法改正・創設
資料 |
マンションの建替えの円滑化等に関する法律
―審議状況・参議院― |
参議院議事録より、転載しました。
▼2002/06/06 参議院 国土交通委員会 |
第154回国会 国土交通委員会 第18号
平成十四年六月六日(木曜日)
午前十時開会
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出席者は左のとおり。
委員長 北澤 俊美君
理 事
鈴木 政二君
脇 雅史君
藤井 俊男君
弘友 和夫君
大江 康弘君
委 員
荒井 正吾君
木村 仁君
月原 茂皓君
野上浩太郎君
野沢 太三君
松谷蒼一郎君
森下 博之君
森山 裕君
吉田 博美君
池口 修次君
谷林 正昭君
藁科 滿治君
続 訓弘君
大沢 辰美君
富樫 練三君
田名部匡省君
渕上 貞雄君
事務局側
常任委員会専門員 杉谷 洸大君
参考人
千葉大学 法経学部 教授 丸山 英気君
兵庫県住宅供給公社 審議役 門田 至弘君
ハウジングケースワーカー
マンション管理士
住まいとまちづくりコープ代表 千代崎一夫君
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本日の会議に付した案件
○マンションの建替えの円滑化等に関する法律案 (内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(北澤俊美君) マンションの建替えの円滑化等に関する法律案を議題といたします。
本日は、千葉大学法経学部教授丸山英気君、兵庫県住宅供給公社審議役門田至弘君及びハウジングケースワーカー・マンション管理士・住まいとまちづくりコープ代表千代崎一夫君の以上三名の参考人に御出席をいただき、御意見を聴取し、質疑を行います。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、大変お忙しい中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございました。
皆さん方の貴重な御意見を拝聴し、また、皆さん方におかれましても忌憚のない御意見を開陳していただきまして、本委員会の審議の糧にさせていただきたいとお願いする次第でございます。本日は誠にありがとうございました。
それでは、本日の議事の進め方について申し上げます。
まず、丸山参考人、門田参考人、千代崎参考人の順序でお一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
また、御発言は着席のままで結構でございますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おき願いたいと存じます。
なお、恐縮でございますが、時間が限られておりますので、簡潔に御発言くださいますようお願いを申し上げます。
なお、発言の際、挙手をしていただきますと指名がしやすくなりますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。
それでは、まず丸山参考人にお願いをいたします。丸山参考人。
○参考人(丸山英気君) 私は、三十年ぐらい不動産法、とりわけ区分所有法をヨーロッパなんかと比較しまして研究してきた者であります。今回の立法は大変タイムリーなもので、大変いいものだというふうに考えて、賛成をしたいと思います。
今日、私がお話しする趣旨は、そこの二、三枚のペーパーにすべて書いてありますので、それに沿いながら、若干の補足を加えていきたいと思います。
まず、マンションが相当年齢がたってきたときには、取り得る措置としては三つあるということです。一つは、取り壊して新たな建物を建築する。二つ目は、敷地を建物共々売却してしまう、これは区分所有法の関係の解消というふうに言えることです。三つ目は、大修繕などの改修で建物を延命するということです。この最初のものと二番目のものは建物の存在を否定してしまうものですけれども、三番目のものは現建物の構造などを利用していこうとするものです。
一番簡単な方法は売却してしまうという方法であります。しかし、この売却してしまうという方法につきましては、現在審議中の法制審議会ではどうもそういった方式を立法として認めるということにはならないようでありまして、大変残念だというふうに思っています。阪神・淡路大震災のときにも実際にはこういった手法が使われているわけであります。
改修という方法ですけれども、これは特別多数決を得ればそれでよろしいわけですけれども、実はそうでもないこともこれから起こってくるだろうと思います。例えば、一棟のうちの希望者だけが専有部分を増築するというような場合とか、だんだんと人がそこに住まなくなってしまって上の方の二階分を減築してしまうというような場合には、敷地利用権の変化が出てまいりますので、場合によっては全員一致を必要とするということに民法上の理論ではなるわけです。したがって、このままでは実現不可能ということも招来するだろうというふうに思っています。
取り壊して新たな建物を造るという、いわゆる建て替えですけれども、これは最も困難な選択であります。様々な経済的な能力、価値観を持っていますところの区分所有者のほとんど全員を建て替えでということでまとめていく、これはもう大変なことであります。しかも、新たな建物を建築するという二つのプロセスがあるわけでありまして、これはある種の再開発であります。
再開発ということについては、所有者の権利はどうするかというような問題がよく論じられますけれども、その実現というのは大変困難なものであります。こういったものは、補助金とか、あるいはある種の強制力を持っていても難しいわけです。ところが、区分所有法の中にはそういったものがありませんので、更に大変だということであります。従来、それを助力するような法制度がなかったわけでありまして、今回の法律がそれを助力するという意味で大変いいものだというふうに考えているわけです。
建替え円滑化法の前提には区分所有がありますけれども、区分所有法というのは、これは区分所有者間の権利の調整という側面が主たる取扱部門となっているわけであります。区分所有関係の終了ということについては、各国の法律ではほとんど規定していません。アメリカで若干ありますけれども、ほかのヨーロッパ法では区分所有関係の終了ということについては実定法的な規定がありません。
日本の場合には、建て替えというのが昭和五十八年に入りましたけれども、これはある意味では大変画期的なことであります。ここでは、大変厳しい客観的な要件の下で、五分の四の特別多数決で建て替え決議ができると、こういうことになったわけであります。しかし、そういうふうにいいましても、建て替えに賛成しない人の利益というものを厳格に守っています。建て替え賛成者から非賛成者への敷地、建物の時価での売渡し請求権、非賛成者の明渡し猶予、建て替え賛成者が一定期間内に建物を取壊ししない場合の非賛成者の買取り請求権といったようなものを置いているわけです。こういうことはまれな立法でありますから、この非賛成者の利益を徹底的に図ったということは大変優れた発想だというふうに考えています。
現在作業中の区分所有法改正では、敷地の同一性とか建物目的の同一性といった要件は廃止され、かつ、費用の過分性という要件も老朽化の場合には廃止されようとしています。建て替えの客観的な要件をきつくするということが少し変わってきたように見えます。そういったものに変化を生じたということですね。
五十八年の区分所有法の下で現実に建て替えをしようとする場合、様々な問題点が出てまいります。これはもう既に議論がされていると思いますけれども、建て替え事業法という部分にこの当時の法律は無関心であったということの結果だろうと思います。
問題がありますのは、抵当権者や借家人に建て替え決議しても何の影響を与えない、とりわけ抵当権の抹消をできないということが阪神・淡路大震災のマンションの建て替えの最大の障害になったということはよく知られていることであります。
また、賛成者は法人格を取得する方法が整備されていませんので、非常にこれは煩瑣な手続を強いられる。契約なんかも、個々の建て替え賛成者とやらざるを得ないということになります。
また、賛成者、推進者の一人に相続とか差押えとか破産というような、そういうことが出てきた場合には、やっぱり厄介な問題が起こってくるということになります。
さらに、建て替えの推進者と請負人といいますか、建築をする、してもらえる人にいろいろな問題が生じた、法律上の問題が生じたときに、その両方の関係が様々な関係でぎくしゃくしてしまうということが考えられます。建て替え団体というのはそんなに資力もあるわけではありませんので、こういった人たちとの間で契約をするということはかなりちゅうちょを感ずるということが企業側にはあるだろうと思います。
これも阪神大震災のマンションの建て替えで起こったことですけれども、区分所有法で予定されていた共同建て替えという形で行ったところはありません。実際には、賛成者が全員でそれを売却する、そして再度買い取るという形態であります。
こういう形態ですと、開発者の方が倒産したような場合には売却者の方は不利益を受けるということになります。また、売却をしない場合でも開発者と請負人の間で保証契約をする。その人たちが払わない場合には代わって払いましょうというようなことで請負人の不安を鎮めたわけですけれども、こういったことをする企業というのは何の利益もないわけであります。ですから、非常に異常なことだというふうにならざるを得ない。ですから、これは平時の場合にはこういったことはほとんどあり得ないということでありますから、請負人といいますか、ゼネコンというところがこういったものを引き受ける可能性は非常に乏しいということになろうかと思います。
建替え円滑化法はそういったものの相当部分を解消しているということであります。これは、都市再開発の仕組みを導入して合意をした人たちにちょっとおしりを押してやるという、そういう仕組みです。ですから、その合意のプロセスにおいて問題がある場合には、それはそれで別問題だということになります。
建替え円滑化法の非常に大事な点は四ページの下の方に書いてあるところでありまして、とりわけ抵当権とかあるいは借家人といったものの地位をこの法律の中で保全しているということ、あるいは地方公共団体が建て替え計画にチェックを加えることができて、まちづくりについても助言ができると、こういう意味では大変いい立法だというふうに考えています。
最後ですけれども、建替え円滑化法後の問題ということにお話を進めたいと思います。
建替え円滑化法は、言うまでもなく建て替え決議ができたところでだけ機能するわけです。建て替え決議までは区分所有者及びその団体の実力によってなされるというわけです。こういうことについて、とりわけ助力があるわけではありません。
更に厄介なのは、団地というものの建て替えであります。今日、建て替え予備軍で一番多いのはこの団地の建て替えであります。容積率がかなり余っていますので建て替えの可能性が極めて高いわけですけれども、これについては大変問題があります。そもそも団地という制度が大変難しい制度であります。私はなぜこんな制度を入れたのかというふうにややうらみがちに考えています。
法務省の案では、規約改正とか共用部分の変更ということと同じように、全体の団体的な特別多数決とそれによって特別の影響を受ける者の同意ということを必要とするという仕組みを取っています。それぞれに私は問題があると考えています。
まず、団地の建て替えの敷地共有者の四分の三の同意を得なければならないと言います、なされていますけれども、しかし同意があったからといって残りの棟の建て替えということが当然には連動していないんです。確かに、同意の過程で残りの棟の建て替えが議論されるだろうと思いますけれども、しかしそのことによって法律的に建て替えが可能になるわけではない。どうするか、これはやっぱり土地共有者の容積支配といったものについての議論を詰めないといけない。しかし、これは法務省は専ら民事的な案でありますので公法の方に進めるということにはややちゅうちょがあるようでありますけれども、これはそれをやらない限りは問題が残ってしまう、いずれはもう一回やらざるを得なくなる、立法しなきゃいけなくなるというふうに私は考えます。
もう一つは、特別の影響を受ける人の敷地共有者の全員の同意を必要とするということですけれども、これは意味が余りはっきりしない。もし日照というようなことも含まれるとするならば、恐らくそれは訴訟が相当出てくるということになります。そういった場合に、更にこの建替えの円滑化法の仕組みを進められるかどうかということについてやや危惧があります。
法務省案での、建て替えの客観的な要件の緩和が紛争の予防という見地からなされている、特に老朽化の場合には三十年、四十年して特別多数決をすればできるということは、例えばさっき言った建て替え目的とか、あるいは敷地の共有性とか、過分性とか、そういったことは落としているわけです。これは、そのプロセスで余り紛争を生じないようなという意味があったんだろうと思います。
法務省は、専ら区分所有法は民事法ですから裁判法だと言うわけですけれども、区分所有法というのは、ある意味では素人である区分所有者が建て替えをするということでありますから、裁判法ではなくて、どうしたらいいかということをする基準の、ある種の私の言葉で言えば行為法だろうと思います。ですから、特別の影響が裁判の場で適切に運営されるというふうなことによって問題はないというふうには言えないと考えています。
以上です。
○委員長(北澤俊美君) ありがとうございました。
次に、門田参考人にお願いをいたします。門田参考人。
○参考人(門田至弘君) それでは、お手元の資料に基づきまして、私は、阪神・淡路大震災のマンション復興に絡めて、経験いたしました現場の立場から参考意見を申し上げたい、そのように思います。
まず、一ページ目の上でございますが、被災マンションの実情を数量的に表しております。
半壊以上の被災マンションが百七十二棟ございました。その中で、建て替え決議に至ったものが百八棟でございます。私どもではこの約三分の一、三十五棟を建て替え、再建をさせていただきました。
総じて、その下に書いてございますように、既存不適格、これは建築基準法上のいろんな法令等に適合していないと。容積がはみ出しておるとか、日影規制に引っ掛かっているとか、斜線制限に引っ掛かっているとか、そういった既存不適格が非常に多かったということでございます。約半数ぐらいがそのようなことでございました。さらに、四十年代のマンション建て替えが多かったわけでございますが、高齢者が非常に多かった。大体四割から五割ぐらいはございまして、場合によっては、団地によっては六割に近いような、そういうふうなものもございました。四十年代にマンションを購入をして、三分の一ぐらいはそのまま残っておられて高齢化してきておって、その他はいろいろ入れ替わっておりますけれども、実際にはそういった規模も小さいということもございまして、高齢者の割合が非常に多かったなと、そういうふうに思います。それから、さらに、建て替えをする場合に建て替え費用が必要になってございますから、ダブルローンになった方もかなりおられたように思います。
被災再建に当たりまして、当時非常に問題になったことをその次に列挙してございます。
当然のものもございますが、合意形成の円滑化。年齢も違う、家族構成も違う、財産の状況も違う、あるいはまた価値観も違う。もっとお金を出してもいいものに建て替えたいという方もあれば、いや、このままでもいいんだというふうに、価値観の多様な皆さん方がおられたわけでございますから、それの合意形成をするというのは並大抵ではないということでございます。平均的には大体一棟が七、八十戸はございますから、七、八十世帯の皆さんの合意形成をしていかにゃいかぬ。そういうことがございました。
さらに、先ほど丸山先生の方でありましたように、抵当権というのがほとんど付いておりました。これをどうやって解消をしていくのかというのは、当時、本当にできるのかという議論になったのは事実でございました。
それから、さらには、建て替えに際して大きな建物、七、八十戸、大きいものでは三百戸を超えるものもございました。こういう建物を再建をしていきますのに、もちろん計画を作り、実施設計を行い、あるいは建物を建てというのは相当大きな資金が必要でございます。ほとんどの組合というのが任意の団体でございますから、そんなお金の調達力もないという状況の中でどうやってそれを調達していくのか。もちろん補助制度も充実はいたしておりますけれども、補助金は工事をやって金を払って、実際払った中で後で戻ってくるみたいな形になりますから、その間、調達が必要なわけです。それをどうやって調達するのかと、こういったことが大きな課題になってございました。
さらに、工事の請負、平均七、八十戸、場合によっては三百戸を超えるマンションをだれが請け負ってくれるのかと。任意団体がそんな大きな工事をやるのに何の保証もない中で請負業者さんが引き受けるかと。当初いろいろ意見調整した中ではほとんど引き受けないと。小さなマンションで二、三十戸で自分のところが手掛けたから引き受けようかというところもございましたけれども、その点が非常に大きな問題になったのは事実でございます。
こういう大きな大事業を行っていくのにだれが事業の主体になるのかということも、これも大きな問題になりました。
こういったようなことが被災当時いろいろ問題にされたわけでございます。
あわせまして、これは次の三番でございますが、区分所有に関する法律についてもややあやふやなところがあるということで、現在これは法制審議会で議論をされておりますけれども、簡単に触れさせていただきます。
費用の過分性というのがございますが、これは区分所有法で、「建物がその効用を維持し、又は回復するのに過分の費用を要する」と、これどういうこっちゃというのが正直言って明確ではございません。こういう過分性があって初めて五分の四の多数決議で建て替え決議ができる、こうなっておりますが、過分性とは何やねんと随分議論になりました。
ただ、この資金に関しては、もうごちゃごちゃ言わずに再建が先だということで、皆さん方、そういう意味では平時と違いますので、早く回復をしなくちゃならないというふうに気がそっちの方に行っておって、余りこの辺は議論にならずに通過いたしました。ただし、その後裁判四件ほどが訴訟提起をされまして、その中で問題になっておるのがこの過分性の議論が争点で裁判が行われておるという実情にございます。
建て替え決議でも、こういう決議内容の四項目を決議しなきゃならないとございますが、その中で特にこの費用の分担とか区分所有権の帰属とか、こういうことが単にその衡平を害しないようにと定めておるだけでございますから、これ何やねんというその辺が非常に不明確で、議論の対象になったものでございます。ほとんどの建物が既存不適格でございますから、空地を取って、例えば横にびょうぶのように長いマンションが既存不適格であって空地をたくさん取らんがために縦に長くなる、そういたしますと形が全く異なる、それを帰属を衡平にというのはどういうこっちゃねんというのが大いに議論になったところでございます。
それから、建て替え決議賛成転出者の取扱いでございますが、二ページにまたがりますが、皆さんが建て替えを決議しようと、こういうことには自分としては賛成をするんだけれども、いろんな事情があってこの際出ていかないかぬと、そういう人たちはこれは反対の決議にカウントをされるわけでございます。特に、既存不適格なんかである部分を減らさないといけないという、容積が一杯であってもっと建物を減らさないと物が建たないという場合にある部分出ていかざるを得ない場合があるんですが、そういう場合にやっぱり反対者にカウントされたのではその辺はいろいろ問題ではないかと、こういうことが議論されました。
それから、敷地の同一性とか使用目的の同一性、同じ敷地に建て替えなきゃいけない、それから主たる目的を同じに、住宅は住宅に、店舗は店舗にというふうにしなきゃいけないと、この辺もどうかというのが議論はされたところでございます。
それから、隠れ反対者という言葉を使っておりますが、建て替え決議には賛成するんだけれども、その後いろいろとごちゃごちゃごちゃごちゃ意見を言われて建て替えの推進に協力をしないという方たちがおればこれはどうするか、こういったことが問題になってございます。
それから、売渡し請求権を行使する時価の扱い、これも時価はどないして定めんねんというのが分かっておるようではっきりしておらない。
それから、一棟の範囲の明確化、これはコの字型とかいろいろ建物がエレベーターや階段やいろいろなものでつながっておる場合にどこまでが一棟かというのが、これも明確であるようで余り明確でないというのが当初いろいろ議論がされたところでございます。
それから、先ほど丸山先生のおっしゃった団地の定めがないと、こういうことが区分所有法上問題とされたところでございます。
それから、実際に、じゃこういったいろんな制約の中でどんなやり方で建て替えをしていったのかということを次に列記してございます。事業の手法としては、自分たちで建て替える、それからディベロッパー等に参画をしてもらって建て替える、大きくはこういった二つの流れでございます。
自主建て替えというのは、先ほど言ったような資金の調達の問題あるいは工事の請負の問題、こういうふうなことがいろいろあって、実際には戸数の多い大きなマンションでは自主建て替えというのはなかなかできないと。小さな規模のマンションでは自主建て替えは現実に、これは統計データでも二割弱ほどは自主建て替えが行われております。
ディベロッパー等参画による建て替えというのが七割強でございますけれども、これはいろんなやり方ございますが、これまで行ってきた方法というのは全部譲渡方式あるいは一部譲渡方式、あるいは地上権設定方式あるいは定期借地権方式、ちょっと次元が違いますが、このような方法でやってまいりました。
ちなみに、全部譲渡方式というのは、いったんは事業主体であるディベロッパーに従前の皆さんの土地建物の権利をいったん全部移しまして、移すときに全部抵当権を抹消いたしまして再建建物を作ってまた皆さんに売り戻す、そのときに従前に付いておった抵当権はまた付け直すと、こういうやり方で全部譲渡方式を行いました。これはやはり事業の安定性といいますか、ディベロッパーに所有権もいったん全部移して、そうやっていかないとそれを引き受けるディベロッパーがまずないという、こういうこともございました。ただし、先ほどございましたように、ディベロッパーがつぶれたらどうなるかという議論はもちろんございましたけれども、こういう方法が一般的に行われたところでございます。
それから、一部譲渡方式というのはその一部分だけを移転するというやり方でございます。
地上権設定方式というのは、土地の所有権を移転せずにディベロッパーの権原を第一とする地上権を設定いたしまして、その地上権を権原として再建の建物を建てて、完成したら建物を従前の皆さんに所有権を移転をいたしまして地上権は抹消する。これは建て替え期間中のディベロッパーの権原を安全に保つという意味合いで、このようなやり方もやったということでございます。
定期借地権方式はちょっと違いますが、これは資金のない方などに土地をこれは事業主体が買い取りまして、それで建物を建てて、売り戻すときに建物代だけで売り戻す、借地にすると、こういったやり方でございました。
このようなやり方で実際は事業を進めてまいりました。
次に、課題等とございますが、安定的な事業を推進する仕組みということでちょっと書いてございます。これは今回の法案の中にもいろんな問題点が相当部分盛り込まれておりまして、既に法案等にも明記されておりますが、当時実際に事業を経験した者として、重なりますけれども、ちょっと参考に述べております。
この四角い白角でございますが、建て替え参加者が自ら安定的に建て替えを行える仕組みの確立ということで、建て替え参加者の団体的性格、要は法律上の位置付けや、法人格を与えたら、例えば請負契約をしようと思っても法人格があれば契約はできるとか、あるいは法人格があればそれを元に銀行の貸出し姿勢にもよりますけれども融資も受けることができる。再開発組合等が金融機関等から融資を受けておるように、そのように融資が受けることができるということで資金の調達が容易になるとか、そういう法人としての、法人格の付与ということが必要であったなと、このように思っております。
それから、建て替え事業施行者(代行者)が安定的に建て替えが行える仕組みの整備というふうなことでございますが、これも今回の法案に盛り込まれております。
それから、抵当権等の処理につきましては、これも非常に、本当に抵当権が外れるのかと。例えば、建物に抵当権が付いておって除却をしようと思っても担保権者が同意しないと除却もできないと、こういうことでございましたが、これは従前の権利を建て替え後に置き換えるという権利変換が今回の法案で入っておりますので、この辺も解決できるかと思いますが、いったん消すのに大変苦労をいたしたところでございました。
それから、既存不適格マンションの取扱いということで、これはかなりの割合で存在しておると思いますが、特に容積が非常に上回っておる場合でだれかが出ていかないとなかなか回復できないと、こういうことに関連して、やはり柔軟な対応が必要かなと、こういうふうに考えております。
それから最後に、五番目でございますが、建て替え事業の実施に際して併せて必要となる対策等ということで、やはり築後三十年、四十年たってまいりますと、賃貸化も増えてまいりますし、お年寄りも増えてまいりますし、そういう零細者に対する借家人対策、あるいは高齢者、零細者に対する資金の対策、そういうようなことがいろいろ必要かなと、こういうふうに考えております。
それから、各種支援対策の充実ということでございますが、現行でもいろいろ支援する、例えば建設費の補助でありますとか、あるいは融資の充実であるとか、あるいはダブルローンになる方もおられましょうし、そういった対策が必要となるなと。現実に個々の権利者の皆さんと協議をする中で解決をしなきゃいけませんけれども、包括的に今回も法案の中でもこういったことがかなり盛り込まれておりますので、その点は非常に喜んでおりますけれども、そういうことが必要であるなと、そういうように思っております。
以上でございます。
○委員長(北澤俊美君) ありがとうございました。
次に、千代崎参考人にお願いをいたします。千代崎参考人。
○参考人(千代崎一夫君) 千代崎と申します。よろしくお願いいたします。
私は、ハウジングケースワーカーと名のっていまして、住宅のことは何でも相談に乗るというつもりで住宅コンサルタント事務所を開いております。本日は、当委員会で発言させていただけることを大変感謝しております。
昨年、マンション管理士の試験を受け、今年、合格、登録をしたマンション管理士でございます。もし国会へ出席した最初のマンション管理士ということであれば大変光栄だと、こういうように思っております。私は、マンションで実際に起こっていることをお話しして法案の論議に参考になればと思い、お話をさせていただきます。
実務を通しての住民の声というのをお届けしたいというふうに思っております。
私自身、業務、業務と申しましてもボランティアと中間のようなものもありますが、様々なマンションから相談を受けております。その中でも、主な業務というのは、建物を診断をして長期営繕計画を作り、必要なら工事企画を行い、工事中は監理という、そういう業務を行っております。その他、管理組合の立ち上げとか、規約の整備、ペット問題、管理会社への不満等、様々な相談に乗っております。それから、幾つかのマンションの管理組合の顧問をしております。そういった直接マンション住民と接している実務を仕事にしております。
そのような立場で今回のマンションの建替えの円滑化に関する法律案を見ますと、幾つかの心配点があります。中でも一番感じているのは、建て替えの前に長く使えるかということの検討がどれだけ積極的に行われたかという、行われるかという問題です。長く使うということに対して助成や税制などの工夫をして、むしろ長く使うということはいいことだという風潮を育てていただきたいというふうに思うわけです。当然、いつかは建て替えをしなければならないというのはもちろんです。そのときに、マンションを長く使うということをよく検討し実行した上ならば、反対者も少なくなります。したがって、建て替えそのものもその時点でスムーズにいくということになるのではないかと思います。そういった観点で、幾つかの部位に分けて考え方を述べます。
当然、国土交通省を始めとする専門家の間では、後でお話しする問題も論議をされているとは思います。しかし、その論議が住民のところでされるということが大切なのではないかなというふうに思います。
長生きマンションと私はそういうふうに呼んでおりますけれども、それの積極的検討をということで、川崎のある団地で、築二十年を過ぎて二度目の大規模修繕を企画していたときです。次の十年目、つまり三十年のときのことを考えて今回の工事企画をしましょうという私の提案に対して、役員は、千代崎さん、次はもう建て替えだよと、こういうふうに言っておりました。だから、役員会の感じとしてはそういうふうになっています。ただ、私の方は、木造の建物だって三十年、四十年もっていますよ、コンクリートの建物で三十年次には建て替えという話はないですよと、こういうふうにお話をしたわけです。その場が終わった後に役員でない人が寄ってきて、千代崎さん、いいことを言っていただいたと、三十年で建て替えの話ということが出るならば、二十年のときの大規模修繕にお金を払う気はない、それを聞いて安心してお金が払えると。
ここの団地は積立金も計画を詰めて集めておりましたので、改めてお金を集めるということではありませんけれども、やはり年限を決めたらその十年前には修繕にはお金を掛けなくなってしまうと、こういう雰囲気になってしまうということです。
別な件では、かなり傷んだマンションに調査に行くこともあります。そうすると、うちのマンションはどのぐらいもちますかねというのをよく質問として受けます。そのときに、現在のコンクリートの老朽化も含めた度合いを調べて、これに合った修理をすると。その後、そこについて十年ぐらい傷み具合の経過を見ましょうと。そういう、それでどのぐらい、十年間でどのぐらい傷みが進むのかという確認をしましょうと。かなり痛んでいますと、二十年でこんな状態になっているというときに、百年はもたせましょうよと私が言えば、それは信用されないと思います。ただ、二十年から三十年、三十年から四十年、こういった間にどのぐらいどこが傷むのかというのをちゃんと管理組合で握って、その上で五十年を迎える、あともうワンサイクル、つまり百年というのがもつかどうかと、こういう判断をしましょうと、こういうふうにお話をしております。
現実には、私どもも三十年近くなったマンションを幾つも見させていただいていますけれども、建て替えようという話はなかなか出ておりません。もちろん小さかったり、それから私の場合は市街地型のを見せていただいているときが多いので、そういうふうに思っております。
それから、社会資産としてマンションを見れば、つまり個人の資産ではなくて社会の資産だというふうに見れば、近隣での地域的な移動とか、それから年齢層のミックス、こういうことも含めて、当然エレベーターを付けられる可能性のあるところは付けていただくとしても、エレベーターのないマンションも有効に生きてくるのではないかなというふうに思います。
次に、バリアフリーという話があります。
人間の高齢化にも対応したマンションが望まれていますが、段差を解消したり、手すりを付けたりしているマンションも増えてきました。介護保険では、共用部の住居改善の費用を認めてはいますけれども、少額です。二十万円までです。個人あての費用を共用部の改善に使うということも矛盾しているのではないかなというふうに思っております。共用部全体をバリアフリーにするために、住民のところでの意識と、それにプラスする助成制度というのもあればマンションのバリアフリー化はかなり進むのではないかなというふうに思います。東京の私の住みます板橋区では、助成制度があって、区民としても大変うれしく思っております。
バリアフリー化を喜ぶのは高齢者だけではありません。障害をお持ちの方はもちろんですが、けがをした場合など、健常者でも大変喜ばれます。現状では、バリアフリーという言い方より更に進んで、だれもが便利で使えるユニバーサルデザイン、こういうふうに変化しております。
次に、設備の陳腐化という言葉が出てきております。だから修繕では駄目なんだと、こういうふうに言われております。ただ、そのことも全体を見直すと、こういうことでかなり対応できます。私自身の業務の中でも、先日は、専有部分も全部必要なところの床をはがしてステンレス管に取り替えたと、こういう仕事もやっております。これを考えれば、設備の陳腐化ということも実際には直していける、こういうふうに思っております。
水道管直結という方式があります。ただ、現状では、便利なところもありますけれども、水道局の方で、直結の場合はメーターを敷地の引込みに一番近いところにすべて並べなさいと、こういうふうになっております。こういったやり方では実際にはできませんので、この辺、もう少しいろいろな形でのバリエーションを国の方で指導していただけませんでしょうかと、こういうふうに思っております。
建て替えの大きな理由に狭小住宅であるということも挙げられております。これに対しては、狭い住居を縦につなげたり横につなげたり、これを二戸一という言い方をしておりますけれども、こういう形で直接住宅の広さを加減するということと同時に、共用部分で大浴場を持っている団地もありますし、それから宿泊できる集会室、こんな手当てをしているところもあります。そういうことで狭小への対応というのも可能ではないかというふうに思います。
それから、地震のこともありましたので、防災上心配もしております。そういう中で、耐震診断、これもすごく大切なことでありまして、耐震補強は高額なのでできない、だから診断も行わなくていいと言う専門家もおります。ただ、私自身は、例えば、心臓のペースメーカーを買うお金はないけれども、自分が心臓が悪いということが分かれば無理をしないで生活をして長寿を全うできる、こういうことも例えとして挙げて、診断は大切ですからやりましょうと、こういうふうに言っております。
ただ、耐震診断の助成制度がありますけれども、なかなかうまく利用できておりません。これは制度の方にむしろ問題がありまして、板橋区の場合は四団体を指定しております。そのうちの二団体は民間はやらない、そのうちの一団体は板橋支部を紹介しますと、結局、その団体の板橋支部という一団体指定ということになりまして、競争がないところでは助成金をいただいても安くならないと、こういう状況があって使っておりません。
そのほか、IT対策とか、それから省エネルギーとか屋上緑化とか太陽光発電と様々な、つまり新しいマンションでやっていることをすべて可能性として考えて既存マンションでも行おうと、こういうふうに思っております。これらのことをやれば建て替えの理由というのはかなりなくなっていきまして、建て替えそのものをかなり先に延ばせますと。先ほど言いましたとおり、いざ建て替えとなった場合は、このような手を打っていれば、結果的に合意が早くなると、こういうことが言えるのではないかなと思います。
四十年ほど前の映画で「ローズマリーの赤ちゃん」というのがありましたけれども、撮影場所はニューヨークのダコタハウスという本当に古いマンションです。後でジョン・レノンが住んだり、それからニクソン大統領が入りたいと言ったんだけれども騒がしくなるのでお断りしたいというふうに、そういうふうに言ったほどの格調あるマンションです。このマンションは、当然百年以上ですけれども人気が高い。中がそのままであるということはありません、中を直しながら使っているということですが。日本では残念ながら百年以上を経たマンションというのはありません。例えば国会議事堂も、もうでも建て替えようという、こういう話というのは、移転という話は聞いていますけれども、なかなか聞いていません。つまり、手入れが良ければ建物はかなり長持ちするんだと、こういうことだと思います。
こういったマンションを造るのは、つまり長持ちするマンションを造るというのを、新しいマンションはそういうふうにしますということではなくて、今あるマンションを長く使うということを十分に検討していただきたいと。そのためには、助成もし、税金その他のそれを優遇する措置も是非作っていただきたいと。その上でマンション建替えの円滑化等に関する法律案という、このものが生きていくのではないかなと、こういうふうに思っております。
以上で私の意見といたします。どうもありがとうございました。
○委員長(北澤俊美君) ありがとうございました。
以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。
○吉田博美君 参考人の先生方におかれましては、それぞれの立場で見識のある御所見を賜りまして、ありがとうございます。
国土交通省の資料によりますと、平成十二年度末には建築後三十年を経過したマンションが十二万戸であります。それが十年を経過して平成二十二年になりますと、これは九十三万戸に急増するわけでございまして、また居住環境上も防災上もいろいろな面で課題を残しておるわけでございまして、これに取り組んでいかなきゃいけない。そして、現代の耐震基準が一九八一年に取決めになったわけでございますが、その以前に建てられたマンションが約百万戸あるわけでございまして、そうした中で耐震性にも大きな不安がありまして、特に都市での生活の不安というものの解消ということが今回の法案の提出にもつながっているんじゃないかなと思っておりますし、私はある意味ではタイムリーではないかなと思っております。
そうした中で、丸山参考人と門田参考人の方から特に触れられておりましたが、区分所有法でございますが、せっかくこのいい法律ができましてもこの区分所有法というのがある意味ではネックになるんではないかというふうな心配もあるわけでございます。
特に、門田参考人は淡路・阪神大震災で大変な御苦労をされて、この区分所有法でかなり御苦労なさったんではないかなと思っているわけでございますが、そうした中で、淡路・阪神大震災のときも、区分所有という形態になっているものですからなかなか住民合意形成を得るまでに時間が掛かったと。そして、訴訟にまで持ち込まれたこともあるわけでございますから、今、法務省としては区分所有法の建て替え決議の要件について検討されておりますが、それが、私は、より明確化にされるわけでございますが、その中で、国民の皆さん方により分かりやすく、本当に訴訟などの紛争に持ち込まないでも済むような方法が必要じゃないかと思うんですけれども、その区分所有法の建て替え決議の要件についてお考えがございましたら、丸山参考人と門田参考人からお聞かせいただきたいと思います。
そして、千代崎参考人におかれましては、日ごろ現場で常に考えられていることを、御所見を賜りまして、ありがとうございました。
その中で、先ほど御説明がございましたが、心配なのは建て替えの前に長く使えるかということの検討がどれだけ積極的に行われるかということでございますが、「助成や税制などの工夫をして長く使うことは良いという風潮を育てていただきたいと思います。」という言葉が書いてありますが、この「助成や税制などの工夫」ということで千代崎参考人のお考えがありましたら、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
以上でございます。
○参考人(丸山英気君) ありがとうございました。
区分所有法に関連してですけれども、私は一戸建てに関連しましてはおおむねよくできているんではないかというふうに考えています。特に、老朽化、客観的な要件ですけれども、老朽化の場合とそれ以外の場合に要件を変えているわけです。老朽化の場合には三十年、四十年ということと若干の積立金をどうするかという問題がありますけれども、私は、非常に単純化したということで、老朽化の場合には三十年、四十年という単純化にしていくことが望ましいと思います。それ以外の場合にはそれなりの必要があると思います。
ただ、問題は、私の意見では団地の建て替えの問題であります。これは、先ほど述べましたけれども、団地については制度として大変難しいことが多いものですから、恐らく法務省の立法の時間が決められたということでなかなかそこまで踏み込めなかったということもあるかと思いますけれども、私は団地については必ずしも適当な立法というふうには考えていません。
特に、さっきありました敷地共有者の四分の三の同意ということと、その新しい建物ができることによって影響を受ける敷地共有者の全員の同意という二つの要件を掛けて建て替えができると、個々の棟で建て替えができるというふうになっていますけれども、やっぱり団地全体の空間をどのように配分するかという議論を詰めることなしに単に四分の三でいいというだけではちょっと詰めが甘いんだろうと思います。
それともう一つは、影響を受ける者の全員の同意ということですけれども、裁判の場に行きますと私は適切な判断がなされると思いますけれども、それ以前においていろんな問題が起こってきそうな感じがして、そういう点では、場合によってはそういったものを削除した形で敷地に対する容積支配というところ一本でいくということも一つの考えではないかというふうには考えています。
以上です。
○参考人(門田至弘君) まず、やはり過分性の問題がいろいろ議論されるところじゃないかなと思っております。
これは、現行法令でも五分の四決議という圧倒的多数の決議を要しておるわけでございます。今回の、今、試案等が出されておりますが、どれがいいかを意見を求めるというような格好の試案でございますけれども、私はやはり、丸山先生おっしゃいましたように、明快、千代崎先生おっしゃいましたように、大事にもたせていかないかぬということは、これはもういろいろ環境面も考えてそうでございますけれども、一定のかなりな年限が経て、なおかつ圧倒的多数である五分の四決議を得るということであれば、ここのところに余り議論の余地がないように、すっきりと、かなりな年数、今、三十年とか四十年とお話ししておりますが、例えば四十年経過をすればあとは圧倒的多数で決議ができると。もちろん決議の前提要件でございますので、やはりその辺は明快である方がいいのではないかと、こういうふうに一点、そう思います。
それから、先ほど丸山先生おっしゃいました、やはり団地の定めでございます。
ちょうど大震災のときでも、一つの敷地の中に二棟ございまして、一棟は建て替え、一棟は補修と、こういうふうなものがございました。そうすると、ここには、影響を与えないと、他の棟に影響を与えないというのはどの範囲までかというのは極めて微妙なものでございます。
感情的、例えば、建て替えをする方はどんどんそれに向けて進む、補修をする方はそれなりの意思を表明して補修するのでございますけれども、やっぱりその補修棟の中にも、自分は建て替えをしたいとか、いろんな思いがございましょうから、ただし、一棟の建て替えをする方は敷地の使い方においても今までと全く同じというわけにはまいりません。法令、指導等も変わっておりますから、その場合に影響を与える者の全員の合意というのは、ここら辺がある程度明確になりませんと、なかなか四分の三で全体をこうするというふうに決めましても、現実的には非常に難しい問題が出てくるのかな。最後のところは権利者それぞれの御自身の価値判断によりますけれども、ある程度もう少し、団地の場合の定めがもう少し明確になればいいなと、こういうふうに思っております。
以上でございます。
○参考人(千代崎一夫君) お答えします。
例えば税金問題でいえば、建物の中に集会室とか公園とか、付近の方々が利用されるようなものもあります。そこでの税金の減免とか、そういうことをやられているんですけれども、言わば申請主義といいますか、これをむしろ自治体とかあるいは税務関係のところから積極的に情報を知らせて使っていく、使いやすくしていくと、こういうことなどができるのではないかなというふうに思います。
それから、長く使うことの助成という意味では、今は、修繕のための融資制度というのは、住宅金融公庫でマンションの共用部リフォームローンというのがあります。ただ、実際は全国で自由に使えるというふうにはなかなかなっておりません。おりませんというのは、知っている人が少ないということです。例えば戸建ての住宅金融公庫の制度でしたら、どこかの銀行に飛び込めばその制度を説明する人がいます。しかし、マンションの共用部リフォームローンですと、大きな都市にしかない。しかも、行ってもなかなか経験者がいない、こういうことがあります。そういうことの充実。
それから、例えば東京都では、共用部リフォームローンを使った場合の一%の利子補給というのをしております。こういった制度も、スケジュール的には問題がありますけれども、有効なのではないかなと、こういうふうに思っておるところです。
○藁科滿治君 それぞれ貴重なお話を承りまして、ありがとうございます。
私も、この法案は、阪神・淡路の体験等も踏まえておりまして、今後、マンションの建て替え事業に大きな成果、効果をもたらしていくと、このように受け止めております。
しかし、この法案でマンション建て替え問題がすべて解決するわけではありません。各参考人からも具体的に今後の問題点について指摘がありましたように、むしろこの法案は施行後のフォローアップが非常に重要であるということを改めて認識いたしました。
この法律は、あくまでも区分所有者が建て替えに合意したと、その前提の下の対策でありまして、実際には合意形成に至らないケースが多く出ると私は思います。私自身も合意形成をめぐるトラブルの事例に多く体験もし、また聞きもしてまいりました。
例えば、予想される状況として、区分所有者の努力で特定のマンションは建て替えが行われたとしましても、その隣や周辺はスラム化が進行すると、こういう都市の中に極めてアンバランスな状況が現出する可能性が大いにあるというふうに私は思っております。このような状況は、この法律に直接関係はないといえばないんですけれども、この法律の施行後、中長期の状況推移の中で大いに可能性のある重要な問題ではないかと私は思っております。
したがって、マンション建て替えの対策につきましては、目先の対策だけではなくて、都市全体の再開発、あるいは都市全体の再生事業と、こういう視点に立って、お話もありましたように、住民の声を聞きながら、中長期の視点、そしてまた都市全体像の視点、こういうものが非常に重要になるんではないかというふうに考えておりますが、ここらの点について、それぞれの参考人のお考えを聞きたいと思います。
それからもう一点は、言うまでもなく、もうお話もありましたように、この問題の最も大きな問題の一つは、高齢者など建て替え負担ができない所有者、こういう方々の立場が不利益にならないようにするということが非常に重要な問題であるというふうに思っております。
法案では、時価の買取り、公営住宅への優先的入居、家賃補助などなど様々な措置が設けられることは十分承知しております。しかし、実際問題として、高齢者の場合、移転後の生活環境や家賃の負担など、これからの不安の面から、残された人生を、率直に言って、古くてもいい、その場で住んでいきたいと、こういう心情になる方々も多いと私は思います。このような事情の中で、建て替え推進の所有者と高齢者の間で、合理的な基準だけでは割り切れない、解決しない複雑な問題が出てくる可能性が十分あると。
そこでお尋ねいたしますが、今後、高齢化の問題や、そして現下の地価あるいは住宅市況の低迷など、こういった合理的基準では割り切れない、解決し得ない要素、課題について、どういうような考え方で対応していけばいいのか、参考までにお考えを伺いたいと思います。
以上です。
○参考人(丸山英気君) 今お話しありました、個々のマンションの建て替えに成功しても、町全体で、全体としての町が良くならないと具合悪いじゃないか、もうおっしゃるとおりでございます。その場合に、どういった方策をしたら共同の建て替えができるのか、あるいは町全体が良くなるのかというのは、これはマンション建て替えだけの問題ではなくて、全体の再開発の問題だろうというふうに思っています。幾つかの政策が提案されているということを聞いていますけれども、そういった措置を可能な限りやっていく以外ないだろうと思います。
もう一つの高齢者の問題ですけれども、これは何もマンション建て替えだけの特有の問題ではありませんで、社会福祉をめぐる問題だろうと思いますけれども、マンションの場合には、古いマンションに高齢者が比較的多くいるというようなこともしばしばあるわけでありまして、高齢者の立場を尊重していかなければいけないということはもう御指摘のとおりでありまして、私の感じでは、このマンション建替え円滑化法には可能な限りの様々な措置が入っているんではないかというふうに考えています。
以上です。
○参考人(門田至弘君) まず第一点、町全体のことでございますが、大きく面的に整備をしていくということになれば、やはりこれはもう個々のものだけでは解決できないと。やはり、法定による全体計画を立案した上で、それに基づいた法定の事業化に進めていくしか、現実問題、個々の権利との整合性も含めてやっていこうとすればそれしかないかなと、もっといい考えあるんかもしれませんが、私はそのように思います。
それから、高齢者問題、これはもう建て替えに絡めては避けて通れない問題でございます。
いろいろ、もちろんやむを得ず転出される場合の税制上の措置から財産の保障からいろいろございますけれども、今、委員の御指摘のあった、そこに、もう一生ここにおりたいという方をどう解決するか。これはなかなか手法としては難しゅうございますけれども、やはりマンションの建て替えと併せて、そのマンションの中に高齢者でも住めるよう、住まえるような何か賃貸住宅を合築をして、それでその賃貸住宅の所有者はだれになるかという問題はございますけれども、さらにまた、分譲住宅とそういう賃貸住宅の合築ということをどちらかといえば避けたがるというそういうふうな中で、お年寄りがそこで一生終えたいという場合の解決というのはもうそういうことしかないかなと。
そうすると、お年寄りの資力の乏しい方がそこに住まいを続けるためにはやはり家賃もそれでないといけない。その見合うようなものでないといけないと。そうすると、その見合う家賃にしようとすればイニシアルコストを抑え得る何か措置をしないといけない。そこの所有者になる方が、お年寄りが住まっても採算が取れるようなものにしていかなくちゃならないということは、やはりそれなりの助成政策等が必要かなと。
そこに、一生そこで住みたいというお年寄りというのはこれ必ずいらっしゃいますので、それについてはそういう賃貸住宅施策を併せてやっていくしかないのかなと、そういうふうに思います。
以上でございます。
○参考人(千代崎一夫君) 広範囲で考えるまちづくり、都市計画という問題についていえば、住民参画型で、徹底した、住民がどういう意見を持っているか、それを発表する権利、それからそれを生かしていく、こういう仕組みを作ってやっていく、このことで、そのほかの法定なこと、それから制度上の問題、これを生かしていくということしかないのではないかなというふうに思います。
それから、高齢者の問題については、これは何も建て替えだけではなくて、日常の維持管理でも本当に様々な問題を持っております。リバースモーゲージとか、こういうことが言われたときもありますけれども、なかなかうまく使えるものではないなというふうに思っております。
先ほど門田さんの方からもお話もありましたとおり、中に一部賃貸住宅を造っていく、それから小規模なグループハウスを入れていくと、こういう工夫もあると思います。それから、団地などで何棟もあるときというのは、ある部分だけ残して従前の家賃できれいになったところにお住まいできると、こんなことも組み合わせながらやっていくということがいいのではないかなというふうに思います。
以上です。
○藁科滿治君 簡単に丸山参考人に伺いますが、我が国の住宅政策は、今日まで、率直に言って賃貸よりも住宅取得という面に重点が置かれてきたと判断をしております。今回の問題も含めて、総合的に国の住宅政策の在り方として、取得者とそれから賃貸者、この選択の両面の私はサービスの格差が出始めているんじゃないかということを痛感いたします。
この点について、納税者の立場にどのような考え方で説得力のある説明をするか、お考えがあれば承りたいと思います。
○参考人(丸山英気君) 私はそういった傾向はあったというふうに思います。
ただ、所有住宅と賃貸住宅の仕組みなんですけれども、賃貸の方は貸主が投下した資本を長い間掛かって回収しなければいけないというリスクを持っています。今日のように賃貸人がだんだんいなくなってくる、あるいは賃料が下がってくるという状態のときには、所有者はなかなかそういうものを造りたがらない側面があるわけですね。それに関していいますと、所有住宅の方は一回きりで終わりだということで、経営的には大変いい仕組みだということになります。
こういった全体の傾向はヨーロッパでもあるわけでありまして、ヨーロッパはほとんどが賃貸住宅であります。ところが、最近はこの区分所有というのが随分盛んになってきています。これは、賃貸住宅の多くが様々な補助金によって家賃補助がなされているというところが耐えられなくなったんだろうと思うんです。そういう点で、賃貸住宅の公営住宅なんかを払い下げるとか、あるいは公営住宅の一部分について負担をしてもらうというような政策が行われています。
日本の場合には、確かに賃貸住宅に対してその政策というのはそう多くなかったと思いますけれども、むしろ先行した形で所有住宅をやっているという意味で、国家全体の負担ということからいたしますと、所有住宅をうまく運用していくということが私は大事だろうと思っているんです。
ただ、そうはいいましても、そういったものを取得できない階層があることはこれは確かでありますから、そういう人たちには徹底的な形で様々な仕組みを通じて賃貸住宅に入っていただいて、過不足のないような形で生涯を送っていただくという仕組みは必要だろうと思っています。
そういう点では、私は余り賃貸住宅にシフトするということは、国全体から見ますとやや問題があるかなというふうに考えています。
以上です。
○藁科滿治君 ありがとうございました。
○続訓弘君 公明党の続でございます。本日は、丸山参考人、門田参考人、千代崎参考人、それぞれ貴重な御意見を拝聴させていただきまして、大変ありがとうございました。
まず、門田参考人に伺います。
先ほど阪神・淡路の貴重な御経験から、建て替え百八の中で三十五の経験を通じて具体的な御意見をお述べいただきました。大変難しい状況の中でこういう三十五もの建て替えを実現されたということは御苦労が多かったと存じますけれども、その御苦労の中で、マンション建て替えを円滑に進めるために、具体的にはどのような手続や手順を経ることによって合意を取り付け、建て替えを行っていくのが最も現実的であったか、その辺のところについて御意見を拝聴させていただきたいと存じます。
○参考人(門田至弘君) 先生御指摘の合意形成、これはもう基本、非常に難しいですけれども、基本でございます。
ただ、先生の質問に御的確にお答えできない部分もございますが、平時の建て替えとこういう非常時の建て替えというのは、やはり皆さん方が早く回復をしたいという、皆さん非常にそういう思いが強くて、この合意形成に至るプロセスというのは平時の場合に比べて比較的期間も短く、議論についてもやや少なかったというふうに思われます。
ただし、そうはいいながら、やはり補修をした場合にはこれだけ掛かります、建て替えをした場合にはこれだけ掛かりますという計画あるいは資金の内容、それらをすべて作成をして、比較勘案をした上で決議を行っておると、これはもう皆さんそのとおりなんで、それについてはそれなりの議論の経過というのを踏まえた上で行ってまいりました。
ただ、そこで、なぜこれだけの大量のものが短期間にできたかということにつきましては、大いに社会、震災の異常な心理の中で皆さんが復興復興ということばかりを意識しておったために、もちろん不利なことをあえて皆さん合意なさったというふうには私には思われません。そういう、補修にしたら幾らになる、皆さんは当然御自身の財産でございますから、補修をしてその後一生お住まいになる方もあれば、やはり財産、資産価値としての見方をされる方もありましょうし、その中で比較勘案をしながら決めていかれたと思います。
したがいまして、やや通常に比べれば議論の経過が少なかったのではないかと想像はされますけれども、今後、平時につきましては、やはり十分この辺は、もちろんいろんな価値観の方がいらっしゃる中でございますから、修繕計画に始まって、いずれ時間の経過とともに、これだけ修繕を投じるんだったらむしろ建て替えした方がいいんじゃないかという、この辺の議論については十分時間と経過を掛けていくしかないなと、それはそのように思います。
ちょっとお答えにならないかもしれません。
○続訓弘君 どうもありがとうございました。
続いて千代崎参考人に伺います。
千代崎参考人は、先ほど長生きマンションと、マンションが長生きするようなそういう相談に親身に乗っているんだというお話をされました。そこで、そういう御経験を通じて、マンションの建て替えを行うか否かの判断に当たってどのような点に留意すべきだと考えておられるでしょうか。その辺のところを伺わせていただきます。
○参考人(千代崎一夫君) 私自身は、そこでの合意がきちんと得られればいいのではないかというのが一番基本にあります。ただ、ですから、陳腐化してこれではもう住みにくいとか、そういうことが理由になってもいいと思いますけれども、合意をどういうふうにしていくかという問題。そのときに、自分たちの合意が、例えば団地の中で建て替える、ほかの棟に対してはどうなのか。あるいは、ある一棟を、団地ではなくても、自分たちが新しい法律に基づいて少し大きなマンションができる、その場合に付近への影響がどういうふうになるのか。こういうことも考えた上で、そこでの合意というのがすごく大切なのではないかなというふうに思います。
今まで建て替えに成功したほとんどの例というのは、容積率が比較的残っているというのを保留床として使って、それを処分することによって無料でできたり、あるいは少し大きくなったけれども小さい負担で済んだと、こういうことの積み重ねでありますけれども、それを十分に論議をして合意をしていく。合意をする区分所有者に対して様々な情報がきちんと伝えられる、それからその意見が自由に論議をできる、こういうことを通じてやりたいということになれば、それはいいのではないかなというふうに思います。
ただ、現実には税金も含めて造られている団地で、それを建て替えて、その周りに日照権問題を起こしている、こういうことも起きておりますので、やはりその住民に対して社会的なことも含めた情報がきちんと伝えられる、このことが大切だと思います。
繰り返しになりましたけれども、申し訳ありません。以上です。
○続訓弘君 ありがとうございました。
続いて丸山参考人に伺います。
丸山参考人は、学者の立場でいろいろこの問題について研さんにこれ努めておられると存じますけれども、今、門田参考人、千代崎参考人から現場の立場で、このマンション建て替えは大変難しいという状況の報告もございました。そこで、現在、法務省から区分所有法の改正試案が公表されている点に関しましてでございますけれども、マンションの建て替えを円滑に進めるに当たって、建て替え決議の方法、団地全体での合意取付けの方法について、改正試案の方向でよいのか、不足であればどのような点を見直すべきであると考えておられるか、この点を伺わせていただきます。
○参考人(丸山英気君) 戸建てに関しましては、特に老朽化した建て替えについてはよくできているというふうに思っています。しかし、団地につきましては私は不満であります。
と申しますのは、確かに形式的には団地の敷地共有者の四分の三の同意を取り、かつ個々に不利益を受ける敷地共有者の全員の同意を取るということでよろしいわけでありますけれども、しかし実質的には、これは先ほど申し上げたことですけれども、やっぱりその団地全体の空間の配分の仕方がしっかりした形になりませんと、その後に建て替えをしようとした人たちが建て替えられないわけです。ですから、私は、最低限、後発の建て替えたいという棟についても建て替えができるような仕組みを作っておかないといけないと思っておるんです。
その点からしますと、私法的には四分の三の、団地の敷地共有者の四分の三の同意と不利益を受ける者の同意でよろしいんですけれども、それではその後に建て替えようとする人たちが建て替えられるかどうかという保証を得られない。その保証を得られるような仕組みを作ることが必要だと考えています。それは、もしこのとおりに区分所有法の改正がなされたとすれば、比較的早い時期にその問題に着手をして建て替えを可能にする法制度を作りませんと、現実には建て替えは進まないと思います。
そういう点で是非とも、法務省の皆さん方の、ちょっと時間がないというその致命的なところがあるんですけれども、是非もう少し突っ込んだ形での考え方の提示といいますか、法文化というものをお願いしたいと思っています。
○続訓弘君 最後に、お三方に伺います。
本法案では、マンション建て替えに合意しない区分所有者の権利をマンション建替組合が買い取る仕組みが取り入れられておりますが、その際の買取り価格は時価によることとなっております。その時価について、紛争が起こらない評価方法としてはどのような方法が望ましいとお考えなのでしょうか、それぞれ伺わせていただきます。
○参考人(丸山英気君) 大変難しい質問でございます。
建物の価格、土地の価格については、一物何価、一物四価とか十価とか、いろいろ言い方がありますけれども、様々な考え方があります。ですから、やはり裁判の時点におきましても大変な争いになっています。建て替え促進派と建て替え反対派で時価の現実の値段が全く違うんですね。ですから、これはやはり何といっても、何らかの形で客観的に決めろといっても、これは大変難しい問題です。
したがいまして、私は、不動産の鑑定評価理論みたいなものが大いにそこで勉強していただいて、裁判所でももんでいただく形によってだけしか解決できないと考えています。一回でこういう方法が一番適当だということはありません。これは時間を経て、みんなが大体この程度だなというところを固めていく以外にないので、多少の時間が必要だというふうに考えざるを得ないと思っています。
以上です。
○参考人(門田至弘君) 時価の考え方でございますが、確かに定めていくことは非常に難しいというのはもうそのとおりだろうと思います。
これまでは、時価をどう扱ってきたかということにつきましては、やはりこれは鑑定によったわけでございますが、問題は、鑑定でも、鑑定をするところによって差があると。この差をどう解消するかというのは非常に難しい問題がございます。ただ、現在ではそれによるしか方法はないのではないかと思われますが、もう少し詳細まで突っ込んだものでないと、立場によって同じ鑑定でも差が出てくるという、これはどうしたらいいかというのは正直言って私は分かりませんが、問題意識は持っておるところでございます。
お答えにならぬかもしれませんが、よろしくお願いします。
○参考人(千代崎一夫君) 私もお二人の参考人と同じ考えですけれども、マンションで、阪神・淡路大震災でつぶれちゃったマンションを、つぶれたところで評価をするのか、でき上がったマンションで評価をするのかというのは本当に大変だったというふうに思います。
私自身も、今どういうふうにしたらいいのかというところは分かりませんというふうにお答えいたします。申し訳ありません。
○続訓弘君 ありがとうございました。
○富樫練三君 日本共産党の富樫練三でございます。今日はお忙しいところ、ありがとうございます。
最初に、門田参考人と千代崎参考人に伺いますけれども、先ほどのお話の中で、門田参考人から、マンション建て替えるんだけれども、その場合に高齢者の問題は避けて通れないと。そこで一生過ごしたいというか、やっぱり年を取ってから環境が変わるというのは大変つらいものがあるわけで、何とかそれを保障したいという気持ちなんだろうと思います。このことはとても今大事なことだというふうに、私も同感なんです。
そこで、その高齢者の方が同じマンションにずっと住み続けられるためには、だれが所有者になるかはともかくとして、その一区画というか一住戸を賃貸とかそういう形で確保することによって、余り喜ばれないかもしれないけれどもと先ほどおっしゃいましたけれども、だれかがそこを所有してそこに住んでいただくということが大事じゃないかという、そういう御意見ございました。私も、ここはとても大事なことだというふうに思うんです。
その場合に、例えば公団であるとか公社であるとか、あるいは市とか県が、公のところがその建て替えと同時に一住戸なり二住戸なり、希望に応じてそこを所有することによって、そこを賃貸の公共の住宅として高齢者に提供して、そこに家賃の減額制度を適用するとか、こういう方法も考えられるだろうと思うんです。そういう事例があったら是非教えていただきたいということ。そういう方法が現実の問題として可能かどうか、この点についても、門田参考人と千代崎参考人に是非教えていただきたいと思いますが、よろしくお願いします。
○参考人(門田至弘君) 先生御指摘の今の点でございますが、賃貸住宅を建て替えに際して分譲マンションの中に設けたという例は残念ながらございません。
これは、ちょっと住宅ではございませんけれども、やはり建て替えに際して、店舗なんかの施設が従前ございまして、その方が出ていかれてどうしてもその店舗が空いてしまって、なおかつ賃貸で保有せざるを得ないという例はございました。したがいまして、賃貸住宅を併設をしてそれを所有するというのは、これは理屈としては可能でございます。
ただ、そのことについて、やはり分譲の中に賃貸があるというのはどうなのかという議論がございます。ただ、所有者の皆さんでも、自分が所有しながらそれを賃貸に回しておるという例もこれは現実問題ございますから、単にその所有者が個人でないというだけでございますので、余り分譲住宅の中に賃貸住宅のウエートが高過ぎますとこれは財産の価値ということも含めていろいろ議論になるかもしれませんが、一部にそういうものがちょっと存在するということなら、これは何ら大勢に影響がないんではないかと。したがいまして、先ほどちょっとリバースモーゲージも出ておりましたけれども、そういう手法であってもよろしいと思いますし、あるいはまた、公的団体がそこを所有し、公営住宅が所有するというのはなかなかちょっと難しいかもしれませんが、そういう形で、しかも収支合うような形、あるいは収支合わなければ家賃助成をすると、そういうことでこれは対応は理屈としても可能であろう、そう思います。
ただし、残念ながら、このたびに際してそういうものを設けたというのは残念ながらございませんでした。何とか公営住宅に移ったりとか、そういうことで対応が可能でございましたので、そういう事例はございませんでした。
以上でございます。
○参考人(千代崎一夫君) 私も、事例としては知っているわけではありません。ただ、例えば都営住宅でも、一階が店舗で上が賃貸というのはたくさんあるわけですね。それの逆バージョン、それが店舗であろうと住宅であろうとというのはあり得るというふうに思います。
それから、そういうことが可能かどうかということはあります。建て替えた後にそういうふうになるということだけではなくて、お年寄りが亡くなってという言い方は変ですけれども、区画整理なんかの種地と同じように、行政、自治体がある一定の住戸を持っている場合に、その所有者として建物全体の建て替えに加わっていく、こういうことは可能ではないかと。むしろ、そうした方が有利な制度とかそういうものがうまく使えると。民間ディベロッパーだけでやっているよりは行政が一部にでも入った方がいいのではないかなと、こういうふうに思っております。
以上です。
○富樫練三君 今の点に関して、もう一言だけお二方に伺いたいんですけれども、今、国の方が、やむを得ず転出する場合、建て替えに伴って、その場合、借り上げ住宅で対応しようということもかなりウエートを置いて考えているようなんですね。その場合に、その建て替えたマンションに借り上げ住宅を用意すればその場所で一生過ごせるというか、高齢者の場合、そういうことが可能ではないかと。ですから、買い取るということもあるし、借り上げるということもあるし、その辺はひとつ検討の余地があるのではないかというふうに、これから工夫する必要があるというふうに思う点についていかがかということ。
もう一つ、今度の新しい法律でいった場合に、建て替えて容積率に余裕がある場合ですけれども、その場合は、保留床を設けてそれを売却することによって建築費をなるべく穴埋めをすると、こういうことが可能になるわけなんですね。そうすると、その保留床の部分を公が買い取って、むしろ、そこを公営住宅として、家賃の減額制度を適用して高齢者がずっとそこに住めるような対策を取るということも方法としては可能ではないかなというふうに考えているんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
○参考人(門田至弘君) その敷地の中で、それを何も転出をしないで、買い取って、あるいはまた借り上げということも可能ではないかということでございますが、理屈の上においては本当に可能であろうと私は思います。現行制度上いろいろ、公営住宅の場合は大変制約がございますので、むしろ公社とかそういった住宅の方がまだ柔軟に対応できるのではないかと、そういう意味では可能ではないかなと、そういうふうに思います。
それから、容積率に余裕がある場合に、もちろん保留床ができるわけですが、それを買い取ってということも、これも可能ではないかなと。ただ、その場合に、先ほど申し上げましたように、量的に多くなればやはり既存の権利者の皆さん方のいろんな意見ということの調整もせないかぬと、少なければその点は影響はないんですが。
あと、管理をする立場で、例えば、ある百戸ぐらいの団地の中に四、五戸だけ持っておると。そうすると区分所有し合うことになりますから、当然、総会に出席をしてそれでという、いろんな業務が出てまいります。それらは決して不可能でも何でもなくてできることではありますが、そういうふうな事務手続を含めた、その辺はやってやれぬことはないわけでございますので、そのことさえ決めればいいと、こういうことではないかなと、そう思います。
○参考人(千代崎一夫君) 先ほども言いましたけれども、民間ディベロッパーだけに、だけにって変ですけれども、頼るというやり方では、むしろそこの利益も入ってきた形で値段が決まっていくと、こういうことがありますので、できればそれだけでないやり方もないかなというふうに思っております。
公営住宅では公営住宅法に基づいてかなり難しい制約があるということになりますので、当然、公社とか少しバリエーションのあるところで入っていくということが大切だというふうに思います。両方とも可能だと思います。
ただ、区分所有をするということは、例えば半分持っちゃうとどうなのかと、あるいは先ほど出ています四分の三とか、五分の一の逆な数ですね、五分の一を確保する、あるいは四分の一以上を持っているというところでは、マンションの運営上、また逆な支障も出てくることも事実であります。
以上です。
○富樫練三君 最後に千代崎参考人に伺いますけれども、二点伺います。
先ほど、耐震診断と耐震改修の問題について板橋区の例が出されました、補助の制度があるんだけれども、なかなか使い勝手が良くないというか。この点について、国や地方自治体としてどういう努力をすれば使い勝手のいい耐震診断がどんどん進むというか、この耐震診断はとっても大事なことであって、多くのマンション居住者の方々の大きな不安でもあるし関心事でもあるんですね。これにきちんと行政の側がこたえることが今求められていると思うんですけれども、どの点を改善する必要があるかという点についてお考えをお聞かせいただきたい。
もう一つは、先ほどの質問と関連するんですけれども、やはりどうしても転出せざるを得ないという場合に公共の住宅で受皿を作る必要があると思うんですが、残念ながら日本の場合、公共住宅が大変後れている、ヨーロッパに比べてもですね。ですから、国の住宅政策そのものと大変深く関連してくる問題だというふうに私は感じているんです。そういう点で、ちょっと話が大きくなりますけれども、国の住宅政策の中で、公共賃貸部門、ここの充実についてどのようにお考えなのか、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(千代崎一夫君) お答えいたします。
一つは耐震診断の問題ですけれども、先ほど言いましたとおり、四団体指定されていて、事実上は一団体だと、で、ここで競争が起こらないと、そういうことがあります。
私は、例えば耐震診断のやり方、それから補強への進み方、それらをきちんと実例を公開すると。例えば、板橋区の○○マンションでは診断をこういうふうにしまして幾ら掛かりましたと。これは当然、管理組合としては実は建物としてのプライバシーなんですね。ただ、それをきちんと、中古マンションの評価ということにもかかわってきますけれども、そういうことが必要なんではないか。つまり、うちのマンションの公表していいよと、こういうのを自治体が募って、私のマンションでは診断をしました、費用は幾ら掛かりました、大丈夫だったので補修はしておりません、こういう。これがありません。
こういうのを聞きますと、それは教えられませんということですので、結局は診断を見積もる会社との一対一の、いわゆる民民の話になります。そうすると、今、価格というのはどういうふうになっているかといいますと、よく多いのは学校なんですね、学校の、何平米までは何百万円ですよと。これを当てはめていきます。そうすると、マンションの場合すごく高いです、とにかく。高いといっても、私自身は、例えば一戸建てでしたら十万円ぐらいの耐震診断を個人が出しますと、こういうのはあるんですね。そうすると、百戸あればかなりの金額になります、一千万だと。それを負担するのは大変だというのはどこかで片手落ちだなというふうに思っております。マンション住民もそういう負担をして自分の診断をするというのは別に矛盾はしないと。ただ、なかなか合意が取るのが大変だという中で、助成制度もあったらいいなと、こういうふうに思うわけです。
それから、実はそれは診断だけではなくて耐震の補強もそうなんです。補強の方法も住民によく広報されているわけではありません。それから、効果についても同じで、実勢価格も同じです。つまり、診断も補強工事の方も、やり方と、金額と内容というのの実勢価格をきちんと公開する、こういうことがあれば、なるほどほかのマンションでもこのぐらい掛けているのかと、やりましょうと、こういうことになるのではないかなというふうに思います。耐震の問題はそのぐらいで。
それからもう一つは、大きな意味での住宅政策ということですけれども、私自身は居住の水準をきちんと確保したいと、こういうのを一番に考えております。
その場合に、公務員の職員住宅で家賃もそれ並みということが基準になっていいのではないかなと、こういうふうに思います。そうすれば、国民の様々な階層の人がそのことを目標に住宅を確保していくということになります。つまり、住宅の質は広さで考えて、あと住宅の居住費として考えていただくと。つまり、所有しても構わないし家賃で入っていても構わないけれども、それは居住費という考えでいって、それが例えば公務員の職員住宅の場合は幾らぐらいになるんだろうかと、これを国民全体の目標にするということがいいのではないかなというふうに思います。
以上です。
○富樫練三君 終わります。
○田名部匡省君 無所属の会という会がありまして、田名部匡省と申します。
今日は大変御苦労さんですが、大体最後になりますとほとんど皆さんが質問されたことばっかりでありますので、重複しないように質問をさせていただきます。
私は、青森県の八戸市が私の住んでいるところでありまして、地震の多いところなんです。十勝沖地震で私の家も壊れまして、修理しながら住んでおったが、もうとても耐えられなくて、新しく建てました。火災保険は掛けておるけれども、余り地震保険というのは、めったにないものだと思っているものですから掛けておりませんでした。
そこで、私は今、参考人の方々の話を伺って、どうも議論が、余りそういうことにお困りになっていない方々が、役所でも専門家でもそうですが、議論をされているなと。要するに、本当に実態、門田参考人、実際に阪神・淡路大震災でいろいろ苦労された、そういうところの実態を、まずやっぱり住んでいる人たちの意見というものを踏まえてこういうものを進めないと、もう実態と合わない、そんなものが出てきて議論になっていくんじゃないかと、こう思うんですね。
そこで、最初に丸山参考人にお尋ねしますが、今後のマンションというのはどの程度進んでいくのか。昔は投資とか投機的目的で買っておった人たちもあるんだろうと思うんです。また、高齢者にとってはこれは非常に利便性が高いということなんですけれども、実態を見れば、格付は下がるわ累積赤字はどんどん国は増えているわ、あるいは税収増加以上に金利が上回っていると。加えて、先ほど申し上げた少子高齢化ということを考えて、一体どういうふうに進んでいくんだろう、こういうふうに思うものですから、御意見を伺いたいと思います。
○参考人(丸山英気君) いつも考えていることを質問されたように思います。
恐らく住宅というのはこれからそんなに要らなくなるだろうと考えています。特に私の感じでは、都心にますますいい住宅ができますので、郊外からシフトされてくるということになりますと、郊外というのが余り人のいない、戸建てであれ団地であれマンションであれそういうことが起こってくるだろうと思うんです。
とりわけ私はマンションが非常にきつい問題が起こってくると考えています。ある郊外の団地のマンションの競売価格なんというのは百万円とか二百万円とかそういう価格なんですね。そういったものを競落して現実に住む人は、建て替えなんということはこれはもうほとんど考えません。そういうところは居住環境が悪くなりますから、もっといい人は、いい人と言うのはやや語弊がありますけれども、余力のある人はもっと違うところへ行ってしまうだろうと思います。そうなりますと、私は大都市の郊外というのは大変きつい状況がこれから来るだろうと考えます。売却しようと思ってもなかなか売れない、したがって空き家が出てくるということで、私はその問題は今後の住宅政策の大問題だと思うんですね。
この法律ができて、能力のあるところは建て替えると私は申し上げました。しかし、郊外の団地の相当多くは私は能力が今後欠けてくるのではないかと思います。とりわけ高齢者が出てきたり資力の乏しい人が出てまいりますと、建て替えというようなことはほとんど夢物語だろうと思います。そもそもそこに住むことを継続していく人がなくなるだろうと考えます。
さらに、問題になっていますのは、恐らく国際化が出てまいりますと、そういうところにヨーロッパと同じような困難な問題が私は出てくるというふうに思っています。そういう点で、大都市の住宅政策は相当今後違ったものになるだろうと考えています。
以上です。
○田名部匡省君 千代崎参考人にお願いしますが、私は、建てる方の立場からいうと、あるいはそこへ住む人もそうですが、一体耐用年数というのはどのぐらいのものか、これが全然分からないんですね。ですから、立派なのを建てると、コストとの見合いでそれはいいものはできます。私はコンクリートパイルを打ちました、もう二度と壊れないようにと思って。そうすると、高い住居になっちゃうんですね。ですから、そういうことが、例えば築後三十年、四十年、一体どのぐらいもつのか。
ロンドン、パリ、アメリカなんかへ行ってみて、もう相当古い建物がぴしっと建っていますよね。日本は地震が多いのに、一体この辺のところは、建ててもらう人も入る人も耐用年数というのを全然分からぬで、それによって見合う、ここはもう六十年もちますよ、だから値段はこうですよということがないでやられているんですね。このことについてどう思いますか。
○参考人(千代崎一夫君) 住宅の耐用年数が短いというのは本当に私も感じております。本当に外国へ行きますと、ボストンに行けば、ボストン茶会事件の起きた時代のという、二百年、石で造ったのがありますけれども、ツーバイフォーで造ったりしているのもあると聞きますと、木造でもかなりもつなと、こういうふうに思っております。
私自身は、耐用年数について、自分の一生ぐらいは一軒もたないとしようがないんじゃないのと、こういうふうに思っております。今度の建替え法案の三十年、四十年というのは、一生生きるつもりでいたのに、三十年、四十年の働き盛りにおまえもうリストラだよと、こういうふうに言われるのと同じなんじゃないかなという気がしております。私自身は、先ほど申したとおり、普通に建ててあれば五十年、目標としては百年もたせましょうよと、こういうふうに思っております、率直のところ。
本当に、先ほども言ったとおり、百年と言うと夢物語で、むしろ信用されなくなっちゃう。ですので、五十年というのを目標にして、何が悪くなるか調べた上でやりましょうというふうに言いますと、かなりの方は納得されます。ですので、私としては、最低五十年、目標百年、どんなマンションでもと、そういう言い方をしております。
○田名部匡省君 地域の実情ということもあるんですね。
例えば、沖縄、九州の方と違って私の方はもう雪が降ります。ですから、マンションじゃなくて賃貸アパートというんですか、お年寄りの人たちはここへみんな今入っているんです、除雪が要らないから。雪かきでこれもう大変なんですね。市役所が夜中の二時、三時に除雪やるんですが、自分の屋敷の中の道路の部分を起きていって外へ出さないとできないものですから。
ですから、日本という国は、地震も多い、地域の実情も違うということで、この辺のところ本当に、やってから泥縄式で後からいろいろ法律出すのでなくて、事前にきちっとやっぱり何でもやって、どれにでも耐え得るようなことを私はやっていかなきゃいかぬのではないかと、こういうふうに思うんですね。
いろいろなお仕事されて、この辺についてのお考えをまたお聞かせいただきたいと思います。千代崎参考人。
○参考人(千代崎一夫君) 本当にそういうふうに思います。
ただ、建物を長もちさせるというふうに考えれば、まだ技術上は問題ありますけれども、特に北の方では外断熱、これを研究することが大切だと思います、建物を長もちさせる上でも。
それから、雪の問題でございますけれども、私自身も、九五年に地震の本を書きまして、それの講演ということで八戸にお伺いしたことあります。そのときに、そんなこと言ったってちょっと前にも地震があったんだよということをお伺いして、ああそうなんだなというふうに思いました。
それで、私自身は東京で育ちましたけれども、連れ合いは長野でして、正月行っていたところ、夜中の十二時に一家総出で村道じゃない道を雪かきに行くんですね。これ、どうしてと言ったら、明日の朝母親を病院に連れていくのに、雪かきをしておかないと村道に出られないと、こういう話でした。
それで、そのとき思いましたのは、この間かなり全国的に有名になりましたけれども、秋田の鷹巣地域で、福祉でまちづくりと言っている有名なところですけれども、ここでは、高齢者住宅を、町といってもかなり広い、都会の町ではありませんけれども、そういうところに持ってきて、冬の間だけでもそこにいていただくと。そうしませんと、ヘルパーさんが行くのも、雪上車がないと行けないようなところに来てくれと言われても行けないと。だから、せめて雪のある間だけは同じところで住んでという工夫もされております。
日本は縦に長いです。ですので、そういう町としての工夫も必要なのではないかなというふうに思っておるところです。
○田名部匡省君 門田参考人にお伺いしますが、私はいつも、この間もテレビで八十階のマンションができたとか百階ができたと、造ると。一体、これが耐用年数来たときにはどうやって壊すんだろうなと。国会の周りにも相当高いビル建っているでしょう。アメリカなんかではダイナマイトで壊しちゃうけれども、そんなことは日本じゃできないし、いつも会館の窓から見て、あれは壊すときはどうやって壊すんだろうなということを、余計な心配かもしれぬけれどもしておる。
それから、建て替えに対する各種の支援対策。取りあえず、建て替える間はどこかへ行ってその家賃を補助するとかいろんなことを考えておるようでありますが、私は、マンションというのは事業家が事業としてやる。そこを出た人たちに国民の税金を、例えば自分の家は建て替えたいと思ってもお金なくて建て替えられない、その人たちが税で負担している。それをマンションに入る人がそっちへ住むからといってその人たちに家賃を出すというのは、公平公正という観点からこれはどんなものかなと、こう思ってこの間法案の説明を聞いておりました。
これは横にそれますけれども、本四架橋に、この間私の地元、六百人ぐらい集まった会合で言ったんですけれども、行って渡ったことある人と見たことあるのは手を挙げろと言ったら、三人おったんです。渡らなくても見なくても、あそこの赤字はあなたたちの税金でこれ負担しているんだよという話をしたんですけれども、そういう理屈と一緒で、この辺のところをどうするか。
あるいは、障害者とか高齢者で困っている人は、これはもう別に対策を私はやらないといかぬと思うんです。本当に困っている人は自治体でそういうものを建ててやっぱり利便を図るという、そんなことを考えているものですから、どうでしょうか。
○参考人(門田至弘君) 今、先生御指摘の、まず建て替えというのは、おっしゃるように、皆さん自分の財産を建て替えるわけでございますから、おっしゃるとおりなのでございますが、ただ、ここに、まず建設費の補助に関しましては、共用通行部分、廊下、階段、エレベーターみたいな通行部分の補助とか、一定の制約の中での補助しか現在制度化されていないんですね。それは、そういった共用部分というのは、通常でいえば通路とかそういうふうな建物の中にあるだけで、そういったものに対しては補助が現に出されております。これは考え方であろうかなと思います。
それから、税金使って賃貸の、その辺のことというふうに御指摘ありましたけれども、やはりこの賃貸の対策というのは、あくまでも高齢者とか弱者ということを視野に入れた、御自身でできる方は御自身で建て替えの費用も出されますし、御自身の財力をもって他の賃貸を求めたりとか、できる方はやっていかれると思いますが、できない方をどうするかというのが問題であるかなと。そういう意味では、対象としては、高齢者や弱者やそういうことがこの賃貸の対策の主たる対象ではないか、それは先生の御指摘のとおりですね。ですから、税金を投ずるのは投じるだけの、そういう方たちに対して投じるのでありまして、そういう意味では公平の観点に照らして何ら疑義を生じるところではないのではないかなと私は思います。
○渕上貞雄君 本当の最後は社民党の渕上でございまして、どうぞいましばらくお付き合いを願いたいと思うんですが。
今、田名部先生の方からもお話ございましたけれども、門田先生と丸山先生、耐用年数、住宅の耐用年数について、木造とコンクリではそれぞれ違うと思うのでありますけれども、大体どういうふうに考えればいいのか。先ほど千代崎先生の方からは大体考え方をお聞きしましたので、耐用年数についてのお考え方について、それぞれお二人の先生、御意見いただきたいと思います。
○参考人(丸山英気君) 耐用年数というのは、私は建物の専門家じゃないので分かりませんけれども、かなり長いものだろうと思うんですね。パリとかベルリンに行ってきますと、木造の何百年たったものを、私の言葉で言えば改修をしているんですね。ですから、それは耐用年数という面からすると、木造だってやっぱり百年単位の耐用年数があるんだろうと思うんです。
私は、その耐用年数と今回の区分所有法の改正をくっ付けて考えますと、三十年で建て替えができるとか四十年で建て替えができるというのは、これは何も耐用年数を言っているわけではないんですね。老朽化というのはどのくらいだろうかとか、あるいは費用の過分性とはどのくらいだろうかという議論が出て収拾が付かないんで、それだったら客観的要件はやめてしまって、三十年とか四十年に一本化したらいいじゃないかと、こういう発想なんですね。しかし、五分の四を取るということはこれは至難の業でありますから、そのことによって耐用年数前の三十年のものが建て替えられるなんということはほとんどあり得ないと思っています。そんなばかなことをするのは経済合理性からいってあり得ないんですね。
だから、そういう点で、耐用年数だけを言いますと、私は百年ぐらいもつマンションというのはもうざらざらできていると思います。ただ、言っておきますけれども、ある時期に建てられた日本のマンションはかなり悪いものがありまして、建て替える以外に方法がないというマンションも厳然と存在していることは確かです。ですから、それは建て替える以外にないと思っています。
以上です。
○参考人(門田至弘君) 耐用年数につきましては、私も建築の専門家でございませんので明確に申し上げ難いと思いますが、やはり物理的耐用年数というのは、皆さん御指摘のように、かなりもつだろうと思います。恐らく三十年、四十年たっても、きちんと維持管理をしてきちんとやっておけばそれは十分もつのではないかと、こう思います。
ただ、これは時代時代によって、建物の質といいますか、規模もそうですが、中身の設備もそうですが、そういうものが時代時代によってかなり違ってまいっておりますので、その時々の時代に応じたやはり判断というのは必要かなと思います。
それからさらに、物理的耐用年数だけでなくて、確かにコンクリートというのはもつんでしょうけれども、機能的な面とかいろんなことを総合的に考えて、建物が現代の時代に合わせてどうなのかということも中にはあろうかなと思います。そこらについては、五分の四という圧倒的多数で、これはもう建て替えした方がいいよというふうに圧倒的多数の方が考えるんだったらそのようにしていったらいいと、こういうことではないかなと。
単純に、建物が本当に維持できていって、もたせることだけに観点を絞れば、千代崎先生おっしゃったようになかなかかなりもつのではないかなと。ただ、丸山先生もおっしゃいましたように、終戦直後に建ったものとか、いろいろ確かに、たしか昔のもので基礎ぐいを松の木を使っておる共同住宅があったりとか、竹筋みたいなこと、壁に竹が入っておるとか、鉄筋の代わりに、そういうものもありますから一概に言えないのではないかと。ですから、その辺はもう状況に応じてと、こういうことかなと思います。
○渕上貞雄君 御三方からそれぞれ耐用年数にかかわる問題と今回の法案の作りの関係について大変いい御意見をいただきまして、ありがとうございました。
そこで、千代崎参考人の方は、建て替えよりもどうも補修に力を入れた方がいいのではないかというふうに、私、お話を聞きながらそう思ったところでございまして、私は、建て替えよりも補修の方が合意形成というのは非常に得られやすいのではないかというふうにも思います。その点、建て替えと補修の間における合意形成の在り方、ありようの問題といいましょうか、中に入られて、恐らく、いや建て替えた方がいい、いや補修の方がいいという意見の中に先生何回かお入りになって御意見を聞かれたのではないかと思いますが、その場合、補修に対する助成制度というものをどのようにお考えでございましょうか。
○参考人(千代崎一夫君) 私自身は、まだ実際の建て替えの問題で業務に携わっている、そういう経験はありません。建て替えという言葉が出るぐらい、だから三十年くらいのところではありますけれども、建て替えはいつごろだろうねというそういうお話であって、建て替え問題で悩んでいる、あるいは合意を取るというところでした経験はありません。
ただ、私自身も、それはいつかは建て替えなきゃいけないというのは当然のことだと思っております。ただ、それまでやるだけのことはやって、使い切って建て替えというふうにしたいというふうに、こういうふうに思っているわけです。
その場合に、補修に対する支援というのは、先ほど、これは極めて気分的な言い方かも分かりませんけれども、長く使えることを良しとする風潮ということを、税金の面でも、それから長く維持していくための費用の助成、こういうふうに考えていただきたいと。
現実には、建物を壊すと産業廃棄物というのはすごいです。それは、使って使えないことはないですけれども、あれだけのコンクリートを小さくして砂利にしてここに敷いてみましたなんというのは、これリサイクルとも言えないですよね、むしろ。ただごみにしただけと。それをどこに使うかという、こういう問題だと思います。ですので、なるべく生かして使っていきたいと。
そのためには、当然、これから造る建物というのはより慎重に考えなきゃいけないと思います。ですので、今までの建物を私は五十年もたせたい、百年もたせたいと、こういうふうに言っているわけですから、これから造る建物は、当然、百年はもちます、二百年もたせましょうと、こういう建物でないといけないというふうに思っております。
そういったときに、新築の場合はそういうふうに、そういう目標で考えていただいて結構ですけれども、私は、今ある建物を五十年もたせられない技術であれば、これから造る建物も百年もたないんじゃないかと。理由としてはいろいろありますね、先ほど言いました設備の陳腐化とかそういうこともありますし、それから社会の要請でもっと違った建物をここに建てた方がいいと、こういう場合もあると思います。
ただ、そういう場合というのは今言っている建て替えとは違うと思いますので、私自身は、補修にお金を出すという制度、例えば、先ほど言いましたとおり、東京都では共用部のリフォームに対して、住宅金融公庫を使った場合のみ一%を補充しております。これをどこから借りても一%補充させてよというのはいいと思いますし、それから、区によっては共用部分のリフォームに関しても個人に対する融資も作っております。こういうものもいいのではないかなと、こういうふうに思っております。
以上です。
○渕上貞雄君 門田参考人にお伺いいたしますけれども、阪神・淡路の大震災を経験をされて、恐らく貴重な体験をされ貴重な御意見をいただきましたことを感謝申し上げますが、そこで、建て替えにおける公的な関与についてどのようにお考えでございましょうか。
○参考人(門田至弘君) 建て替えそのものは、公的なものが関与しないとできないということでは決してございません。
ただ、震災当時、なぜ私たちがたくさんに関与するようになったかという背景は、やはり建物が壊れたということは請負工事に何か問題があったんではないかと。請負業者さんはそのようにも考えておられたでしょうし、さらに、平時のマンション建て替えはこれまでに全国で六十数棟ございますけれども、皆ほとんどが、容積率がたくさんあって保留床がたくさんできて、しかも保留床を抱えることによって、それで利益を上げてということができてこそ民間の皆さんが積極的に関与されたと思いますけれども、そういう利益を得るという可能性がほとんどない。なおかつ、そういう被災のときに、皆さん財産を大きく失われて、そういった中で、先ほど申し上げましたように、法人格もない任意団体が建て替えできるのかと。言わばリスクが一杯という状態の中で、しかし自分たちだけではなかなかできないボリュームのものがあったと。
そういうときに、たまたま私たちは、よく分かってやったんじゃなくて、いろいろ問題があって分からない部分はありますけれども、これは施策としてやろうということで、問題の多寡あるいはそのリスクを、実は非常に今から考えれば多少無防備だったのかもしれませんが、建て替え支援要請のあるものはみんな受けようという姿勢で実は臨みました。
したがいまして、その辺のところは、通常でない状態のときには公的関与というのは、やはりこれはしないとなかなか円滑にいかなかったんではないかな。平時のときにじっくり議論をして、計画も十分練り、そういった場合に公的な関与が絶対に必要であるかということについては、これは議論と取り方によっていろいろあろうかと思います。
ただ、一般の、何もその辺色を付けずに言われる皆さんの声の中には、やはり公的なものが関与した方が安心であるという、安心マークみたいな、そういうことが若干皆さん意識の中にあって、例えばどこかの民間の団体に頼むときに、やはり皆さん利害関係のある方とか、あそこはこうするんじゃないかという疑心暗鬼があるケースが多いんですが、その辺は公的機関というのは元々そういったものを持ち合わせておらないわけでございますから、そういうことに関しては公的機関の関与があってしかるべき時期とか、そういうものがあるのかなと。絶対に関与しないといけないという、そういうことではないかなと思います。
以上でございます。
○渕上貞雄君 最後になりますけれども、丸山参考人にお伺いいたしますが、住宅政策上の問題でもあろうかと思いますけれども、建て替えの合意手続における客観的要件のあいまいさというもの、先生は不満というような言葉で示されたのではないかと思いますけれども、今回の法律を制定をするに当たって、具体的、客観的な要件というものをどのようにお考えでございましょうか。
○参考人(丸山英気君) 建て替えの合意の客観的要件というのは、区分所有法上では五分の四というだけではなくて、居住目的の同一性とか敷地の同一性とか、あるいは費用の過分性、あるいは時価というようなことがあるわけですけれども、そういったものが非常にあいまいである。あいまいであるというのは、ある意味では法律はもうやむを得ないところなんですけれども、それも通常の法律家ではなくて、ごく普通の市民がそういったものを合意する場合に、やっぱり気を付けて立法しなきゃいかぬというふうに思うんですね。私は、そういう点では、特に老朽化の場合については大変すっきりしたものになってきたということで高く評価しているわけです。
ところが、再三申し上げますように、団地の方では大変合意が難しいんですね。数千人とか数万人の団地の中で合意をするということはもう至難の業なんですね。そうすると私は、正にさっきのお話ではありませんけれども、そもそも仕組みが複雑なんですから、ちょっと公的なところで仕組みについて後押しをしてあげるということがどうしても必要だと思うんですね。お金を出すとかそういうことは私は不要だろうと思うんです。しかし、その複雑さというものをできるだけ普通の市民がやりやすいような仕組みにしていくというのが、正に私はこの円滑化法の最大の目的だと思うんですね。そういう点からすると、もうちょっと団地についてはお考えいただいて、あるいは場合によっては、時間的に足りなければ別の時期にもう少し言及をした形でやっていかないといけないんだろうというふうに思っています。
以上です。
○渕上貞雄君 ありがとうございました。
終わります。
○委員長(北澤俊美君) 以上で参考人に対する質疑は終了をいたしました。
参考人の方々には、長時間にわたりまして貴重な御意見を拝聴させていただきまして、誠にありがとうございました。今後の審議の中に十分活用させていただきたいと思います。
委員会を代表して、御礼のごあいさつとさせていただきます。誠にありがとうございました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後零時十四分散会