民法クローズ・アップ
  判例による意思表示の研究
 瑕疵ある意思表示/取消権序章

これまで、「意思の欠缺」の 錯誤、心裡留保、通謀虚偽表示を扱ってきました。

「瑕疵ある意思表示」を今回から始めます。今回は、「取消」をまとめます。

意思の欠缺は、「内心の真意(効果意思) ≠ 表示」だったわけですが、

瑕疵ある意思表示」とは、表示に対応する内心の真意(効果意思)が一応存在しては

いるものの、自由な意思の形成が妨げられた場合のことを言います。

民法では、詐欺と強迫による意思表示を「瑕疵ある意思表示」と規定し、

取り消すことができる、としています。

●取消

取消しうべき行為では、取消権者が取消の意思表示をするまでは契約は有効であり、

取消権者が取消の意思表示をすれば初めに遡って無効になります。

●追認

また、取り消しうべき行為は、取消権者が追認したとき、はじめから有効なものと

みなされます。この場合、取消権者は取消権を放棄して追認したことになります。

●法定追認

追認すると口に出して言わなくても、取消しうべき行為について、追認と

認められるような一定の事実があった場合は、法律上当然に追認したものとみな

されます。その例としては,以下のようなものがあります。

全部又は一部の履行(取消権者が債務者として自ら履行するだけでなく、

          債権者として受領した場合も含む)

・取消権者が履行の請求をしたとき(相殺の意思表示も含む)

更改 (取消権者が債権者・債務者であることは問わない)

担保の供与 (取消権者が債務者として担保供与、

            債権者として担保の供与を受けた場合)

強制執行 (取消権者が債権者として執行した場合に限る。)

        (債務者として執行を受けた場合は含まない)

・取消しうべき行為によって取得した権利の全部又は一部を取消権者が譲渡

●取消権の消滅

 追認をなしうる時から5年、行為の時から20年が経過すれば、消滅します。

●取消は、原則として全ての人に対して主張できます。

 ただし、詐欺を理由とした取消の場合は、取消前に利害関係に入った「善意の

第3者」に対しては主張できません

 また、すでに履行がなされている場合には、取消によって、受領者は、受け取

ったものを不当利得として返還しなければなりません

<制限行為能力者が取消しをした場合>

しかし、制限行為能力者側が取消をした場合はその返還義務は現存利益に制限され

ます。これは、例えば、受領した金銭を遊興費で使ってしまえば、現存の利益は

ないので返還義務はありませんが、生活費で消費すればそれだけ自己の財産の減

少を免れたことと解され、現存利益はあったものとみなされるので、返還義務が

生じることになります。     

法律行為の取消しに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、

〇か×か。

 1 取消権は、消滅時効にかかることはない。× 

 2 取消しうべき行為を追認した場合、その法律行為は追認のときから有効なものと

   確定する。×

 3 取消しうべき法律行為は、誰でも取消すことができる。×

民法クローズアップのTOPに戻る