Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
契約解除に関する問題2
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
居住用不動産の売買契約の解除又は取消に関する次のそれぞれの記述は,民法の規定及び判例によれば○か,×か。(平成4年・問8) |
1.「当該不動産に隠れた瑕疵がある場合,居住の用に支障がなくても,買主は,
当該契約を解除することができる。」
【正解:×】 ◆隠れた瑕疵では、契約の目的を達成できない場合に限り、解除することができる 売買契約の目的物に「隠れた瑕疵(キズ)」があり、そのために「契約の目的が達成できないときに限り」買主は“契約の解除”ができます。 しかし、曲がりなりにもその目的が達成(=居住の用に支障がない)できていれば、契約の解除はできず、“損害賠償の請求”にとどまります(民法第570条)。 |
2.「買主が支払期日に代金を支払わない場合,売主は,不動産の引渡しについて
履行の提供をしなくても,催告をすれば,当該契約を解除することができる。」
(売主と買主は,同時履行の関係にあるものとする。)
【正解:×】 ◆債務不履行による解除では、債務の本旨に従った履行の提供をして、相手方の同時履行の抗弁権を失わせておく必要がある 売買契約は「双務契約(お互いに引渡義務と代金支払義務がある契約で、同時に履行する義務がある:第533条)」であり、相手方が履行の提供をするまでは、自己の債務の履行を拒むことができます。 しかし、たとえ買主が支払期日に代金を支払わなくても、売主は少なくとも不動産引渡しの履行の提供をしなければ、両者のバランス上において、買主は履行の遅滞とはなりません。 したがって、本肢の設定では、売主は契約の解除をすることはできません。
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3.「買主のローン不成立のときは契約を解除することができる旨の定めが当該契約
にある場合において,ローンが不成立となったときは,売主がその事実を知っていても,
買主が解除の意思表示をしない限り,契約は解除されない。」
【正解:○】 ◆解除権留保型のローン特約
「買主のローンが不成立のときは契約を解除することができる旨の定め」を特約ですることができます。この特約では買主が解除権を留保しているので、「解除権留保型のローン特約」と呼ばれます。 この場合の買主は、ローンを予定していた金融機関から融資が得られなくても、例えば“親から融資を受けられた”、“たまたま大金が手に入った”その他など、当該契約を続行したい場合もあります。このため、ローン不成立であっても解除しなくてもいいようにしているのです。 しかし、この「解除権留保型のローン特約」があっても、解除するには、相手方に対する意思表示によらなければなりません。(契約または法律の規定によって当事者の一方が“解除権”を持っているとき)(第540条) つまり、この場合の買主は「解除できる権利」を有するだけであり、相手方(売主)がローン不成立を知っている知っていないに関係なく、解除権を有する買主が「解除の意思表示」をしなければ解除されません。 ◆解除期限設定の場合 → 通常は期限を設定しています。 もうひとつ注意しておくこととして、「買主の予定していた融資の承認が得られないときは、解除期限の日までは買主は契約を解除できる」という解除期限を設定している解除権留保型のローン特約がある場合は、解除期限の日が経過した後は、その特約に基づく解除ができなくなります。 ▼なお、「解除条件付き法律行為(第127条2項)」の場合は、解除の意思には関係なく、条件成就のときよりその効力が失われ(STOP)ますので、両者を混同しないようにしましょう。 解除条件付き法律行為とは、例えば、ローン特約では、「買主のローンが不成立のときは当然に失効する旨の定め」とすることです。この場合は、買主は解除の意思表示をしなくても、解除期限の日が経過すれば自動的に契約は失効します。(出題 6年)
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4.「当該契約の締結は,第三者の詐欺によるものであったとして,買主が契約を取消
した場合,買主は,まず登記の抹消手続きを終えなければ,代金返還を請求すること
ができない。」
【正解:×】やや難 ◆取消しでの「登記の抹消手続」と「代金返還」は同時履行の関係に立つ ┌第三者の詐欺
法律行為(契約)が取り消されるとその効力は,遡及効により,初めから生じなかったものとみなされ(121条),履行されているものがあれば返還する義務が生じます。〔履行されていなければ履行の必要がなくなるだけです。〕 判例によれば、売買契約が第三者による詐欺で取消されたとき、登記の抹消手続きと代金返還は「同時履行」の関係に立つ、とされています。(最高裁・昭和47.9.7)←本肢はこの判例をソノママ出題しています。 <参考>
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