの建物区分所有者の全員の共有にしている場合、これは現在は特にその団地について建て替えの場合、敷地所有者、敷地共有者ですね、これの同意についての規定は定められておりません。したがいまして、共有物の変更ということで、現行法では敷地共有者全員の同意が必要ということになってしまうわけでございます。それでは御指摘のように余りにも利用に不便であるということから、今回、区分所有法見直しに際しまして多数決で決められるようにしようということにしたわけでございます。

 多数決に決める場合には、過半数あるいは四分の三、五分の四というような数字が現行法の中では決議要件として定められているわけでございますが、やはり団地として、一体としてやはり効用を考えるというようなことから全区分所有者の共有ということになっているわけでございますので、建て替えということになりますと相当大きな変更になりますので、やはり共有物についての変更について四分の三を要求するということがこの区分所有法の基本的な考え方でございますので、それに合わせまして団地の敷地についても共有者の四分の三の多数決で決めるということにしようと考えているところでございます。

○吉田博美君 四分の三ということになるとかなり厳しいんじゃないかと思いますので、またよく御再考をお願いをしたいと思うところでございます。

 ところで、先日の参考人質疑におきましても、特別な影響を受ける場合に同意ということの意味が不明確で、新たな紛争の原因になるのではないかという意見がありましたが、これについて法務省としてはどのようなお考えでしょうか。

○政府参考人(房村精一君) ただいま申し上げましたように、基本的には多数決で決めていただくということでありますが、やはり新たに建つ建物の規模等によっては従来の建物に住んでいる方の権利に非常に大きな影響を与えて、その人の反対を少数ということで押し切ってはまずいという事態があるだろうと、こういうことから特別な影響がある場合には個別の同意が必要だという考え方を提案しているところでございます。

 その典型例といたしましては、建物を建て替えるときに従来より大きな規模の建物にする、その結果団地内で容積率の案分が変更されまして、従来の建物はそのままの規模では建て替えられないと、こういう場合が当然あり得るわけでございます。こういうときに多数決で決めてしまいますと、従来の建物を持っている人たちが建て替えをしようと思うときに規模の縮小を迫らざるを得ない、そういうようなことが生じますので、やはりそういう場合には特別な影響がある。抽象的に申し上げますと、現在の敷地の利用状況、各区分所有者が有する敷地利用権の持分割合等に照らして、当該建物の建て替えによって生じる不利益が受忍すべき限度を超えると、こういうことでございますが、典型例としては今申し上げたようなものでございます。

 また、法律ですべての場合を書き尽くすのはなかなか難しいわけでございますが、今言ったような解釈で個別の具体的な事例に当たっていけば、その解釈に当たってそれほど疑念が生ずるという心配はないのではないかということで現在こういう案で提案をさせていただいておりますが、なおいろいろな御意見を承って検討を続けたいと思っております。

○吉田博美君 いつだか人の命は地球より重いということを言われた政務次官ですか、いらっしゃいましたが、私は、せっかくいい法律ができましても違う方の法律の中で足かせになるような状況になると、結果的にはマンションの建て替えもなかなかスムーズに進まなくなる傾向もあるんじゃないかという危惧をしている一人でございますので、先ほど来いろんな皆さん方の意見を十分に拝聴されまして、そして本当にいい区分所有法の建て替え決議の要件を作っていただきたいなと期待をするところでございます。

 委員長、法務省の方は結構でございますので。

 マンションの建て替えに対する支援策として具体的にどのようなことを考えておられるのでしょうか。また、その支援を受けるための要件はどのようなものでしょうか。

○政府参考人(三沢真君) マンションの建て替えに対する支援策とその要件というお尋ねでございます。

 マンションも基本的には他の住宅と同様に個人の財産であるというところから、その建て替え費用は基本的にはその所有者において負担すべきものであるということはございます。ただ、やっぱりその建て替えを円滑に推進するためには、建て替えに参加する区分所有者の方々の経済的な負担を軽減するという観点から一定の支援は必要であるということでございまして、そういう観点から、国庫補助あるいは住宅金融公庫融資、税制等により支援を行うこととしているわけでございます。

 具体的に申しますと、国庫補助につきましては、これは土地の利用の共同化とか高度化に寄与する建築物に補助を行う優良建築物等整備事業という事業がございます。この事業によりまして、調査設計計画費であるとか建物の除却費、それから共同施設の整備費、こういうものに対して補助を行うこととしております。特に、今回、調査設計費につきましては、従来は補助を行う時点を建て替え決議が行われた以降に限定しておりましたけれども、今回の法律に伴いまして、建て替え決議の前でありましても、これは要するに建て替えを行うかどうかの検討に要する費用、こういうものにも助成するという観点から、決議の前でも補助を行うということにしております。

 それから要件でございますけれども、これは一定の空地を確保することとか、それから地区面積はおおむね一千平米以上であることということを要件にしておりますが、この地区面積の要件につきましても、今年度から小規模なマンションの多い三大都市圏においては地区面積の要件をおおむね五百平米以上ということで引き下げるということにしております。

 それから融資でございますけれども、住宅金融公庫融資の中で都市居住再生融資制度というのがございまして、これは住宅市街地における土地の合理的かつ健全な利用に寄与する耐火建築物に融資を行うものでございますけれども、これについては基準金利、一番優遇された金利で融資を行うということにしております。その要件につきましても、一定の空地を確保すること、あるいは敷地面積は五百平米以上であることということがございますけれども、この敷地面積要件につきましても、三大都市圏でマンション建替組合等が行う事業については三百平米以上ということで引き下げることにしております。

 それから、債務保証ということで、これは組合再開発促進基金というのがございまして、これは市街地再開発事業を行う場合にその事業についての債務保証を行う基金でございますけれども、これについてマンション建替組合等が行う建て替え事業についても債務保証を行うということにしております。

 それから税制につきましては、税制も何点かございますけれども、このマンション建て替え事業に伴いまして地区外に転出される方がございます。そういう方々についての譲渡所得税であるとか登録免許税についての特例措置、それからこの建替組合そのものについての法人税の課税についても特例措置が講じられております。

 それから、こういった資金面での支援のほか、高齢者等の居住安定を図るために、従前居住者用賃貸住宅に係る家賃対策補助、あるいは公営住宅への優先入居等の実施、それから更にいわゆる総合設計制度の積極的活用ということで、空地の整備等により市街地環境の整備改善に応じて容積率緩和等を行う総合設計制度を積極的に活用するということを含めまして、これらの支援策を総合的に実施していくということを考えております。

○吉田博美君 既存のいわゆる不適格マンションの建て替えに対し、具体的にどのような建て替え促進策というか、インセンティブを考えておられるのでしょうか。

○政府参考人(三沢真君) 今回の法律案の中では、老朽化が著しく進行し、危険又は有害な状況にあるマンションにつきまして建て替えの合意形成を促して、区分所有者による自発的な建て替えを実現するという観点から、市町村長による勧告制度というのを設けているわけでございます。

 それで、勧告をまず行った場合には、一つは、市町村長は賃借人や転出区分所有者の要請に応じまして代替建築物の提供又はあっせんに努めなければならないというふうにされております。

 それから、市町村長が居住安定計画というのを認定いたしますと、その認定した計画に基づきまして賃借人や転出区分所有者に対して特段の居住安定措置を講ずることとされておりますが、その内容といたしましては、一つは、公営住宅であるとかあるいはその市町村が借り上げる住宅、こういった住宅等への特定入居、いわゆる公募によらないで入居させることができるという特定入居と呼んでおりますが、そういう措置や、それから必要に応じてその公営住宅あるいは市町村借り上げ住宅等の家賃の減額、それからそれに対する国の補助、それから三番目といたしまして、この法律に基づきまして賃貸人から賃借人への移転料の支払の義務付け、それからそれに対する国及び市町村の補助ということを行うこととされております。それから、この居住安定計画に基づきましてこういった措置が講じられることに対応しまして、この法律によって借地借家法の特例が設けられているというところでございます。

 こういった以上のような措置によりまして、勧告を受けたマンションについては、建て替えに伴って転出せざるを得ない方々に対しまして居住の安定のための措置を設けることによりまして建て替えの実施に向けた合意形成を促進するということにしております。

○吉田博美君 今日は、大臣も出席されておりますし、両副大臣も出席されております。私はここであえて政務官に質問したいと思います。

 政務官は、国会議員の秘書時代に私の大先輩として御指導いただきまして、特に秘書等の業務としての礼節を重んじろということを教えていただきました。また、県会議員として、高知県会議員として大先輩でございまして、そのときには人のために汗をかけということを教えていただきました。

 今日、私は政務官に民間活力について教えていただきたいと思いまして、質問させていただきたいと思います。

 マンションの建替え法のほかにも民間活力に期待する法案が活発に提案されているようなので、民間活力に関連して伺いますが、国土交通省としてはPFI法についてどのように対応しようと考えているか、御所見をお伺いします。

○大臣政務官(森下博之君) 吉田委員にお教えを申し上げることは何もございませんが、国土交通省としての立場を申し上げさせていただきたいと存じます。

 国土交通省におきましては、効率的かつ効果的な社会資本を整備いたしまして質の高い公共サービスを提供するために、民間の資金、活力を積極的に活用するという観点から、PFI方式の導入を積極的に推進をいたしておるところでございます。

 具体的に申し上げますと、文部科学省、会計検査院の建て替えである中央合同庁舎七号館をPFI事業で推進をすることといたしております。この事業につきましては、昨日、実施方針の公表を行ったところでありますが、今後PFI事業者の募集及び選定を行う予定であります。また、仮称でございますが、九段第三合同庁舎につきましても、今年度PFI方式による整備のための必要な調査を実施する予定をいたしております。このほかにおきましても、我が省所管の各事業分野の具体的なPFI導入手法に関する調査検討を実施をいたしておるところでもございます。

 いま一点、地方公共団体が進めておりますPFI事業で、国土交通省の事業は現在合計十三事業となっております。この事業を積極的に支援していかなくてはならないわけでありまして、このPFI事業に関する事業費の補助等の予算枠を確保するように今後努めてまいりたいと存じます。

 今後とも、政府全体の取組を踏まえつつ、幅広い分野でPFI事業を始めとして民間活力を活用した事業の推進に取り組んでまいりたいと考えておりますので、大変このPFI事業に造詣の深い吉田先生の一層の御協力をお願いを申し上げます。

 以上であります。

○吉田博美君 よく理解をしたところでございます。御指導をいただきながら一生懸命頑張ってまいらなきゃいけないと思っておるところでございます。

 さて、今国会で都市再生特別措置法等の都市再生に関する法案が成立したところでございますが、老朽マンションの建て替えも都市再生に大きく寄与するものと考えますが、本法案の成立がどのように都市再生に寄与すると期待されているのか、扇国土交通大臣の御所見を伺いまして、私の質問を終わります。

○国務大臣(扇千景君) 今日は冒頭に吉田議員から安全神話のお話が出ました。私たちは、日本は正に安全神話というものが今から七年六か月前、七年半前になりますけれども、あの阪神・淡路大震災、オウム・サリン事件、あれ以来私は日本の安全神話というものが外国からなくなったと思っております。

 そういう意味で、我々はふだんから安全神話というものを取り返す、また日本に対する神話というものを作っていかなきゃいけない。そういう意味においても、冒頭に吉田議員がおっしゃったように、我々は、現在の法案がなかりせば、このマンションの建て替えが円滑に進まない場合はどういうことになるか、今の建物の老朽化というものに対して我々は新たな安全上の確保をしていかなければならない、そういう私たちは責任を負っていると思います。

 そういう意味で、安全性、衛生性あるいは環境性、そういうものを加味した今の二十一世紀型にするということでこの法案を皆さん方に御提案申し上げ、先ほども吉田議員がおっしゃいましたように、現在マンションの約四百万戸のストックがございます。そして、一千万人を超える人々がこの都市生活を支える重要な役割を担ってくだすっております。

 そういう意味で、築後少なくとも三十年を経過したものが、冒頭のお話のように、現在約十二万戸、そして十年後にはこれが九十三万戸へとおっしゃったのはそのとおりでございまして、我々はそれを何とか、マンションの円滑な建て替えを進めるためには、都市の再生を図る上で何としても重要な問題であると認識して今回皆様方に法案の提出を申し上げ、この法案が成立することによりまして老朽マンションの建て替えが円滑に進んでいくということで我々は個々の住宅と併せまして周辺の環境が適切に整備される、そういうことを子供のときから、子供からお年寄りまでこれからの多くの人々がよみがえるような空間の整備でありますとか居住環境の向上というものを図っていきたい、そして都市再生を図る上でもこれは効果が大きいものと考えております。

 今後も、特に総合設計制度等の活用した高度の利用を図ることでいわゆる緑地帯のオープンスペースの確保がこれで可能となりますので、そういう意味では、保育所あるいは福祉施設等々を併設するということによりまして周辺の生活サービスの向上が図られるなど、建て替えを契機としてあらゆる周辺の住宅市街地を含めた住環境の整備が進められると思っておりますので、是非、都市再生にも大きく寄与するということで、皆さんに御審議を賜り、また皆さんの御審議をこの法案の中にも生かしていきたいと思っております。

○谷林正昭君 おはようございます。民主党の谷林正昭でございます。

 先般、この法案につきまして本会議で質問をさせていただきました。大変丁寧にお答えをいただきまして、感謝申し上げます。

 その後、私の事務所に多くの方々からいろんなお手紙やメールやあるいは自分の考え、そういうものをたくさんいただきました。私それを見まして感じたことは、関係のない方には余り正に関係のない法律だけれども、実際にそういう境遇にある人たち、あるいはそういう立場にある人たち、またそういう産業に携わっている人たち、そういう人たちから見たら非常に重要な法案だなというふうなことを感じて、やっぱりどういう法律でもおろそかにできない、これは当たり前の話でありますけれども、国会議員の一人としてやっぱりいろんな勉強をしなきゃならないなというふうに思いながら今日の質問に立たせていただきます。

 そこで、まず第一点は、区分所有法の中で建て替え決議が出た後、これまでなかった建て替え決議の出た後の手法についてこの法案が出ているというふうに認識をさせていただいておりますが、一方では区分所有法を今見直している最中だというふうに聞いておりますし、三月に中間試案の公表があって、今パブリックコメントを求めながらいろんなところから意見を求めているというふうに聞いております。そして、今年の秋に関係法案を作成をしたいと、こういうような状況に実はなっております。そういう意味では、この見直しの中のポイントとして、管理の適正化のための措置の中に大規模修繕等の実施する場合の決議要件の緩和などが入っております。

 そういうことになってきますと、一方では建替え法案を出して、一方では修繕の見直しを行う法案修正を考えていると。こういうことになってくると、私は、そこに携わっている人たちにしたら、これはちょっとおかしいんじゃないかと、整合性がないんじゃないかというふうな見方もできますし、私もなぜ今国会でこの法律の成立を目指すのかもう一つはっきりしない。

 あるいは、もしこれを通ったということには、よし、ここで通ってよかったというふうな状況が生まれてこなきゃ私は駄目だというふうに思いますので、なぜ今回のこの国会で成立を目指すのか、そこら辺りをしっかり聞かしていただきたいと思います。

○副大臣(佐藤静雄君) ただいま吉田議員の質問に大臣から答えましたけれども、今分譲マンションが四百万戸近くあると、それが十年後には九十三万戸に老築マンションがなってしまうと。そういう中において、多くの方々が地震に対する安全性ですとか居住性に対して不安を、不満を持っている人がたくさんおります。そういう方々が今建て替えを望んでいるわけでありますけれども、実際に建て替えを検討しているマンションが、ただいま建て替えの決議済みマンションが五地区ございます。さらに、平成十四年中に決議予定のマンションが四地区、そのほか建て替え検討中のマンションが百二十二地区ございます。

 このような事情を考えてみますときに、建て替えを行う団体への法人格の付与ですとか権利の円滑な移行ですとか、そういう仕組みの整備などを今スルーすることが非常に大切だろうと私たちは判断をいたしておるわけであります。

 それで、区分所有法の改正に先立ってこれは提案したものでありますけれども、その成立によりまして、既に建て替え決議が行われているマンションの建て替え実施が促進される、大きく促進されると思っていますし、また決議に至る過程にあるマンションに関しても建て替え事業の運営ルールや法的仕組みが明らかになりますから、合意形成の促進に大きく貢献するだろうと、そう思って今回こうして提案をさせていただいているわけであります。

○谷林正昭君 建て替えを促進するということに多分貢献、私もすると思いますが、問題は、今そういうような副大臣の御答弁もありましたように、この法律が通ったら建て替えがしやすくなるんだという今評判がその関係者の間で出てきております。

 ところが、それは正当な、法案を理解しながら、そしてあるいはその法案を住民の皆さんもしっかりのみ込みながらそういう議論ができればいいわけでございますけれども、これは私の耳に入ってきた風評ということで少し聞いていただきたいんですけれども、例えば、今三十年か四十年で老朽の認定をしますよという一方では考え方、試案を出していると。そういうことから、三十年たったら建て替えが簡単にできる、こういうような間違った風評が実は出てきまして、それが、その結果、維持管理、もう二十五年たっているからもう五年我慢しようやというふうな維持管理を怠っていく傾向がある。あるいは、修繕業者や建設業者は三十年さえもたせればいいんだという、そういうような発想で補修工事や、新築工事はそこまではまだいかないと思いますけれども、そういう三十年さえもたせればというような風潮が出てきている。あるいは、現行マンションの評価というものが、もう三十年たったら建て替えるんだからどんどんどんどん評価が下落してきている。そういうようなことなどが今そういう関係者の間でささやかれたり、間違った認識で流されているというふうに実は聞いております。そういう意味では、私はそこに住んでいる人たちにとったら非常に不安だというふうに思います。

 したがいまして、この法律がそうではないんだということをしっかり住民や関係者に知らせるべきだというふうに私は思いますし、これは、区分所有法というその法律も一方では大変重要な役割を担ってまいりますので、法務省も国土交通省も一緒になってそういう間違った風評を払拭できるようなそういう広報活動といいますか、法律の説明といいますか、そういうものが今一番大事なときだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(三沢真君) この法律案は基本的に一定の年数が経過したマンションについて一律にその建て替えを促進するというような趣旨のものではございません。これは、あくまで個別の建物の状況に応じて、建て替えと修繕との比較検討を踏まえながら、区分所有者御自身で十分な議論をしていただいて、その上で建て替え決議をなされた場合に、その後、その建て替えを円滑に進めるという趣旨でございます。

 したがいまして、建て替えでいくのか修繕でいくのかということをある意味では本当に真剣に御議論をいただくということが大前提でございますので、先生言われましたように、このことによって何か修繕に手を抜くというようなことはもう全く本末転倒でございまして、そういうことはあってはならないと私ども考えております。

 したがいまして、この法案のそういう趣旨につきましてはやはり十分一般の方々に分かるように周知徹底を図るということは非常に大事でございまして、このことについては国土交通大臣が定める基本方針の中できちっと明示するということと併せまして、それをいろいろな形で周知徹底に努めていくということにしたいというふうに考えております。

○政府参考人(房村精一君) 法務省の区分所有法の中間試案におきましては、御指摘のように、建て替えの決議に関しまして、マンション建築後三十年又は四十年を経過した場合には建て替え決議ができるというような案を提示しているところでございます。

 ただ、これは、もちろん三十年、四十年たったらもう当然に建て替えていいんだということを意図しているわけではございませんで、基本的に区分所有の建物というのは区分所有者の権利に非常に大きな影響を与えますので、これは単純な多数決ではなくて、五分の四の非常に加重した要件を要求している。さらに、そういう単純な数だけではなくて、建て替えを必要とする合理的な理由があるということもその建て替え決議の要件にしようという考え方で現在の区分所有法ができております。

 ただ、現在の区分所有法ではその要件を建て替え等に過分の費用を要するという要件にして、これが非常にあいまいではないかという御指摘を受けているところから、できるだけ客観的な要件にしようと。そうなりますと、建築後何年というのは要件としては非常に明確でありますので、少なくとも建築後三十年あるいは四十年を経過するまでは通常建て替えの必要性はないであろうということから、少なくともそれだけの年数を経ないものについては建て替え決議ができない、それを経て初めて建て替え決議の対象としての検討が可能になると、こういうことをこの案は示しているわけでございます。

 私どもとしても、この中間試案についてもそういう説明をしたつもりではありますが、今後もそういう誤解を招くことのないよう十分な説明を加えて審議を続けていきたいと考えております。

○谷林正昭君 是非、誤解を招かないような広報活動が私は今大事だ、大事ではないかというふうに思っております。

 正に時宜をしっかりとらまえた報道が、五月の十四日から六月の四日までの間に読売新聞でマンション建て替えについての連載が載りました。これは、一つ一つ、建て替えが成功した例、失敗した例、非常に困った例、いろんな例が出てまいりました。これ、そのときちょうど勉強している最中だったものですから、読みながら、ああ、なるほどなと思っておりましたが、ここで、この記事の中で、読ませていただいて、そして私自身も考えさせていただいたのは、これは法律ではなかなか難しいかも分かりませんけれども、このマンション建て替えというのは、正に議論をした後、出て行く人も何かもやもやとして感情が残りながら出ていかなければならない、残った人たちも何かもやもやとしながら、あるいは感情が残ったまま残らなければならない、そういうことが多々あるんではないかというふうなことが分かってまいりまして、そこで、法律では書きにくいかも分かりませんけれども、このマンション建て替え論議には管理組合の日ごろのコミュニティーの醸成あるいは合意形成の在り方やプロセスの持っていき方、こういうものが大事ではないかというふうに私は思います。

 これは区分所有法で、やるとしたら区分所有法でやるしかないなというふうに思いましたので、法務省の方にその点をお尋ねをいたします。

○政府参考人(房村精一君) 建て替えを円滑に行うためには、管理組合あるいはマンションのそれぞれ住んでいる方々の日ごろのコミュニティーに対する参加意識といいますか、あるいは十分な議論を尽くすということが重要であるというのは全く御指摘のとおりだろうと思います。

 私どもとして、区分所有法でなかなかその部分を法律上どういう具合に促進するために規定が置けるかということで工夫、ある意味では苦労しているところではございますが、そういう観点を踏まえまして、今回の中間試案でも、例えば今までですと建て替えの集会の通知というのは一週間前にすれば十分だったんですね。これを少なくとも一か月前にするようにということで、十分話合いをする機会を確保しよう、期間を確保しようというようなことを考えております。また、その通知に際しては、建て替えの理由、それから仮に建て替えないで維持をするとした場合にはどのくらいの費用が掛かると、こういうようなことを通知すると。そういう十分議論をしていただく前提としての情報をできるだけ皆さんに伝えて、それに基づいて十分な議論をしていただく機会を確保できるようにという配慮は試案においてもしているつもりでございます。

 今後も、ただいまの御指摘を踏まえて、更に工夫ができるかどうか検討を続けたいと思っております。

○谷林正昭君 是非、そういうことが私は大切だというふうに思いますし、後ほどまた触れていきたいと思いますけれども、その議論が一番大切であり、それが進まないとどれだけ促進しても進まないということに私はなるというふうに思いますし、一方では、参考人質疑の中で参考人の先生方がどなたもおっしゃったことは、やはりマンションというのは一生一代、自分の家を持ったということと同じでありますから、何とか長持ちをさせたい、させなければならない、こういうのが基本になければならないということをおっしゃいました。

 そこで、お尋ねするのは、このマンションの長寿命化についてどういう研究がなされているのか。

 今、スケルトン構造というもので非常に住みやすい環境づくりというものを研究をされているというふうに聞いております。ところが、このスケルトン構造というのは、一遍更地にして新しく建てるときに初めて取れる工法でございます。壊した、建て替えの後の長寿命化ということは、これは当然でありますけれども、今住んでいるところの長寿命化についても国土交通省として、研究、検討を含めて、そして住民の方々や業者の方々が安心してそこに住んでもらえるようなまちづくりのためのそういう研究、検討というものは私は予算を使ってでもやるべきじゃないかなというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○大臣政務官(森下博之君) 谷林先生御指摘のとおりでありまして、ストックの有効活用の観点からいたしましても、マンションの長寿命化のための研究開発は重要な課題と考えておるところであります。

 マンションの長寿命化のためには、建物の構造体を長もちさせるとともに、家族構成の変化に対応した間取りの変更や給排水設備などの更新に適切に対応できることが必要であると考えておるところであります。

 先生の御指摘のように、このために国土交通省におきましては、耐久性を持った躯体と自由に内装を変えることができるというこのスケルトン・インフィル住宅、いわゆるSI住宅に関する研究開発を進めておるところでございます。

 今後、この成果をスケルトン住宅指針、仮称でございますが、指針として取りまとめをすることによりましてこれらの技術の普及に努めまして、マンションの長寿命化を推進してまいりたいと考えておるところでございます。

○政府参考人(三沢真君) 今、森下政務官の方からスケルトン・インフィルについての御紹介がございました。それと併せましては、既存のものを長もちさせるいろいろな研究についてもお尋ねがあったかと思います。

 それで、既存のものを長もちさせるためには、やはり適切な維持管理とか、それからリフォームをきちっと行っていくということが非常に大事でございまして、このリフォームにつきましても、なかなか、専用部分、共用部分、それぞれのリフォームについていろいろな具体的に進める上で技術的な問題点がございます。

 これは、この点に関しましても、例えばエレベーターを既存の共同住宅に建てる場合に、できるだけコストを安くして設置できるとか、そういったリフォーム技術の開発、それからいろいろな民間レベルで技術開発がなされますので、そういったことについてのいろいろな情報提供とか、それからリフォーム技術者についての一定の範囲での研修といいますか、教育が行われるような体制の整備、そういったものについても私どもいろいろ努力していきたいというふうに考えております。

○谷林正昭君 是非、今住んでいるマンションを長もちをさせるという、そういう基本も一つ持つべきだというふうに指摘をさせていただきたいと思いますし、その研究というものをどんどん早めるべきだというふうに思います。

 次に、本会議の中で質問させていただきましたけれども、建て替えか補修かの判断に関する技術的指針、こういうものや、あるいは適正な合意形成のためのマニュアルづくり、マニュアルの作成、こういうことを大臣答弁でなされております。

 せっかくのこういう委員会審議でありますから、もう一歩踏み込んで、その合意形成のためのマニュアルの作成あるいは技術的指針、そういうものを具体的にこの場で示していただければより審議が深まるものというふうに思いますので、よろしくお願いします。

○政府参考人(三沢真君) マンション建て替えの検討が行われるに当たりましては、やはりその建物の現状とか、維持修繕を続けた場合との比較などに関する的確な情報というものがやっぱり必要であると、これに基づいて十分な議論が行われた上で判断されることが重要であるということから、先般、建て替えか修繕かの判断に関する技術的指針あるいは合意形成のマニュアルを作成するということを大臣から答弁申し上げたわけでございます。

 その具体的な中身でございますけれども、これはもちろん現在検討して、今後更に詰めていくということにしておりますけれども、一つは、やはり技術的指針の具体的な内容としては、マンションの老朽化の状況をどうやって診断するのかと。それは耐震診断も含めまして、そういう診断方法をどうするかということについて、まず分かりやすいガイドラインが必要だろうと。

 それから、修繕と建て替えに分けまして、例えば修繕ですと、現状の設備とか耐震性の水準をそのまま維持した場合、それから一定のレベルアップを図った場合、こういった場合にある程度場合分けをしながら、それぞれの設備等の水準を設定した上でそれに必要となる工事の内容はどういうものか、それからそれに掛かる費用をどうやって計算するかといったようなこと。それから一方、建て替えにつきましては、じゃ建て替えた後にどういう住戸規模、部屋の大きさ、それから設備の水準を想定するかと。それについても幾つかのパターンがあり得ると思いますが、そういった水準を設定した上で、そういう設定したそれぞれの水準を実現するためにどういう工事内容が必要であり、そのために幾らくらい掛かるんだろうかと。そういうことを盛り込むことによって、修繕の、こういう修繕をした場合、それからこういう建て替えをした場合、それぞれ幾ら掛かるかということが比較できるようにするというようなことを考えておりまして、こういう合理的な比較検討に寄与するような内容として、今後更に検討、内容を詰めていきたいというふうに思っております。

 それから、合意形成のマニュアルについてでございますけれども、これについては、例えばマンションで、じゃ建て替えをみんなで検討しようという場合に、そういう検討組織としてどういう組織を標準的に作るというやり方があるのか、あるいはそれを発足させるにはどういう手順を踏んでいくのかというようなこととか、それから、各区分所有者が建て替えについてどういう意向を持っているかということをどういうやり方で調査していったらいいかというような調査の方法であるとか、それから、外部の方々から、いろんな専門家のアドバイスを聞くということも必要になってきますので、そういう専門家というのを、どういう専門家について、どういうところにいる方についてどうやって聞いていくのかといったような事柄、それから、公共団体等の関係組織といろいろな調整が必要になる局面もございますが、そういった公共団体との調整に関する事柄であるとか、それから、ある程度検討された案を区分所有者に提示していく必要があるわけでございますけれども、それをどうやって提示し、あるいはさらにそれを提示したことについて意見がいろいろ出た場合に意見集約をどうやって図っていくかと、そういったことについて盛り込むということを予定しておりまして、できるだけ透明性が確保された合意形成プロセスで建て替え検討が行うことができるように、そういうことに寄与できるような内容を更に詰めていきたいというふうに考えております。

○谷林正昭君 こういう問題には情報公開というものは一番大切だというふうに思いますし、管理組合の日ごろからのきめ細かな活動、こういうものも大事だというふうに思います。具体的な案ができましたらまた勉強させていただきたいなというふうに思います。

 具体的な法案について少し踏み込まさせていただきます。

 端的に申し上げまして、この建て替え決議の賛成者、これが五分の四、決議で五分の四ができた後この法案が動くわけでありますけれども、動き出した途端に、賛成はしたけれども事業には参加しないと、こういう方々がどんと増えてきた場合は、その問題はどうなるんですか。事業を進めるのか進めないのかということになりますし。

 なぜこんな話をするかといいましたら、これは私だけの考えというよりも認識かもわかりませんが、今ある建物、九十三万戸を将来建て替え、古いものが出てくるというお話、そして本会議で私の答弁では、五万六千戸ぐらいを十年間で建てる見通しだ、こういうふうに答弁をされております。一方では、昭和五十年以前に建築をされたマンションのうち六〇%ぐらいはもう不適格マンションであると、いろんな法律に合致していないマンションである、そういうようなことを考えてみますと、百人入っているマンションを取り壊して、そのまま百人入れるマンションを造るというのは私は恐らく不可能ではないかと。そういうものがたくさん出てくるのではないかと。何ぼ容積率の緩和だとか、そういうことができることにはなっていますけれども、それはもうできないものばかりが残っているのではないか。ましてや、等価交換というシステムも取れないようなそういう敷地面積や容積率、そういうことを考えたときに、百人入っている人たちがそのまま百人残れるということは考えられない。

 もし、強いて言うならば、逆に百人入っていたそのうちの四十人は出ていってもらって、六十人ぐらいの人たちだけで元の土地に建ったマンションに面積やあるいは住みやすい環境づくり、そういうことをするためには、住む人のニーズにこたえるためには六十人ぐらいしか住めないマンションしか建たないのではないかというのが私の考えであります。

 後ほどまたそれに触れていきますけれども、そういう意味で、五分の四は達成して、いざこの法律の中で動き出そうとしても、最終的には、残りの人たちが、百人のうちの十人は最初から反対だ、しかし出ていきましょう、九十人のうちの三十人の人がやっぱりおれは出ていくわと、こういうふうになる可能性が非常に高い、そういうふうに思いますけれども、まず賛成者が事業に不参加するということを明確にした場合はどうなるんですか。

○政府参考人(三沢真君) 建て替え決議に賛成した方であっても、こういう方々であっても、組合設立の公告の日から三十日以内に組合に対して権利変換を希望しないという旨を申し出ることによりまして、この建て替え事業から離脱するということは可能でございます。それから、第三者に区分所有権を譲渡するということによって事業から離脱するということも考えられるわけでございます。こういう場合であっても、いずれの場合でもこの建て替え事業そのものは継続されるということになります。

○谷林正昭君 継続されるんですね。そして、第三者にその権利も売却、本人の意思でできるということになるわけですね。

 そこで、じゃ法案の十七条の見解、これをしっかり示していただきたいと思います。なぜならば、大臣答弁や委員会審議の中では、今後は建替組合の中に民間業者やディベロッパーに入っていただいてもいい、それも組合員になりますよと、なれますよと、それを定款で決めればいいですよという法律が今でき上がります。ところが、その法律のどこを読んでも民間業者だとかディベロッパーという言葉は出ておりません。強いて言うなら、この十七条で、信用力のあるところ、ある人、あるいは資力のある人という定義がそこでされている。それが民間業者やディベロッパーだというふうな説明がされております。

 じゃ、資力のある人とはどういうことなのか。信用のある人とはどういう人なのか。そういうことを考えていきますと、非常に微妙、あいまいだと私は思いますので、この十七条というのはどういう意味を持っているのか、お聞かせいただきたいと思います。

○政府参考人(三沢真君) この十七条の趣旨ということでございます。

 それで、マンション建て替えを担う区分所有者というのは基本的には個々の住戸を所有している一個人の方々でございます。そういたしますと、土地や建物の権利関係とか、工事の設計、施工に関する専門的な知識というのを必ずしも持たない、それから資金力という面からも必ずしも十分でないというのが一般的なケースであろうと思います。

 こういうことに着目いたしまして、この法案の十七条の中で、民間事業者等のノウハウ、資金力を活用するということから、こういった民間事業者等を参加組合員として参加させることができるものとするというふうにしております。この場合に、事業の確実かつ的確な実施を確保するということと、それから区分所有者の意向を十分に反映させるということは当然一番大事なことでございます。そういう観点から、当該事業者が事業への参加に必要な資力及び信用を有する者であり、かつ組合員の四分の三以上の同意によって定款に定められていることを求めております。

 その場合の資力、信用でございますけれども、都道府県知事による設立認可に当たってのこれが判断要素でございます。そういたしますと、組合が事業を確実にかつ的確に遂行するために必要とされる財務体質その他の経済的な基礎、それから社会的信用その他の能力について設立認可において判断するということになるわけでございます。これの更に具体的な判断基準ということでございますけれども、このことについては、更に大臣が定める基本方針の中で具体的に示すということを今後検討していきたいというふうに考えております。

 それから、やはりそういう判断基準があったとしても、じゃ具体的にどういう人がいいんだろうかというのは現実にはやっぱり相当いろいろなお悩みがあり得るところでございまして、こういう個別具体のケースへの対応につきまして、やはり公共団体とかあるいはいろいろな外部の専門家等のアドバイスが必要な場合もございますので、こういうことについての的確な情報とか相談体制の整備に努めていきたいというふうに考えております。

○谷林正昭君 非常にあいまいですね。一部上場企業であっても株価が額面割れをしている、危ない危ないというデマが出ている、そういうところでもいいんですか。これは答弁要りません。例えばそういう話。あるいはワールドカップのFIFAが券を売りさばくように出したヨーロッパの、イギリスですか、何とかというチケット会社、もう全然話にならないとかいうような事例もあります。

 そういうようなことを考えたときに、そういう民間業者がどういう資力と信用で入ってくるのかというのが非常にそこに住んでいる人たちにとったら不安ではないかなというふうに思いますし、もう少し話を進めさせていただきますけれども、そういう人たちが決議をする前から入ってこなかったら絶対話は成り立たないんですね。三年ぐらい前から徐々にいろんな話合いをしながら入ってこなかったらこういう決議まで持ってこれないというふうに私は現実には思うんですよ。そういったときに、あれはどういう人なんだろうとか、いろんなそういう心配が出てくる、影がちらつくと非常に不安になるということを考えたときに、その対策、時間がありませんので、その対策が一つ。

 それから、民間業者、ディベロッパーという人は恐らく三年ぐらい前から、先ほど言いましたように、来ないとだめですが、法律的にそれはどうなのか、そこら辺りを聞かせていただきたいと思います。

○政府参考人(三沢真君) 民間事業者の活用に関しまして一般論で申し上げますと、過去の建て替え事例においてはこういった民間事業者が参加して建て替えが成功したというケースもいろいろあるわけでございまして、そういう意味では、正に適切な相手方を選定した上でこれをうまく活用していくということはマンション建て替えの円滑化のために有効な場合がやはりあるんだろうというふうに考えております。

 ただ、やはり先生がおっしゃいますとおり、じゃ相手方としてだれを選ぶのかというところについてのそこの問題がやはり非常に重要な問題でございます。

 やはりここは、一つは判断基準として大臣の基本方針の中で更に具体化を図ることを考えておりますが、やはり個別のケースに即していろいろな方、あるいは公共団体も含めていろんなアドバイスなり相談ができる体制をきちっと整えておくと。そういう中で、必ずしも外形的な基準の中で現れてこないようないろいろな情報も得られるような体制、そういうことに努めていくということと、それからあと、やっぱり組合の運営の中できちっとそこについて民間ディベロッパーの方が適切な対応が図られるような、組合の中での運営をきちっとしていくということでございます。

 法律的には、先ほども申し上げましたように、まず選ぶとき四分の三以上の同意で定款で決める、更に設立認可でもチェックするということになっておりますので、こういう制度の適切な運用等を通じまして、組合の運営としてもきちっとしたチェックをしながら能力の活用を図っていただくということかと思います。

 それから、いつの時点からということについては、法律論としては、参加組合員というのは定款に定めるということにされているところから、組合の設立時に定款で定めるということが通常でございます。さらに、もちろん、その設立後に定款変更してここに追加するということも可能でございます。

 ただ、先生御指摘のとおり、やはり事業の実態においては、建て替えの合意形成に至る過程からいろいろなそういう外部の民間ディベロッパーの方と相談しながら、あるいはそこからのいろいろな情報提供を受けながらそういう議論を進めていくというケースがやはり現実でございます。そういう過程を通じながら、だんだんやっぱり、この相手は本当に信用できるんだろうかどうだろうかということも含めて、きちっと管理組合の方で区分所有者の方も見極めていただきながら、最後、その参加が決定されるということになるのであろうというふうに考えております。

○谷林正昭君 非常に、だんだん聞けば聞くほど不安になってくるような話が出てまいります。というのも、先ほど言いましたように、百人いるマンションにまた百人入ってもらえるようなマンションなんというのはもう建ちっこない、建てられないというのが私は常識だというふうに思うんですよ。そういったときに、先ほど言いましたように、百人のうち四十人が出ていく、その四十人分をディベロッパーか民間業者が買い取ってしまう。買い取ってしまった後、マンションを建て替えるように根回しが始まる、そういうようなのが私は現実に出てくるのではないか。いわゆる第二の地上げ事件だとか、地上げ問題だとかあるいは嫌がらせ、そしてそこから追い出しに掛かる、こういう問題が恐らく私は、出てこなかったらまたその建て替えというものも進まないんではないかというふうに私は思います。

 そういうことを考えたときに、一方では、セーフティーネットじゃありませんけれども、そういう相談をしっかり受ける窓口、苦情処理をする機関、そういうものが今の法律には全く出てきておりません。ないですね。だから、そういうことを考えたときは、私は、地上げ問題だとかあるいは追い出し問題、あるいはもっと、もっと端的に言いますと、建ち上がった後の部屋割りの問題、多分、買い取った民間業者はいいところを残して高く売ろうというふうな発想になってまいります。そういったときに部屋割りの問題などでも苦情がたくさん出るはずです。

 そういうように、この法律では苦情処理機関というものが全くないということは一つの大きな落とし穴、問題だというふうに思いますけれども、これは修正になるのかどうか私は自信ありませんけれども、そこら辺りの見解、いや、そうじゃない、ここでしっかりセーフティーネット張ってあるよというものがありましたら聞かせていただきたいと思います。

○国務大臣(扇千景君) 今、るる局長から言っておりますけれども、基本的には私は谷林委員がおっしゃる御心配、なくはないと思います。けれども、私は、区分所有者の管理組合を作って、その組合がいろんな専門家とかあるいは地方公共団体の正式な情報を得ることと、こうしてあるわけですね。ですから、私はその中で、公的な機関による情報提供というものと、またその事業者の資金力及びその信用は、都道府県の知事によってこれが設立組合の許可を得るということで、私は、今おっしゃったように、訳の分からない、訳の分からないと言うと語弊があるかもしれませんけれども、ディベロッパーが入ってどうこうするということではなくて、それは地方公共団体のきちんと正式な情報と、都道府県の知事がきちんとそれを、組合というものを認可するということ、私はそこで完全に保証されていると思っておりますので、なるべく今御論議のあった不安というものをならないように私は考えるべき、またその処置も取れていると思っております。

○谷林正昭君 苦情機関、苦情処理機関。

○政府参考人(三沢真君) ちょっと今のを更に補足させていただきますと、セーフティーネットとしてどうかと。

 法律的なセーフティーネットという意味からいいますと、これは権利変換計画の中で、要するに組合員の議決権、それから持分割合の五分の四以上の賛成ということが必要でございます。それで、議決権の場合に、参加組合員が仮に多数の床を持っていても、これは組合員としては一人の議決権しかございません。したがいまして、部屋割りの問題について、何かディベロッパー、参加組合員の方が恣意的に、自由に非常に変なことをやるということはこの仕組みの中ではちょっと想定されないというふうに考えております。

 なお、苦情処理機関というよりは、先ほど大臣もおっしゃいましたように、やっぱり適切な情報提供とかアドバイスのできる体制の整備に努めていくという考え方を取っているところでございます。

○谷林正昭君 私は、苦情処理機関、相談窓口というのは公的機関で作るべきだ、こういう法律を作る以上は、そういう法律を、法律の中に作るべきだということを指摘をさせていただきますし、考えてもらえないかなというふうに思います。

 時間がありませんので、もう少し議論したいわけですが、時間、もうちょっと聞きたいこともありますので。

 参考人質疑の中でよく出てきたのは、敷地利用権、あるいは不参加する人たちの敷地利用権や所有権を売り渡すということになります。そういったときに時価という言葉が出てまいります。非常にこの時価というのはあいまいであるし、分かりにくいし、思いが全く懸け離れて裁判になる、最終的には裁判でしか解決方法はないと、こういうような今の状況であります。

 したがって、私は区分所有法見直しのこの時期にこの時価の定義をしっかりやるべきだというふうに思いますが、これは法律の審議、中身はちょっと違いますけれども、せっかく法務省から来ていただいておりますので、この時価の定義を私はしっかり今作るべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、売渡し請求の場合には時価で売り渡すべきことを請求するという形になっておりますので、これについて双方の言い分が食い違う場合には最終的には正に裁判所に行かないと解決しないということになっているわけでございます。

 今回、区分所有法見直しの法制審議会の議論の中でも、この売渡しの時価というものについて何か具体的にもう少し決められないのかという議論がなされたことはございます。ただ、なかなか、どういう形で評価するか、これはそれぞれのマンションの置かれている状況、場所的な状況であるとか人的な構成であるとか、そういったものも絡みまして、なかなか客観的に画一的な基準を法律あるいは規則の形で書くのは難しいのではないかということが議論の中では出されまして、不動産等の評価に関しては、不動産鑑定士のような専門家もおりますし、またその鑑定手法というものも絶えず研究されておりますので、そういったものを参考にして裁判所で適切な判断が最終的にはなされ得るということで、そういう専門的な不動産鑑定の手法を参考にして、それぞれの当事者に判断していただくというしかないのではないかというのが現在のところの議論の状況でございます。

○谷林正昭君 今の基本的な考え方は、法務省の基本的な考え方は、更地にした後、どうせ建て替えるんだから、更地にした後、その地面の、土地の値段だけが時価だというふうな認識だというふうに思います。

 私は、そうではなくて、部屋も全部買ったということを考えると、その部屋というのは買った値段が基本になって、それの付加価値が付けば高くなるし、付加価値が下がれば安くなるというのが時価だというふうに私は思います。そうしないと、先ほど私が言ったように、更地にした後の地面代しかあなたはもらえませんよという話がぱあっと広がれば、じゃ今のうちにディベロッパーに売ろうじゃないかとか民間会社に売ろうじゃないかとか、そういう根回しがされる。そういう落とし穴があるというのが一つの、私、見方ではないかというふうに思っておりますのでこういう質問をさせていただきました。

 次に、簡単な質問ですが、設立組合を作るときは五人以上の共同ということになっております、法律で。ところが、マンションの、法律のマンションの定義付けは二人以上の区分所有者があればいいと、これがマンションですよと、こういう法律です。じゃ、二人、三人、四人の人たちが建て替えようとしたときに、共同組合が設立できない、じゃ法律的にこれは当てはまらない、不利益が非常に被るのではないかと私は思いますけれども、この二人から四人までの区分所有者しかいないマンションは建て替えのときはどうすればいいのか、非常に矛盾があるというふうに思いますけれども、聞かせていただきたいと思います。

○政府参考人(三沢真君) 御指摘のとおり、この法案でマンションの定義といたしましては二人以上の区分所有者が存する建物で人の居住用の専有部分があるものとされております。一方、マンション建替組合の設立は五人以上の区分所有者が共同して行うということが必要としております。この趣旨は、要するに建て替え事業が多数の区分所有者の意見調整、合意形成を図りながら行うということから、この円滑化を図る仕組みとして必要な措置を講ずるという趣旨でございます。

 そうしますと、その多数というのを線をどこに引くかということでございますけれども、一定程度の合意形成に困難性が認められる人数、これを例えば類似の立法例、市街地再開発組合等々の例に倣いまして五人以上という定めをしたという趣旨でございます。

 それじゃ、四人以下の場合はどうするかということでございますけれども、これは要するに比較的少数の場合には全員合意によって個人施行の形で実施することが可能であるということから、この法律の中で個人施行という事業の仕組みを用意しておりまして、しかも個人施行であってもその権利変換という手続を使うことができますので、こういう形態によって実施するということになろうかと思います。

○谷林正昭君 一言で聞かせてください。マンション組合を作った場合と、作らないで個人施行の場合と、不利益というものは全くないということですね。

○政府参考人(三沢真君) 基本的には特に不利益というのはないというふうに考えております。

○谷林正昭君 また勉強させていただきます。

 時間がありませんので、非常に私関心を持たせていただいた内容を質問させていただきます。

 先般の参考人質疑の中で、一番心配されるのは、出ていきたくても出ていけないというか、出ていきたくてもここに住みたいという、しかし建て替えは金がない、資金力が乏しい、そういう意味で、何とかそういう人たちの気持ちを大切にするべきではないかという話がたくさん出てまいりました。そこで、参考人のどなたか分かりませんでしたけれども、リバースモーゲージ制度、こういうものもアメリカではある、外国ではあると、そういうふうな話が出ました。私はそれを勉強し、あるいは国土交通省もその研究を今やっておいでになるということも分かりました。

 そういうことからいって、高齢者やあるいはそういう、どうしてもここに住み続けたい、だけれども金がない、そういう人たちのための公的制度、いわゆるリバースモーゲージ制度を公的で導入すべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(三沢真君) マンションの建て替えに際しまして、高齢者の経済的な負担を軽減するというための措置として現在住宅金融公庫融資で死亡時一括償還制度というのが利用できるようになっております。これは、要するに月々の返済は利子だけにして、元本は死亡時に一括して返済するという仕組みでございます。これによりまして月々の返済額が大体通常の場合の四割ぐらいに軽減されるというものでございます。これは、ある意味では正に高齢者の資産を活用しながら経済的な負担を軽減する一つの方式ということで、ある意味ではリバースモーゲージ、そのものかどうかはあれですけれども、リバースモーゲージ的な融資であるというふうに考えております。

 ただ、非常に典型的なリバースモーゲージというのは、実はこれは要するに利子も含めてだんだんだんだん債務残高が膨らんでいきまして、最後に一括償還するというのが一番典型的なリバースモーゲージと言われています。そういうものについては、やはりなかなか、例えば将来の担保割れリスクとか、そういう問題がありまして非常に難しいということが一般に言われております。

 ただ、やはり今後、そういう高齢者の方々の資産を活用してマンション建て替えも含めたいろいろな住宅政策に活用していくということは非常に大事なことでございますので、これにつきましては更にその可能性について幅広く検討していきたいというふうに考えております。

○谷林正昭君 是非これは私は進めるべきだと。公的で進めないと民間はリスクが大き過ぎるというふうに思いますし、金融公庫だってもうどうなるか分からないというような状況もありますから、公的でそういう制度を作って、安心して暮らせる社会の基礎にすべきだというふうに思います。

 時間が来ましたので私の質問終わらせていただきますけれども、今とにかくスクラップ・アンド・ビルドの時代は終わったというふうに思います。住むところに愛着を持って住む、正に生きる心を育てるためにも良いものを長く使う、そして歴史あるまちづくり、大臣がいつもおっしゃっていますようにぬくもりのあるまちづくり、地域コミュニティー、こういうものがこのマンション建替え法を生かしながら、法律の成立があれば私はいいんじゃないかなというふうに思います。

 最後に大臣、所見があればお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(扇千景君) おっしゃるとおりで、建て替えればいいというものではなくて、あるものをいかに長く利用するか、人間の体も同じでございます。

 そういう意味で我々は真剣に長く使える方法というものを考えておりまして、三つだけ言わせていただきます。一つは、まず住宅金融公庫融資において耐久性に優れた住宅に対する優遇措置を実施する。そして二つ目には、住宅品確法に基づいて住宅の性能表示制度、これにつきまして劣化を遅らせる対策とか維持管理のしやすさ等について表示して、そして情報提供を行う。三つ目には、少なくとも時代の変化にも対応できるように、高い耐久性というものを持った建物の構造体と可変性の高い内装等によって構築するスケルトンのインフィル住宅の技術開発及び普及促進に取り組んでいくということで、谷林議員の御説のように、替えるだけではなくて維持管理の重要性というものを尊重していきたいと思っております。

○谷林正昭君 終わります。

○続訓弘君 私は、同僚議員がいろいろ御質問をされましたけれども、なるべく重複を避けながら、以下何点か御質問させていただきます。

 分譲マンションは今や我が国全国の持家戸数の約一割、特に東京都にあっては約三割を占めるに至っており、都市の居住形態として定着している事実は周知のとおりでございます。一方、老朽化したマンションも年々増加し、建て替えを円滑に進めるための法制度を求める声は非常に大きくなっております。また、去る六月六日の参考人質疑の中でも明らかになりましたように、平成七年に起こりました阪神・淡路大震災の復興過程におきましてはマンションの建て替えに当たって様々な障害があることが明らかになりました。

 そうした背景を踏まえてマンションの建て替えを円滑にするための本法案が提出されましたことは誠に時宜を得たものであり、第百五十回国会で成立したマンション管理適正化法とともにマンション施策の両輪となるものと大いに期待するところであります。

 そこで、法務当局に伺います。

 マンションを建て替えるかどうかについて区分所有者の皆さんが判断するに際しては、区分所有法第六十二条に基づいて五分の四以上の多数決による建て替え決議を行う必要があるわけですが、震災復興に伴うマンション建て替えの際にはその建て替え決議の有効性をめぐって争いが発生したケースもあると聞いております。それらの訴訟の件数はどのくらいか、また訴訟となった要因や背景についてどのように分析しておられるのか、御説明願います。

○政府参考人(房村精一君) 阪神・淡路大震災の復興に伴いましてマンションの建て替えに関して種々紛争が生じたということは私どもも聞いております。

 訴訟にまで至った件数ということでございますが、いわゆる正確な統計というものはございませんけれども、私どもが把握している限りでは少なくとも三件が判決にまで至って、その結果が公表されております。

 その三件について見ますと、紛争に至った要因にはいろいろなものがあるとは思いますが、やはり一番大きな争点となりましたのは、建て替え決議の要件である「建物がその効用を維持し、又は回復するのに過分の費用を要する」というこの規定に該当するかどうかという点をめぐって、建て替えに賛成する人と反対する人との間で意見が大きく食い違ったということが大きな争いの中身ではないかという具合に考えております。

○続訓弘君 そこで、今の点に関連して質問いたしますが、現在法務省において区分所有法の改正案が検討されており、先般、中間試案のパブリックコメントも募集したと承知しております。その検討中の区分所有法改正案では、それら訴訟となった要因についてはどのように解決を図られることになるのか、お答え願います。

○政府参考人(房村精一君) ただいま申し上げましたように、紛争になった要因の一つには、この建て替え決議の要件が非常に抽象的に定められているということから争いを招いているという指摘がありましたので、この点につきまして、より客観的なものにできないかということを考えました。

 公表いたしました試案の中では、まず第一に、老朽化の場合としては建築後三十年又は四十年というような客観的に年数を定めまして、その年数が経過するまでは建て替え決議ができない、逆にその年数を経過すれば五分の四の建て替え決議ができると、こういうような客観的な要件を定めるということはどうかと。また、年数を経過しなくてもマンションが一部損傷する場合等がございますので、そのような場合には、その損傷した部分の復旧に要する費用と、それから例えばその建物の現在の価格とを比較して、現在の価格以上に復旧費用が掛かる場合には建て替え決議ができると。このような客観的な要件を定めるということでどうかということを提案して、その意見を求めたところでございます。

 現在、その寄せられました意見を整理して今後審議をすることになりますので、今日の御指摘も含めまして慎重に検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

○続訓弘君 是非とも、争いの種とならないよう、建て替え決議の要件を分かりやすく明確にされるよう御要望申し上げます。

 続きまして、建て替えが問題となっている古いマンションは約半数が団地型であるとのことですが、団地は複数の住棟から成っており、現行の区分所有法の運用では、一棟ごとに建て替え決議を行うだけでなく、団地全体での合意をも取らなくてはならないというのが実態であります。しかしながら、団地全体での合意について明確なルールが確立されていないため混乱が生じていると言われております。

 そこで、伺います。団地型のマンションについても、先ほどの区分所有法改正案ではどのような対応が具体的に考えられているのか、お答え願います。

○政府参考人(房村精一君) 団地型のマンションでその敷地につきまして区分所有者全員の共有になっている場合、現行法では特段の規定が置かれておりませんので、その団地の中の一つの建物について建て替えを行うということになりますと、敷地について、その共有物の変更に当たるということで、民法でいきますとその敷地共有者全員の同意が必要ということになってしまいます。したがいまして、現在の法律のままですと、そういう場合には非常に難しい問題が生ずると。

 そういう指摘を受けまして、今回の区分所有法の改正に当たりましては、団地の敷地については基本的にそのマンションの敷地として利用されるということを皆さん了解しているということを考えますと、いわゆる共有物の変更であっても多数決でこれを認める必要があるだろうと。区分所有建物について共有部分の変更につきましては四分の三の多数でできるということにしておりますので、この団地型の敷地につきましても、建て替えはその共有物の重要な変更に当たるということで、四分の三の多数決で決議ができるということを案として提示しているところでございます。

○続訓弘君 法務省当局に御要望申し上げます。

 今回の区分所有法の改正に当たりましては、是非とも国土交通省と十分協議の上、法案の改正をお願いしたいと思います。

 どうぞ、結構です、房村局長。ありがとうございました。

 ニュータウンなどにおける団地型のマンションでは一団地の住宅施設という都市計画が掛かっていることが多く、例えば、用途地域の容積率が二〇〇%であるにもかかわらず、この都市計画のために五〇%と低い容積率に抑えられているものがあります。本来なら床面積を四倍に増やすことができるにもかかわらず、現状の床面積で我慢せよというのでは、到底マンション建て替えを進めるための合意の取付けは不可能だと思われます。

 その対応策についてどのように考えているか、伺いたいと思います。

○政府参考人(三沢真君) ニュータウンなどの団地型マンションにおきましては、良好な居住環境が確保された住宅団地の形成を図るために一団地の住宅施設の都市計画が決定されている場合がございます。特に建設時期の古い団地マンションの中には、この一団地の住宅施設の都市計画によりまして周辺よりも容積率が著しく低く定められているというケースがあるのは先生御指摘のとおりでございます。こういうケースですと、そのままにいたしますと、近年の居住ニーズに見合った十分な広さの住宅を確保するという計画の立案ができないということになりますので、合意形成にも支障を来すということも懸念されるわけでございます。

 このため、都市計画の運用指針におきまして、現状の規制内容が社会経済状況の変化により必ずしも実態に合わなくなった場合におきましては、当該地区の土地利用計画上の位置付け、それから周辺の市街地の状況等を勘案いたしまして、住民等利害関係者の意向にも配慮しながら地区計画を活用いただく、こういう地区計画の活用等により、引き続き良好な居住環境を確保した上で一団地の住宅施設に関する都市計画を廃止することが望ましいとしております。今後とも、こういう旨を公共団体に周知徹底し、周知、助言しまして、適切な運用が図られるように努めていきたいというふうに考えております。

 なお、東京都におきましては、こういう趣旨を踏まえまして、地区計画制度の活用などによって良好な環境の確保を図りながら、この一団地の住宅施設の都市計画を解除して、周辺や地区内の基盤整備とバランスの取れた容積率に引き上げるということを積極的に検討しているというふうに伺っておりまして、東京都とも十分連携しながら進めていきたいというふうに考えております。

○続訓弘君 今、三沢局長からの御答弁の中にもございましたけれども、いろんな問題がございます。そういう行政との折衝事を含めた種々の手続が多いことから、マンションの建て替えは実際のところマンション区分所有者の皆さんだけでは難しいと考えております。

 今お話がございましたように、東京都におきましては、今年の二月、マンションの建て替えに関する専門家である建て替えアドバイザーを派遣する制度や、既存不適格マンションに関する新たな総合設計制度等の支援制度を設けると表明しておりますが、国土交通省としてそれらをどのように評価しているのか伺いたい。

 また、その他の地方公共団体においても東京都に倣って同様の支援制度を設けるよう国から積極的に働き掛けるべきだと思いますけれども、御所見を伺います。

○政府参考人(三沢真君) 東京都におかれましては、この法案の提出を踏まえて今年の二月に「都の重点的な取組み」ということで何点かの取組を発表されております。

 特に三点ございまして、一つは建て替えアドバイザーの派遣制度、それから二つ目は老朽マンションの建て替え誘導型の総合設計制度の活用、三点目は仮住居確保のための仕組みといった、この三点についての御発表でございます。

 それで、まず一点目の建て替えアドバイザーの派遣制度でございますけれども、これはもう何回か御審議ございましたけれども、マンション建て替えに当たりましてはやはりいろいろな、非常に広範な専門知識、法律、建築、不動産、金融、税制等々いろいろな専門知識が必要とされるわけでございまして、こういうやっぱり専門家とも連携した情報提供体制というのが非常に大事でございます。こういう趣旨から、国土交通大臣が定める基本方針の中にもこの趣旨を盛り込むわけでございますが、その際、特にやっぱり大事なのは、地方公共団体においてきちっとした取組をしていただくということが非常に重要なわけでございます。

 今回の東京都の取組は、建て替えアドバイザー派遣制度ということで、管理組合が例えば権利変換の仕組みであるとか合意形成の進め方などについて登録された専門家のアドバイスを受けることができるというようなことをお考えだというふうに聞いております。これはやはり合意形成の促進のために非常に有効な支援策になるんじゃないかというふうに私ども期待をしております。

 それから、二点目の老朽マンション建て替え誘導型の総合設計制度でございますけれども、これもいわゆる既存不適格マンションの問題がございまして、これについては空地等の整備による市街地環境の整備改善に応じて容積率緩和を行っていく総合設計制度の活用というのが非常に有効な方策であるというふうに考えておりまして、東京都におかれましては、今回この総合設計制度の運用におきまして老朽マンション建て替えの場合には容積率の緩和等を受けやすくするということを検討しているというふうに聞いております。これにつきましても是非積極的な活用が図られるということを期待しているものでございます。

 それから三点目、高齢者等の仮住居の確保の問題でございます。東京都におかれましては、例えば都営住宅の優先入居枠として建て替え期間中の仮住居枠を新設したり、あるいは東京都が設置した都民住宅あるいは住宅供給公社の賃貸住宅の活用を検討しているというふうに聞いております。これも円滑な建て替えの実施に大変大きな寄与をするというふうに考えております。

 したがいまして、東京都において検討されておりますこういう重点的な取組というのは極めて有効であり、かつ時宜を得たものというふうに私ども考えておりまして、こういう取組については是非他の地方公共団体にもいろいろ積極的に御紹介あるいは情報提供を行うということで、適切な働き掛けをすることによりまして、こういった方式がほかの公共団体においても活用されるようなそういう取組に期待していきたいというふうに考えております。

○続訓弘君 都の場合には、言わば住宅先進県と自負しておりますものですから、いろんな施策を積極的に進めるわけでございます。是非、国土交通省におかれましても、せっかく都がそうやって身近な住宅政策を懸命に進めておりますので、大いに言わば援助していただきたいということを御要望申し上げておきます。

 マンションの建て替えがうまく進むかどうかは、ひとえに建て替え決議に至るまでの合意形成段階においていかに入念に実現性のある計画の検討がなされるかに掛かっていると思われます。また、その際には、マンション管理士や建築士等の専門家や行政の相談体制がうまく機能していることが重要と考えるところであります。

 そこで、本法案においては、合意形成の促進のためにどのような取組が考えられているのか、また、それを支援する制度や情報提供体制をどのように整えておられるのか、お答え願います。

○政府参考人(三沢真君) 建て替えに向けた合意形成に当たりましては、やはり建物の現状とか維持修繕を続けた場合との比較などに関する的確な情報が提供されると、これに基づいて区分所有者の間で十分な議論が行われた上で適切な判断がされていくということが非常に重要でございます。

 このため、大臣が定める基本方針の中でマンションの建て替えに向けた区分所有者等の合意形成の促進に関する事項ということで何点か盛り込むということでございますが、一つは、マンションを建て替えるか修繕するかを判断するための技術的指針の作成とかあるいは合意形成のマニュアルの作成というものを盛り込むということと、それからもう一つ、やはり具体的に各公共団体等の公的機関においてマンション管理士とか建築士の専門家等とも連携しながら、そういう情報を提供したり、相談に応じられるような体制の整備、先ほどの東京都のアドバイザー制度もございますけれども、そういう整備を図っていくということが非常に大事でございまして、これを基本方針の中に盛り込み、具体的に各公共団体にそういうことについてきちっとお願いをしていくということを考えているわけでございます。

 それから、支援する仕組みといたしまして、一つは、建て替え検討段階でいろんなやっぱり調査したりあるいは設計をいろいろやってみるというようなお金が要ることがあるわけでございます。そういう負担を軽減するために、今年度予算の中で優良建築物等整備事業というのがございますけれども、その中で調査設計費にも助成することができることになっておりますけれども、それを今回、建て替え決議前にいろいろな調査検討をする場合にもそういう費用について補助できるというふうに拡充をしているところでございまして、こういうことについて国と公共団体等が連携をして区分所有者等を応援していくということに努力していきたいというふうに考えております。

○続訓弘君 国土交通省のデータによりますと、建築後三十年を超えたマンションでは六十歳以上の世帯の割合が三六%となっております。古いマンションには高齢者が特に多く居住しておられます。

 そこで、伺います。高齢者の方々は先行きが不安のゆえに建て替えに反対する側に回り、建て替えが進まない例が多いと聞いておりますが、どのような対策を講ずるお考えか、この点について伺わせていただきます。

○国務大臣(扇千景君) 大変大事な御指摘でございますし、今仰せのとおり、少なくとも築三十年後のもので約三割を超える人たちがお年寄りになっている、高齢者が占めているというのは事実でございます。そのため、第一に、少ない負担で建て替えに参加することができるように様々な支援を行っております。

 その中の一つとして、優良建築物の整備事業による調査設計計画費あるいは建物の除去費、共同施設の整備費等に対する補助、これが一つ。二つ目には、住宅金融公庫の都市住宅再生融資による優遇の融資、これが二つ目でございます。三つ目には、譲渡所得課税それから登録免許税等、これらの特例措置などを講ずること、これが三つ目でございます。

 このように、高齢者が住宅金融公庫の融資を利用する場合には月々の返済を、先ほども局長から申し上げましたけれども、利子のみとして、元本というのは死亡時に資産を売却して一括して返却すると、こういう制度を用意しており、高齢者の返済負担の軽減を図るようにしているというのが先ほどお答えしたとおりでございます。

 また、やむを得ず建て替えに参加できない高齢者に対しても、国土交通大臣が定める基本方針というものを定めますので、そこで施行者、国及び地方公共団体が賃借人及び転出する区分所有者の居住の安定の確保に努めることを規定としているところでございます。

 また、具体的な支援措置としては三つございますけれども、一つ目には、地方公共団体による住宅のあっせん、そして公営住宅等の公共賃貸住宅への優先入居、そして二つ目には、従前居住者用賃貸住宅に係る家賃対策の補助が二つ目、そして最後には、賃貸人が賃借人に支払う移転料の支払いに当たっての補助、これらのことで老人の皆さん方に不安を与えないような措置を講じたいと思っております。

○続訓弘君 ありがとうございました。是非とも高齢者や低所得者に不安を与えないような施策をよろしくお願い申し上げます。

 そこで、先ほど谷林委員から時価の問題について法務当局に伺われましたけれども、私は今度は国土交通省当局に伺わせていただきます。

 本法案ではマンション建替組合が建て替えに反対する区分所有者に対して売渡し請求権を行使することにより強制的に区分所有権等を買い取る制度が盛り込まれております。これは建て替えを進めるための重要なツールであると評価いたします。しかし、マンション建替組合が買い取る価格が高ければ高いほどマンション建て替え事業全体の収支が悪化する、すなわち建て替えに参加する区分所有者の負担額が増加してしまうといった仕組みになっているのではないかと思います。一方、買い取られて出ていく方々にとってはできる限り高く買い取ってもらうことを望むわけでございます。したがって、双方が合意できる合理的な価格で買い取る必要があるわけですが、本法案の第十五条を見ますと、その買取りには時価によることとなされております。その時価とは、どのように算定されるのかといった点について伺います。

○政府参考人(三沢真君) 時価に関するお尋ねでございます。

 この法案における売渡し請求は、先ほど法務省さんの方からも御答弁ありましたように、元々区分所有法に基づく売渡し請求権を、これを建て替え円滑化の観点から建替組合も行使できるというふうにしたものでございます。したがいまして、ここで言う時価というのは区分所有法に基づく売渡し請求権における時価と同一なわけでございます。

 これは、なかなか時価とは何かというのは難しいわけでございますけれども、一般的には売渡し請求権を行使した時点における区分所有権及び敷地利用権の客観的な取引価格を示すというふうに言われているわけでございます。ただ、その具体的な取引価格、客観的な取引価格が一体幾らなのかということについて、これはなかなか、例えば当事者間で話がまとまらないときにどうするかというような非常に難しい問題がございます。

 これは、先ほど法務省さんの方からもお答えがございましたけれども、法制審議会の方でも時価の算定基準を明確化すべきであるという御意見があったけれども、なかなか時価の算定基準というのは、事案に応じた評価方法を採用しなければならないので、これらを網羅する算定基準を法律で定めるというのは非常に難しい。あるいは、不動産鑑定の手法というのは一応確立されているので、今後その事例の集積によって基準の明確化が図られるというふうに考えているということから、区分所有法の議論の中では、中間試案では取り上げられないというふうになったというふうに聞いております。

 したがいまして、これはなかなか、元々民事にかかわる話でございまして、私ども行政の方が時価とはこういうものだということをきちっと明快に申し上げるというのは非常に難しい点がございますけれども、ただ、やはり今後そういう事例の集積というのを踏まえて、私どももやはりそういう時価算定の適正化に資するような、そういう措置ということについてはいろいろ検討していく必要があると思いますので、そういう事例の集積等について今後私どもも努力をしていきたいというふうに考えております。

○続訓弘君 私、冒頭にも申し上げましたように、本法案は、さきに第百五十回国会で成立しましたマンション適正化法と相まって、言わばマンション施策の両輪でございます。是非この法案を通して都市再生を図られるよう強く要望を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

○大沢辰美君 日本共産党の大沢辰美でございます。

 初めに、法案第五章のマンションの建て替えの勧告について質問をいたします。

 建て替え勧告によるいわゆる建て替えと、その他の建て替えを比較すると、当然ながらその適用条件が異なります。勧告の方は法律で決め、その他の建て替えの方は予算措置、つまり努力義務となっています。勧告によらない場合の建て替えについては、区分所有に従って建て替えを決議して、法人格を持った建替組合の設立ができるようにするなど、対策を本法案で取っているわけです。参加組合員制度の運用の問題など、中身にはいろいろありますけれども、これまでの延長線上の改善措置だと思います。しかし、新たに今回導入される建て替え勧告というのは、居住者にとっては相当なショックであり、私は、パニックとまではいかないけれども、不安に駆られることが予想されます。

 そこで、この勧告の内容について四点ほどお聞きしたいと思います。

 第一点は、勧告を行う際の前提となっている危険又は有害とはどのようなものかという点です。危険とは、まず耐震性を取ると、どの程度の地震を想定して判断をするのか。また、耐震性以外に危険と判断するような状況はどんな場合があるのか。

 次に、有害について、これまでの答弁では、有害とは配管の劣化などによる汚水漏れや雨漏りなどが指していると言われています。しかし、このような老朽化は修繕で対応するのではないでしょうか。有害状況の発生のみで勧告が出される場合はどのようなときでしょうか。この点についてまずお聞きします。

○政府参考人(三沢真君) この法案に基づく建て替え勧告の対象となるマンションは、この法案の百二条におきまして、「構造又は設備が著しく不良であるため居住の用に供することが著しく不適当なものとして国土交通省令で定める基準に該当する住戸が相当数あり、保安上危険又は衛生上有害な状況にあるマンションで国土交通省令で定める基準に該当するもの」とされております。

   〔委員長退席、理事藤井俊男君着席〕

 したがいまして、具体の基準は国土交通省令において定めるということになっておりますけれども、この省令におきましては、今後、現在の不良住宅密集地区を買収方式で整理する、いわゆる住宅地区改良事業における不良度の判定基準、こういったものを参考にしながら定めていくという考えでございます。

 具体的にどういうものかというお尋ねでございますけれども、耐震性に関する評価項目といたしましては、構造耐力上、耐力壁の断面積が不足しているとか、その配置が不適当であるということの状況とか、あるいは柱や壁のひび割れ、変形の状況など、こういったものを一つの基準にする。それから、耐震性以外の危険性に関する評価項目としては防火上、避難上の観点というのがございまして、そういう観点から外壁とか屋根の構造、あるいは開口部の防火設備、防火区画、廊下あるいは階段の避難施設の不備の状況等が想定されるところでございます。それから、衛生上有害な状況に関しましては、今、先生おっしゃいましたとおり、給排水設備の不備とか雨漏りや漏水の状況などを中心に、これはマンションという建築形式に即した評価項目として想定をするということを考えております。

 以上の評価項目について、それぞれこの項目については何点という評点を設定いたしまして、合計点数が一定の数値以上になる場合に勧告対象のマンションとするという考え方を取るということを考えております。これは先ほどの不良住宅密集市街地の住宅地区改良事業の考え方と基本的な考え方は同じでございます。

 そういたしますと、勧告マンションに該当するかどうかの判断は総合点で行っていくということになるわけでございます。そうすると、一つのある項目だけでこの勧告対象になるかどうかということについては、これはそういう場合も考えられると思いますけれども、これはちょっと今後の検討で、いずれにしても更に詳細に詰めた上でどういう評点の与え方をするか、それを詰めた上で決めていくという考え方でございます。

○大沢辰美君 不良住宅の改良事業が一つの基準になるということですけれども、それでは勧告を行う側、市町村長がマンションが危険又は有害な状況になっているということをどのように把握するのかということになるんですが、その勧告すべき義務や責任を市町村長はどこまで負うことになるんでしょうか。

○政府参考人(三沢真君) まず、どうやって把握していくのかという問題でございます。

 建て替えの勧告というのは、これは地域の住宅事情に最も精通している市町村長が行うということにしておりまして、そういう意味では市町村におかれましてはやっぱり日ごろからマンションの所在、建築年数あるいは戸数といった実態把握に努めまして、データを整理、蓄積していくということが重要であるというふうに考えております。

 その上で、個別具体のマンションについて勧告すべきかどうかを判断するために詳細な状況を把握する必要があるときは、この法律に基づきまして勧告のため必要な限度でその報告の徴収とか立入検査が認められているところでございまして、こういった法律上の権限も行使しながら、状況を的確に把握していくというふうに考えております。

 それから、勧告は、これは法律上勧告することができるという規定になっておりますので、そこは正にこういう実態を把握した上で、市町村長が適切に判断した上で勧告するかどうかを判断していくということになるということでございます。

○大沢辰美君 確かに勧告とか、強制力がない私は忠告のようなものであると思いますけれども、受けた方は非常に大変な状況になるのではないかと。

 この勧告制度が導入されてこの法律が施行されると、今言われたように、市町村長は、その行政区内のマンションの状況を正確に把握をして、きちっとデータを持ってチェックをしないといけないことになるわけですが、都道府県や市町村は、どのようなこのことに対して仕事が求められて、その人たちに期待が求められるのかという点ではどうなるんでしょうね。

○政府参考人(三沢真君) こういう危険又は有害なマンションの建て替え勧告を適切に実施するということのために、市町村においては、建て替え勧告に先立って、やはり日ごろから幾つかの準備をやっていくということが必要だというふうに考えております。

 一つは、先ほど申し上げましたように、やっぱり実態調査をきちっと実施していただいて、そのマンションについて、所在とか建築年、戸数、そういったものについて把握して、それをデータをきちんと蓄積していくということ。それからもう一点は、具体に、そういう勧告に至る前にいろいろな適切なアドバイスとか相談に乗れる体制の整備というのはやっぱり必要でございまして、そういう相談窓口の設置とかあるいはいろいろなマンション管理士とか建築士等の専門家と連携して情報提供していくという体制の整備が必要かと思います。

 それから、やはりマンションの建て替え事業の認可事務を行う都道府県とか、それからやっぱり公共賃貸住宅管理者と日ごろからいろんな情報交換をしておくと。このマンションの建て替えの勧告をいたしますと、当然やはり、例えばやむを得ず転出されていく方についてどういう手当てをするかということも問題になってきますので、そういう代替住宅確保の可能性についてのいろいろな調査、把握といったものが必要になろうかと思います。さらに、いろいろな国においても助成措置を講ずることとしておりますけれども、それをきちっと受け止めて、市町村自らも併せていろいろな助成できるような、そういう助成の実施体制の整備というのも当然必要だと思っております。

 それから、都道府県の方も、今度、市町村でそれぞれ勧告するわけでございますけれども、やっぱり勧告について地域ごとのある程度バランスの取れた運用というのは当然必要でございますので、そういう市町村において、例えば、今申し上げました、いろいろなその準備状況がどのように進んでいるかというような状況の把握とか、それから市町村のいろいろな求めに応じて都道府県としてのまたいろんなアドバイスをできる体制。それから、もちろん管理組合とか区分所有者から直接都道府県に御相談をいただくということもありますので、そういう相談体制の整備ということ。それから、あと当然、マンション建て替えについては、建替組合を設立するということになりますと、その後のいろんな都道府県知事の認可等が必要になりますので、そういう認可事務に対する体制の整備というのも当然必要になってくるというふうに考えております。

○大沢辰美君 大変市町村の責任は大きいと思うんですけれども、最後に、勧告の問題を最後にして、この制度は本当に厳密に運用されなければならないと思うんですね。分譲マンションの建て替えにはその目的や建て替えの理由から見て三つの区分があると思うんですけれども、一つは、今述べました危険性や有害な状況が見込まれる住宅として不適当な場合が一つ。二つ目は、経済的理由による建て替えで、技術的にはまだ使用できるけれども、修繕費用がかさみ、建て替えた方が安く付くという場合が二つ。三番目が社会的老朽化と呼ばれるものですね。危険や有害は当分生じないけれども、生活スタイルの変化や室内の使い勝手が悪いことで今日の住宅の水準と大きな格差がある場合に、こういう三点があると思うんです。

 勧告は、この一番目の危険や有害の場合に厳密に限定して適用されるべきだと私は考えます。二番目と三番目の理由によっては、私は居住者がよく話し合って合意の上で進めることが大前提であると。だから、この本法案が居住者の一部から申出による勧告も想定しているわけですから、特に私、この二点目の経済的理由による建て替えを危険や有害による建て替えに拡大解釈していくことは、私は住民間の対立や意見の違いをエスカレートさせていくだけで混乱を広げることになると思うんですね。ですから、行政としては、二番目と三番目の建て替えについてはそれぞれのように対応することになるのでしょうか。この一番目は勧告ということはあり得るけれども、二番目、三番目について私は厳格にやっぱり住民の合意というのが大前提であると思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(三沢真君) 勧告は、先ほど申し上げましたように、衛生上、保安上危険な場合につきまして、正に住宅政策の観点から行政が勧告という形で関与を行うものでございます。それ以外のマンションの建て替えは、これはもう当然のことながら区分所有者の自らの発意に基づいて行われるものであるというふうに考えております。

○大沢辰美君 そのことをはっきりと確認をさせていただきました。

 次の質問ですが、これは、私は阪神・淡路大震災の分譲マンションの建て替えの状況から見まして何が今教訓として求められるかという点についてお聞きしたいと思います。

 一つは、やっぱり複雑な権利関係の処理が大変だったと。なかなか円滑に進まなかった。特別法まで作って進めたわけですけれども、この出された法案はこの問題への一つの対応だと、これまでの審議の中で住宅局長の答弁にも明らかにされているところだと思います。

 もう一つの方の重大な教訓なんですが、大変な勢いで建て替えが進んだわけですね。次のような理由がいろいろとありますけれども、やはり大きな問題が含んでいたと思うんです。一つは、被災を受けたマンションの公費の解体制度があったということ。だから早く解体しないといけなかったという点。そして、その結果、急いで取り壊したという実態ですね。また、建て替えの場合だけコンサルタント料を無料にしたというのも影響が大きかったと思います。また、共用部分に補助が付いたのも大きな影響があったと思います。

 だけれども、一方、改修決議をして、また建て替え決議でこのことが裁判に至って、犠牲者になられた被災者の人たち同士が争わなければいけないという事態も今日なお続いています。このことは私は行政の震災対策の不十分さがもたらした大きな教訓の一つだと思います。その中には、建て替えを誘導するディベロッパーですね、介入もありました。修繕の方がよい場合でも建て替えられていったという現実もありました。この背景には、当時は住民は大震災の余りに、悲惨さ、その不安に非常にパニック状態だったということもあると思います。

 阪神・淡路大震災のマンション建て替えの状況を考えると、もちろん震災時と今審議しているこの平時とは違いがありますけれども、本法案の立法化によって建て替えが促進され、ディベロッパーやゼネコンなどに居住者の不安感を利用した営業活動に利用される私はおそれを危惧します。参加組合員制度をめぐる、今も質問がありましたが、論議でもこの点が重要な争点になりました。

 ディベロッパーやゼネコンに対する厳格な対応、そして居住者や管理組合に対する正確な情報提供など本当に必要だと思いますが、その対応はどのように考えていますか。

○政府参考人(三沢真君) この点は、先ほどから大臣からも御答弁がありましたように、これは建て替え決議がなされた場合に、この法案について民間事業者が参加組合員として参加する場合につきまして、これは区分所有者の意向を十分反映するという観点から、一つは、まず組合員の四分の三以上の多数の同意に基づき定款で定めなきゃいけないということとした上で、その上で、その事業者の資力、信用を都道府県知事による設立認可できちっとチェックしていくということにしております。かつ、そういう設立認可事務を行う都道府県等において適切な情報提供、これは専門家等とも連携しながら、そういう情報提供とか相談体制ということの整備にも努めていくということにしておりますので、こういうことを通じまして参加組合員制度の適切な運用が図られるというふうに考えております。

   〔理事藤井俊男君退席、委員長着席〕

○大沢辰美君 チェックをしっかりしていただきたいということを更に念を押しておきたいと思います。

 また、阪神・淡路大震災では、一九八一年の建築基準法の法改正で大地震に対する耐震基準が改正されました、一九八〇年ですね、改正されました。耐震の基準の改正前と改正後の建物ではやっぱり被害状況が明らかに違っていたわけですよね。今、法務省が検討している問題での建築後三十年以上経過したマンションということなんですが、これが今二〇〇〇年では十二万戸、そして十年後の二〇一〇年には九十三万戸ということに明らかにずっと答弁されていますが、この中で一九八一年から三十年といったら二〇一〇年になりますから、本案が主として、私は、建て替えの対象になると想定しているのはこの耐震基準の八一年改正以前に建築された、販売されたマンションですね、こういうことになるんでしょうか。おおむね九十三万戸ということで理解していいんでしょうか。

○政府参考人(三沢真君) 十年後に建築後三十年超のマンションが九十三万戸になるという御説明をしておりますけれども、この趣旨は、大体建築後三十年を経過したマンションストック、これが、今までの建て替え実績で見ますと建築後三十年程度で建て替えられたものが現実にやはり多いということと、それから管理組合に対するアンケートにおいても三十年を経過したマンションで建て替えに関心を持たれるところがやっぱり三分の二に上っているということから、例示的に三十年ということを申し上げたわけでございます。

 したがいまして、耐震基準とこの三十年ということが連動しているという趣旨から三十年を申し上げているということではございません。

○大沢辰美君 しかし、実際に阪神・淡路の中で、必ずしも八一年以前のものが被害があって、以後は被害が少なかった、一概には言えなかったということは事実なんです。だけれども、やはりそういう基準に達していない建物が多いということは事実ですし、今日までそういう建物の中で六割はやっぱり耐震基準、不適格とまではいかないけれども、基準に達していないという実態も調査の中で明らかになっています。

 そこで、私は、耐震の問題について、分譲マンションの建て替えに対する国や自治体の支援策については今までずっと報告がありましたけれども、大震災の被災から生活を立て直す上で住宅再建が持つ意義は本当に大きいものがありました。だから、被災者の皆さんは一貫して公的支援による被災者の住宅再建という実現を求めて続けてきました。しかし、今、今日、二重ローンで建て替えた人たちは苦しんでいる方もあります。

 もちろん、災害による建て替えと今論議しています一般の建て替えとは公的支援の内容に違いがあることは当然ですけれども、私は今、八一年以前の問題と以後の問題ありますけれども、この建物に対して、耐震の補強工事を推進するために私は公的支援がまず必要ではないかと思うんです。自治体などでは始まっているところもあります。国としても一定あると思うんですが、この分譲マンションの耐震補強工事を促進するためにどのような対策を講じているでしょうか、まずお聞きします。

○政府参考人(三沢真君) 古いマンションの耐震性を向上させるために、まずその耐震診断をきちっと行った上で、必要な場合に更に耐震改修を実施していくということは大変重要な問題でございます。

 私どもも、阪神・淡路大震災以後、こういう耐震診断それから耐震改修に対する補助制度というのを設けまして、この促進を図ってきたところでございます。この結果といたしまして、耐震診断に関しては既に多くの住宅で活用いただいておりますけれども、耐震改修に関しましては正直申し上げましてまだ活用の実績は十分でないというのが現状でございます。

 やはり、これは一つはこういう補助制度があるということ、それからやっぱり自らの住宅について自分で安全意識を持って、是非、どうなっているんだろうということを確かめて、必要があれば改修していただくという、そういう何といいますか意識啓発、こういうものは非常に大事なものだというふうに考えております。

 したがいまして、公共団体にお願いいたしまして、こういう補助制度を更に積極的に活用していただくということを周知徹底を図りまして、こういうマンションの耐震診断、さらに、耐震改修の促進に従来からも努めてまいりましたけれども、今後ともいろんな方法でその周知徹底を図っていきたいというふうに考えております。

○大沢辰美君 耐震の改修事業というのが十分でないという表現をされていましたが、これは数でいったら幾らですか。

○政府参考人(三沢真君) この耐震改修で、いわゆる共同住宅、マンション形式のもので耐震改修を行った実績は一件でございます。

○大沢辰美君 本当にこれは私は大変なことだと思うんですね。

 この一件の例を私はちょっと取り寄せたんですけれども、静岡市なんですね。この静岡市の実態を見ましたら、五階建てのピロティー形式で、築二十九年たっていると言われています。外見の傷みはないけれども、構造はやっぱりごまかせないということで耐震検査をしたそうです。そうしたら、すべて要補強をしないといけないという結果が出たと。その中で、お金の問題もあったんだと思いますが、一棟のみ改修したと言われています。それも震度六程度の耐震ですね。この静岡市といったらやっぱり東海地震の強化地域でございますから、これでいいんだろうかという思いをしたんですが、その費用を見せていただきました。

 診断に六十万円掛かった、改修計画に二百二十万円掛かった、改修工事に七百十四万円掛かって、九百九十四万円。助成はどれだけあったかといえば、診断に六十万、そして改修計画に七十万、そして改修工事に九十四万、百九十四万円掛かっているわけです、補助を受け取っている。だから、約五分の一あったわけですね。しかし、今言われたように、ピロティー形式でこういう危険なたくさんのマンションが、共同住宅があるにもかかわらず、一件しかこの間やられていないという実態がここにあると。

 こういう制度があっても、今言われたように、知らない、自治体は予算が付けていない、手続が難しい、いろんなことをこの意見に出されておりましたが、本当に利用しやすい体制の整備、そして補助の整備の在り方ですか、私は改修計画に二百二十万円掛かって、そして全体の助成は百九十四万円と。何かこれでは改修するのに思い切りが付かないなという感じもいたしました。

 そういう中身の改善も含めて、私はこの事業が本当に進んで、そして安心してまた十年この建物の寿命が延びたというような状況を作ることこそが今私は求められているのではないかと思いますが、非常に制度が作られてもこういう実態ではやはり駄目だと思いますので、その点についての強化対策ですか、整備対策ですか、その点についてもう一度お伺いいたします。

○政府参考人(三沢真君) 先ほど申しましたように、私ども補助制度を設けて促進を図っておりますけれども、実態としてはやはりなかなか使われていないというところがございます。

 それで、いろいろな問題点があるわけでございますけれども、一つは、やはりそういう助成もさることながら、自分自身の住宅であり、自分自身の財産であるものをしっかり自分の責任で管理するということについて、どうもやはり必ずしもこういう意識が十分でないというところがあるんではないかと思います。

 といいますのは、補助制度がありながら十分活用されていないということもございますけれども、それ以前の、何といいますか、住民意識の啓発とかあるいはもう少しPRといったものについて相当やっぱり力を注いでいかなければいけないという感がございます。

 この点、かなり先進的な取組をしている例えば静岡県等においては、例えば学校の先生が、あなたの、自分の家の耐震診断をやってみなさいと言って、子供に一定の調査票を渡して、それで家に帰って、お父さん、これどうなっているのと、こう言って書き込ませたり、そういう非常に地道な啓発活動を通じて、かなり本当にやっぱり耐震診断、耐震改修を進めなきゃいけないというようなことの意識啓発を図っているような先進的な取組をしているところがございます。

 私どもも、そういう先進的な取組を更に公共団体とも連携しながら、ここの公共団体はこういう取組をしているよということをお互いにまた十分な情報の交換をしながら進めていきたいというふうに考えております。

 助成の在り方そのものについてはなかなか、これはやはり元々が自分の家であり自分の財産であるということから、どこまで国の公的な助成を手厚くするかということは非常にこれはやっぱり難しい問題がございます。現在でも、そういう意味ではなかなか、国が助成制度を用意しながらも、公共団体はもうそこまでなかなか付き合い切れないということで、公共団体が受け入れる補助制度を作っていないというところもかなりございますので、まず、そういう現在ある補助制度をきちっとまず受け止めて、公共団体も一緒になってやっていくという体制も重要であるというふうに考えておりますので、先ほどのいろいろな意識啓発と併せまして、公共団体に対するいろいろな働き掛け等も今後更に行っていきたいというふうに考えております。

○大沢辰美君 横浜市、そして静岡市、非常に自治体では先進地域があるということも私も承知しておりますが、やはり国としても、こういう制度は作ったけれども使われているのがこういう一点だけですよと、これじゃ役に立たないじゃないですか。私は、ピロティー形式が非常にたくさんある中で、本当に危険な、震度七だったら大変なんですよね。そういうことを指摘をして、やはりこの制度が利用しやすく、そしてそれが効果ある方法でもう一度やはりこれからの対策を考えていただきたいと思います。

 最後に、時間で、私はペイオフの実施に当たってのマンション修繕積立金についての質問をさせていただきたいと思います。これは今国会要請されています、ペイオフの実施に当たり、マンションの修繕積立金は一戸当たりこれは一千万じゃなくて百万円まで保証するための請願の要旨なんですが、その趣旨をちょっと述べさせていただきます。

 マンションの適正な維持管理は、単に個人の所有財産の保全というだけでなく、まちづくりという観点からも非常に重要で、政府もマンション管理適正化法を定めるなど、マンション管理が適正に行われるよう大変な努力が行われています。マンション管理のかなめとして修繕計画の策定と適正な修繕積立金を持つことの重要性が強調されています。そして、多くの管理組合では計画修繕積立金を持つこと、適正に行うためにそれを備蓄をしています。積立金は一戸当たり大体月一万円をするというのが多くなっているそうです。例えば、九戸のマンションでも十年で一千万円を超える、ペイオフの対象になります。ほとんどのマンションで安心して修繕積立金を預金できないことになってしまいます。適正化法の立法の趣旨からも修繕積立金については特別に保全対策が必要です。

 この点について最後に大臣に質問させていただいて、終わりたいと思います。

○国務大臣(扇千景君) 先ほどからちょっと、前もって相談の話があって、これは修繕診断とか耐震診断とか、あるいはそういうものの件数が少ないではないかと、先ほどの質問の補足みたいになるんですけれども。私は、そういう意味では、今まであらゆる面で耐震診断というものが、数でいいますと、住宅も含めまして三万六千七百三十件、十三年度まで、これは耐震診断の相談がございました。そして、その中で共同住宅、マンション等々については千二百七十六件あったということも是非御認識賜りたい。また、耐震の改修というものに関しましては相談を受けたものが二十七件。そして、そのうちの共同住宅では先ほどおっしゃった一件でございますけれども。私は今後、各自治体、ホームページ等を通じて制度の周知徹底を図り、先ほどからも谷林議員がおっしゃいましたように相談窓口をというお話ございましたので、ホームページとかあるいは制度の周知徹底を図るというのは当然でございますので、一言付け加えさせていただきたいと思います。

 そして、そのペイオフに関することでございますけれども、これはもう四月からのペイオフ解禁ということでございますので、今後は修繕費の積立費等の管理の組合の預金等の保全についても、管理組合自身が、自己の資金管理上の様々な必要性に照らして、自らの責任において合理的に選択しなければならないということになっていまして、いろんな情報ございまして、組合によっては一千万ずつ分割したというところもございますし、そして元金はこうしておいてということで、組合によってはそれぞれ組合の会合を開かれて、それぞれの各組合によってその保全方法、ペイオフに対抗する保全というものを相談されたというものがたくさん事例が出ておりますので、私はできればそういう意味で自らの保全方法というものを是非お考えいただきたいと思いますけれども、国土交通省としましても、マンションの管理組合の修繕の積立金の資金の適正な管理、運用を支援するために財団法人マンション管理センター、これを作っておりますので、管理組合に対してセミナーの開催でございますとか、あるいはインターネットのホームページ、あるいはパンフレット等によってペイオフの解禁問題に対する情報提供を実施したいと思っておりますので、そういうペイオフによる不安というものが是非管理組合と一体になって解消していきたいと思っております。

○委員長(北澤俊美君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。

   午後零時十六分休憩

     ─────・─────

   午後一時三十分開会

○委員長(北澤俊美君) ただいまから国土交通委員会を再開をいたします。

 休憩前に引き続き、マンションの建替えの円滑化等に関する法律案を議題とし、質疑を行います。

 質疑のある方は順次御発言を願います。

○田名部匡省君 先般も参考人の先生方からいろんなお話を伺って、今日も委員の皆さんの質問の中でももう随分話が出まして、ただ、先般の参考人の先生方のお話の中にもこれはなかなか難しいなと思うことがたくさんありました。特に、建物を取り壊して新しく建物を建築する場合、これが最も困難なことでしょうとか、あるいは阪神・淡路大震災のときの経験からいって問題点が随分指摘をされました。

 今日は、私は別の角度から、受益と負担あるいは公平公正という観点からちょっとお尋ねをしたいと、こう思うんですが。

 マンションというのは、これは事業経営なんですね。公営住宅はこれは別です。前の質問のときも私は申し上げたんですけれども、やっぱり障害者の方々、低所得者、あるいはもう高齢者でそう所得のない、あるいは収入、資産のない、そういう方々はもう別個に国が直接やる方式を考えないと駄目じゃないですかと。

 それで、今回の支援措置の中にも随分と補助金とか何とか軽減措置とかというのはあるんですが、大体、さっきもちょっと聞きましたから、これをやるとどのぐらい、受ける恩恵の方はどのぐらいになるかということを分かったら、まずお知らせいただきたいと思うんです。

○政府参考人(三沢真君) いろいろなタイプの今回の支援措置がございます。

 例えば、優良建築物等整備事業というのがございます。これはどちらかというと建物それ自体の高度利用とか共同化とか、そういうことで一種の再開発に対する支援と同じような、そういう観点からやっているものでございます。これは、内容は、調査設計費とか都市整備費とか共同施設整備費とか、そういう言わば公共的なものに、ある程度公共的な用途に要し得るというものに着目して助成するので、言わばその範囲内での受益ということでございます。これをちょっと具体の負担額の中で戸当たり幾らというのだとなかなか難しいわけでございますが、恐らく戸当たり数百万程度の軽減措置ということかと思います。

 それからもう一つのタイプは、いわゆるやむを得ず転出する場合で、しかも高齢者のように自力でなかなか住宅を確保できない方に対する対策ということでございます。その対策といたしましては、例えば公営住宅の優先入居というようなやり方もございますし、それから民間の住宅を借り上げるというタイプもございます。これは言わば正に先生おっしゃった国なり公共団体の住宅政策としてやるということでございますので、公営住宅であれば通常の公営住宅の家賃までは負担していただくということを前提に進めるという性格のものでございます。

○田名部匡省君 例えば、建て替えで、県営住宅とか市営住宅とか、あるいは都営住宅もあるんでしょう、そこへ一時入ってもらうわけですね。それに対する家賃の補助は国が三分の一、東京都なら都が三分の一と、こういうことになりますか。

○政府参考人(三沢真君) 先ほど申しましたように、建て替え期間中の住居として例えば公営住宅を使うということになれば、これは正に公営住宅としての入居資格はあるということを前提として、優先入居が可能であれば優先入居していただくということでございますので、これに対する助成措置というのは正に公営住宅の一般に対する助成措置の枠の中でということでございます。

○田名部匡省君 都営、公営住宅でない場合はどうなるんですか。

○政府参考人(三沢真君) 公営住宅以外に今回都市再生住宅制度というのを準備しておりまして、これは正に民間借り上げによってこういう従前居住者の住居に供せられるようにするというものでございます。この場合の補助率でございますけれども、これは例えば最初の建設に関しましては、共同施設の整備費について国が三分の一、公共団体が三分の一、それからいわゆる家賃対策補助といたしましては、国が二分の一、公共団体が二分の一という負担をするというものでございます。

○田名部匡省君 そうすると、これ、入る人によって、冒頭申し上げたような人たちが入っておるのかどうかというのは私は分かりませんけれども、いずれにしても、東京辺りだと億ションと言われて億もするマンションに住んでいる人もおるわけですね。それで、それが建て替えになるからといってそこへ行くと、家賃に対する。

 公営住宅といったって私は空いていないと思いますよ、私のところを見ていれば。空いていないし、次入りたいという人は待っているわけですよ。そうすると、建て替えの人は、あなたたちは待っているけれども、こっちは優先的に入れると、こういうことになるんですね。

○政府参考人(三沢真君) 公営住宅の活用をそういう従前居住者対策としてするかどうかについては、正に先生がおっしゃるとおり、各管理者である公共団体が当該地域での空き家の状況とかあるいは応募の状況を十分勘案した上で判断するということでございます。したがいまして、公営住宅じゃなくてやはり民間借り上げ方式でこれは対応しようという選択もあるわけでございます。そこは正に公共団体での判断ということでございます。

○田名部匡省君 その場合の家賃補助はどうなるのかというの、民間、公営住宅ではなくて民間のときは。

○政府参考人(三沢真君) これは、先ほど申し上げましたように、家賃対策補助につきましては国が二分の一、公共団体が二分の一負担をするというものでございます。

 ただ、その場合の入居資格というもの、つまりどういうものについて家賃対策補助を講ずるかということでございますけれども、これは二通りございまして、いわゆる公営住宅の入居の対象となる階層の方、これは正に公営住宅並みの家賃になるように家賃対策補助をする。それから、もう一つ特優賃という制度がございまして、これはもう少し収入が上の階層でございますけれども、これも政策的な公共賃貸住宅の一種として、いわゆるファミリー階層に対する家賃対策補助として行われている制度でございます。そういう特優賃階層に対しては特優賃の家賃並みになるように家賃対策補助をすると、そういうものでございます。

 したがいまして、既存の制度とあくまでバランスの取れたような形での家賃対策補助をするということを前提に民間借り上げ住宅方式を活用していただくという性格のものでございます。

○田名部匡省君 こればっかりやっていられませんが、何か聞いていてさっぱり分からないんですよ。実際、あれとこれと違う違うと言われると、入る人は一体幾ら補助をもらえるのかというのがいま一つ私は明確でないと思うし。

 それにつけても、事業として成り立つマンション業者、この人たちは商売でやっているわけですから。この間聞いたら、共用部分も補助金が出ると、廊下でも、エレベーターでも。こういうことですか。

○政府参考人(三沢真君) これは先ほど申し上げました優良建築物等整備事業ということで一定の要件に該当する、言わば再開発と言えるようなそういうものについては、先生おっしゃいましたように、その共用部分については補助をするという性格のものでございます。

○田名部匡省君 優良建築物というのは、それは、じゃ一つ一つこれが当たるのか当たらないのかという議論はしませんけれども、マンションやアパートを建てると、廊下や、高いところによってはエレベーターというのはなきゃならぬので、共用部分といったってマンションの人たちが使うんでしょう。例えば、このマンションの一階の廊下を通れば向こうの駅へすぐ行くから歩いても結構ですというんなら別だけれども、そこしか使わないですよな、一般の人は行くわけじゃないんで。

 私はなぜそれ疑問に思うかというと、家を建てたいと思っても建てれなくて我慢して古い家に住んでいる人は一杯いるんですよ、税金納めて。その人たちが、今度は今のマンションの負担に回ると。これ、国民の税金でしょう。こういうことが当たり前なのかなと思うんです。これは大臣の感想を求めた方がいいのかどうか分かりませんけれども、私は不思議だと思うの。

○政府参考人(三沢真君) これは、いわゆる再開発事業というのがございます。いわゆる再開発事業というのは再開発法に基づく法定再開発として行われる。つまり、都市の機能更新であるとか土地の高度利用に資するということで、こういう事業についてまず補助金を出しております。

 この優良建築物事業というのは、法律の、そういう再開発法に基づくという手続は取らないけれども、事業効果として正に実質ある意味で再開発そのものであると、任意の再開発という言い方をしてもいいのかもしれませんが、そういう再開発の効果に着目して、それをできるだけ促進していこうという趣旨から補助をするというものでございます。

 マンション建て替えにつきましても、例えば一定の空地の確保とか、そういう要件を求めまして、それがやはりその市街地全体の環境の整備改善に寄与すると、こういう効果に着目してこれを助成しているという性格のものでございます。

○田名部匡省君 だから、その判断はだれがするのかというんですよね。再開発は分かりますよね。もう私も市内のど真ん中に住んで今これやろうかと思っているんですが。それは、そのことがどういう影響を与えるかという判断は、私は、いや、これ建てたらそれは相当の影響を与えると思っているが、だれがこれを決めてくれるんですか。

○政府参考人(三沢真君) まず、国の助成制度としては、これは一定の敷地規模であるとか一定の空地を確保する、こういう要件を作っております。

 ただ、これはあくまで公共団体がそういう言わば任意の再開発であると判断して、そういう場合に、補助する場合にその公共団体に補助するという性格のものでございますので、あくまで、最終的には補助事業主体である公共団体が、その当該プロジェクトの、具体的にはその市街地での整備の改善効果であるとか、あるいはその助成の必要性ということを総合的に判断して助成をすると。公共団体が助成した場合に国がそれに対して更に助成するということでございますので、助成するかどうかの一義的な判断は、やっぱり公共団体が現地に即した判断をしていただくという性格のものでございます。

○田名部匡省君 何でも試合始まる前にルールきちっとしておかないと、任せますと、これが問題になっているんでしょう、今、国会で、口利きで。政治家の圧力で、やっても駄目なようなものでも何でもがりがりやられると、市長だって選挙あるから、はいはいというようなもので。こういうことにならぬような仕組みをやっぱり国がきちっと考えておいてやらぬと、どう判断してもいいようなところなんというのはみんなそれになっちゃいますよ、それやったら。ひとつ、これは慎重にやっていただきたい。

 それから、局長、この間、何か百年もつようなという話をしておったが、どうやれば百年もつようなマンションになりますか。

○政府参考人(三沢真君) 百年もつようなということを申し上げましたのは、やはりこれから造るものについてはきちんと長もちするような、そういう造り方を最初からきちっとすべきであると、そういうことで申し上げているわけでございます。

 それで、具体的なやり方としましては、午前中の質疑の中でも出ました、いわゆるスケルトン・インフィル方式というのがございまして、これは要するに躯体なり構造体というのはこれはもう長もちをさせる、ただ、その中の内装とか設備は、これはやはりその時代時代の要求とか世帯構造の変化によって変わり得るので、これは取替え可能なものにすると。それを、スケルトンとその中の内装、インフィルと呼んでいますが、それを分離して造っておくと。そういう方式を、技術開発を進めているということでございまして、これについては午前中も答弁申し上げましたけれども、具体的にはそういうものについて指針をできるだけ早急に取りまとめて、こういうやり方で、こういう設計方式でということを明らかにしていきたいというふうに考えております。

○田名部匡省君 この間の参考人の先生で、ニクソン大統領が入りたいと言って断られた話題のマンションがあると。このマンションは百年以上ですが、人気が高いというので入れなかったという報告がありましたが、そのとき僕は言ったんです。どうして、パリ行ってもロンドンへ行ってもがっちりした建物で、もう本当にあれは百年以上たっているでしょう、あのシャンゼリゼの通りとかロンドンのいろんな建物なんか。

 日本というのは地震も多いですよ。ですから、相当しっかりしたものを建てなきゃならぬと、こういうことなんですが、これは役所の工事だと学校でも何でも、もう生コンはちゃんとどういうものを使ったかという証明書を出しますよね。鉄筋は検査に来る。もう全部検査しますよ。

 マンションの業者の人たちは、こういう検査は、これどこから受けるんですか。

○政府参考人(三沢真君) まず、一般的に法令といたしましては建築基準法がございまして、建築基準法に合致しているかどうかというのは、御承知のとおり、特定行政庁が検査済み証を発行するということになっております。

 ただ、その正に百年もつという、非常に長もちするというのは、建築基準法がある意味では法令上要求している以上の性能をやっぱりあらかじめきちっと造っていくということが必要になります。これにつきましては、平成十二年度から、住宅の品質の確保の促進に関する法律、いわゆる品確法と呼んでおりますけれども、住宅性能表示制度というのが発足しております。その中で、正にこのマンションなりなんなりはどのくらい長もちするのかという目安といいますか、その性能項目としてそういうものを示すということになっております。

 したがって、この品確法を用いていただくと、そういうものが性能表示としてきちっと消費者といいますかユーザーの手に手渡されるという制度になっておりますので、これを是非今後とも私ども活用を推進していきたいというふうに考えております。

○田名部匡省君 それは、活用は分かったが、だれか調べるんですか、そういうことを。例えば、役所の工事の場合は、建物でも何でもやったら現場に付くでしょう、そして検査するでしょう。一々、基礎はちゃんと打ったか、これはどうやったかという全部、監督がおって。民間のマンションにはいないんでしょうと言うんです、僕は、だれも、そういうのを調べる人が。

○政府参考人(三沢真君) この品確法の性能表示制度というのは、これに基づく指定されました評価機関というのがございます。これは主として民間の評価機関でございます。

 この民間評価機関できちっとした資格を持った評価員というのを置くことになっておりまして、この評価員がまず設計の段階できちっとチェックし、またそれから建設が終わった段階できちっとチェックして、例えばこのでき上がった住宅について、こういう性能についてはどうなっているということを全部チェックするという仕組みになっております。その結果を性能表示として全部記載したものをユーザーに手渡しをするという制度でございます。

○田名部匡省君 私は心配するのは、例えば私の市内のマンションというのは、分譲が七か所で賃貸が十六か所、ほかに二、三十か所が三、四階でエレベーターのないものが建っているんですよ。鉄骨鉄筋コンクリート、これは住居用とか使用目的で違うんですが、四十七年ですよ。それから、鉄骨の肉厚によって、四ミリ以上だと大体三十八年もつというんですよね。それから、四ミリ―三ミリは二十七年、それから三ミリ以下だと十九年しかもたない。大体基準ではそういうことを一般的に言われているんですけれども、そういうものを、入る人は何を使って建てたか分からぬわけですね。

 例えば、地震の多いところだ。私はこの間も言ったけれども、十勝沖地震で私の家は相当傷んだんです。しばらく我慢したけれども、冬になると雪が入ってくるものですから新聞紙を詰めておったけれども、とうとう建て替えましたよ。そのとき、建ててもらうとき、地震に絶対壊れない家を建てろというので、木造の建築にコンクリートパイルを打ったんですから。そうすると、やっぱりそれは高いものになっちゃうんですよ、家は、マンションだろうが家だろうが。そうすると、それなりの値段でないとこれ駄目なんですね。いい加減にとは言いませんけれども、阪神・淡路大震災なんかで相当傷んだところは、やっぱり手抜き工事があったのかどうかというのは分からぬわけですね。壊れるようなマンションだろうが何だろうが、入る人は分かって入っていないということなんです。

 だから、ここのところをきちっとやる仕組みがなければ、値段とのあれがありますよね。これは立派にやったら相当高いですよ。その値段というものは、今度は入る人が一向に分からない、資料も何もないと。ということを僕は言っているんですが、だから検査をきちっと責任持ってやる、やらなかったらもう認めないとか、厳しいのをやっぱり作る必要があるんじゃないですか。

○政府参考人(三沢真君) 先ほどちょっと説明を省きましたが、この品確法の等級表示というのは、正に先ほど先生言われました、例えば鉄筋の外側のコンクリートの厚さを示すかぶり厚さとか、それから水とセメントの比率とか、そういう具体的な数値でもって、この等級のものだったら大体例えばおおむね三世代、三世代といいますと七十五年から九十年くらいもちます、この等級だったらこのくらいもちますと、それを三つの等級に分けて性能表示するということになっております。そのことを先ほども申し上げました評価機関の評価員がきちっと検査をした上で、それを性能表示の中に盛り込んでいくという仕組みでございます。これは制度発足して約一年ぐらいの間で、大体マンションについてはもう既に二割くらいはこの性能表示制度を活用しているということでございます。

 やはりこれがどんどんどんどん普及率が上がっていくということが当然必要なわけでございますので、私どもこれの一層の普及について最大限努力していきたいというふうに考えております。

○田名部匡省君 いずれにしても、そういうものを利用したいという人たちが困らぬように、安心してやっぱり購入できる、高くてもいいところへ入りたい、長もちするようなところに入りたいという人はそれなりのものをやりゃいい。これはやっぱり、さっき言ったように、事業として皆やっているんですよ、公営住宅じゃないんですから。そういう人たちにこれだけ国民の税の負担をさせていいんだろうかなという気が僕はどうしてもあるんです。

 それは分かりますよ、経済効果がどうとかなんとか。あの高速道路だってそうでしょう。僕は毎週羽田から帰ってくると、道路の下に何かネット張ってあっちこっちで今補強工事やっていますよ。あれだけ頑丈に造った高速道路でさえああやってしょっちゅう直さなきゃならぬと。あれ、いつも落ちたらどうするんだろうと思って見ている。

 私は、この間も参考人の皆さんに、私の会館から見ると高いビルは一杯見えますよ。この間もテレビで、八十階だか九十階建てのマンションのテレビが入っていまして、壊すときどうするんだろうなと思ってね、耐用年数が来て。アメリカはあれダイナマイトばあんとやって、があんとつぶすからいいけれども、日本はあれやるわけにいかぬし、壊すときにどうやってこれ壊すんだろうなと。余計な心配ですけれども、いつも僕はそう思うんですね。

 ですから、何でも事を始めるときは、これがどうなってどうなってこうなったときはこうするという、もうきちっとしたものを持ってやっていただきたいと。特に局長、あなただってそんなに長くいるわけでないですよね。これ通っちゃった後からおかしくなったって、あなた責任ないんだ。

 で、このお金を出すところはどこから出すんですか、助成するのは。国土交通省で直接やるの、どこでやるんですか。

○政府参考人(三沢真君) それぞれのもちろん目的に従って支出するわけでございますが、基本的には公共団体がいろいろ施策を講じる、その場合に国が公共団体に助成するという仕組みが基本でございます。

○田名部匡省君 公益法人とか特殊法人から出る分というのはないですか。

○政府参考人(三沢真君) 今回、例えば債務保証につきましては、これは公益法人である市街地再開発協会が債務保証するという仕組みはございます。

 ただ、それはお金を、何といいますか、直接渡すということではなくて、従来、市街地再開発協会が行っている組合再開発に対する債務保証事業の言わば延長として建替組合についてもこれを債務保証しようというものでございまして、何か新たな支出をこのために例えば国から公共・公益法人にするという性格のものではございません。

○田名部匡省君 これは前からあったんですか、これから作るんですか。

○政府参考人(三沢真君) 市街地再開発協会は前からございます。それで、先ほど申し上げましたように、いわゆる再開発事業に対する債務保証を従来からもやっております。

○田名部匡省君 それはどういう人たちがやっていますか、その役員は。

○政府参考人(三沢真君) これはいろいろな公共団体の方々が会員になっているのが主体でございますけれども、多分、どういう方々という中には、例えば国からのOBがいるかどうかというようなお尋ねだと思います。

 これは役員が、これ全体で平成十四年五月末現在で二十七人の役員がいますけれども、常勤である国土交通省のOBはそのうち三名でございます。

○田名部匡省君 今こういうものはもう徹底的に見直そうということをやっているんですね。こういう話を聞いていくと、何か、仕事を見付けて何かやらせようという意図があるのか、あったから使おうとしているのか、よく分からないんです。勘ぐってみたら、仕事がなくなったら困るから、何か作ってこの人たちに仕事を続けさせていかなきゃならぬという、そこまでは考えていないと思うけれども、これはげすの勘ぐりでね。

 これだけ特殊法人、公益法人が、天下りはもうやるなと言うのにどんどんどんどん行って、それで高給は取る、退職金は金額が大きい。この間も言ったけれども、いいことして辞めたんじゃない、責任取って辞めた人に九千万も退職金を払う。しかも、早く辞めたから割増しまで付けてやりましたという、あんなことを聞いていると、これは国民から見てもう信じられない話ですよ。だから、よくよく気を付けて、国民の皆さんが役所はよくやってくれているというようなことを一生懸命やってほしい。

 だから、扇大臣、私は、何をやってもいいけれども、だれがこれを考えてやったかという名前残してくださいと、あのアクアラインのとき言いましたよね。後からだれがやったんだというと、そのやった人は皆定年になっていなくなっちゃうんですよ。もう責任がなくなっちゃうんだ、皆。だから、こういう法律を出すときには、この人が考えてこの人が決定して出しましたという、このぐらいは分かるようにしておいてもらうと大いに私は助かると、こう見ているんですがね。国民全体から見ても、おかしなときにはやっぱり追及できる、質問できるということを、もう時間ですから終わりますけれども。

 いずれにしても、そういう、いささかも国民に余計な負担を求めない、この努力をやっぱりやらなきゃならぬのです。この間、代表質問でも言ったでしょう、限りなく求めない努力しなさいと。それが私たちの責任だと、こう思っておりますので、最後に扇大臣の御所見を承って、終わります。

○国務大臣(扇千景君) 田名部議員も大臣経験者ですから、大臣のときにいかに責任を持って何をどうするかというのはお分かりのとおりでございます。

 私たちは、今回、このマンションのことに関して皆さん方に建替えの円滑化法というものを出させていただきましたけれども、少なくとも今の現状このままでいいかといったら、そうではないんです。少なくとも、我々は先を見通して今回しようということで、例えば住宅の表示制度、これもございますし、その表示制度というものをもってしても、少なくとも指定住宅、そういうものの評価制度というものもありますし、その中で、今までの例で八十四機関、しかも設計住宅の戸数の評価でも七万一千百八十五戸、そして建築の住宅の性能評価の交付戸数も一万四千九百十七戸と、それぞれの評価制度というものも活用しながら、より円滑に、なおかつ公平にいくように、我々はその保証制度という、評価制度というものも導入しておりますし、少なくとも既存住宅の性能表示制度についてはあらゆる面で私たちは十四年度じゅうに制度化の方針を取っておりますし、あるいは流通とか、あるいは住み替えとか、あるいは建て替えとか、一般の皆さん方が疑問に思われることがどこに持っていったらいいのかということも、先ほど大沢議員にもお話ししましたように窓口を作って、そしてインターネットでも御相談に応じるようにという窓口も作って、そして安心、安定、そして皆さん方に二十一世紀型に一斉に建て替えが始まって困ることのないようにということで提示してあったので、だれがどうとかということでなくて、この法案を提出して、これを確立していただくと、だれが大臣替わろうと局長が替わろうと、制度が確立されて皆さんが御安心ということになるために法案を提出させていただいております。

○田名部匡省君 終わります。

○渕上貞雄君 社民党の渕上です。

 団地型マンションの建て替えについて多くの方々から指摘事項がございましたので、その指摘事項に対しての今後の対策についてお伺いをいたします。

 参考人の質疑におきましても、最も対策が遅れており、今回の法案では不十分であるという指摘がなされました。団地型マンションの建て替えについてでございますけれども、区分所有法において団地型マンションの建て替えに関して特段の規定が設けられていないために、敷地利用の変更や建て替え等と存置等との調整、それから建て替え決議の問題、建て替え順序による不公平の問題などがあると言われております。

 法制審議会の中間報告を見せていただきましたけれども、明確になっているとは思えませんし、今回の審議を通じても各委員からかなり多くの指摘がございましたが、法務省として今後何らかの整理をされるのでしょうかどうか、その対策についてお伺いをいたします。

○政府参考人(房村精一君) お答えいたします。

 御指摘のように、団地型マンションの場合に、その敷地を区分所有者が共有している場合、特段の規定が現在設けられておりませんので、民法の解釈としては、団地内の建物を建て替える場合には、その敷地の利用の変更に当たるということで敷地共有者全員の合意を要するということになっております。

 この点については種々御批判もあることから、現在検討を進めております法制審議会の部会においても、民法の全員の合意という要件を緩和する必要があるということで、試案におきましては敷地利用権の持分の四分の三以上の多数による決議があれば建て替え後の建物の敷地として利用することができるようにするということ。また、その敷地利用者に与える影響が非常に強くて、敷地共有者の権利が不当に侵害されるというおそれがあるような場合には、そういうことの生じないように、団地内の他の建物の区分所有者の建物の敷地の利用に特別な影響を及ぼすべきときと、こういうものを定めまして、こういうときには個別の承諾が要ると。

 これは、具体的な例としては、建て替えによりまして、その建て替えられる建物の規模が大きくなるというようなことから、容積率の関係で他の建物の建て替えが同一規模でできないような場合、こういう場合が想定されますので、こういう場合には特別な影響があるとして個別の同意が要ると。このようなことによって敷地の共有者の利害の調整を図るということを考えております。

 この点について様々な意見も寄せられておりますので、それを踏まえまして今後も更に検討を続けたいという具合に考えているところでございます。

○渕上貞雄君 どうぞ、指摘されました事項については今後十分検討をされた上で遺漏なきをお願いを申し上げておきたいと思います。

 次に、私的財産権の制限についてお伺いをいたします。

 憲法二十九条では財産権を認めております。これを侵してはならないということになっております。区分所有法では、五分の四の賛成による建て替え決議が行われますと、建て替えに参加できない人の財産を強制的に期限付で奪うことになります。売渡し請求という権利者の一方的な意思表示で売買契約が成立するような制度はほかにもあるのでしょうかどうか、お伺いをいたします。

 また、このような国又は地方公共団体でないもの、すなわち公共でないものが財産権を侵してもよいのかどうか、お伺いをいたします。

○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、憲法の二十九条は私的財産権を保障しているわけでございます。

 今回の、この区分所有法で取られておりますような多数決によりまして少数者の財産権を言わば強制的に譲り受けることが可能な制度というのは他に類似のものとしてはございません。ただ、区分所有建物につきましてこのような制度が取られる必要性でございますが、これはそれぞれ独立した区分所有権という法律的な権利として構成はされておりますが、実質的には一つの建物を多くの人が一緒になって所有し、利用していると、こういう関係に立つわけでございます。

 したがいまして、建物の利用関係であるとか、あるいは建て替えをするという場合に、全く独立にそれぞれの人の意見が全員一致するまで何もできないということになりますと、合理的な建物の利用あるいは建て替えということが不可能になってしまいます。建て替えをするだけの相当の合理性があり、大多数の人が建て替えを望んでいると、そういう場合に、なおかつごく一部の方があくまで反対だといった場合に建て替えができないということになりますと、実質的にかえって大多数の方々の区分所有権が不合理な制約を被ることになる。こういうことから、やはり一定の要件の下で多数決で建て替えが可能になるような制度を作るべきであるということから、区分所有法におきましては建て替え決議の制度を設けたわけでございます。

 ただ、当然、財産権の保障は必要なわけでございますので、反対した方につきましても、時価で買い取るという保障を与えた上で、かつ建て替えの合理性を要求する客観的な要件を定め、決議につきましても単純な多数決ではなく、五分の四という相当加重された要件を定めると、こういう形によって全体の利用の、合理的な利用の仕方と個々人の財産権の保障というものの調和を図ったわけでございます。そういう点で、憲法上の財産権の保障の観点からも問題がない制度だという具合に考えております。

○渕上貞雄君 次に、危険又は有害マンションの建て替えについての判断基準についてお伺いをいたします。

 法案では、市町村長は保安上危険又は衛生上有害な状況にあるマンションの区分所有者に対して当該マンションの建て替えを行うべきであると勧告することができると、このようになっております。

 保安上危険又は衛生上有害な状況の判断はどのようにされるのでありましょうか。

○政府参考人(三沢真君) この勧告の基準につきましては、具体的には国土交通省令で定めることを予定しているものでございますけれども、危険又は有害な状況として具体的に想定されますのは、例えば、外壁とか柱の劣化、あるいは鉄筋の腐食とかコンクリートの剥落、あるいは階段とかバルコニーのさくの腐食とか、構造の劣化とか強度が低下することによって災害に対してやはり危険な状況にあるというのが一つでございます。それからもう一つは、屋根の防水機能が劣化し雨漏りが生じている状態とか、あるいは汚水排水管が破損して汚水が土壌に流出している状態等、そういう衛生上有害な状況にあるということを意味しております。こういうことにつきまして具体的に国土交通省令の中で分かりやすい基準を作っていくということを予定しております。

○渕上貞雄君 次に、住宅の空き数と家賃についてお伺いをいたしますけれども、先般の委員会において、建て替えに参加しない人への対応について、先ほども質問があっておりましたけれども、お答えもさきの委員会でいただきました。たとえ五分の四の建て替え決議が可決されたといたしましても、五分の一の人たちは建て替えに参加することができないわけでございまして、法案ではこれらの人の居住の安定の確保の努力規定とされております。

 現在、移転先と考えられる住宅の空き数はどのくらいあるのか。それから、住宅家賃はどれくらいなのか。また、公的住宅への入居を希望をする一般の人たちとの、先ほども待っている方々のお話もございましたが、整合性はどのように考えられておるのか、お伺いいたします。

○政府参考人(三沢真君) 公営住宅の空き家の募集戸数、応募状況、これは東京都について見ますと、東京都では、十二年度で空き家の募集戸数約九千戸で、応募者はそれに対して約十万二千人という現状でございます。それから、家賃は平均して約二万五千円くらいでございます。

 それで、先ほどから御質問いただいておりますけれども、この優先入居はやはり公共団体、公営住宅の事業主体である公共団体が当該地域の空き家の状況とか応募状況も十分勘案しながら判断していくというのが前提でございます。このためのしたがって措置としては、公営住宅もございますし、先ほどから申し上げております民間住宅を借り上げるという方式もございます。そういうことを総合的に勘案して、その地域の住宅の実態に即した措置を公共団体で選択していただくということを想定しているものでございます。

○渕上貞雄君 次に、家賃負担の軽減の問題についてお伺いをいたします。

 建て替えに参加できない人たちの理由は建て替え資金不足の問題が最も大きいものと思われますけれども、ローンも終わりまして、ついの住みかとして考えられた人たちが賃貸し住宅に入居して家賃を払うという負担感は大変大きいものがあるというふうに思います。

 法案では、危険、有害なマンションの建て替え、いわゆる勧告マンションでは入居特例や家賃減額等の措置がなされるようになっておりますけれども、具体的にはどのようなことになるのでしょうか。また、自主的建て替えでは参加できない人への措置については特段ありません。今後、何らかの支援措置を考える必要があると思いますが、特に高齢者の方々に対する配慮というのは行うべきではないかと考えますが、いかがでございましょうか。

○政府参考人(三沢真君) まず、勧告の場合でございますけれども、勧告の場合は、通常の建て替えの場合に、更に言わば上乗せ的な助成措置、家賃減額措置がございます。具体的には、入居当初の五年間特別な減額を行うということで、これは五年間で例えばその公共賃貸住宅の本来の家賃までだんだん段階的に上げてすり付けていくと。その間、家賃対策として補助していくというものでございます。

 それから、自主的な建て替えの場合は、それぞれ例えばその公営住宅等の住宅制度の中で所得水準に応じた家賃設定がなされておりますので、その制度の下でここに入居していただくという性格のものでございます。

○渕上貞雄君 時価の問題についてお伺いしますが、計画段階なのか完成段階なのか、算定を判断をする時点というのはいつなのかについてお伺いいたしますけれども、時価というのは大変難しいというお話は参考人の方々からもいろいろお聞きいたしました。また、さきの一般的な質問の中からでも大変難しいというふうに思ったわけですけれども、建て替え決議の存在を前提としての時価、つまり建て替えによって実現されるべき利益を考慮した価格と言われていますが、建て替えによって実現されるべき利益というものもあると思いますね。ですから、時価とはやっぱりどのように算定されるものなのか、何回お話を聞いてもちょっと分からないものですから、分かるようにどうかひとつ説明いただきたいと思います。

○政府参考人(三沢真君) まず、時価がいつの時点かということについては、これは売渡し請求権を行使したその時点における価格というものでございます。

 それで、じゃ時価をどう解するかということについては、これは正直言いまして判例とか学説でいろんな説がございます。先生がおっしゃいましたように、建て替え後の建物とか敷地利用権の価額というのを想定して、それからいろんな費用を控除していくという考え方も一部ございます。それから、判例の中で、いろいろな下級審判例の中でも、いや、もうこれは敷地の更地価格から建物の除却費用を控除して算定するんだというようなことが示されているのもございます。

 したがいまして、正直言いまして、ここはなかなか民事法の世界の中でも考え方が十分統一されているとは言えない世界だというふうに私ども理解しております。

 そういう中で、結局、やっぱり具体的な事例の積み重ねの中で大体おおむねこういうものだろうということを明らかにしていくことしかないんだろうということで、私どもそういうことについて、今後そういう具体の事例の集積等を踏まえながら、できるだけそういう当事者間での時価とは何かということに資するような、そういう努力をしていきたいというふうに考えております。

○渕上貞雄君 公的機関の活用問題についてお伺いをいたします。

 国土交通省の調べでは、築三十年以上のマンションのうち建て替えを検討したり関心があるという建物が六五%あります。十年後にはこうしたマンションが百万戸に近づくと見られておりますし、老朽化で住む人が減って、適切な管理もされずスラム化をする、危ぶむ声も聞かれております。建て替えは避けられない状況にあると思うんですが、過去の建て替えに成功した老朽マンションではわずか九十六件、様々な住民で構成をするマンションの合意形成は困難を極めます。

 したがいまして、地価が新築マンションの価格よりも下がったり、買った土地にマンションを建てても売れる見込みがないなどあると思われますけれども、郊外マンションに共通する問題でもあるように参考人の方からも御説明がございました。

 一方、都市部では、建築時に認められていた一定の容積率がその後の法改正や都市計画の変更で減少するなどした場合、既存の不適格な建物があります。この建物は建て替えを行っても元の大きさが確保できないということにもなりますし、こうした壁を考えますと、円滑化法案や区分所有法案の改正だけではまだ効果が薄いように思われます。したがいまして、日本住宅管理組合協議会の原副会長は、年金暮らしの高齢者と、バブル期に買ってローンが残る中年世代が多い郊外の団地は同じ悩みを抱えていると指摘をされています。

 最大の難問は合意形成にあるわけでございまして、公的機関である公団の活用ということを最も考えるべきではないか。そのことが、経験も持っているし、建て替えもやってきた歴史もあるわけですから、そこがやはりこういう仕事をすべきではないかと思うのでありますが、その点はいかがでございましょうか。

○政府参考人(三沢真君) 都市基盤整備公団は、これまで共同住宅、これは賃貸住宅でございますけれども、そういう建て替えを数多く実施してきたという経験がございまして、そういう意味ではノウハウはそれなりに持っているわけでございます。

 一方、そういうことに対して、公団が特に過去に分譲したマンションを始めとして、管理組合の方で公団で是非コーディネートをやってくれという声もあるというふうに聞いております。公団におきましては、そういう管理組合の求めに応じまして適宜相談に応じているというふうに聞いております。

 今後とも、やっぱりそういう公団の経験、信用に着目して事業協力の要請がなされるような場合について、公団がそういうコーディネート業務として建て替えを支援するということも適当な場合もあるというふうに考えております。

○渕上貞雄君 最後になりますけれども、大臣、今後の国土交通省としての我が国における住宅政策についての決意についてお伺いをして、質問を終わります。

○国務大臣(扇千景君) るる御審議が進んでおりますけれども、少なくともできるだけ長持ちするマンション、これはもう当然だれしも願うことでございます。

 そういう意味で、少なくとも住宅金融公庫の融資においても耐久性に優れた住宅に対する優遇措置というものを実施する、それが一つでございます。

 二つ目には、少なくとも住宅の品確法に基づいた住宅の性能表示制度において劣化を遅らせる対策あるいは維持管理のしやすさ等を表示して、それらを情報提供を行うというのが二つ目の大きな問題であろうと思います。

 最後には、時代の変化に基づいて、その変化に対応できるように高い耐久性を持った建築物の構造体と可変性の高い内装、それも今進んでおりますので、これらによって構成するスケルトンのインフィル住宅というものの技術開発及び普及の促進に取り組んでいきたいと思っております。

 そういう意味で、適切な維持管理を促すために、長期の修繕計画の作成あるいは定期的な修繕の実施等を支援してまいりたいと思っております。

○渕上貞雄君 終わります。

○委員長(北澤俊美君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。

 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。

 マンションの建替えの円滑化等に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(北澤俊美君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定をいたしました。

 この際、藤井君から発言を求められておりますので、これを許します。藤井俊男君。

○藤井俊男君 私は、ただいま可決されましたマンションの建替えの円滑化等に関する法律案に対し、自由民主党・保守党、民主党・新緑風会、公明党、国会改革連絡会(自由党・無所属の会)及び社会民主党・護憲連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。

 案文を朗読いたします。

    マンションの建替えの円滑化等に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。

 一、マンションの建替えが円滑かつ適切に行われるよう、本法の趣旨の十分な周知徹底を図ること。

   また、本法がマンションの建替えを一律に促進するものであるとの誤解を生じさせることのないよう配慮すること。

 二、マンションの建替えに当たり区分所有者等の合意形成が適切に促進されるよう、建替えと補修の選択に係る判断指針及び合意形成プロセス等に関するマニュアルを作成するとともに、国、地方公共団体、専門家等による相談・情報提供体制の整備が図られるよう努めること。

 三、良質な住宅ストックの活用が重要であることにかんがみ、新築又は既存のマンションの耐久性を向上させるための技術開発及びその普及のために必要な措置を講ずるよう努めること。特に、再建マンションの長寿命化がなされるよう十分な配慮を行うこと。

 四、健全な中古マンション市場の育成に留意し、良好に管理され防災や居住環境の面で良質なマンションが適切に評価されるよう、中古マンションに係る住宅性能表示制度の早期導入とその普及を図るなど必要な措置を講ずるよう努めること。

 五、マンションの建替えへの参加を容易にするため、死亡時一括償還融資制度の普及を図りつつリバースモーゲージ手法の一層の活用につき検討するとともに、建替えに参加が困難な高齢者等に対し、居住安定のために必要な措置が講じられるよう、地方公共団体に対する補助、技術的援助等をはじめとした適切な支援の拡充に努めること。

 六、マンション建替組合による売渡請求権の行使に際しての時価の算定基準については、今後の事例集積を重ねる等により、その明確化に資するよう努めること。

 七、マンションの建替えが良好な市街地環境の形成に資するよう必要な配慮をするとともに、既存不適格マンション、団地型マンション等の建替えが円滑に行われるよう、適切な措置を検討すること。

 八、循環型社会の形成の観点から、マンションの建替えに際して生ずる建設廃棄物の適正な処理に必要な措置を講ずるよう努めること。

 九、マンションの建替えに民間事業者が参加する場合においても、居住者の意向が十分尊重されるよう配慮すること。

 十、国土交通省と関係行政機関との十分な連携を行うことにより、マンションの管理、建替え等に係るマンション法制の有機的な運用が図られるようにすること。

   右決議する。

 以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

○委員長(北澤俊美君) ただいま藤井君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。

 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。

   〔賛成者挙手〕

○委員長(北澤俊美君) 全会一致と認めます。よって、藤井君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定をいたしました。

 ただいまの決議に対し、扇国土交通大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。扇大臣。

○国務大臣(扇千景君) マンションの建替えの円滑化等に関する法律案につきまして、本委員会におきまして熱心な御討議をいただき、また、ただいま全会一致をもって可決していただきましたことに対して深く感謝申し上げたいと存じます。

 また、今回の審議中に賜りました各位の御高見、また、ただいまの附帯決議、これを考えて、我々はその附帯決議において提起されました区分所有者等の合意形成のための情報の提供、又は建て替えに参加することが困難な高齢者の居住の安定等につきましては、その趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長始め各委員の皆様方の今までの御指導、御協力に対して深く感謝の意を表しまして、お礼に代えたいと思います。

 ありがとう存じました。

○委員長(北澤俊美君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(北澤俊美君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。

 本日はこれにて散会いたします。

   午後二時三十分散会


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