Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

契約解除に関する問題3 平成6年・問6


【正解】

× ×

Aは、Bから土地建物を購入する契約(代金5,000万円、手付300万円、違約金1,000万円)を、Bと締結し、手付を支払ったが、その後資金計画に支障を来し、残代金を支払うことができなくなった。この場合、次のそれぞれの記述は民法の規定及び判例によれば○か、×か。(平成6年・問6)

1.「『Aのローンが某日までに成立しないとき、契約は解除される』旨の条項がその契約に

あり、ローンがその日までに成立しない場合は、Aが解除の意思表示をしなくても、契約は

効力を失う。」

【正解:

◆解除条件つきの法律行為

 買主Aのローンがその日までに成立しないとき、契約は“解除される”旨の条項があるときは、解除条件(条件成就とともにSTOP:民法第127条2項)に該当し、「Aのローンが成立しないという条件が成就(確定)すれば」、Aの意思表示の有無やその他にかかわらず、“自動的に”その契約は効力を失います。

●ローン特約での区別

解除条件型−ローンの融資が得られないことにより解除条件が成就し、その時点で契約は当然に失効する。(買主は、ローン不成立のときに解除の意思表示をしなくても、契約は失効)→ 解除条件付の法律行為

解除権留保型 (約定解除) −ローンの融資が得られないときは解除期限の日までは買主は違約とならずに契約を解除できる。(買主は、解除する場合は改めて解除の意思表示が必要。解除期限の日が定められていると、解除期限の日の経過により、買主は解除することができなくなる。)→ 解除権留保

<コメント>

解除権留保つきの法律行為との区別をしっかりしてください。

2.「Aは、Bが履行に着手する前であれば、中間金を支払っていても、手付を放棄して契約

を解除し、中間金の返還を求めることができる。」

【正解:

◆相手方が履行に着手していなければ手付を放棄して解除できる

 民法の規定(第557条)及び判例によれば、履行に着手した当事者は、相手方が履行に着手するまでは買主は手付放棄、売主はその倍額を償還して契約の解除をすることができます。

 また、契約解除によって当事者双方が「契約をしなかったのと同じ状態」にしなければいけないので、中間金も返還してもらえます。〔判例〕

3.「Aの債務不履行を理由に契約が解除された場合、Aは、Bに対し手付金を放棄した上

で違約金を支払わなければならない。」

【正解:×

◆債務不履行による解除では、手付金は返還される

 判例によれば、債務者の債務不履行によって契約が解除されたとき、債務者は、損害賠償(違約金)を支払わなければなりませんが、そのとき手付の交付があれば、不当利得(第703条)を理由に手付金の返還請求をすることはできます。

 なお、手付の性質には、「証約手付(契約の証拠)」、「解約手付」、「違約手付」の3種類がありますが、違約金をすでに支払ったので二重払いになるため手付(違約手付)の返還請求はできる、という考え方もできます。

4.「Aの債務不履行を理由に契約が解除された場合、Aは、実際の損害金が違約金よりも

少なければ、これを立証して、違約金の減額を求めることができる。」

【正解:×

◆違約金−損害賠償額の予定

 違約金は“損害賠償額の予定と推定”(第420条3項)され、賠償額の予定があるときは

債権者は債務不履行の事実だけを立証すればよく、

・また、その損害額を証明する必要もなく、

またこの場合、当事者が損害賠償額を予定したとき、裁判所は原則としてその額を増減することもできません(〃第1項)。

 つまり、債権者が債務不履行を理由に損害賠償を請求するには、その損害額を証明しなければなりませんが、実際の取引界においては、それが容易でない場合も多く、また債務者自らの責めによらないことを証明すれば免責されるというのも、債権者にとってはオモシロくない話です。そこで、債務不履行があれば、過失の有無や損害の大小にかかわらず、債務者に予定の賠償額を支払わせるというのが“損害賠償額の予定”の趣旨であり、裁判所もこの予定額を増減することはできません。

ただし、損害賠償額の定めが公序良俗に反している場合は、公序良俗に反している限度で、裁判所は、全部無効または一部無効として、賠償額の減額をすることができるとされています。(判例) ← 平成14年問7出題


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