法改正・創設
資料 |
マンションの建替えの円滑化等に関する法律
―参議院・国土交通委員会― |
第154回国会 国土交通委員会 第17号
平成十四年六月四日(火曜日)
午前十時開会
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出席者は左のとおり。
委員長 北澤 俊美君
理 事
鈴木 政二君
脇 雅史君
藤井 俊男君
弘友 和夫君
大江 康弘君
委 員
荒井 正吾君
木村 仁君
月原 茂皓君
野上浩太郎君
野沢 太三君
松谷蒼一郎君
森下 博之君
森山 裕君
吉田 博美君
池口 修次君
佐藤 雄平君
谷林 正昭君
藁科 滿治君
森本 晃司君
大沢 辰美君
富樫 練三君
田名部匡省君
渕上 貞雄君
国務大臣
国土交通大臣 扇 千景君
副大臣
国土交通副大臣 佐藤 静雄君
国土交通副大臣 月原 茂皓君
大臣政務官
国土交通大臣政務官 森下 博之君
事務局側
常任委員会専門員 杉谷 洸大君
政府参考人
法務省民事局長 房村 精一君
国土交通省都市・地域整備局長 澤井 英一君
国土交通省住宅局長 三沢 真君
参考人
都市基盤整備公団理事 那珂 正君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○マンションの建替えの円滑化等に関する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(北澤俊美君) 次に、政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
マンションの建替えの円滑化等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に法務省民事局長房村精一君、国土交通省都市・地域整備局長澤井英一君及び国土交通省住宅局長三沢真君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(北澤俊美君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
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○委員長(北澤俊美君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
マンションの建替えの円滑化等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に都市基盤整備公団理事那珂正君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(北澤俊美君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
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○委員長(北澤俊美君) マンションの建替えの円滑化等に関する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言を願います。
○吉田博美君 自由民主党の吉田博美でございます。
マンション建替え円滑化等に関する法律案について質問をいたします。
大臣が本会議での趣旨説明の中でも申されておりましたが、国土交通省の資料によりますと、平成十二年度末までに、今マンションの建築後三十年を経過したものが十二万戸ある。それが十年後になりますと、平成二十二年には九十三万戸に急増すると言われております。このことは住環境上も防災上も極めて大きな課題になるんではないかと思います。
私自身もこれは大きな問題ではないかと思いまして、実は私の身内もマンションに住んでおります。老朽化したマンションに住んでおりますと、本当にこのマンションは大地震には大丈夫かな、このマンションはいつまでもつのかな、建て替えはできるのかな、お金は幾ら掛かるのかなというふうないろいろな不安が老後の不安と一緒に重なり合いまして、言わば本当に消費の抑制にまでつながってくるというのが現状じゃないかと思います。そして、マンションというのは大体が非常に人口密度の高いところにあるのではないかと思います。そうした中で、住民の不安は地域の不安になり、ひいては社会の不安にもつながってくるんではないかと思われておるわけであります。
それに加えまして、マンションは多くの皆さん方が大体若いうちに購入をされまして、そしてマンションが老朽化していると同時に、また住民も高齢化をしてくるというわけでありまして、そうした中で、当初のマンションというのは中低階層のものが多くあるわけですから、エレベーター等はほとんどないのが現状じゃないかと思います。しかし、たまにエレベーターがありましても、共有部分の階段段差が非常に厳しいということで、高齢化して、高齢者の皆さん方にとりましてはマンションでの生活というのはかなり苦労を強いられるんじゃないかと思われるところでございます。
そして、日常の生活におきましても、例えば通勤あるいは買い物等はもとより、レクリエーション等での外出する機会等もエネルギーを非常に使うようになるわけです、そうした生活上の中でありますから。そうしますと、おのずから高齢者の皆さん方はマンションではなかなか外出機会は少なくなり、そして社会的にも閉鎖されてしまいますから、健康面でも精神面でも大きなダメージを受けるんではないかと思っておるところでございます。
また、バリアフリーについてでございますが、一戸建ての家のバリアフリーならともかくとして、マンションでのバリアフリーというのは自分の専有部分だけのバリアフリーではだめだと思うんです。やはり廊下だとかあるいは階段部分のバリアフリー化もしていかなきゃいけない。そういうことも急がれるところでありますが、しかしながらマンションにエレベーター等を設置するための改良工事をしようとしましても、古いマンションというのは階段室型になっているんですね、階段からその部屋に行くという。それを改良工事するというのは非常に技術的にも難しくて、しかもお金がかなり掛かるわけでありますから。
また、耐震基準につきましても、現代の耐震基準というのは一九八一年からの耐震基準になっているわけでありますが、それ以前のマンションが何と百万戸あるそうであります。その皆さん方はやはり大きな不安を抱えているわけでありますから、この現代の耐震基準にこの百万戸をどうやって変えるか。改修工事をしようと思っても、これも大きなお金が掛かるわけです。
じゃ、どういう方法があるかということになりますと、やっぱりマンション建て替えしかないと思うんですけれども、ところがマンションを建て替えするときに我々忘れてならないのは、淡路・阪神大震災のときのあの復興計画の中でマンション建て替え等をやりましたが、区分所有法という形態になっております。住民の合意形成を得るまでにかなり時間が掛かりまして、そして訴訟にまで発展をするケースがあるわけでありまして、こうした中で、やはり私は区分所有法というものの建て替え決議の要件について、より明確化し、簡素化すべきことが望まれるんではないかと思います。
また、昨年、都市再生本部が設置されました。都市再生本部におきまして議論されているのが、老朽化したマンションの建て替えは都市再生に資する最も大きな課題だと言われているわけでございまして、そうした中で、都市再生を図る上からも建て替えをし、バリアフリー化をしたり、あるいは耐震構造をきちっとすることによって居住環境の向上を図ることが急務であろうと思います。
そうした中で、本法案の提案はまさしくタイムリーではないかなと思っておりまして、国民の皆さん方の真の生活向上を図る上からもこの法律の効果を期待することを込めながら、私はこれから幾つかを質問させていただきたいと思います。
まず最初にお尋ねしますが、本法案の適用範囲は第十二条の認可基準に該当し得るマンションのことを指しておると思いますが、具体的にお聞かせをいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○政府参考人(三沢真君) まず、この法案におきましてマンションとは何かという定義でございますけれども、マンションとは、二人以上の区分所有者がいる建物で、一戸以上の住戸があるものというふうに定義しておりますが、その中でさらに、この法案に基づいてマンション建て替え事業の実施の対象となるもの、これをさらに定義しております。
これは、先ほども申し上げましたマンションの中で、住宅政策上の効果という観点から、一つは従前マンション及び再建マンションの住戸が一定数以上であること、それから建て替え前のマンションの構造、設備の状況等にかんがみまして、建て替えを行うことが良好な居住環境の確保のために必要であること、こういった基準に適合するものというふうにしているところでございます。
それで、今申し上げました一定戸数でございますけれども、具体的な戸数は今後国土交通省令で定めるということを予定しておりますけれども、建て替え前後ともにおおむね五戸以上のものということにすることを現在のところ予定しているところでございます。
○吉田博美君 次に、これまでに建て替えが進まなかった最大の要因はやはり私は区分所有法にあると思います。区分所有法の五分の四の建て替え決議が得られないと駄目と聞いておりますが、法務省ではこの決議の要件を明確化すべく検討中と聞いておりますが、私はこの要件は国民の皆様方に分かりやすく、訴訟などの紛争が起こりにくいものにすべきだと考えておりますが、法務省の御所見をお伺いいたします。
○政府参考人(房村精一君) お答え申し上げます。
御指摘のように、建て替えのために五分の四の決議が要るわけですが、その前提として、区分所有法では要件を定めております。現在、「老朽、損傷、一部の滅失その他の事由により、建物の価額その他の事情に照らし、建物がその効用を維持し、又は回復するのに過分の費用を要するに至ったとき」という、なかなか分かりにくいという御指摘を受けているのも事実でございます。
そういうところから、現在法制審議会で検討を進めておりまして、これをもう少し明確化しようということで今年の三月に中間試案を公表いたしまして、現在そのパブリックコメントということで御意見を求めているところでございます。
その中間試案の考え方といたしましては、まず第一に、老朽化を理由とする建て替えの場合には、客観的な基準としてマンション建築後三十年又は四十年をたったら建て替え決議ができると、こういうような明確な要件にしようかということと、老朽化しない場合でも建物が損傷を受けるような場合がございますので、その場合には損傷を受けた建物を元の状態に戻すために掛かる費用、この費用が一定の基準に達しているときには建て替え決議ができるようにしようと、こういうようなことで幾つかの案を示して、現在御意見を伺っているところでございます。
御指摘のように、できるだけ明確な、紛争を招かないような要件を定める必要があると思っておりますので、寄せられました意見を基にして、できるだけその方向で検討を進めたいと考えているところでございます。
○吉田博美君 今、法務省の方から御答弁をいただいたわけでございますが、やはり建て替え決議のこの要件について、これがきちっとして、本当に明確に、それで分かりやすく、しかも紛争に持ち込まれなくても済むような形になるということが、私はこのマンションの建て替えが、この法案が通過して、成立をして通った場合に一番重要なことになると思います。せっかく我々が望む法律が成立しても、この区分所有法の明快な建て替え決議の要件というものができないとなかなか思うように進まないのじゃないかということを危惧しておるものですから、是非、法務省におかれましても、いろいろな今御意見等をお聞かれになっているわけでございますが、やはり私どもも国民の代表でございますので、こうしたことを肌で感じているわけでございますので、よく御理解をいただいて、検討していただきますことを改めてお願いをするところでございます。
委員長、法務省の方は結構でございますので、よろしくお願いいたします。
○委員長(北澤俊美君) どうぞ。御苦労さまでした。
○吉田博美君 次に、建替組合に民間事業者が参加することができるようにしたのは、建て替えには民間事業者の資金力やノウハウが不可欠と、活用が不可欠と考えるからだと思いますが、そういう理解でよろしいのでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(三沢真君) マンションの建て替えは非常になかなか難しい問題があるわけでございます。それは、関係する権利者が多く、それから建物の規模も大きいということから、合意形成を図る上で非常に複雑な権利関係の調整をするとか、あるいは建て替え工事を行う上での設計や施工に関する技術などかなり高度な専門知識と経験を必要とするという面がございます。それから、当然やはり建て替えに伴って多額の資金を調達することが必要になるということがございます。
したがいまして、こういうようないろいろな困難な面があるわけでございますが、一方、じゃ、マンション建て替えを担う区分所有者の一人一人はどういうことかといいますと、これは基本的には個々の住戸を所有している一個人ですので、必ずしもその土地建物の権利関係とかあるいは工事の設計、施工に関する専門的な知識を持っていない、それから資金力も必ずしも十分でないというようなことが一般的でございます。そういうことから、先生御指摘のとおり、やはり民間事業者の資金力とかノウハウの活用が建て替えを円滑に進める上で有効な場合があるというふうに認識しているところでございます。
このため、この法律案におきましては、民間事業者等の資金力やノウハウを活用するための参加組合員制度を設けまして、区分所有者の意向の下で民間事業者が建替組合に参加することが可能なように措置をしているというところでございます。
○吉田博美君 建て替え事業への不参加者への対応として、建替組合が不参加者の区分所有権を買い取る形で解決を図ろうとしているんですが、これは従来できなかったことの解決策ということでしょうか、それとも従来からできたことの改善策なのですか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(三沢真君) 今、先生御指摘のとおり、この法案の第十五条の中で、マンション建替組合が建て替えに参加しない区分所有者に対しまして区分所有権等を時価で売り渡すべきことを請求することができるという規定を置いております。
これは、そもそも、実は現行の区分所有法の中に売渡し請求制度の規定があるわけでございますが、現行の区分所有法の中の規定は、建て替え決議に賛成した区分所有者等が建て替えに参加しない者の区分所有権等を時価で売り渡すべきことを請求することができるという規定でございます。したがいまして、賛成した区分所有者が請求できるというのがこの区分所有法の規定でございますが、これはただ、現実に個々の区分所有者に権利の買取りを行うことを期待するということはやはり現実的にはなかなか難しい場合が多いというふうに考えられるわけでございます。
したがいまして、この法案では、現行の区分所有法の規定を更に一歩進めまして、マンション建替組合にもこういう売渡し請求権の行使を認めるということにいたしまして、これによりまして建て替えに参加しない方に対する売渡し請求の制度を、現行区分所有法にございますけれども、これを更により実効性のあるものにするという措置を取っているところでございます。
○吉田博美君 そこで、建て替えに伴って転出する従前居住者に対する配慮として具体的にどのような対策を考えておられるのでしょうか。これは大事なことでございますので、大臣から御所見をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(扇千景君) 冒頭に吉田議員から、今の日本の建物の現状を考えるときに、この今回の法案は時期を得たものであるというお言葉をいただいて、大変心強く、また私たちもこれを真剣に考えていかなければいけないと思っておりますし、少なくとも、戦後三十年を超えましたマンションの中で六十歳以上だけの世帯の皆さん方が、これは全マンション所有者の六十歳以上だけで住んでいらっしゃる方が三〇%に及んでおります。
ですから、冒頭に吉田議員がおっしゃいましたように、マンションの中の高齢化が進んでいるということも事実でございますので、今おっしゃったように、従前の居住者、お年寄りの人たちも安心して次の新しいマンションに移動できる、また転出せざるを得なくなった人たちにどういう対策を取るかと、こういうことも私は大変大事なことなので、今回の法案の中で、建て替えに伴って転出せざるを得なくなった皆さん方に対しても、私は、従前の居住者の居住の安定を図るという、このことは今回のマンションの建て替えを円滑に進める上で大変重要な課題と思っているのは御承知のとおりでございます。
このために、国土交通大臣が定める基本方針というものがございまして、賃借人及び転出する区分所有者の居住の安定の確保ということを明記してございますし、しかも、法律案の第九十条に、この方針に従って居住の安定の確保に努めるべき旨、それを規定してございます。
それから、基本方針で三つございますのでお聞き取りいただきたいんですけれども、この基本方針におきまして高齢者など住宅に困窮する転出者に対する具体的な支援措置というものを三つ設定いたしました。一つは、地方公共団体による居住のあっせんでございますとか、あるいは公共住宅等に、公共の賃貸住宅への優先の入居をさすということ、これが一つでございます。二つ目には、従前の居住者の賃貸住宅にかかわる家賃の対策補助、これが二つ目でございます。最後、三つ目は、賃貸人が賃借人に支払う移転料の支払には、この金額によってこれを補助することができると。この三つの要件で今回のいわゆる居住者、従前居住者が安心して移転できるようにという三つの基本方針を決めさせていただいております。
さらに、勧告を受けてマンションの建て替えを実施する場合には、この法案におきましては公営住宅への公募によらない入居を規定することとともに、家賃対策の補助とそれから移転、移転料の補助、これを法律の補助として実施すると明快に明記してございますので、これらの処置によって今御指摘がございました従前居住者の配慮、そういうものを決定的に私たちは対策として、最大限に、転出します従前居住者の不安をなくし安定を図っていくという処置を今回講ずることにしております。
○吉田博美君 今、大臣がおっしゃったような対策というのは極めて大事なことだと思いますので、この対策に十分に配慮していただきますことを私の方からも是非お願いをしたいと思います。
また、マンションの危険又は有害な状況とはどのような状況とお考えなのでしょうか。また、省令で定める基準としておりますが、具体的にどのような状況と考えられておられるのでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(三沢真君) 今回の法律案におきましては、老朽化が著しく進行し危険又は有害な状況にあるマンションにつきまして、建て替えの合意形成を促し、区分所有者による自発的な建て替えを実現するという観点から、先生御指摘のとおり、市町村長による勧告制度というのを設けております。
勧告対象となるマンションの危険又は有害な状況とは具体的にどういうことかというお尋ねでございます。
具体的に申し上げますと、一つは、例えば外壁とか柱の劣化、あるいは鉄筋の腐食、あるいはコンクリートの剥落、階段、バルコニーのさくの腐食など、構造の劣化とかあるいは強度の低下等により災害等に対しまして危険な状況にあることというのが一つでございます。それからもう一つは、例えば屋根の防水機能が劣化して雨漏りが生じている状態であるとか、あるいは汚水の排水管が破損して汚水が一部例えば土壌なんかへ流出して悪臭を発している状況とか、居住に当たってそういう衛生上有害な状況にあること、こういったことを意味しております。
こういう状況にあるマンションにつきまして、更に具体的には省令でその基準を定めるということにしております。
現在、これに類似したものとして住宅地区改良事業というのがございますが、これは不良住宅の密集地区で買収方式でその地区、地域を整備していく事業でございますけれども、その中でも住宅の言わば不良度の判定基準というのはあるわけでございます。こういうものも参考にしながら、構造の安全性あるいは設備の老朽度等の項目につきまして、これは本当に建て替えが必要と考えられるようなマンションを対象として勧告制度がきちっと運用されるということが非常に大事でございますので、こういう趣旨が生かされるように、老朽化マンションの実態を踏まえながら、できるだけ分かりやすくて客観的な基準を省令の中で策定していくことを考えております。
○吉田博美君 今、勧告のことについてお話があったわけでございますが、市町村長はいわゆる不適格なマンションに対し建て替えを勧告することができることとしておりますが、この勧告という制度にした趣旨はどのようなことなのでしょうか。防災上危険な状態にあるとか衛生上有害な状況にある場合には、命令という選択肢はないのでしょうか。その点について、局長より御所見をお伺いいたします。
○政府参考人(三沢真君) この法案の建て替え勧告制度は、構造又は設備が著しく不良である住宅が相当数あって、保安上危険又は衛生上有害な状況にあるマンションについて、これは住宅政策の観点から、できるだけ良好な居住環境を有するマンションへ建て替えが区分所有者自らの意思に基づいて行われるということを促していくという趣旨の制度でございます。
基本的には、マンションでございますので、個人の財産でございますので、やはりまず原則はそれぞれの自助努力においてやっていただくと。ただ、それをできるだけやりやすくするため、促すための措置として勧告制度とそれからそれに伴ういろいろな措置等をこの法律に用意させていただいているところでございます。
別途、命令という選択肢はないのかという点でございます。
これは、実は建築基準法の中で、これは老朽化等に伴い著しく保安上危険又は衛生上有害な状況にあるマンションとか、あるいは建築基準法令に違反しているような状態にあるマンション、これにつきましては、別途建築基準法に基づきまして法的強制力のある除却、改築等の命令を行うことができるということになっております。したがいまして、この基準法の要件まで該当するようなことになれば命令という選択肢があり得るということでございます。
○吉田博美君 結構です。
○池口修次君 民主党・新緑風会の池口でございます。
マンション建替え円滑化法案につきまして御質問をさせていただきたいというふうに思いますが、冒頭、先月の末に諸先輩の御理解と御配慮をいただきまして、日本の国会とEUの議会との定期交流会に参加をさせていただきました。その際には、委員会の欠席というか差し替えについて委員長の大変な御配慮をいただいたことをまず感謝を申し上げたいというふうに思います。
会議の中身、ここで全部報告しますと五十分を過ぎちゃいますので、質問の趣旨が生かされませんので、ポイントだけ言わさせていただきますと、今EUが非常に統合に向けて着々と進めているというふうに感じました。その一番大きな理由は、やはりこれからの世界がどういう構造になっていくのか、EUとしてはやはりアメリカ一極体制になるということに対して大変な懸念を持っているというふうに感じました。そういう面でEUも頑張っておりますし、日本に対してもそんな観点で、是非景気を回復しながら世界の中でのポジションを確実に占めるようにというのが今回の議論の中心ではなかったかというふうに思っております。
会議以外にも、いろいろな町を見させていただく中で感じたことがありました。今回見させていただいた町はベルギーのブラッセルとゲント、それとスウェーデンのヘルシングボルグという町を見させていただきましたが、それぞれの町、非常に歴史のある町でございました。多分、中世の時代からの建物が見事に保存をされておりますし、電線等についても全く目に触れないという中で、多分地中化がされているんだろうというふうに思います。やはりそういう町を見させていただきますと、非常に落ち着いた雰囲気を私自身も感じることができました。
これからの日本のまちづくり、建物の材質が違いますのでヨーロッパと同じようにするというのは難しいかというふうに思いますが、やはり今回のマンションの議論にしましても、耐久性というのは平均すると三十年だとか四十年ということになっておりますが、やはりこれからの二十一世紀の環境の時代等も含めまして、もう少し日本のまちづくりというのを検討すべきではないかというふうに私は感じておりますけれども、この点につきまして扇大臣の御所見がありましたら是非お聞きをしたいというふうに思います。よろしくお願いします。
○国務大臣(扇千景君) 池口委員がベルギー等々大変歴史と文化を大事にする国々を御視察になったということで、お感じになったところは大であろうと思って、私も共感をいたすところでございますし、私もああなればいいなといつも念じてはおりますけれども、正直申し上げて、単に戦後今日まで日本は経済活動あるいは生活の場ということであくせくとしてきたという感は免れぬというところでございますので、調和の取れた美しい町並みとか、あるいは優れた歴史、文化を大事にするということは忘れ去られがちであったと言わざるを得ないと思います。
そういう点では大変残念だと思いますし、また我々反省点も多々あると思いますけれども、少なくとも戦後今日まで我々が再建をしてきました日本の中で、平成十年に全部調査をいたしましたところ、現在建築されているものの中で九六%が戦後に建てられたものであると。住宅の総戸数が四千三百九十二万戸でございます。その中で戦後に建てられたものが四千二百二十七万戸、今申しました九六%。
ですから、今おっしゃったように、考えてみますと、あらゆる面で、戦後に建てられたものですから、今、議員がおっしゃったように、電柱の地中化、これ一つ取ってみましても、少なくともロンドン、パリは一〇〇%電柱の地中化が達成されています。日本では、現在東京都区だけ見ても達成率三%なんです。ほど遠いという感がなきにしもあらずですから、私は、そういう意味でも、今後我々は二十一世紀、先ほども吉田議員からもお話がありましたように、老齢化社会を迎えてバリアフリー等々を考えるときに、まちづくり、そういうものはすべて今の世界の水準に、せめて半分まで達成できるぐらいを目標に我々二十一世紀考えていかなければいけないという、そういう立場に立っているというのが今、国土交通省としての立場でございますけれども、今後、多くの建築物が機能更新とかあるいは建て替え時期を迎えているというのは、今私が申しました数字でも、やっぱり戦後の粗悪、あるいは粗悪までもいかないまでも、何とか雨露しのいでということで建てたものが多いものが更新時期になっているということは事実でございますので、そういう意味で今回のマンションの法案というものも出させていただいた次第でございますけれども。
近年の地区計画あるいは美観地区、景観条例などの手法を活用した良好な町並みをしようということで、ちょっと例を少しだけ挙げさせていただきたいと思いますけれども、これは、改めて地区計画ということで、国土交通省としても、皆さん方が御存じのとおり、この間の経済財政諮問会議に私も出席いたしまして、今後国土交通省としてどのように日本の町並みを良くしていくかということ、今、池口委員がおっしゃったように、歴史と文化を大事にしようということで、例えば東京の日本橋、これは少なくとも国の重要文化財に指定されながら、上に高速道路が二重に入っておりまして日本橋が分からないということで、これも、日本橋は五街道の拠点でございますし、伝統の歴史、文化の出発点でございますので、これを、上の高速道路を両側の、川の両側にビルを建ててその中を高速を走らすということで今の日本橋を回帰しようと、昔に戻そうというようなことも国土交通省としては計画をしておりますし、また、東京駅の正面、皇居に向かって、御存じだろうと思いますけれども、各国の大使は就任されたときに今でも馬車に乗って陛下の信任を仰ぐということで、これは昔、行幸通りと言われておりました。けれども、その馬車に乗られる、今でも伝統を守っているわけですけれども、その行幸通りがいつの間にかタクシーの駐車場になってしまったというようなこともございますので、こういうことを一つ一つ私たちは歴史と文化を大事にする町並みというものに、今、池口委員がおっしゃったように少しでも、一歩でも二十一世紀近づいていこうと、そのように今後努力したいと思っていますし、その目標達成のために老朽化というものを再建する今回の法案の提出になっている次第でございます。
○池口修次君 大変積極的なお話を伺いまして、是非それが実現するまで頑張っていただきたいなというふうに感じている次第でございます。
あと、法案につきまして御質問をさせていただきますけれども、多少通告からちょっと順番を変えさせていただきまして、まず今回の法案を、私もこのマンションの建て替え円滑化は是非進めなきゃいけないというふうに思っております。ただ、やはりせっかくの法律ですから実効ある中身にしたいというふうに思っておりまして、そんな観点で少し何点か中身を確認をさせていただきたいというふうに思います。一部、吉田委員の質問と重なるところがあるかというふうに思いますが、御容赦願いたいというふうに思っております。
まず第一点目に、建て替えがスムーズに今までいかなかったわけでございますけれども、なぜ建て替えがスムーズにいかなかったというふうに国土交通省としてとらえていらっしゃるのかというのをまずお聞きをしたいなというふうに思います。
○政府参考人(三沢真君) マンションの建て替えは、これはやはり中に住まわれる方がそれぞれ非常に異なる生活事情を、あるいは経済事情を抱えておられる、そういう中でその合意形成を図っていく必要があるということ。あるいは、権利者が非常に多数にわたり、しかも大きな建物であり、またそのいろいろな技術的な知識も要るという、そういうことで、本来的には区分所有者自身の努力に、自助努力で進めるべきものであるといいながら、なかなか難しい課題があるということでございます。
それで、特に建て替えに当たっての制度的な問題として指摘された点は、一つは、建て替えをやりましょうということで区分所有者がみんなで建て替えをやる場合でも、そういう区分所有者の集まりに対しまして法人格が付与されていない。そういたしますと、例えば建て替えのためにいろんな工事を発注するために、例えば建設会社と契約を結ぶというのにしても、だれの名前で結んだらいいんだろうかというような問題があると。それから、従前の建物を除却するために、これは一回、従前の建物、例えば抵当権が付いていればそれを抹消いたしまして、また再建後のマンションにそれを設定するということが必要でございますけれども、そういうことがなかなかスムーズに進みにくい。それから、登記の問題というのがかなり大きい問題でございまして、非常に多数の権利関係のものを再建後のマンションにもう一回設定し直すということについて非常に手続が煩雑であるというような幾つかの制度的な問題が指摘をされております。
それからさらに、当然やっぱり建設費用の問題がございまして、例えば高齢者の方々等にとって建設費用の負担が困難な方もいらっしゃるというような問題。それから、いわゆる既存不適格といいますか、建て替えようと思っても、容積率が例えば不足することによりまして従前と同じような床面積を確保することがなかなか困難であるというような問題点も指摘されております。
それから、これはやはり元々建て替え決議そのもの、区分所有法の建て替え決議そのものに起因する問題といたしまして、先ほども法務省の方から御答弁ありましたけれども、やはりその建て替え決議の要件がどうも必ずしも明確でない、このことが例えば後々のいろいろな紛争につながっているというような指摘がございまして、いろいろ申し上げましたが、こういうようないろいろな問題点があるということでございます。
○池口修次君 今の点につきまして、調査室からいただいた資料によりますと、確かにもう合意形成なり手続上の問題はあるんですけれども、一番大きいのが建て替え費用負担困難な区分所有者がいるというのが七一%で、工事期間中の仮住居の確保が五七%という資料をいただいております。
やはり、今回、特に法律案ではいろいろ法人格を付与するとかいう形で手続上の問題についてはかなり踏み込んだ改正がされているというふうに思いますけれども、この建て替え費用の困難な人がいるという状況は改善がされていませんし、今の状況からいうと、ますます将来不安でお金を使える状況じゃありませんし、更には建物の値段も下がっておりますので非常に難しい状況になっている、困難度合いというのは更に進んでいるんじゃないかというふうに思います。
やはりこのところを改善をしないと、場合によっては、今回、四分の三で建て替えができるという決議があるわけですけれども、この四分の一のところに負担が行ってしまうんじゃないかというふうに懸念をしているわけでございますけれども、この点については、個人の住宅だから難しいということの答弁になるかもしれませんけれども、本当にそれで済む話なのかなというふうに思っております。是非この点についての対応をお聞かせ願いたいというふうに思います。
○政府参考人(三沢真君) マンション建て替え事業について、正に先生おっしゃいましたように、個人の財産でございますので、基本的にはその建て替え費用はそれぞれの所有者が負担すべきものということはございますけれども、ただやはり、御指摘のとおり、これを円滑に進めるという観点からは、建て替えに参加される区分所有者の方々の経済的な負担をやはりできるだけ軽減していくといういろいろな資金面の措置等が必要だというふうに考えておりまして、今回、この法制度と別に、予算、税制等の措置によりましていろいろな支援を行うこととしているところでございます。
具体的には、例えば資金面の支援といたしましては、優良建築物等整備事業という事業に基づきまして、調査設計計画費であるとか除却費であるとか共同施設の整備費に対して、これは建て替え事業についても補助できるということにしております。
それからさらに、融資ということで住宅金融公庫の都市居住再生融資制度というのがございまして、これは公庫融資の中で基準金利という最も優遇された条件でこういうマンション建て替えについて融資を行うことができるということとするほか、さらに、これは組合の再開発の促進基金というのがございますけれども、これをマンション建て替えについても建設費等について債務保証を行うことができるというような支援措置を講じることにしております。
それから、税制につきましても、今般の法案の提出に伴いまして、例えば譲渡所得税であるとか登録免許税であるとか、こういう建て替えに伴って例えば地区外へ転出される方のいろんな譲渡所得等々につきましていろんな特例措置を創設しているところでございます。
それから、資金面のそういう支援措置と併せまして、やはり例えば既存不適格なんかで、できるだけそういうものについて容積率緩和ができるようなケースであれば、空地の整備等による市街地環境の整備改善に応じて容積率緩和を行う総合設計制度というのがございますので、その積極的な活用も図られるようにということにしておりまして、こういう意味で、いろいろな支援措置を一方で用意させていただいているところでございます。
別途、その上でさらに建て替えに参加することが困難な方々につきましては、先ほど大臣からも御答弁ございましたけれども、この法律に基づきましていろいろな居住安定措置を講ずるということにしているところでございます。
○池口修次君 それでは、そういう中身をしても建て替えに参加できなかった人への対応ということでお聞きをしたいわけですけれども、建て替えに参加できない人の住居に対しては、今回の法律案の十五条で、「時価で売り渡すべきことを請求することができる。」ということになっておりますが、この時価というのがどういう概念を意味しているのかということと、だれとだれが交渉をしてこの時価という、時価を決めるというのはおかしいかもしれませんけれども、売渡価格を決めるのかというところをお聞きしたいというふうに思います。
○政府参考人(三沢真君) この法案に基づきまして売渡し請求という制度を用意しているわけでございます。これは、建て替えの円滑化の観点から、従来の区分所有法では個々の区分所有者が行使できるというのを、建て替え組合も行使できるということにしたわけでございます。
それで、この場合の時価というのは、したがいまして、元々区分所有法に売渡し請求の制度がございますけれども、その場合と同様に、売渡し請求権を行使した当時における区分所有権、それから敷地利用権の客観的な取引価格であるというふうに解されているわけでございます。
これは、客観的な取引価格であるといっても、更にもうちょっと算定基準を明確化すべきでないかという御議論がございます。これは区分所有法の改正の中でも、法務省の方で御検討いただいています区分所有法改正の中での検討事項の一つということとされていたというふうに聞いておりますけれども、ただ、これはやっぱり非常になかなか難しい点がございまして、やはり事案に応じて時価の評価方法は異なるということから、これを網羅的に算定する基準を法律で決めるというのは非常に難しい面があるということと、それから、やはり現実には、結局、具体の事例の集積等によってこういうものについても解決を図られていくんだろうということから、法務省さんの方の検討の中では、今回の改正で実現は見送られる方向であるというふうに聞いております。
しからば、本当に当事者間で争いがあるときにどうなんだろうということでございます。これはもう非常に一般的な言い方で申し訳ございませんけれども、最終的にはこれは訴訟によって確定するということにならざるを得ないわけでございますが、ただ、私ども国土交通省といたしましては、やはり今後、そういう売渡し請求に伴う時価の算定に関する事例の集積等を踏まえまして、算定基準の標準化など、時価算定の適正化のための措置について、より更に具体的にいろいろ検討していきたいというふうに考えております。
○池口修次君 ちょっと時価のところにこだわるようですけれども、今までも時価で買い取るという制度は区分所有法であったということなんですが、今まで話合いというのがスムーズにいっていたのかどうか。いっていれば、それを同じようにすれば特に問題はないかと思いますけれども、この点について、今までどういう形で価格交渉が行われたかというのをお聞きしたいというふうに思います。
○政府参考人(三沢真君) ちょっと正確に今まで区分所有法に基づく売渡し請求がどのくらい行使されてきたかということについて、ちょっと資料を持ち合わせないので大変恐縮でございます。
ただ、一般的には、これは元々個々の区分所有者が行使するということになっていますので、時価の問題以前に、そういう観点からなかなか、区分所有法に基づく売渡し請求の行使というのはやっぱり現実的にはなかなか難しかったんじゃないかというふうには考えております。
さらに、しかし今回それを一歩進めて、建替組合によって売渡し請求ができるということになりますので、当然、売渡し請求の制度の積極的な活用というのが望まれるわけでございますので、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、やはり今後の具体的な事例の集積等を踏まえながら、そういうのがある程度客観的にみんなが分かりやすいような、何かそういう算定基準の明確化等についてもいろいろ検討していきたいというふうに考えております。
○池口修次君 今までにも余り例がないと。
先ほどのお話ですと、最終的には裁判、訴訟だということになりますと、この売渡しがスムーズに行われないと建て替えの行為に移ることができないわけですから、長期間裁判をしているといつまでたってもマンションの建て替えが進まないと。そうすると、せっかく法律は作ったんだけれども意味がないということになることが懸念をされますし、なかなか建て替えに参加できないという人は、先ほどの理由でいきましても、なかなかその費用が用意できないと。以前の、今までスムーズにいったのは、うまく建て替え計画で、余り費用の持ち出しをしなくてもできるところがスムーズに建て替えができて、これからのマンションの建て替えのところはかなりの費用を捻出しないと建て替えに参加できないというふうに聞いております。
そういう、ある意味お金がなかなか用意できないという方たちは、ある意味、言い方をすれば弱者の人たちで、そのところがかなりの無理が来ないような、そしてお互いが納得できるような価格交渉ができるような仕組みを作らないと、私は法律を作っても心の通った法律にはならないんじゃないかというふうに考えておりますが、この点について再度お聞きをしたいというふうに思います。
○政府参考人(三沢真君) これは、いろいろな民事法の世界の中で時価というふうに決めている例がいろいろあるわけでございます。それで、ただその時価とは何かというのを、これを例えば法律等で定義するというのはやっぱり非常に難しい点があるかと思います。
これにつきましては、もちろん最終的にはその訴訟の中で争われるものであるにしても、その場合に、やはり両当事者がお互いにある程度の指針とすることができるようなデータであるとか考え方の集積、これをきちっと図っていくということが必要だというふうに考えておりますので、そういう当事者間のいろいろの交渉事の判断指針となるような、そういう一つの算定基準ができるだけ明らかになるような、そういう方向についてできるだけ私どもも検討をしていきたいというふうに考えております。
○池口修次君 是非、今回の建て替えの円滑化がスムーズに進むような方策を是非これからも引き続き検討をお願いをしたいというふうに思います。
それと、先ほど吉田委員の質問にもありましたけれども、居住安定の確保に関する措置ということで、公営住宅への入居若しくは特定公共賃貸住宅への入居だとか、高齢者向け公共賃貸住宅への入居、市町村借り上げ住宅への入居ということで何項目か項目が挙がっているようですけれども、本当に入れるのかという心配が先に立つわけですけれども、今これらの住宅の空き状況というか、入れる可能性というのはどの程度おありなのかというのをお聞きをしたいというふうに思います。
○政府参考人(三沢真君) この事業に伴いまして、今、先生御指摘のとおり、この法案の第九十条で居住安定の確保に努めなければならないというふうに決めておりまして、そのための支援措置として、先ほど大臣からも御答弁申し上げました、例えば公共団体による住宅のあっせんとか公営住宅等の公共賃貸住宅への優先入居等々の支援措置を定め、実施するということにしているわけでございます。
この空き状況がどうかということでございます。当然のことでございますけれども、例えば公営住宅なりあるいはいろんな公共住宅、これについては常時空いているという状況があるわけではございませんで、やはりその地域の中で非常にニーズが強い、応募倍率も高いという中でそれぞれ運営されているわけでございます。
そういう中で、じゃ今回こういう居住安定措置を講じても本当に入る余地があるのかというお尋ねかと思います。これは、正にそれぞれの公共団体がその地域の需給関係の中で見まして、結局いろいろな制度があるわけでございます。既存の公営住宅ストックもございますし、それからいわゆる特優賃、高優賃という制度もございますが、更に今回これを、こういう居住安定措置を強力に推進するということから新しく都市再生住宅制度というものを設けまして、こういう措置の強化拡充を図っております。これは、こういう居住安定措置のための住宅として民間住宅を借り上げる方式、これに対しましても国等から助成ができるということにしているところでございます。
したがいまして、こういう制度も用意していますので、もちろん既存のいろんな現在ある住宅も活用いただきますし、必要に応じてこの新しい都市再生住宅制度を活用するということによりまして、公共団体がこういうものに積極的に取り組んでいただけるように私どもも必要な支援をしていきたいというふうに考えております。
○池口修次君 もう一点お聞きをしたいと思います。
危険、有害な状況にあるマンションの建て替えについて市町村長が勧告をすると。法律の文章を読ませていただきますと、勧告に基づいてマンション組合が計画を提出をし、その計画に基づいて、市町村長は安定化の件も含めまして認めるかどうかというのを許可を出すというような仕組みではないかというふうに理解をしておりますが、そこのところがいまいちちょっと分かりませんで、勧告は危険な状況に応じて出すわけですけれども、勧告を出しておきながら計画が不備だから実施がしないというケースがあるのかないのか、この点をお聞きをしたいというふうに思います。
○政府参考人(三沢真君) 今回の建て替え勧告の制度でございます。
この建て替え勧告制度は、老朽化が著しく防災上危険又は衛生上有害な状況にあるマンションについて、居住者自らの意思に基づいて建て替えが行われるようこれを積極的に促すという制度でもございますけれども、この制度と関連して、先生が御指摘の居住安定計画の認定という仕組みがございます。
これは、居住安定計画の認定というのがどういう法律上の効果があるかといいますと、一つは借地借家法の特例、それからもう一つは公営住宅への特定入居といいまして、特定入居というのは要するに公募によらないで入居させることができるという、そういう法律効果をこの認定に対して与えております。それとの関連において、したがって、そういう法律効果を与える以上は認定についてある一定の要件を満たしているかどうかをきちっと判断させていただくという仕組みになっているわけでございます。
じゃ、その場合に、こういう要件を満たさないために認定がなされないような場合はどうかということでございますけれども、これはこの法律の中で、一つは勧告されたマンションについて、これは認定が仮に行われていなくても、市町村長、市町村は代替建築物の提供又はあっせんに努力する義務を有するという規定を置いております。これによりまして建て替えの円滑化を図れるような措置も講ずることができるわけでございます。
それから、この居住安定計画のような借地借家法上の特定措置は、そういう法律効果はないけれども、それ以外の事柄として、先ほどから申し上げている法案第九十条の基本方針に基づく、居住安定計画に基づく措置に準じたいろいろな居住安定の措置も、これも講ずることが可能でございますので、したがいまして認定がなされなかったら直ちに建て替えが進まないということではない。それに対しては一定のいろんな措置が講じられるような仕組みになっているということでございます。
○池口修次君 やはり元々危険、有害ということを認定して勧告をするべきですから、私は勧告をした人はやっぱり建て替えをスムーズに、建て替えができるように実施をする義務というのは私は持つんだろうというふうに思っております。
その中で、居住安定を望む人は市町村長に要請ができるという文章があって、この要請に対してどの程度のこたえる義務があるのかというのはちょっと書かれていないわけですけれども、一方で、認可の条件として、生活環境が著しく変わるような場所ではいけないと。例えて言えば、子供の学校の問題だとか就職、仕事の関係で余りにも遠くのところに行ったんじゃ意味がないということで書かれているというふうに思いますが、これは私はかなりきつい要件だというふうに思います。
ですから、そこのところは当事者、マンション組合との話合いだけでは私は済まないというふうに思いますし、やっぱり市町村長が相当の部分要請にこたえるというところを重きを置いて面倒を見ないと、なかなかその計画というのは作れないし、結果として有害、危険という認定をしながらそれがなかなか建て替えられないというサイクルも私は心配しているわけですけれども、そういうふうにならないのかどうかというのをもう一回お聞きをしたいというふうに思います。
○政府参考人(三沢真君) 先ほど申し上げましたように、居住安定計画の認定という仕組みがなぜあるのかということは、一方でこの認定の結果として、通常のマンション建て替えであれば、例えば借地借家法上の特例まで置いていないわけでございますけれども、認定があった場合には借地借家法上の特例であるとかあるいは公募によらないで公営住宅に入居させることができる、こういう法律効果を与えているところから、そういう一定の要件に合致するということを審査させていただくと、こういう仕組みになっているわけでございます。
ただ、これは一方で、そういうことについて公共団体がどういう努力をしていくかということと当然パラレルなことでございまして、この認定要件の前提として、例えば、先ほど申し上げましたように、公共団体が国の助成制度としての例えば民間借り上げもできるような都市再生住宅制度というのがございます。そういうものも活用していくということも含めてこの認定要件に合致しているかどうかというのを判断していくということになりますので、当然、何といいますか、公共団体の方がそういう努力をしないでそのままの条件で合っているかどうかという判断するというよりは、そういういろいろな具体の居住安定措置の努力と一体的にこういう認定制度が運用されていくものというふうに考えております。
○池口修次君 何点か質問させていただきましたけれども、やっぱりこの法律ができたから私はすぐスムーズに建て替えが進むというふうにはどうしても理解ができないというふうに思っております。やはり、その中で、先ほども言いましたように、どの程度借り上げ、買上げに対して、話合いについてうまくサポートするかということなり、安定化についても地域によって相当ばらつきがあるんではないかな、やはりそれについてどう配慮をしていくのかということなりを相当フォローをしていかないと建て替えは進まないんじゃないかなというふうに懸念をしております。
是非そんな観点で、法律について私も反対するつもりはありませんけれども、是非これについて今後のフォローなり国土交通省としての詳細にわたった検討を引き続きお願いをさせていただきたいというふうに思っております。
今回のマンション建て替えについては以上の質問にさせていただきますが、もう一点、じゃ、これからのマンションというのを、冒頭の扇大臣に対する質問とも関連するんですけれども、これからのマンションを日本の場合どうしていくのか。三十年、四十年で建て替えるマンションをこれからも造るのかどうかということについてお聞きをしたいというふうに思っております。
一部お聞きをしましたら、国の方でも百年もつマンションづくりを検討をされているというふうにお聞きをしました。この百年もつマンションづくりについて、どのように考えて、どんな検討が今されているのかというところをお聞きをしたいというふうに思います。
○政府参考人(三沢真君) 百年もつようなマンションづくりということでございます。それで、やはり私どもも、今後のマンション建設に当たっては、やはりできるだけ長期にわたっていいストックとして活用可能なものにしていくということが非常に大事なものであるというふうに認識しております。
そこで、できるだけ長もちするマンションが供給されるというような観点から、一つはいわゆるスケルトン・インフィル住宅ということの技術開発、普及促進を行っております。御承知のように、構造躯体とその内装とを分離いたしまして、構造躯体の方はもう非常に高い耐久性を持って長もちする、内装の方はある程度可変性を持って変えていけると、こういうようなスケルトン・インフィル住宅の技術開発等を行っております。
それから、住宅金融公庫の融資の中でも、やはり耐久性というものを一つの要件にいたしまして、融資に当たってそういうものについて相当の配慮をしているということと、それから、一つはそういう耐久性というものが消費者の目にある程度きちっと分かって、それで市場の中でも評価されていくという仕組みが非常に大事でございます。そういうことで、住宅性能表示制度の中でも、そういう例えば耐久性に関する表示であるとか劣化を遅らせる対策とか、あるいは維持管理のしやすさ、こういったことについても表示して、消費者に対する情報提供を行うというような施策に取り組んできたところでございます。
特に、スケルトン・インフィル住宅につきましては、かなり今までもいろいろな技術的な検討を重ねてきたわけでございます。スケルトンとインフィルの例えば設計の在り方の問題であるとか、あるいはどういう施工条件かとか、そういう技術的な課題の整理とか、それから当然、分離した場合に、例えば登記の問題であるとか、やっぱり制度的な問題があり得るわけでございます。そういう具体的に進めていく上での事業仕様の検討等を今までも進めてまいりました。
これまで、例えば具体的には、そういう成果を踏まえまして、都市基盤整備公団においてもそういうスケルトン・インフィル技術を導入した賃貸住宅の建設を計画するなど実地にも移しているところでございますが、今後、これにつきましては、そういうものの成果を踏まえまして具体的なスケルトン住宅の指針というようなものを取りまとめて更に技術開発を進めるということに努めていきたいというふうに考えております。
○池口修次君 やはりこれからの時代を考えていきますと、ある意味、物を大事にする時代だろうというふうに思っております。そういう意味で、検討されているような百年もつマンションの方向で是非やっていくべきではないかというふうに考えております。
それともう一点、新しい建築工法ということで断熱の方法でございますけれども、外断熱と内断熱という話を聞いております。ヨーロッパにおいてはほとんど外断熱の方が耐久性なり省エネルギー性も良いということでその方向に向かっているというふうに聞いておりますが、日本においてはまだ内断熱の方が主流を占めているというふうに聞いておりますが、この外断熱と内断熱について、国土交通省としてどのようにお考えになるかということをお聞かせ願いたいというふうに思います。
○政府参考人(三沢真君) 先生御指摘のとおり、鉄筋コンクリートづくりの住宅などにつきましては断熱の仕方として、一つは屋外側に断熱材を施工する方法、これを外断熱工法と呼ばれておりますが、それからもう一つは屋内側に施工する方法、これを内断熱工法と呼ばれておりますけれども、そういう方法が二つあるわけでございます。
これは、一般的に申し上げますと、外断熱工法は内断熱工法と比べて躯体の外側に断熱材を施工するということから外気の温度変化が躯体に伝わりにくいということから、一般論としては劣化しにくいという特性があるということは承知しております。ただ、一方で外断熱工法はやはり施工が複雑であるとか、それからコストについても、これ二階以上を施工する場合には足場等を組まなきゃいけないということで、これはやはり割高になるということも一方で言われております。
それからもう一つ、省エネ性能という面から両工法についていろいろな御議論があるわけでございます。省エネ性能という面から見ますと正直言って一長一短でございまして、外断熱は、これはいったん暖めたり冷やしたりしますと、その終了時の後も効果は継続しやすいというメリットがございます。ただ、逆に冷暖房の開始時期にはなかなかすぐ冷暖房効果が現れにくいと。したがいまして、例えば小まめにつけたり消したりするような場合には外断熱というのはすぐなかなかこういう効果が上がってこないというようなことが言われております。
こういう観点から、一概にどちらの工法が優れているかというのはなかなか難しい点がございまして、これはやはり個々の建築物の設計条件によって選択をされるべき問題であるというふうに考えております。
ただ、私どもといたしましては、やはりそれぞれの工法についてこういうメリット、デメリットがあるんだというようなことについてきちっと消費者の方々に分かるような情報提供を図っていくということが非常に大事だと考えておりますので、こういう情報提供につきましてはきちっと私ども今後努力していきたいというふうに考えております。
○池口修次君 最後に、是非扇大臣にお聞かせ願いたいというふうに思いますけれども、この百年住宅構想、冒頭で積極的に進めるべきだというような感じを受けたわけですけれども、これなり、ハートフルのときにも議論したわけですけれども、バリアフリーの住宅を積極的に進めるという観点での扇大臣の御所見をお聞きをしまして、最後の質問にさせていただきたいというふうに思います。
○国務大臣(扇千景君) 冒頭に申し上げましたとおり、戦後の建てたもの、その数と、そしてこれから建て替え時期になった居住、そういうものに関して、特にマンションは居住者の数も多うございますし、またるる建築法の改正によって従前の面積が建て替えたときにそれだけのものが建てられるかどうかという、そういう要件もございます。
それから、一番、アンケートを取っておりますけれども、今時間がなくなりますから細かくは言いませんけれども、一番アンケートを取って皆さん方が不安に思っていらっしゃるのは、幾ら掛かるかということが一番不安要因として九〇%近くになっておりまして、それが一番不安要因の最大のことでございますので、そういうことの手当てがどうできるか。
また、冒頭に申しましたように、老齢化しておりますマンションの居住者が今後新しく建て替えたマンションに今までどおり居住できるかどうかというそういう、補助率をどうするか、そういうことを、少なくとも今の居住者が不安を持たないような建て替えを順調にしていくということの一番の課題が国土交通省の課題としても残っておりますので、今回の法案によって少しでも居住者が不安を解消できるような手当てをしながら、なおかつ建て替えなければ安全性が保たれませんから、そういうことも含めて諸般の助成あるいは建て替えの順調な振興というものを図っていく。
両々相まって今回の法案の提出になっているということで、今おっしゃったバリアフリー等々も含めて、今後の課題として、我々はそのための法案提出であるということを御認識賜り、御理解賜り、なおかつこれを皆さん方にPRしていくということが大事なことだと思っております。
○池口修次君 ありがとうございました。終わります。
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○委員長(北澤俊美君) この際、委員の異動について御報告をいたします。
本日、続訓弘君が委員を辞任され、その補欠として森本晃司君が選任されました。
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○森本晃司君 公明党の森本でございます。
今日は、マンション建替え円滑法、いかに多く建てられたマンションが老朽化し、それを今度円滑に住んでいる人も安心して移ることができる、あるいは生活できるということを進めるための法律でございます。私は、今、時を得てこの法律が出てき、そして議論されているものだと思っておりまして、その点、私は数点この建て替えについて不安だと思われる点について今日は確認をさせていただきたいと思います。
それにつきましても、私にこの場を与えていただきました委員長さん始め各委員の皆さんに心から感謝を申し上げて、質問に入らせていただきたいと思います。
今日は法務省もお見えいただいておりますね。
まず最初に、区分所有法上の建て替え決議との関係について法務省の方から伺いたいわけでございますが、区分所有法第六十二条に基づく建て替え決議に当たっては、その建物がその効用を維持し、又は回復するのに過分の費用を要するに至ったときは五分の四以上の多数決により建て替えを決議できるものとされておりますが、この過分の費用の解釈があいまいなまま進みますと紛争のもとになるんではないかと、このように思っておりますし、またそのために紛争となっている例もあるようでございます。
マンション建て替えの円滑化のためには建て替え決議の要件を明確化して紛争が起こらないようにすることが不可欠だと考えておりますが、区分所有法改正試案における対応の検討状況について法務省にまずお伺いいたします。
○政府参考人(房村精一君) ただいま御指摘を受けましたように、現行法の建て替え決議の要件が明確でないという御指摘があるものですから、現在検討しております中間試案におきましてはこの要件をもう少し客観的なものにしようということで、まず第一に、老朽化の指標といたしまして、建築後三十年あるいは四十年という一定年数がたった場合には建て替え決議ができると、こういう定め方を一つの案として出しております。
また、老朽化しない場合でも、例えば建物が損傷を受けるというような場合がございますので、そういう建物が損傷を受けた場合には、その損傷を受けた部分を元の効用を持ったものに直す、そのための費用が掛かる、その費用が一定の基準を超した場合には建て替え決議ができる。例えば、建物全体を同等のものを建て直す場合の費用と比較して修繕のための費用がその二分の一を超える、こういうような場合には建て替え決議ができると、こういうような案をお示しして意見を伺っているところでございます。
その意見を踏まえまして、今後更に審議を続けて、御指摘のように、できるだけ明確な基準を定めたいと考えているところでございます。
○森本晃司君 もう一度今の答弁に対して伺いたいんですが、検討中でございますから、その辺はどうなるかという議論のところだと思うんですが、今三十年あるいは四十年とおっしゃいましたね。これはマンションを建ててから三十年と四十年というのは随分時の幅が私はあるように思うんですが、三十年あるいは四十年というのはどういうことなんですか。
○政府参考人(房村精一君) これは一つの案として三十年又は四十年ということではなくて、例えば三十年を経過したら建て替え決議ができるという考え方、あるいはそれでは少し短いので四十年経過したら建て替え決議ができるという、そういう案をお示しして御意見を伺っているということでございます。
○森本晃司君 ということは、そのいずれかに、今は検討中で、三十年あるいは三十五年あるいは四十年という一つの結論が出るということですね。
○政府参考人(房村精一君) そういうことでございます。
○森本晃司君 団地の建て替えの円滑化のために区分所有法改正試案で全員同意から四分の三以上の多数決としていますが、その中で、敷地の利用に特別の影響を及ぼすべきときは全員の承諾を得なければならない、こういう具合になっています。全員の承諾を得るような特別の影響、これは一体どのような場合なのか。これを明確にしておかないと建て替え事業に支障が出てくる、その可能性がある、極めてその可能性が高いと私は思っております。
特別の影響について明確にしなければならないと思いますが、法務省の考え方をお伺いいたします。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘の特別な影響というものとして具体例として申し上げますと、例えばある建物を建て替えて建物の規模を拡大する、その結果、同じ敷地内にある他の建物に案分されるべき容積率が他の建物の分が少なくなることによって他の建物を同じ規模で建て直すことができなくなる、こういうこともあり得るわけでございます。そうなりますと、この当該建物を建て替えることによって他の建物がそのままでは建て替え不可能になりますので、これは明らかに敷地の利用に特別な影響を及ぼすべきときだということでございます。
そのような、要するに他の建物の敷地利用に影響を及ぼしてその受忍限度を超えるような場合を想定しているわけでございますが、今言ったようなことが典型例でございまして、この同じような特別な影響というのは現行法の中でも使われておりまして、そういう解釈によって明確化できるのではないかという具合に考えているところでございますが、なお試案として公表している段階でございますので、今日の御指摘も含めて、更に寄せられた意見に基づきまして検討を進めたいという具合に考えております。
○森本晃司君 次に、国土交通省にお伺いいたしますが、建て替え決議がなされた後の事業実施についてでございますが、市街地再開発事業で用いられている権利変換の仕組みを導入していますが、市街地再開発事業とは異なって行政代執行について盛り込んでいないようですが、実際には明渡し要求に応じない者に対してどのように対応していくのか、国土交通省にお尋ねいたします。
○政府参考人(三沢真君) この法案におきましては、マンション建て替え事業の施行者はその工事のため必要があるときは期限を定めて明渡しを求めることができ、その明渡しの請求を受けた者はその期限までにマンションを明け渡さなければならないものというふうに規定をしております。この場合に、請求を受けた後も明渡しをしないで占有を継続するという者に対しましては、明渡しを求める訴えを施行者が提起し、民事執行により明け渡させるということになるわけでございます。
これは、再開発事業と異なりまして、マンション建て替え事業の基本的な性格は建て替え決議などの民事的な合意をできるだけ円滑に実現を図っていくということから、行政代執行を行うということではなくて、やはり民事的な手続で実現していくという法制度にしているところでございます。
○森本晃司君 区分所有法の建て替え事業、建て替えの決議、これに賛成していながら、その後の事業の進捗に非協力的な者が現れて事業が停滞している、こういった例もあるようでございますが、こういった問題に対してどのように対処しようとしているか、国土交通省の考え方をお伺いします。
○政府参考人(三沢真君) いったんその建て替え決議に賛成しながら、その後なかなか協力しないような方についてどう対応するのかという御質問でございます。
まず、この法案におきましては、建て替え決議があった後において、この建て替えに合意した区分所有者、それからその持分割合の四分の三以上の同意でマンション建替組合を設立できるということにしております。したがいまして、その賛成者の中で四分の一の方が反対しても、そこはそういう反対の方も組合員となって今後の事業進捗ができるという体制が図られるわけでございます。
その後、じゃ更に具体的にどうなるのかということでございます。これは、具体的には権利の確定は、権利変換計画ということを策定して、各区分所有者の権利変換計画を策定することになるわけでございますが、これも総会で組合員及び持分割合の五分の四以上の賛成で作成して、それについて認可を受けることによりまして、これは認可を受けますと、この権利変換計画に反対する組合員の方についてもこの権利変換の効力は及ぶということになるわけでございます。
それとともに、併せまして組合が売渡し請求権というのを行使しまして、こういう反対する方については、じゃ、もう権利を買い取りますということもできることにしておりますので、こういう措置によりまして協力しない区分所有者が存在するような場合でも円滑に事業が進められるように措置をしているところでございます。
○森本晃司君 次に、老朽マンション、これがなかなか新聞等々の報道にもよりますと建て替えは極めて困難であって、全国でもその例が少ないんだということになっておりますが、その一つは、仮住居というのはやはり問題に、移るときに、建て替えするときに仮住居というのが問題になってくるわけでございます。
そこで、例えば、老朽化したマンションがあって、その近所に新築マンションが今建てられるという場合の区分所有権等を交換できる手法を採用することによってその仮住居というのは要らなくなるんではないかと、このように思って、円滑にそういったことが進んでいくんではないかと思いますが、国土交通省の見解をお伺いいたします。
○政府参考人(三沢真君) 今、先生御指摘の、老朽マンションとそれからその近くにあります新築マンションの区分所有権を交換するという手法は、確かにそういう手法を用いますと仮住居というものが要らなくなるということがありますので、マンションの建て替えの円滑化のためには一つの、区分所有者の選択肢の拡大という観点から一つの御提案だというふうに考えられるわけでございます。
それで、この法案によります事業手法の中でも御提案の交換手法にある程度類似したことが実現できるのではないかというふうに考えております。それは、具体的にはどうするかといいますと、周辺地域で新しいマンションを供給する事業者を、これを建替組合の参加組合員とする、それで、移転希望者の方についてそういう新築マンションを譲渡するというようなことをすればある程度類似したことができるのではないかというふうに考えているわけでございます。
ただ、この事業手法と全く別に、交換手法をそもそも法制度としてもう最初から交換できるようにしようということについてはなかなかこれは難しい点がございまして、これはやはり現在のマンションの敷地と全然別の敷地に移動するということから、現在のマンションの区分所有関係を基礎としたいわゆる団体関係といいますか、そういうものが失われてしまうということとか、結局、今回も一応同じ土地の上に建て替えるということから権利について照応関係があるということで言わば権利変換という手続を取れることにしているわけでございますけれども、そういう照応関係についてなかなか、照応関係があるということをなかなか言い難い面があるということから、そういう意味ではなお検討すべき課題がいろいろあるのではないかというふうに考えております。
したがいまして、この事業、この法案の事業手法をうまく活用しながら、そういうことが可能な場合については参加組合員制度も活用して、できるだけそういうような御提案の趣旨の実現を図っていくということが当面は期待されるのではないかというふうに考えているところでございます。
○森本晃司君 そこで、法務省にお伺いしたいんですが、こういった交換手法をより使いやすくするために、必ずしも現地での建て替えを前提とすることなく、多数決でその区分所有関係を解消するという制度を創設すべきではないだろうか、そうすると非常にスムーズに私は交換することができるのではないかと思いますが、区分所有法改正試案における検討状況について法務省にお伺いいたします。
○政府参考人(房村精一君) この法制審議会における検討の中では、例えば建物が社会経済的効用を失ったときに、建て替え制度のほかに、区分所有関係を解消して、土地と建物を一括して第三者に売却して、その代金を分配するというような案が述べられたこともございます。
ただ、この案につきましては、基本的にその抵当権等の権利が区分所有権の上に付いておりますと、区分所有関係の解消といっても非常に複雑な法律関係になるというようなこともありまして、非常に問題が多いという指摘も同時になされているところでございます。
ただいま御指摘の建物の他のマンションとの所有権の交換によって実質的に建て替えをスムーズに進めるということについては、この審議会ではまだ具体的に検討はされておりませんが、そういった点も踏まえまして、今後も更に研究を続けたいと考えております。
○森本晃司君 都市公団からもお見えいただいておるかと思いますが、都市公団、今日まで数多くの実績を積んでこられました。建て替えという点につきましても、私はその公団の力を大いに使うべきではないかなというふうにも考えておりますが、その中で申し上げますと、日本住宅公団によって昭和三十一年度から供給された公団分譲マンション、これは平成十三年度末で千三百二十五団地で二十八万一千三百二戸を供給してきたようでございます。また、公団賃貸住宅における建て替え事業については、建て替え着手事業百七十九団地、九万一千三百十八戸、完成供給実績百三十団地、五万二千七百十九戸で、こういった建て替えの実績が公団にあるわけでございます。
そういった背景がありまして、分譲マンションの管理組合から都市公団へ建て替えの相談依頼が平成十年度から平成十三年度まで二十九件あると聞いています。このことは、都市整備公団の実績と、それからその信頼と協力に対して期待されているものがあるんではないかと、管理組合のそういう潜在的なものは高いのではないかなと私は思っておりまして、こういったニーズにこたえるために公団は積極的にマンション建て替えに取り組むべきだと私は思いますが、公団の考え方をお伺いします。
○参考人(那珂正君) お答えいたします。
マンション建て替えにつきましては、平成十一年に私どもが都市基盤整備公団として発足以来、お話のように、管理組合等からのいろんな一般的な相談を受けましたり、あるいは具体的に建て替え計画を策定するというようなコーディネート業務を受けたりしまして、鋭意対応しているつもりでございます。
しかしながら、御承知のとおり、建て替え事業、マンションの建て替え事業には実に様々な難しい問題がありまして、私どもが相談に乗った団地につきましてもなかなかすんなりと事業化に進むというわけにはいかないというのが現状だと思います。
今般、このマンション建替え円滑化法が成立して施行されますと、御審議いただいておりますように、マンション建替組合の法人化とか、あるいは権利変換手続の整備などが進むことによりまして、建替組合による建て替え事業の円滑な推進が相当程度期待されると思います。
いずれにいたしましても、マンション建て替え問題は、先生御指摘のように、都市再生の観点からも、また住宅政策の観点からも大変重要な課題であると私どもも認識しておりますので、これまで培ってまいりました建て替えのノウハウを生かし、また昨年十二月に閣議決定されました特殊法人等整理合理化計画の趣旨にも沿った上で、個々の建替組合や民間事業者による建て替え事業が一層円滑に進むよう適宜適切に支援してまいりたいと思います。
○森本晃司君 次に、このマンション問題の解決というのが都市部における住環境を蘇生させてまいりますし、地域コミュニティーの形成ができるかどうかという大きな問題点であります。
そこで、私は相談体制の整備について質問をさせていただきたいわけでございますが、マンション管理適正化法が施行されて、そして今回の法案が提出されていますが、マンションの管理や建て替えに関する施策を着実に推進するためには、マンションの所在、築年数、戸数、建物、設備の状況、維持管理の状況、建築規制との適合等々の精密な実態把握が不可欠であると考えております。
幾つかの自治体で分譲マンション実態調査を実施しているようですが、我が国のマンションの正確な実態を網羅したマンションのデータベース、こういったものを早急に構築すべきではないかと考えますが、住宅局長、お答えいただけますか。
○政府参考人(三沢真君) マンションの管理とか建て替えに関する施策を的確に実施していくためには、こういう様々な問題につきまして、住民から相談とかあるいは技術的な支援を求められる身近な公共団体におきましてマンションに関する情報というのをきちっと把握していくことが必要であるということは先生御指摘のとおりかと思います。
それで、現状がどうであるかということでございますけれども、都道府県あるいは政令指定都市、中核市あるいは特例市というところを対象にいたしまして、マンションの所在とか建築年、戸数等を記載したそのデータベースをどのくらい作成しているかということを調査したところでございますが、これは全体で申し上げますと三六%、特に老朽マンションの多い三大都市圏では五八%の公共団体から既に作成済みという報告は受けております。さらに、今後作成する予定であるというのを含めますと、全国では五四%、三大都市圏では七六%ということで、相当意欲的には取り組んでいただいているところでございます。
私どもも、国土交通省において建て替え等に対する支援の一環として、公共団体がこういうデータベースを作成するためにマンションの実態調査を行う場合について補助できる仕組みも用意しております。今後とも、こういう補助の仕組み等も活用しながら、公共団体によるデータベース作成を支援していくこととしたいというふうに考えております。
○森本晃司君 我が国の精密なマンションのデータベースが構築されることに関しまして、管理組合がそのマンションを修繕するか建て替えるのかを判断するためにマンションの診断を行うことは極めて重要でありますが、社団法人高層住宅管理業協会のマンション保全診断センターではマンションの調査診断を行っております。また、財団法人マンション管理センターでもマンションの調査診断を行う専門技術者の団体を紹介していると聞いていますが、これらの利用実績及び周知方法についてお伺いいたします。
○政府参考人(三沢真君) マンションの管理組合における円滑な大規模修繕の実施を支援すること等を目的といたしまして、一つは昭和六十年度に社団法人高層住宅管理業協会において、これは管理組合からの依頼に応じまして建物の調査診断あるいは修繕計画書の作成を行うと、そういうことを行うマンション保全診断センターというものが設置されております。
それからもう一つは、平成十三年度から財団法人のマンション管理センターにおいて、管理組合の相談に応じまして、これは建物の診断を行う設計事務所等の団体の紹介を行うという事業でございますが、こういう事業が開始されているところでございます。
それぞれの利用実績は、高層住宅管理業協会の方では昭和六十年度から平成十三年度までの十七年間で千七百六件の調査診断を実施したというふうに聞いております。それから、マンション管理センターについては、これは平成十三年度から始めたものでございますけれども、平成十三年度において三百二十二件紹介を行ったというふうに聞いております。
これらの周知方法でございますけれども、高層住宅管理業協会の方の業務につきましては、これは当該業務に関するパンフレットを作成いたしまして、マンション管理業者を通じて各管理組合に配付するというような方法で周知を図っているということでございます。それから、マンション管理センターにつきましては、同じようなパンフレットの作成、配付とともに、これはマンション管理センターへ登録、いろんな管理組合から登録をしていただくという仕組みがございますけれども、登録していただいたところにはいろいろな情報誌とか情報提供をするということになっておりますけれども、そういう情報誌等による広報でこれを周知を図っているということでございます。
○森本晃司君 最後に、扇大臣にお伺いしたいと思います。
良好な環境を作るということでマンションの建て替えは極めて大事でございますし、調査診断を通じて適時適切な、あるいはまた大規模な修理等も必要であるかと考えます。そういう、スムーズにいくためには、円滑にいくために、マンション管理士というのが、この制度ができましたし、それから建築士等の専門家と地方公共団体等との行政関係機関が連携して、そして建て替えに関する相談体制を確立する必要があると思っておりますが、最後に大臣のこの見解をお伺いいたしまして、私の質問を終えさせていただきます。
○国務大臣(扇千景君) 先ほどから森本議員の基本的な認識、そしていかにマンションの建て替えをスムーズに行うかというメリット、デメリット等々御指摘がありましたけれども、少なくとも、マンションの建て替えを行うためには、その合意形成、事業の採算性、そういうものを考えて、法律あるいは建築あるいは不動産、そして金融、税制、あらゆる面で広範囲にわたる専門知識が必要であることは言うまでもございません。
御指摘のように、マンションの建て替えを管理組合とかあるいは区分所有者等々、今後の、マンションの管理士とかあるいは建築士等の専門家の地方公共団体の公的な機関による的確な情報提供が必要であろうと思いますし、またマンションの管理士というのは、登録申請受付状況につきましても御存じのとおり約四千三百名の申請を受け付けておりますし、また十三年度のマンションの管理士の試験の結果につきましても合格者が七千二百十三名に至っております。申込者は十万九千六百二十名が申し込むというような、大変皆さん関心の高い数字が出ておりますので、そういう意味で、今、森本議員の御指摘のような、あらゆる面についての的確な情報提供とかアドバイス、そういうものがこれらの人々によって、地方公共団体におけます建て替え等に関する相談、あるいは今後の情報提供等の体制については私は万全を期していくべきだと思っておりますし、国土交通大臣が定める基本方針にこれらを盛り込んでいこうと、そう思っておりますので、国土交通省としましても地方公共団体等々と連携をいたしまして、相談窓口の設置、それからインターネットを活用した専門家等の連携による情報提供の体制を整えていくということで、管理組合に対する建て替えの検討費用の補助を行って、専門知識の皆さん方が活用しやすいようにそれを積極的に図っていくようにしていきたいと思っております。
○森本晃司君 終わります。
○富樫練三君 日本共産党の富樫練三でございます。
提案されております法律はマンションの建替え円滑法ということでありますけれども、私はまず最初に、現在住んでいるマンション、建て替えの前、その段階のことについて一、二伺っておきたいと思います。
現在、マンションは戸数が全体で、約二〇〇〇年度末で三百八十五万戸、一千万人が居住していると言われています。特に都市における居住形態としては広く普及をしているわけですけれども、マンションの管理の適正化の推進に関する法律という法律、この中で「国及び地方公共団体は、マンションの管理の適正化に資するため、管理組合又はマンションの区分所有者等の求めに応じ、必要な情報及び資料の提供その他の措置を講ずるよう努めなければならない。」というふうになっています。私も地元は埼玉なんですけれども、マンションの居住者の皆さんと懇談をしたりしてたくさんの相談や要望が出されています。
全国の市街地再開発協会とマンション管理センター、ここがアンケートを行ったようであります。現在住んでいるマンションについて居住者の悩みが一体どこにあるのか、これらについてこのアンケートの結果はどういう内容になっているか、ここをまずお知らせいただきたいと思います。
○政府参考人(三沢真君) ただいま先生御指摘の市街地再開発協会とマンション管理センターが実施したマンションの管理組合に対するアンケート調査によりますと、一つは、現在の住まいにどういう不満がありますかという問いに対しまして、一位、一番多かったのは配管、給水設備が劣化している、それから二番目は水回りなどの設備機器が古い、それから三番目が住戸が狭い、四番目、地震などに対する安全性に不安あり等が多かった回答でございます。
それから、今後のマンション管理上の不安として一番多かったのは、居住者の高齢化で管理組合活動等に影響が出ることが第一位、それから二番目は震災や老朽化によって必要となっても建て替えが難しいということ、三番目が建物の劣化が進み修繕が遅れること、四番目として修繕積立金が不足すること等が多く回答の中に挙げられているというふうに認識しております。
○富樫練三君 問題は、そういう、どこのマンションもかなり共通しているんだろうと思うんですね。私どものところに寄せられている居住者からの要望もほぼこれとかなり一致しているということが言えると思うんです。問題は、こういうことに対してきちんと窓口で相談する場所があるのかどうかというところで管理組合の役員の皆さんも大変悩んでいるという実態が一方であります。
例えば、港区とかあるいは豊中市などでは窓口相談、マンションの建て替えも含めてそういうことが行われていたり、あるいはコンサルタントの活用、こういうことも行われているし、埼玉で言えば、川口市の場合は窓口を作りましてパンフレットを作って大いに相談に応じると、こういうことがやられているわけなんだけれども、実際には全国的に見ればまだまだ市区町村の場合の窓口が不十分なんじゃないかというふうに思うんです。国の総合調査が平成十一年度と平成五年度に行われたわけですけれども、残念ながら、都道府県段階はつかめても、更に市区町村の段階になると実態はなかなかつかめていない、窓口の実態がどうなっているかというのが現状のようであります。
私、少なくとも、都市化がどんどんどんどん進んでおります四大都市圏については、市区町村の窓口の実態も含めて国がしっかりと実態をつかむ必要があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点について、いかがですか。
〔委員長退席、理事藤井俊男君着席〕
○政府参考人(三沢真君) 相談窓口の設置状況のお尋ねでございます。
これは、マンションの管理の適正化の推進に関する法律が施行されるに当たりまして、私どもも全国の都道府県、それから政令指定都市に集まっていただきまして、マンション管理行政に関する会議というのを開催いたしまして、そこで相談窓口の設置をお願いをしたところでございます。このため、現在までのところ、全国の都道府県、それから政令指定都市においては相談窓口の整備が行われたという現状でございます。今年度以降、さらに相談窓口を設置するとともに、そういう職員を対象とした研修ということで、国土交通大学校においてもこういう窓口職員を対象とした研修を実施して相談能力の向上を図っていくということを考えております。
それで、さらに、じゃ、それ以外の市町村の状況はどうかということでございます。これは、先生御指摘のとおり、やはりまだマンションの立地が比較的大都市に限られているということもありまして、すべての市町村でこういう相談窓口が設置されているという状況にはないわけでございます。これは、ただ、やはりその市町村でのマンションの立地の進展等を勘案して、やはり必要があるときはもうきちっと設置していただくということが大事だというふうに考えておりますので、私どももこのことにつきましてはきちんと機会をとらえながらいろいろな助言をするとともに、例えば先ほどの研修の実施についても、そういう市町村の職員の研修も含めて今後やるということも検討していきたいというふうに考えております。
○富樫練三君 一番やっぱり身近なところで相談ができるという体制が大変大事だというふうに思いますので、是非この点は強化をしていただきたいというふうに思います。
そこで、今回提案されております建て替えの問題について伺いますけれども、建築後三十年を超えたマンションが二〇〇〇年度末で約十二万戸、二〇一〇年になれば九十三万戸に達する、こういうふうに言われているわけなんですね。建て替えのときに安心して住み続けられるようにすること、これが一番大事だというふうに思います。したがって、マンションの建て替えがスムーズに行われるための対策は必要であると思いますし、そういう点で今回の法案は一定の前進ではあるというふうに私どもも考えております。
しかし、調査室の資料でも言っておりますけれども、マンションの建て替えに際しては、高齢者や低所得者などの経済状況や生活設計上の理由から建て替えに参加することが困難な人や、あるいは建て替えに伴って契約関係の継続が困難となる借家人等が必然的に発生する、こういうふうに言っているわけなんですね。住宅、土地の統計調査によれば、建築後三十年以上のマンションの場合、六十歳以上の方だけで住んでいる住戸、これがもう三割を超えている、こういうふうにも言われているわけで、不安が非常に拡大しています。
やむを得ず転出する原因として、先ほどの質問の方に対する答弁の中で局長の方から、建て替えの資金が困難であるために組合に参加できないとか、組合に参加するんだけれども権利変換計画に参加できないために結果として転出せざるを得ないとか、あるいは既存不適格であったために面積が確保できないで結果として転出せざるを得ないとか、いろいろな要素があるんだと思うんです。建て替えの場合、やっぱり膨大な資金が掛かるというのが一つのネックになっているというふうに思います。
国土交通省がシミュレーションを行ったというふうに言われておりますけれども、これによると、およそ、建て替えのときに一人の居住者が大体どのぐらいのお金が必要なのかと、このシミュレーションの結果についてどうなっているか、お知らせいただきたいと思います。
○政府参考人(三沢真君) 私ども国土交通省の中で建て替えの進め方についての研究会を実施したときに、その中でいろいろなシミュレーションを行ったわけでございます。
その中身でございますけれども、これは一定の想定を当然置いてやるわけでございますけれども、東京都区部に所在する、これは単棟、一つの棟で五十戸、戸当たり床面積五十平米ぐらいのマンションというのをイメージしまして、それをまたその建て替えの前の容積率がどのくらい充足しているか、つまり目一杯使っているのか、余裕があるかどうかとか、それから保留床というものを確保するのか、全部専有の床として権利変換するのかと、いろんなことで条件設定を行った上で計算をいたしました。
その中で、そうすると最も負担が大きい場合というのは、これは建て替え前の容積率の充足比が一・〇、つまり目一杯までもう使っている、しかも専有面積を最大化する、つまり外に売って事業費に充てるという保留床は取らないで全部専有面積として分配する、そういうケースですと、都心の区で二千二百万程度、周辺区でも二千百万程度というような数字がございます。これらについて、さらに補助金を導入しますと、これが例えば都心区で千七百八十万、周辺区で千七百二十四万という計算がございます。
一方、最も負担が小さいのは、これも充足比について例えば〇・七という想定で、保留床は逆に最大限設定するというようなケースですと、都心区で約六百万、周辺区で七百八十万くらい、これに補助金を導入しますと、これがそれぞれ二百四十万、四百二十四万ぐらいになる、こういうシミュレーションの結果がございます。
○富樫練三君 そうすると、例えば都心部の場合で充足率、容積率、これは一・〇、すなわち目一杯ということだと思うんですけれども、そういう場合で補助金を導入した場合でも千七百八十万、周辺の場合は千七百二十四万ですか。そうすると、やっぱりかなりの負担になる。これだけの資金が用意できなければ建替組合に参加できないということになった場合に、それは補助金入れてもそのぐらいですから、これはなかなか大変だというふうになると思うんです。
〔理事藤井俊男君退席、委員長着席〕
実は、低所得者とか高齢者にとってみればこれは大変なことであって、先ほどの市街地再開発協会やマンション管理センターのアンケートを見ると、建て替え費用負担困難な区分所有者がいるためになかなか建て替えが前に進まない、これが一つの困難になっているというのがトップで七六%という結果が出ているわけなんですね。
ですから、そういう点で言えば、共用部分を含めた補助金の大幅な引き上げ、個人の財産の部分ではなくて、共有部分については当然補助金の対象になっているわけですから、ここを大きく引き上げるということが大事だと思うんです。同時に、補助金や融資が仮にあったとしてもそれに参加できないという場合、ここがより深刻だというふうに思います。
今回の法案では権利変換方式というのが採用されることになっているわけですけれども、建て替えの決議については五分の四の賛成、権利変換計画の決定については五分の四の賛成、こういうことになっていますね。ですから、例えば百戸入っているマンションの場合に、五分の四の賛成ですから八十人が参加すればマンションの建て替えは決定できる。その段階で最大限二十軒は外に出ざるを得ないかもしれない、参加できなくなっちゃうかもしれない。その上で、今度は権利変換計画を作ってそれを決定するときは、残った八十軒のうちの五分の四ですから、そうすると十六軒の人はさらに外に出ざるを得ないかもしれない。こうなれば、元々百軒住んでいたマンションのうち、三十六軒の人は最大限を見積もった場合には転出せざるを得ないかもしれない、こういう方式なんですね。
この計算には間違いありませんか。
○政府参考人(三沢真君) 先生がおっしゃるとおり、建て替え決議は区分所有者及び議決権の各五分の四以上の賛成で成立するということでございますので、区分所有者が百名いれば八十名の方が賛成すれば決議が成立する。さらに、権利変換契約は組合員の五分の四以上の賛成で策定できるということでございますので、百名中六十四名の方の賛成があれば事業が実施できる。逆に言いますと、最大限三十六名の反対者がいても事業実施が可能であるということでございます。
○富樫練三君 ですから、そういう点でいうと、今度の方式というのはなかなかいろんな問題点を含んでいるというふうに言わざるを得ないわけなんですね。
さらに、既存不適格の場合は、かつては法律上、建築基準法上や都市計画法上建てられたんだけれども、その後法律が変わる、条件が変わる、そのことによって、現在では建築基準法上認められない、例えば容積率がオーバーするとか建ぺい率がオーバーしているとか、こういうことがあり得るわけなんですね、それは法律というのは変わっていくわけですから。
そこで伺うわけですけれども、もしそういうふうになっている場合には、建て替えたときに保留床を造って、そこを売ることによって資金を獲得して居住者の負担を低く抑える、こういう方法はできないわけですよね。もう既に容積率をオーバーしている場合は、建て替えたらそれよりも小さいものを造らざるを得ないと。土地を買い足せば、それは話は別ですけれども。
そういう既存不適格の建物が、マンションがどのくらいあるかと、これは国土交通省の方で調べていると思うんですけれども、その数字をお知らせいただきたいと思います。
○政府参考人(三沢真君) マンションストックの中には、着工後導入された建築基準法に基づく規制に適合しない、いわゆる既存不適格マンションがあるということで、これらのものに対する対応が大変重要な課題であるということは認識しております。
この現状でございますけれども、これについて、これは一定の簡便な方法により一つの算定を行ったわけでございますけれども、東京都内の昭和五十年以前に竣工したマンションストックのうち不適格と言えるものは約六割だというふうに推計をされているところでございます。
○富樫練三君 約六割だけというんじゃちょっとよく分からないので、何棟ぐらいあるんですか、数で言うと。
○政府参考人(三沢真君) これは全数調査ではなくて、一定のサンプリングをして、抽出して調べたものでございます。二千七十九地区を調べたところ、そのうちの千百七十九地区、五七%、これが五十年以前の建築で既存不適格に当たるものという数字でございます。したがいまして、棟数ではなくて地区数で調べたというものでございます。
○富樫練三君 約六割が既存不適格ということは、現在の建築基準法上合致しているのは四割しかないということですよね。
それで、それは先ほどの報告ですと四十六年から五十年ぐらいに建てた建物ですか。そうすると、それからもう既にかなりの年数がたっているわけで、この既存不適格の建物が間もなくもう建て替えの時期に入ると、こういうことになると思うんですね。そのときに、今住んでいる分には別に問題にはならないんだけれども、建て替えるということになるとにわかに問題が表面化すると、こういう性格の問題だろうというふうに思うんですね。
ですから、こういう点を考えたら、狭くしか建てられないわけだから、そのことによって外に出ざるを得ないという人も当然出てくるということになると思うんです。お金がないために続けられない、あるいは既存不適格のために出ざるを得ないと、こういう様々な要件があると思うんです。
そこで、転出をした場合、この人たちの居住の安定をしっかり確保すること、このことは先ほどの質問者に対する答弁でも出されているわけですけれども、ここは一つの、マンション建て替えをスムーズに進めるためには大きなかぎを握っているものというふうに感じるわけなんですね。
法案の第九十条では、「賃借人及び転出区分所有者の居住の安定の確保」ということが言われています。検討委員会の報告書でも、住み替え先が確保ができるよう地方公共団体において賃貸住宅等の情報提供やあっせんに努めるべきであると、また、必要に応じて公共賃貸住宅への優先入居、賃貸住宅の供給に配慮すべきであるというふうにしています。これらの内容は、言わば公共住宅への優先的な入居と、それから借り上げ住宅の活用とか、こういうことを言っているんだろうというふうに思いますけれども。
ここで伺いますが、受皿となるべき公共住宅の現状がどうか。特に東京圏、東京を中心としたこの首都圏、東京圏の場合にその公共住宅、例えば都営住宅であるとか県営住宅とか市営住宅とか、そういうところの募集戸数と入居希望者、応募者、その倍率はどういうふうになっていますか。
○政府参考人(三沢真君) 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の一都三県における平成十二年度の公営住宅の応募状況でございますけれども、募集戸数が約二万二千戸に対しまして応募者が約二十六万八千ということで、応募倍率は約十二倍というふうになっております。
○富樫練三君 募集戸数が二万二千に対して二十六万八千人ですか、が応募していると、十二倍だと。
十二倍の倍率のところに、今度はマンション建て替えるからどうしても転出やむを得ないという人をそこで受け入れる余地なんてどこにもないじゃないですか。これは、公営住宅を一挙に大量に造るというんならそこで受け入れようじゃないかという話は成り立ちますけれども、これは公営住宅じゃ全然受け入れられないというのが実情だと思いますよね。
もし、優先入居だからということで、ここのマンション建て替えた、この人たちは優先入居だからといって、今まで何年も入居を待ってきた人たち、この人たちを押しのけてマンション居住者を優先的に先に入れるということをやったら、これはそこの市町村長さんは大変だと思いますよ。恨まれますよ、これは。ここは、公営住宅をたくさん造るということをやらない限りはこの問題はどうも解決しないというふうに思うんですね。
そこでもう一つは、公団や公社を含めた、民間も含めて、賃貸住宅を都道府県や市町村が借り上げて、借り上げた住宅をマンションから転出した人に提供すると、こういう方法も先ほどのところにあるわけですね。これは今全国で何戸あるんですか。
○政府参考人(三沢真君) 借り上げ公営住宅の供給の実績でございますけれども、この借り上げ公営住宅の供給戸数は、これは平成八年度の公営住宅法改正によって新設されたものでございますが、それから平成十二年度までに一万一千百九十戸の供給というふうになっております。
○富樫練三君 平成八年度から十二年度までというと、八、九、十、十一、十二だから五年間ですよね。五年間掛かって全国で一万一千戸しかできていないんでしょう。ここだって、マンション建て替えましたから、そこからやむを得ず転出せざるを得ないという人を受け入れるだけの受皿というのにはならないですよね。ここは、安心して居住できるものを保障しようというんだったらまずこういうところを、しっかりと受皿を作って、そうしなかったらこの法律は生きないというふうに私は率直に思いますね。
そこで、もう一つ伺いますけれども、勧告マンションというのがあります。先ほども質問ありました。あの衛生上問題だとか危険な建物だとか、そういうところについては市町村長さんが、危険ですよ、建て替えたらいかがですかという勧告をするということになっていますよね。
勧告された場合に、その建て替えの施行者、マンションの所有者とかそういうところの人たちは外に出る人が出てくる。転出やむなしという人のために転出区分所有者の居住安定計画と賃借人の居住安定計画、これを作って、それを市町村長さんに、こういう計画でやりますよと出して、市町村長さんがその中身を見て、はいオーケーですよと認定をすると。認定をすれば、その市町村の方は、その人たちがマンションから出てきたときにその受皿を作りましょうと、こういう仕掛けですよね。そういう仕組みになっていますよね。
そこで、その受皿になるのは、どこが受けるのか、これをちょっとお答えいただけますか。どういう住宅で受けるのか。
○政府参考人(三沢真君) この居住安定計画を認定するに際しましては、その賃借人の世帯構成その他の状況を勘案いたしまして、規模、構造、家賃等が妥当な水準の代替住宅がその地域内で確保される、そういうことを認定の要件にしております。
ここで言っています代替住宅というのは、当然いろんな公共賃貸住宅ストックというのも含まれるわけでございますが、更に今回、新たな補助制度として民間の借り上げによりましてこういう代替住宅を提供するという措置も取られておりますので、こういうものも含めましての代替住宅であるというふうに考えております。
○富樫練三君 そうすると、公共住宅やそれから借り上げた住宅、これに入居していただこうということですよね。
ただ、この法律にはこういう文章もあるんですね。法律の条文そのものというより、こういう趣旨の条文があるんですね。勧告された、建て替えるべきだと勧告されたマンションの近くに、そこから転出した人が、先ほどもちょっとありましたけれども、例えば子供の学校の問題だとか通勤の範囲だとかそういうことで、その近くにうまい受皿、そういうものがない限りは市町村長は認定してはならないと、こういうのがあるんですよね。そういう条文があるんですよ。
ということは、受皿がない場合は認定はしません、居住安定計画を認定しないと。それは認定しちゃったら責任が伴うからですよ。ということは、そういう条件が整うまでは勧告もやらないと。勧告すると計画が出てくるでしょう。その計画は認定しなきゃ意味がないでしょう。ですから、これはもう勧告も実はそういう条件が整うまでやられないということになりがちだろうというふうに思いますし、私が例えばそういう立場だったら勧告なんか怖くてできませんよ。勧告したら計画が出てきた、認定しなかったら何のための勧告だと、こうなるわけでしょう。認定したけれども受皿がないということになったら市町村長さんの責任はどうなんだと、ここは問われるのは当然なわけですからね。
その受皿として予定されているのは、公営住宅の入居が一つですよ。それから特定公共賃貸住宅ですね。この戸数は年々下がっているんですよ。これは平成七年度の三万九千戸をピークにして、平成十二年度では一万五千戸になっているんですね。減っているんですよ。それから高齢者向け公共賃貸住宅、これは平成十二年度で四千百五十八戸しかないんです、全体でですよ。これしかないんです。
そうすると、受皿として出てくるのはあと考えられるのは何かといったら、結局市町村が借り上げた住宅ですよ。借り上げた住宅というのは、民間の人が造った住宅を借り上げるわけですから、結果としては民間頼りにならざるを得ないと、こういうことになりませんか。局長、どうですか。
○政府参考人(三沢真君) 先ほど申し上げましたとおり、公共賃貸住宅ストック、それからやはり民間からの借り上げも含めて全体として必要な対応をきちっと図っていくということでございますが、これにつきましては、民間賃貸住宅の借り上げについても今回都市再生住宅ということで今年度から新たに家賃対策補助を含めて予算措置をしているということがございますので、民間任せといいますか、むしろそういう措置を活用していただくことによって民間の力も活用しながら適切な対応を図っていただくと、こういう趣旨でございます。
○富樫練三君 時間がなくなってまいりましたけれども、民間の力を活用してというのは物は言いようで、私に言わせれば民間頼みと、こういうわけですよね。公が公共住宅に責任を負うという立場はどうもないんじゃないかという点が大いに心配なわけですけれども、最後に大臣に伺いたいと思います。
先ほど大臣は不安を持たないようにすることが我が国土交通省の立場なんだと、私もここはとても大事なことだというふうに思います。ただ、これは、マンション建て替えに伴う転出者の対策というのは残念ながら現状ではまだまだ不十分だというふうに率直に言わせていただきたいと思うんです。例えば公共住宅についても、九六年のときに公営住宅に対する補助金、これが三分の二から二分の一に逆に下げられると。したがって、市町村が公営住宅を造るのがより大変になっているという現状が一方であります。
私は、この法案に基づいて老朽マンションの建て替えを促進したり、あるいは勧告マンション、これの建て替えを促進すると。これを実効性のあるものにするには、第一に、やっぱり高齢者や低所得者が住み続けられるような補助制度、融資制度、これをきちんと作るということ。もう一つは、やむを得ず転出する場合の受皿をしっかり作る、特にその中でも公営住宅を大幅に増やすということが大事だと率直に思いますけれども、大臣の見解を伺って、私の質問を終わります。
○国務大臣(扇千景君) 今おっしゃったとおりでございまして、私たちも今住んでいる、富樫委員がおっしゃったように、不安を与えないようにと、これはもう大原則であることは先ほども申し上げましたとおりでございます。
ただ、マンションには年齢とかあるいは世帯の構成、それから経済状況等々、それぞれの多様な区分所有者がいらっしゃいますから、私どもとしては、これらの区分所有者のそれぞれの違う人たちが集合してお住まいになっているマンションというものに関しましては、少なくとも建て替えに当たっては、今申しましたように、高齢者の居住者が大変多くなっているというような状況から考えますと、少なくともこれらの参加者が建て替えするときの困難さというもの、今までるるお話が出ましたように、金銭的な問題でありますとか、あるいは新しいところへそのまま移転できるであろうかというような問題、そしてまた今おっしゃったような受入れの戸数が果たして確保できるのかどうか、民間からの借り上げというものに対しての助成をどの程度してもらえるのかと。
そういうあらゆる面の問題提起がございまして、今、富樫委員がおっしゃったように、それらの不安というものを我々としてどの程度緩和する、またそれを促進することができるのかと。そういう面では私は今後、全国で少なくとも約二百十七万戸のストックを有しております公営住宅、さらには今後五年間で約二十四万戸を整備する計画をしなきゃいけないと。それらの活用によってマンションの建て替え事業の、従前の居住者のための居住安定措置というものを今後強力に行うために、平成十四年度に少なくとも都市再生住宅制度としてこれを強化し拡充するということが必要であろうと思っておりますので、今おっしゃったように、マンションの居住者に不安を与えないような建て替えがスムーズに行われ、なおかつ金銭的な助成、そして安定というものを図っていくように努力していきたいと思っております。
○委員長(北澤俊美君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩をいたします。
午後零時十七分休憩
─────・─────
午後一時三十分開会
○委員長(北澤俊美君) ただいまから国土交通委員会を再開をいたします。
休憩前に引き続き、マンションの建替えの円滑化等に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
○大江康弘君 こんにちは。国連の大江康弘でございます。
実は今日の予定は田名部先生でありましたが、この法案は非常に大事だということで、あと参考人、あるいはまた締めくくりがあるということで、おまえ前段やれということでございまして、また田名部先生の御高説やお説教はまた聞いていただいて、今日はその前段ということでありますけれども、もういろいろ先生方が御質問されまして、基本的には私もこの法案には賛成でございます。
ただ、この法案をずっと見せていただいておりまして、何かこの出された時期だとかあるいはこの法案自体がいろいろと、この協議ができ上がってから後どうするかという部分が重きにありますので、どうもこの入口の部分で何か途絶えておるというか、野球でいえば、オールスターの立派なチームが並んでおるんですけれども、何かピッチャーがおらないと。何かそんな今状況の法案というか、そういう状況ではないかなと。国土交通省の今回のこの円滑法は、やはりその前段には法務省の関係であります建物区分所有法ですか、これがやはり前段で議論をされないとなかなかこの円滑法自体が生きてこないんじゃないかと、そういう意味ではなぜこの時期がずれて出てこられたのかなと。
私は、この円滑法自体の思いは、確かに住居環境をどうするかという、一番住む人の切実なこともあろうかと思いますけれども、やはりずっと今日までいろんな法案を審議をしてきましたが、都市再生法だとかあるいは都市再開発法だとか、やっぱりそういう部分の中でもう一度都市の在り方を見直していこうという、そういう一つの議論の中の延長線上にあるこの法律ではないかなと。
しかも、やはりこの建物というのは、非常にすそ野の広い、実は私は、例えば造るとき、単に道路を造るというのは、これはブルドーザーで道をかいて、あとアスファルトを張って、そしてガードレールを付けたらいいという非常に単純な作業でありますけれども、この建築物というのはそういう意味では非常にすそ野が広い。それだけに、そこに雇用される人が非常に多い。いろんな意味でいえば、こういう不況なときにはむしろ、そういう道路だとかそういうものも大事ですけれども、逆にこういう建築物を例えば公共事業なんかで、今まで六割は道路だったよ、あとの四割は建築物だったよというんであれば、こういう不況なときこそ、やはりすそ野を広げる意味で、やはり公共事業の見直しということになれば、私は、それをちょっと振り替えてせめて五分五分ぐらいにすれば、やはり働く人もいろんな意味で、建物でしたら窓一枚、やはり内装も広がっていくということで、そんなことも実は、そういうこともこれありで、国交省とすれば、先ほど言いましたように、住環境の整備という観点はモットーだと思いますけれども、やはりそれに付随して、この建物を直していくということはどのように内需拡大になるかという部分も含んでおられたのかなと、だから、そういうこともあって、今回こういう法案がいろいろと審議の上で出されたのかなと。
さすれば、先ほど言いましたように、せっかくこれオールスターで、いい選手がこれやっぱり内野、外野守っておるんですから、やっぱりピッチャーである法務省の基本になるこのマンション法といいますか、通称マンション法が昭和三十七年に作られた。その後、五十八年に大改正をされたという。そしてまた、今回見直しをされているということになれば、約二十年ごと、そういう一つの節目節目で見直しをされてきておるのかなと、それが二十年というのが一つの時代の要請かなと、移り目かなということを実は感じるわけでありますけれども、せっかくこのいいものを作ろうとされておられる。
大臣はある場所で、やはり法律というのは完全じゃない、だからそれはそれで、そのときいろいろ問題が起こったら変えていけばいいじゃないかと、これは正にそのとおりであります。しかし、今回のこの法案に限っては、やはりこの前段の部分の、法務省の審議が今されておられるということでありましたけれども、この審議の部分が非常に及ぼす円滑法というものは、影響というか、そういう部分がお互いが非常にリンケージしておるということを考えたときに、まず法務省の局長にお尋ねをするんですが、そこのところの整合性というか、そういう部分で国交省と、今回こういう法律を出されるんだということの中でのお互いの各省庁を超えてのそういう、もちろんいいことですから、そういうことの、なぜこの話合いをされて、同時に、やはりこういうものが出てきてお互いがいい意味の作用をし合うということになぜならなかったのかなというそこらの経過も含めて、ちょっと房村局長にお尋ねをしたいと思います。
○政府参考人(房村精一君) ただいま御指摘のように、マンションの建て直しを円滑に進めるという観点からいたしますと、私どもの法務省で所管しております建物の区分所有に関する法律、これの整備も同時に行うということが理想ではないかというのは御指摘のとおりだろうと思います。私どもも鋭意検討は進めていたわけでございますが、何分、やはり区分所有者の最も基本的な権利である区分所有を失う場合をどうするかというようなことがかかわるものですから、いろいろ幅広く御意見を伺った上で間違いのない法律を作りたいということでやや時間が掛かってしまったというところでございます。
ただ、既に試案は公表いたしまして、それについての御意見も大分ちょうだいいたしておりますので、現在それを取りまとめて更に審議を続けまして、今年の秋、臨時国会が開かれる事態になればその臨時国会に法案を提出して、できるだけ早く追い付きたいという具合に考えているところでございます。
○大江康弘君 局長、ありがとうございます。さすれば、九月時分に臨時国会がもし開かれればそこに出していただけるという方向で今鋭意努力していただいているということでありまして、大変御努力に感謝をいたしたいと思います。
そうすれば、先ほど、今朝ほど来からもいろいろ御審議がありましたが、いわゆる既存の不適格の問題、敷地の同一性の問題だとかあるいは建物の使用目的の同一性の問題だとかいう部分には、これはもう完全にクリアしていけるという、そういう部分は大丈夫だということになりますか。
○政府参考人(房村精一君) 敷地の同一性等についても試案で公表いたしまして、従来のような厳格な同一性を要求しないで、広げるという方向で検討を進めているところでございます。
○大江康弘君 局長に最後に一つちょっと、五分の四というこの条項がある、条項というか決まりがある。この五分の四の数字という、これはやっぱり、特に何か背景というか、あるんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 区分所有建物の場合、所有者が大勢いて、それぞれお互いに影響するところがあるものですから、一般的なことは多数決、過半数でもちろん決めていただけるわけですが、例えば共有部分を変更するというようなことになりますと相当大きな影響を与えますので、単純な過半数ではなくて四分の三の多数決で決めていただくということにしたわけでございます。
建物の建て替えということになりますと、これに反対した人はその区分所有、自分の持っているところの所有権を失ってしまう、そういう大きな効果が発生します。ですから、通常の民法の原則でいきますと、自分の持っているものを自分の意に反して失わされるということは普通はないわけですね。ところが、区分所有の場合にはどうしても同じ建物をみんなで分けて持っているということから多数決で決めざるを得ないと。しかし、所有権を失うという非常に大きな効果を生ずる以上はやはり相当重い決議要件が要るのではないか、このようなことから、通常の共有部分の四分の三より更に重い五分の四と、こういう多数決で決めていただくということになったわけでございます。
○大江康弘君 どうも、局長、ありがとうございます。もう法務省関係はこれで結構でございます。よかったらどうぞもう御退席をいただきたいと思います。
○委員長(北澤俊美君) 御苦労さまでした。
○大江康弘君 次に、ちょっと少し委員会の始まる前に大臣から、この老朽の意義ってこの質問いいわねということで、大臣にこの御質問、もう大臣、どうぞ、今日は質問ありません。お孫さんの顔でも思い浮かべてひとつ今日はゆっくり休んでいただきたいと思うわけであります。後で渕上先生の質問があられるのかどうか分かりませんが、ひとつ休憩をしていただきたいと思いますけれども。
先ほどもこの老朽という形の中でも、阪神・淡路大震災のように、もうつぶれたということであれば、これはもうはっきりして目に見えて分かるわけであります。これはもうどうするかということ、どうしなければいけないかということになるわけですけれども、今ほど答えていただいた房村局長の方も、何か三十年か四十年かまだはっきりしないということで、森本先生の御答弁の中でもそういうことでありましたけれども、それを三十年と決めてしまう、四十年と決めてしまう、決めたからといって、それはあくまでもそこからすぐにやれということではないという御答弁のようであったと思うんですけれども。やはりこの老朽という言葉自体が非常に抽象的な言葉であろうと思いますけれども、局長にもう一度ちょっとここのところの定義といいますか、ちょっと聞かせていただけたらと思います。
○政府参考人(三沢真君) マンションのその老朽化の度合いの判断でございますけれども、これは個々のマンションの躯体や設備等の劣化状況により判断するということでございますが、更に具体的に申し上げますと、躯体で申し上げますと、躯体の劣化状況としましては、例えばコンクリートのひび割れとか剥落とか、あるいは鉄筋のさび、露出等の状況、それから設備の劣化状況といたしましては、給水管や排水管の腐食とか防水槽の破断等の状況、こういったようなものを具体的な状況を判断して考えていくということかと思います。これは、ただ、やはり個々のマンションの設計仕様とかあるいは施工や維持管理の状況等によっていろいろ異なるところでございまして、したがってその老朽化の度合いというのは、先ほどからもお話出ていますように、その建築年数などで一律に判断できるという性格のものでは必ずしもないというふうに考えております。
それから、今申し上げました物理的な耐久性のほかに、住戸面積とか設備等の水準が低くて現在のニーズに対応できないというようなことから建て替えを議論するというケースもあるわけでございます。
いずれにいたしましても、ここは、マンションの建て替えの検討が行われるに当たって、そういう建物の現状とかそれから維持修繕を続けた場合等の例えばコストの比較、こういうことに関するきちんとしたやっぱり情報があって、その上で、十分な議論を行った上で判断されるということが非常に大事でございます。したがいまして、国土交通大臣が定める基本方針の中に建て替えに向けた合意形成の促進に関する事項というのがございますけれども、こういう事項としてそういう判断をするための技術的な指針の作成を盛り込むということにしておりまして、この指針を参考にして具体的な状況を判断いただきやすいような、そういう指針づくりにしていきたいというふうに考えております。
○大江康弘君 今朝ほどの吉田先生の質問の中に平成十二年で約十二万戸、これは三十年超のあれです。これが平成の二十二年には九十三万戸ということですから、単純に考えればもうこの十二万戸自体が、例えばこの秋に法務省がこれ三十年という一つの線を、四十年か三十年かということで三十年ということを出せば、これはこの十二万戸自体がもうたちまちその日から対象のものにこれなっていくわけですよね。
そういう中で、後の公的関与のことにちょっと関係はするんですけれども、市町村長が勧告をする。私は個々の市町村長がスタート時点で勧告をするというのはいろんな意味があると思うんです。やりなさいよという、この一つの行政指導の在り方でやりなさいよと言うのか、やるべきだと言うのか、やらなければいけないと言うのか、そこらの公の関与ということを考えたときに、私はやっぱり、先ほども質問にありましたが、マンション管理士というものが国家試験としてそういう形で認められるようになってきた。国がもう認めるという大変高い地位を対外的にその存在感を示せるようになった。
大臣の御答弁では、十万人近く受けて、今七千二百人余りがということでありますけれども、ちょっとまず前段階に、このマンション管理士というものが出てきた経過というか、あと仕事の内容とか、ちょっと局長、お聞かせいただけますか。
○政府参考人(三沢真君) マンション管理士は、マンションの管理の適正化に関する法律という法律に基づいて創設されました資格制度でございます。
その背景といたしましては、マンションの適正な管理というものを実施していくためには、やはり多数の区分所有者間の合意形成を図りながら管理組合を運営していくということが必要になるという難しさ、それから戸建て住宅と比較してやっぱり構造が複雑かつ大規模になるということから、その維持修繕を行っていくときにはやはりある程度のかなり高い技術的な知識というのも必要になるわけでございます。そういうことから、様々な専門的な知識というものが管理組合の運営に関して必要になるケースが多いわけでございます。したがいまして、こういうものを管理組合の構成員である区分所有者だけの知識でなかなかやっていくことが難しいために、こういう専門的な知識を外に求める、言わば相談できるような体制の充実が必要だということがこの法律の背景として議論されたわけでございます。
こういうような背景を持ちまして、このマンションの管理の適正化に関する法律に基づいて、言わば専門的な知識を持ちまして、管理組合の運営とか、その他のマンションの管理に関して管理組合とかあるいはマンションの区分所有者等の相談に応じていろんなアドバイスとか指導を行う、こういうことを業務とするマンション管理士制度というのを創設いたしまして、これが国家資格ということで位置付けられたということでございます。
具体の仕事の中身といたしましてここで想定されていますのは、例えば、建物の管理とか使用に関して区分所有者相互間で規約等のルールなんかをきちっと決めておく必要がございます。それから、やはり長期修繕計画というものをきちっと作ったり、あるいは適切に改定していく必要があるとか、それから当然区分所有者間で時にはトラブルが起きるときがある、こういうことに対応して、規約なり長期修繕計画の素案を作ったり、あるいはそういうトラブル解決に向けての予備的な、地ならし的な交渉をそういう管理士が行うというようなことで、管理組合の運営をいろいろな形で外から専門的な知識をもって応援すると、こういうことがこの管理士に期待されている役割でございます。
○大江康弘君 そういうことになりますと、やはり非常に高い専門性の知識や能力の中で、やはりもっと広く活用できないか。というのは、どこに、国や地方自治体が、今回のこの円滑法が通れば、それを受けて本当にいい意味でスタートができるのか、具現化していけるのかということになったときに、やはり先ほどからいろんな懸念されているそういう問題というのは、高齢者の方だとか、いわゆる五分の四で建替組合、法人ですか、それを作る決議がなされるんですね。それから四分の三で初めてこれは建て替えの決議だったですかね。だから、そういう中でどうしても付いていけない人、せっかく今まで同じ場所で生活を共有してきて、付いていけない高齢者の、高齢者とは限りませんが、先ほどからの言葉をかりれば、高齢者の方だとかあるいは例えば身体障害者の方だとか、あるいはこんな時代ですからリストラに遭われた方だとか、そういう部分の中でどうしても付いていけない方がおられる。それでもやっぱりやらなければいけないということになれば、私は単に業者任せだとか管理組合任せだけでいいのかなと。
先ほど前段に私は法務省の方に質問しましたように、この法律というのは、今回の、野球で言えば、私ずっと野球をやっておったものですからすぐ例えがこんなのになるんですが、野球で言えば、選手からしたらやっぱり監督が法務省の立場になるんですね。今回のこの法案というのは何かコーチみたいな役目じゃないかな、そんな位置付けの法案じゃないかなというふうに実は思うわけですけれども、そういうことになれば余計親切に、やはり国が関与をしていくということを考えたときに、私は、せっかくこのマンション管理士が今七千人余りの方が全国におられる、その中で相談体制をどう取っていくのかということを、作るに当たって、その前段階の中でどう相談体制を作り上げていくのか。
いわゆる住居者の方々にいろんな情報を開示をしたり、いろんな情報を伝達をしたり、いろんな知識を教えたりということになれば、私はやっぱりここに、法案に明文化をしてでもマンション管理士をその中に入れるとか、マンション管理士はそこにきちっと間に入ってもらって適切な指導とかあるいは相談を受けてもらうという、こういうことも僕は必要ではなかったのかなというふうに思うんですけれども、そこらの考えというのはどうなんですか。
○政府参考人(三沢真君) 正に先生御指摘のとおり、建て替えに当たりましては合意形成とかあるいは事業採算の確保とか、そういうことも含めた非常に技術的なこともいろいろございます。これに関しましては、やはり法律とか建築とかあるいは不動産、あるいは金融、税制など非常に広範囲にわたる専門的な知識というのが必要とされるわけでございます。したがいまして、こういう専門的な知識を持って、建替組合とか、あるいは建て替えを検討する管理組合あるいは区分所有者、こういう方々に対して専門家の立場からいろんな相談に乗ったり、情報提供をしてあげるということが非常に大事になってくるわけでございます。
元々マンション管理士も、資格創設のときに、やはり公共団体あるいは関係団体とこういう管理士の方々とがネットワークを組んで、そういう相談体制の網を張っていろんな形で情報提供をしていこうと、それが非常に大きな趣旨だったわけでございます。
やっぱりその趣旨が今回の建て替えという問題への対応に当たってもきちんと生かされていくということは非常に重要であると考えておりまして、これにつきましては国土交通大臣が基本方針というものを定めることになっておりますけれども、基本方針の中でいろんな建て替えに関する相談とか情報提供の体制の整備についても、これも盛り込むことにしております。その中の非常に重要な要素として、ただいま先生言われましたように、マンション管理士のような方々等の専門家との連携、そういうことも含めてきちっとそういう活用が図られるような、そういうことを盛り込んでいきたいというふうに考えております。
○大江康弘君 先ほど少し時価の話がありまして、なかなか、やっぱり最後は時価というものでトラブったときにはこれはもう訴訟でしか仕方がないかなという、局長いみじくもそういう現実の答え方をされたわけでありまして、最後は住んでおる人の個人の固有の権利の部分でありますから、やはりそういう部分では本当に難しい。だから、そういう中での、それを分かった上での環境づくりということでありますから、非常にはれものに触る部分が実はあったかと思うわけであります、これを作り上げていく中で。
それだけに、今ほど申し上げましたように、局長もそういう方向で考えてみたいということでありますから、どうぞひとつ、当事者間は一番大事ですけれども、それをうまく間で、潤滑油的な部分で、これは全員がそういうことだとなればいいんですけれども、やっぱり反対者があるからそういう五分の四だとかあるいは四分の三だとかという一つの目安の数字が、クリアできる数字が法律的に決められてきたわけでありますから。ですから、余計にそういう人たち、そういういわゆる中に入ってくれるというか、氏神さんというのは、もめている人の時の氏神だとよく言いますけれども、やっぱり氏神さん的な存在の人がいなけりゃいかぬのじゃないかな、そういう意味ではうってつけの役柄、仕事柄の人じゃないかなと思いますので、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。
最後に、もう時間もございませんので、建て替えをしている間の仮の住宅の話ですが、非常に公の住宅を使うということは、先ほども少し数字で十二倍もふだん待っている人がおられるという、そういう現状も聞きましたときに、私もそこのところに非常に不安や懸念を持つ一人でございます。
それだけに簡単に、田舎であれば、我々みたいな田舎であればたくさん県営住宅も実は雇用促進も空いておりますから、そこへ行けよ、ここへ行けよとがらがらで決められるわけですけれども、やはり都会ということになればこれはもう需要の方が正に多いわけですから、朝みたいな数字を聞けばこれは本当に大丈夫かなという非常に不安を持つわけですけれども、そこのところのちょっと懸念をもう一度払拭してくれるようなそういうひとつ御答弁をいただければなと、こんなふうに思います。
○政府参考人(三沢真君) 今のは一つの仮住居の格好というお話でございましたが、仮住宅に限らず、いわゆる転出者の方々への対応も含めまして、やはり建て替えに伴って住宅に困窮する方が困らないように居住の安定の確保を図っていくということが非常に大事なわけでございます。
そのやり方としてはいろいろあるわけでございますけれども、いわゆる公営住宅ストックを活用していくというやり方もございますし、それから民間借り上げ方式といいますか、民間の住宅に対しまして国、公共団体が助成して、その場合、いわゆる家賃対策補助等についてもきちっと対応するということによってこういうものを、民間の住宅を活用するという方式もございます。
いずれにいたしましても、そういうことについてやはり公共団体が当該地域での状況等を十分把握し、一方、また建て替え事業の進捗状況等も十分把握しながら、きちんとした対応をしていただくということが非常に大事でございまして、これにつきましては、国土交通大臣が定める基本方針の中にも居住安定措置の在り方としていろんな措置を盛り込むこととしておりますので、私どもも、また具体の措置の在り方については公共団体が適切に対応できるような、いろんな助言なり財政援助はもちろん、適切な対応をしていきたいというふうに考えております。
○渕上貞雄君 社民党の渕上です。
法案提出の理由とその背景についてお伺いをいたします。
午前中、午後と各委員の発言並びに答弁を聞いておりまして、この問題、なかなか難しい問題だな、さてどのように理解すればいいのか、こういうことを考えますと、いま一度やはり今回提案をされました提案理由と並びにその背景について、もう少し分かりやすくといいましょうか、なるほどと言われるようにどうか御説明いただければ難しい問題も解決するんじゃないかと思いますが、よろしくお願いします。
○政府参考人(三沢真君) 法案提出の理由とその背景ということでございますけれども、御承知のとおり、我が国のマンションストック、現在約四百万戸を数えておりまして、マンションというのは都市における住まいの形態として広く普及しております。
ただ、やはり今後、老朽化したマンションがだんだん増えてきて、これに伴ってやはり居住環境等の面でいろいろ問題が出てくるということは否めないわけでございます。この場合に、建て替えそのものについては、やはり区分所有者相互間が話合いによって、自主的な努力によっていろいろこれをやっていただくということが原則でございますが、ただ現実には、いわゆる建て替え決議を行った後においても、それを更に円滑に進めていく上でのいろいろな制度的な面で十分でない面があるという指摘があるわけでございます。
具体的には、例えば建て替えを行う団体の法的な位置付けとか運営ルールが不明確で、意思決定であるとかあるいは発注等の契約行為が円滑にできないというようなこと、それから区分所有権とか抵当権などの関係権利を再建後のマンションに円滑に移行させるための法的な仕組み、これは登記の問題なんかも含めまして、そういう仕組みがないというような問題が指摘されてきたわけでございます。
今回の法案は、こういった課題を踏まえまして、区分所有者自らによる良好な居住環境を備えたマンションへの建て替えの円滑化を図るというのがこの法案の趣旨でございます。
○渕上貞雄君 次に、基本方針についてお伺いをいたします。
大臣は、マンション建て替えの円滑化等に関する基本的な方針を定め、これを公表しなければならないとありますが、この基本方針には具体的にどのようなことが盛り込まれるのでしょうか、お伺いいたします。
○政府参考人(三沢真君) 国土交通大臣が定める基本方針におきましては、まず一番最初に、マンションの建て替えの円滑化等を図るため講ずべき施策の基本的な方向というのを定めることになっておりますが、これは内容といたしましては、例えば区分所有者の自助努力に対する適切な支援とか、あるいは良好なストック形成とか都市再生への寄与の視点を踏まえた施策の実施という基本的な取組の考え方をここに定めるというふうに考えております。
さらに、その後、具体的な施策についてそれぞれ盛り込むことにしておりますが、その具体的な施策の一つとして合意形成の促進に関する事項、これにつきましては、建て替えと修繕との比較検討ができるような技術的な指針、ガイドラインを作ることとか、それから建て替えをいろいろ御議論される区分所有者なり管理組合等に対しましていろんな相談とか情報提供できるような体制の整備について、こういったことを盛り込むことを考えております。
それから、具体的な施策の二番目といたしましては事業の円滑な実施に関する事項というのがございますが、この中身といたしましては、参加組合員制度の活用、仮住居の確保に対する支援、補助等による資金面での支援、建築規制の特例制度の積極的な活用等について盛り込むこととしております。
それから三点目、良好な居住環境の確保に関する事項というのがございますが、これは耐久性の確保であるとかバリアフリー対応、あるいは福祉施設、子育て支援施設の併設、あるいは空地の整備等の推進についてといったことを盛り込むこととしております。
それから四点目、賃借人及び転出区分所有者の居住の安定の確保に関する事項というのがございますが、この中身といたしましては、高齢者等の公営住宅への優先入居、あるいは従前居住者用賃貸住宅に係る家賃対策補助等について盛り込むこととしております。
それから五点目、危険又は有害なマンションの建て替えの促進に関する事項として、危険又は有害な状況の調査あるいは判定の方法、それから勧告を行う市町村長と公共賃貸住宅管理者等との連携等について、こういった事柄をそれぞれ定めるということを予定しているところでございます。
○渕上貞雄君 権利関係も当然盛り込まれると思いますが、そのように理解しておいていいですか。
次に、建て替え決議についてお伺いをいたしますが、区分所有法では第六十二条において建て替え決議が定められていますが、これまでこの建て替え決議に基づき建て替えが行われた建物の数はどれぐらいあるのでございましょうか。また、建て替え決議をめぐってトラブルが発生したと聞いておりますけれども、具体的にどのようなことが問題となっているのでございましょうか。
○政府参考人(三沢真君) 国土交通省で把握している建て替えの件数は、阪神・淡路大震災の被災マンションの建て替えが百八件、それから老朽化に伴うマンションの建て替えが六十九件、合計百七十七件でございますけれども、このうち、区分所有法の建て替え決議、あるいはこの区分所有法の建て替え決議に準ずる被災マンション法に基づく再建決議というのがございますが、こういう決議が行われた件数については、おおむね被災マンションにおいてはその九割程度でこういう決議が行われているというふうに承知しております。
一方、老朽マンションについては、これはほとんど全員同意で今までは行われていますので、建て替え決議というような形式をどうも必ずしも取っていないというふうに聞いております。
それで、建て替え決議に関するトラブルといたしましては、これはいわゆる費用の過分性等の要件というのがございます。建て替え決議するときに、建物がその効用を維持し、又は回復するのに過分の費用を要するに至ったとき、その建て替え決議ができるというような区分所有法の規定がございますけれども、その解釈をめぐってこれに当たるかどうかということが意見が対立したケースがあったというふうに聞いておりまして、このうち、特に裁判までやって争われたケースもあるというふうに承知をしております。
○渕上貞雄君 税制についてお伺いをいたします。
建替組合が行う権利変更に伴う資産取得については税制上の措置がなされているのでしょうか。また、なされるとしたらどのような措置ですか。あわせて、今回の措置される税制がありましたら、教えていただきたいと思います。
○政府参考人(三沢真君) 今回の本法案に伴いまして、次に申し上げますような税制上の特例措置というのを創設をしているところでございます。
一つは、建て替えに参加しないで転出される方について、これについては建替組合に買い取られて転出する場合にその買取りについて譲渡所得が発生する場合がございます。これについての軽減税率、あるいはやむを得ない事情により買い取られて転出する場合の千五百万円の特別控除の適用、こういったものが一つございます。
それから、二つ目の類型としては、権利変換で権利が移行する場合に譲渡所得課税についていわゆる資産の譲渡がなかったものとみなすという、言わば課税の繰延べでございますが、こういう措置が取られるということ。それから、登録免許税についても従前資産価額分は非課税措置が取られております。不動産取得税についてはその取得土地価額の五分の一相当額の控除といった措置が取られております。これが二つ目の類型でございます。
それから、あと三つ目といたしましては、建替組合等の事業主体そのものへの課税関係についての一点、特例が認められていまして、これは例えば売渡し請求により取得した資産とか保留床についての登録免許税の非課税措置とか、それから建替組合の非収益事業についての法人税の非課税措置等の措置が取られているというものでございます。
○渕上貞雄君 建て替えに参加しない人に対する措置についてお伺いをいたします。
法の第九十条では賃借人及び転出区分所有者の居住の安定の確保を施行者並びに国及び地方公共団体に努力規定を設けていますが、建て替えを行おうとするマンションの多くは築後年数が相当経過したものとのことですけれども、当然そこで暮らす人においても相当の年数居住している人が多いものと思われます。長年住み慣れた場所であり、中にはついの住みかとして暮らしている方もおられると思います。
そのような人たちにすれば、何も建て替えなどせずに補修、修繕で維持できるならばそれでよいと考えていることが自然ではないかと思われますが、このような人たちを法をもって転出させるということが本当によいことなのかどうなのか疑問でもありますし、努力規定として居住の安定の確保を言われていますけれども、本当にそのような人たちが納得できるような住居を確保することが可能なのでしょうか。同じような居住環境や費用負担を確保することができるとお考えでしょうか、お伺いいたします。
○政府参考人(三沢真君) 今、先生御指摘のとおり、建て替えに参加しない方につきましては、その多くがやっぱり高齢者であるとか低所得者の方であるとか、弱い立場にある方々であるということから、こういう方々の居住の安定を図ることは極めて重要な課題でございます。このため、大臣からも御答弁いただいておりますけれども、大臣が定める基本方針の中で賃借人それから転出する区分所有者の居住の安定の確保に関する事項というのを定めることにしておりまして、更にこの法律案九十条で、この方針に従ってそういう居住の安定の確保に努めるべき旨を規定しております。
そのための具体的な措置といたしまして、地方公共団体による住宅のあっせん、あるいは公営住宅等の公共賃貸住宅への優先入居、それから従前居住者用賃貸住宅に係る家賃対策補助、あるいは賃貸人が賃借人に支払う移転料の支払いについての補助等を定め、実施することとしております。
こういう措置を活用いただきまして、最大限やはりこの建て替えに参加されない方の居住の安定を図ることとし、また私どももいろいろな公共団体から相談があれば、できる限りいろんな支援をしていきたいというふうに考えているところでございます。
○渕上貞雄君 売渡し拒否についてお伺いいたします。
建て替えに同意せず、建替組合に対しても売渡しを拒否した場合についてはどのような処置がなされるのでしょうか。
○政府参考人(三沢真君) この法案では、建て替え決議に反対する方とか、あるいは権利変換契約に同意しない方につきましては、施行者の方から売渡し請求によってこれは所有権を取得するということができるわけでございますが、これについて更に明渡しを拒否するということの場合につきましては、これは明渡しを求める訴えを施行者が提起しまして、その結果に基づいて民事執行により明渡しを行っていただくということになるわけでございます。
○渕上貞雄君 途中脱退、解散についてお伺いいたします。
建て替えに同意いたしましても、その途中で組合を脱退した場合、又は組合が解散した場合は、計画はどのようになるんでしょうか。
○政府参考人(三沢真君) この法案で、組合設立の公告の日から三十日以内に組合に対して権利変換を希望しないという旨の申出をできるということにしておりまして、そういう申出をした場合には、組合から脱退するとともに、その有する区分所有権等に対応した補償金を受け取るということになるわけでございます。それから、こういう申出によらず、第三者に区分所有権等を譲渡したという場合につきましては、これはもうその方は組合から脱退する一方で、組合員としての権利義務はそれを譲り受けた方が承継するということになります。
それからもう一つ、解散についてでございますけれども、この法案で三つの場合を解散事由として規定しております。一つは設立についての認可の取消し、それから二つ目は総会の議決、三番目はその事業の完成又は完成の不能というこの三つの解散事由がございますが、これが解散した場合には、原則として理事が清算人となって、その後の清算事務を行うということになっております。
○渕上貞雄君 容積率の割増しについてお伺いをいたします。
建て替えマンションの容積率を割増しした建て替えは可能なのかどうなのか。可能であるとするならば建替組合が販売してよいのかどうか。その場合、収益金に対する税制上の扱いはどうなるのか。また、売れ残りが発生した場合はどうなるのでしょうか。併せてお伺いいたします。
○政府参考人(三沢真君) 容積率に余裕があって、従前の権利者が取得する権利床以外に保留床を生み出せるという場合には、マンション建替組合はこれを処分して工事費等の事業費に充てることは可能でございます。
それから、建て替え事業を成立させるために組合が行う保留床処分の代金に係る法人税につきましては、これは組合が行う非収益事業から生じた所得が非課税とされるということから、通常の保留床処分の代金については非課税扱いになるというふうに考えております。
それから、売れ残った場合どうなるかということでございますけれども、これは、売れ残った場合には、いずれにしてもこれはもう価格の問題ということかと思いますので、売却価格を引き下げるなどして処分に努めていただくということになるわけでございます。
ただ、これについては、売れ残りのリスクをあらかじめ回避するということから、参加組合員制度等を活用して、ディベロッパー等を保留床の処分先としてあらかじめ確保していくということも一つの有効な方策でございまして、参加組合員制度をこの法律の中に盛り込んでいる趣旨の一つはそこにあるわけでございます。
○渕上貞雄君 都市計画との関連についてお伺いをいたしますが、本法案が成立すればマンションの建て替えが進むものと思われますけれども、先ほどのどなたかの質問にもありましたけれども、都市計画との関連はどのようになるんでしょうか、お伺いいたします。
○政府参考人(三沢真君) 都市計画との関係で申し上げますと、これは本法案に基づく建て替えであることをもって直ちに何か都市計画上の特別な取扱いがあるというわけではなくて、これはやはり通常の都市計画規制、建築規制に適合することが必要でございます。
ただ、一方、既存の例えば総合設計制度等を活用して容積率の割増しを行うことも可能でございまして、こういったものの活用によってマンション建て替えの円滑化を図るということが有効な方策であるというふうに考えております。
○渕上貞雄君 終わります。
○委員長(北澤俊美君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
─────────────
○委員長(北澤俊美君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りをいたします。
マンションの建替えの円滑化等に関する法律案の審査のため、来る六日午前十時に参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(北澤俊美君) 御異議ないと認めます。
なお、人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(北澤俊美君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時十九分散会