Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
弁済に関する総合問題 平成11年・問5
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
Aが,Bに対して不動産を売却し,所有権移転登記及び引渡しをした場合のBの代金の弁済に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。(平成11年・問5) |
1.「Bの親友Cが,Aに直接代金の支払いを済ませても,それがBの意思に反する
弁済である場合には,Bの代金債務は消滅しない。」
【正解:○】第三者弁済 A(債権者) Cは、利害関係のない第三者であり、Bの意思に反して弁済をすることができないので、Cの弁済は効力をもちません。(民法474条2項) したがって、弁済として効力を持たない以上、Bの代金債務は消滅しません。 |
2.「Aが,Bに対し代金債権より先に弁済期の到来した別口の貸金債権を有する
場合に,Bから代金債権の弁済として代金額の支払いを受けたとき,Aは,Bの意思
に反しても,代金債権より先にその貸金債権に充当することができる。」
【正解:×】債務の弁済の充当 A(債権者) 貸金債権の弁済期が、代金債権の弁済期より先に来ている。 本設問のケースでは、債務者Bは『代金債権に充当』しているため、債権者Aは、Bの意思に反して、その弁済が貸金債権に充当すべきとして指定し、受領することはできません。代金債権の弁済として受領しなければいけません。 ■当事者に、弁済の充当の合意がない場合 債務者は、同一の債権者に対して、同種の目的を有する数個の債務を負担する場合において(本設問では、金銭債務)、弁済として提供した給付が総債務を消滅させるのに足りないときは、弁済者は給付のときに、その給付がどの債務の弁済に充当するのか指定することができます。(民法488条1項)
■債務の充当の順位 契約による充当 → 当事者の一方による充当の指定 → 法定充当 |
3.「Bが, 『AからDに対して代金債権を譲渡した』 旨記載された偽造の文書を持参
した代金債権の準占有者Dに弁済した場合で,Bが善意無過失であるとき,Bは,
代金債務を免れる。」
【正解:○】準占有者への弁済 弁済は本来債権者〔または弁済受領権限のある者〕にしてはじめて有効となるものですが、民法には、本当の債権者〔または弁済受領権限のある者〕でなくてもそのような外観を備えていた者を信じて、その者に弁済してしまった債務者を一定の場合に保護する規定があります。〔本来は,弁済受領権限のない者にした弁済は無効で債権は消滅しない。〕(478条,480条) 債権の準占有者Dになした弁済は、弁済者が善意無過失であるならば、有効です。(民法478条、最高裁・昭和37.8.21) この結果、弁済したBの債務は消滅し、Bは代金債務を免れます。 本肢では偽造した証書が道具として使われていますが、判例では、準占有者が所有している証書は盗んだものでも偽造したものでもよいとしています。(大審院・昭和2.6.22) 債権の準占有者・・・本当は債権者でないにもかかわらず、弁済者から見て、社会一般の取引観念に照らし、債権者であるかのような外観を備えている者(大審院・昭和2.6.22) 弁済受領権限のある者・・・債権者,債権者の代理人,弁済受領の委任を受けた者 ▼債権者の代理人であると詐称した者へ弁済してしまった場合にも478条が適用され、弁済者が善意無過失ならばその弁済は有効です。(最高裁・昭和37.8.21)→債権者本人と名乗ったか代理人と名乗ったかで結論が異なるのはおかしいから。 ▼真正の受取証書を持参した者に対して善意・無過失で弁済した場合も有効な弁済となり、債務は消滅し、債務者は債務を免れます。(480条)→出題・平成5年・問6・肢3 |
●準占有 |
本章の規定〔第2編・物権・第2章・占有権〕は自己のためにする意思をもって財産権の行使をなす場合にこれを適用す (民法205条) |
占 有・・・自己のためにする意思をもって物を所持する(180条)
準占有・・・自己のためにする意思をもって財産権の行使をする(205条) |
●参考問題 |
1.「債権者の代理人と詐称して債権を行使する者に対し弁済をした場合でも、その弁済が有効になることがある。」 |
【正解:○】
弁済者が善意無過失であれば、準占有者に弁済したときは、弁済の効力を持つ。(民法478条) |
4.「Bの友人Eが,代金債務を連帯保証していたためAに全額弁済した場合,
Eは,Aの承諾がないときでも,Aに代位する。」
【正解:○】弁済者の法定代位 弁済を為すにつき、正当の利益を有する者は、弁済によって、当然(債権者の同意なしに)、債権者に代位します。(民法500条) ▼弁済を為すにつき、正当の利益を有する者 保証人、連帯債務者、物上保証人、担保物権のついている不動産の第三取得者、 ▼本設問でのヒッカケ装置 『Bの友人E』というところだけを見て、友人は『弁済を為すにつき、正当の利益を有さない者』ではないか? と思うのは引っかかった証拠。本設問では、『代金債務を連帯保証していた』とあるので、『弁済を為すにつき、正当の利益を有する者』になります。 |