Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
弁済に関する総合問題 2 昭和62年・問11
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
似たものの出題ですね。何度も見ていれば頻出事項は覚えられます。 |
AはBに対し金銭債務を負っている。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(昭和62年・問11) |
1.「Bの承認を受ければ,Aの意思に反する場合であっても,利害関係を有しない第三者Cはこの債務を弁済することができる。」 |
【正解:×】第三者弁済 B(債権者) Cは、利害関係のない第三者であり、Bの意思に反して弁済をすることができないので、Cの弁済は効力をもちません。(民法474条2項) したがって、利害関係を有しない第三者Cはこの債務を弁済することはできません。 |
2.「この債務が利息を生ずべきものであるときに,Aの弁済額が元本と利息の合計に不足する場合は,Aが特段の指定をしない限り,まず元本にこれを充当する。」 |
【正解:×】債務の弁済の充当 B(債権者) ■費用、利息、元本の順序 債務者は、同一の債権者に対して、一個または数個の債務について、元本のほか、利息、費用を払うべき場合において弁済者がその債務の全部を消滅させる給付ができないときは、これを費用→利息→元本の順に充当します。(民法491条1項) ■債務の充当の順位の変更 当事者の合意によってこの順序を変更することはできますが、一方の当事者の指定によっては変更できません。(判例) |
3.「Aのために弁済をなしたAの連帯保証人Dは,Bの承諾なくしてBに代位できるが,これをAに対抗するには,BからAに通知をするか,Aが承諾することが必要である。」 |
【正解:×】弁済者の法定代位 B(債権者) 弁済を為すにつき、正当の利益を有する者は、弁済によって、当然(債権者の同意なしに)、債権者に代位します。(民法500条) ▼弁済を為すにつき、正当の利益を有する者 保証人、連帯債務者、物上保証人、担保物権のついている不動産の第三取得者、 ▼第三者弁済による任意代位 民法の条文では、正当の利益を持たない者が弁済したときには、 ・その第三者弁済と同時に債権者の承諾を得ること、 ・債権者から債務者に対して代位弁済があったことを通知 or この二つが必要であるとしています。499条 また、債務者以外の第三者に対抗するには、 債権者から債務者に対して代位弁済があったことを通知 or が確定日付のある証書でなされることが必要とされています。467条2項 |
●参考問題 | |||||||||
1.「債務者のために弁済を行った者は,債権者及び債務者の承諾を得なければ,債権者に代位することはできない。」 | |||||||||
【正解:×】
債務者のために弁済を行った者が誰なのかによって、結論は異なります。 法律上の利害関係者ならば、法定代位で当然代位します。 利害関係を有しない者ならば、任意代位になり、要件が必要になります。
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4.「Bの代理人と称するEが受取証書を持ってきたので,AはEに対して弁済をした。EはBの代理人ではなく,当該証書は盗まれたものであるとしても,Aの弁済は有効となることがある。」類題・平成5年 |
【正解:○】受取証書の持参人への弁済 真正の受取証書を持参した者は弁済受領の権限があるものとみなし、善意無過失で弁済した債務者は弁済したものとみなします。(民法480条) 真正であれば入手経路は問われないので、当該証書は盗まれたものであるとしても、Aの弁済はAが善意無過失ならば、有効となります。 これは、取引の安全を維持し、善意無過失で弁済した債務者を保護するためです。 → 本肢はEが債権の準占有者であるとして解答を導くこともできます。EがBの代理人としての外観を備えていて,真の代理人ではないことにAが善意無過失であれば,やはり弁済したとみなされるからです。(民法478条) |
●参考問題 |
1.「AのBに対する貸金に関する次の記述は○か×か。
Bが返済しようとしても,Aが受取証書を交付しないときは,Bは,その交付がなされるまで,返済を拒むことができる。」(平成3-9-4) |
【正解:○】
弁済者は、受領者に対して受取証書の交付を請求することができます。(民法486条) 判例では、『弁済と受取証書の交付とは同時履行の関係に立つ』とされています。(大審院・昭和16.3.1) 弁済者は、弁済と引き換えに受取証書の交付を求めることができます。(同時履行の抗弁権、533条)したがって、受領者が受取証書を交付するまで弁済を拒むことができます。 |