Brush Up! 権利の変動篇
契約解除に関する基本問題3
正解・解説
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
契約の解除に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。(昭和58年・問5) |
1.「相手方が原状回復行為に着手するまでは,既に行った解除の意思表示を撤回
することができる。」(昭和56年-7-1)
【正解:×】 ◆解除したら取消し(撤回)できない 解除権を持った者が解除の意思表示をして相手方に到達すると直ちにその効果が生じ(510条)、解除の訴求効によって、解除による損害賠償請求権を除いて契約はなかったのと同じ状態になり、当事者に原状回復の義務が生じます。(545条1項) そして、この解除の意思表示は、取り消すことができません。これは、解除に取り消しが許されるとすると相手方の地位を不安定にして法律関係がますます複雑になるを避けるためです。(540条2項) 本肢の「相手方が原状回復行為に着手するまでは」というのはヒッカケです。 ▼解除の取り消しができないといっても、行為能力の制限や詐欺・強迫によって解除の意思表示がなされたような場合は、解除の意思表示を取り消すことができます。 |
2.「解除の効果は,解除の意思表示を発したときに生じる。」
【正解:×】 ◆解除の意思表示が相手方に到達すると直ちに解除の効果が生じる 宅建試験特有の法的な手続きの厳密さにこだわるヒッカケ問題。確かに、解除権をもった者が解除の意思表示を発したからといって直ちに相手方に届くとは限らず、文書や宅配郵便などでは相手方に届くのには時間的な経過があります。厳密には、解除の効果は、相手方に届いたときから直ちに生じるというべきでしょう。また、民法では、原則として、意思表示は相手方に到達したときに効力を生じることとしています。(97条、到達主義) |
3.「解除権者が数人いる場合,その中の一人について解除権が消滅しても,他の者
の解除権はなお存続する。」
【正解:×】 ◆解除権の不可分性 当事者の一方が数人いる場合は、特約がなければ、契約の解除はその全員から、また全員に対してのみ、なすことができます。(544条1項) これは、当事者によっては知らない間に契約関係が消滅していたということがないようにするため、また、法律関係を複雑にしないために、規定されたものです。 この場合、当事者の一人に解除権が消滅したときは、他の者についても消滅します。(544条2項)これは、できるだけ契約を存続させるためです。 |
4.「解除後の原状回復において,返還すべき金銭があるときは,その受領の時から
の利息を付さなければいけない。」(昭和60年-4-3)
【正解:○】 ◆原状回復義務での、金銭の返済には、利息をつける 契約が解除されると、解除によって契約は遡及的に消滅し、契約に基づいてすでになされた給付は、法律上の原因を失うため、その契約で受領されたものは不当利得として返還し、原状を回復する義務を生じます。(545条1項) 受領したものが金銭である場合は、受領の時からの利息をつけて返還します。(545条2項)→(出題・昭和60-4-3) |