Brush Up! 権利の変動篇

代物弁済 平成12年・問9の問題を解くのに必要な予備知識


代物弁済に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。

1.「債務者が代物弁済をするには,債権者の承諾が必要である。」

2.「債権の一部について代物弁済をすることはできない。」

3.「債務者以外の第三者は,たとえ弁済につき利害関係を有するときでも代物弁済をすることができない。」

4.「債務者が債権者に対する債務に代えて,自己の第三者に対する債権を債権者に譲渡することは,代物弁済とはならない。」

【正解】

× × ×

1.「債務者が代物弁済をするには,債権者の承諾が必要である。」(司法書士・平成10年)

【正解:

◆代物弁済には,債権者の承諾が必要

 代物弁済とは「債権者と弁済者が本来の給付とは異なる給付を弁済に代えてなす契約を締結」することで,その場合の給付は弁済と同一の効力をもっています。(482条)

 代物弁済に債権者の同意が必要なのは,現金化するのにテマのかかるものを代わりに受け取ってくれといわれても債権者は困りますし,本来の給付ではない代わりのものでは許されない場合もあるからです。

他の給付は必ずしも本来の給付と同価値でなくてもかまいません。(大審院・大正10.11.24)

●類題
「債務者所有の不動産を代物弁済の目的物とした場合には,所有権移転登記及び現実の引渡しをしなければ,代物弁済は効力を有しない。」(司法試験・択一・昭和44年)

【正解:×

 代物弁済は,原則として〔特約がなければ〕,単なる給付の約束をしただけではダメで,給付が現実になされていなければいけません。(最高裁・昭和43.11.19)特に,所有権移転や債権譲渡の場合は,債権者の利益を害さないために対抗要件が必要であり,対抗要件を具備したときに代物弁済の効力が生じるとされています。(大審院・大正6.8.22)
 したがって,登記を完了したときに効力を生じるのであって,登記があれば現実の引渡しがなくても代物弁済の効力は生じるので,「所有権移転登記」と「現実の引渡し」の両方が必要だとする本肢は×です。

2.「債権の一部について代物弁済をすることはできない。」(司法書士・昭和58年)

【正解:×

◆一部について代物弁済することはできる

 代物弁済は,本来の給付の全部ではなく,一部についてでもかまいません。

3.「債務者以外の第三者は,たとえ弁済につき利害関係を有するときでも代物弁済をすることができない。」(司法書士・昭和58年)

【正解:×

◆第三者も代物弁済することができる

 債権者としては債権の目的を達成でき,特に支障がないのであれば,弁済するのは債務者でも第三者でもよく,また第三者〔利害関係の有無を問わない〕の代物弁済でもかまいません。(474条1項,大審院・大正7.10.15)

第三者の代物弁済の場合でも,肢1で見たように,代物弁済は債権者と弁済者の契約なので,当然債権者の承諾が必要です。

●類題
「利害関係を有する第三者は,債務者の承諾を得たときは,本来の給付に代えて他の給付をもって弁済することができる。」(司法試験・択一・昭和44年)

【正解:

4.「債務者が債権者に対する債務に代えて,自己の第三者に対する債権を債権者に譲渡することは,代物弁済とはならない。」(司法試験・択一・昭和44年)

【正解:×

◆代物弁済としての債権譲渡

 代物弁済として債権譲渡することも判例で認められています(大審院・大正4.11.20)が,肢1の類題で見たように,対抗要件〔第三債務者への通知または第三債務者の承諾〕が必要になります。(467条2項)


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