Brush Up! 権利の変動篇 過去問のSummary
担保責任 : 代金支払拒絶権の問題を見る視点とKEY
売買契約での買主の権利です。担保責任とは違いますが,関連するものがあるので,ここにまとめておきます。 |
●代金支払拒絶権−他人物売買と用益物権
関連 → 他人物売買〔全部〕(561条)・一部他人物(563条)・用益権等の設定(566条)
売買の目的物について権利を主張する者があり買主がその買い受けた権利の全部または一部を失うおそれがあるときは買主はその危険の限度に応じ代金の全部または一部の支払を拒むことができる。但し,売主が相当の担保を供したときはこの限りではない。(576条) 売主は,買主に対して代金の供託を請求することができる。(578条) |
■買主 売主が相当の担保を供していなければ,
その危険の限度に応じ代金の全部または一部の支払を拒むことができる
『危険の限度』に応じの意味 代金減額請求したいときはその減額を限度に 損害があるときはその損害を限度に 解除するときはその代金を限度に |
■売主 買主に代金の供託を請求することができる
◆代金支払い拒絶権が認められない場合
以下の場合は代金支払拒絶権が認められません。
・売主が相当の担保を提供した場合。 ・売主から「供託せよ」と請求されたにもかかわらず,供託しなかったとき。 |
<関連図>
買い受けた権利の全部又は一部を失うおそれがあるとき → 代金支払拒絶権(578条) 買い受けた権利の全部・一部を移転できなかったとき → 担保責任(561条,563条) 用益権などが設定されていた → 担保責任(566条) |
●担保物権が登記されているときの代金支払拒絶権
関連 → 担保物権による出捐・所有権の喪失(567条),不動産質権があるとき(566条)
買受けた不動産に先取特権,質権,または抵当権の登記があるときは買主は抵当権消滅請求の手続きが終わるまでその代金の支払を拒むことができる。但し,売主は買主に対して遅滞なく抵当権消滅請求を為すべき旨を請求することができる。(577条)〔登記がされていないと行使できないことに注意。〕 売主は,買主に対して代金の供託を請求することができる。(578条) |
■買主 登記があるときは買主は抵当権消滅請求の手続きが終わるまで
その代金の支払を拒むことができる。
→ これにより,買主は,出損した金額を差し引いて代金を支払うことができる。
■売主 買主に対して遅滞なく抵当権消滅請求を為すべき旨を請求することができる。
買主に対して代金の供託を請求することができる。
◆代金支払拒絶権が認められないとき
以下の場合は代金支払拒絶権が認められません。
・売主から「遅滞なく抵当権消滅請求をせよ」と請求されたにもかかわらず,抵当権消滅請求しなかったとき。 ・売主から「供託せよ」と請求されたにもかかわらず,供託しなかったとき。 ・売主と買主の間で,予め担保物権が設定されていることを考慮しその分を差し引いて代金を決めていたとき |
<関連図>
先取特権,質権,または抵当権の登記があるとき → 代金支払拒絶権(577条) 先取特権,または抵当権の実行を免れるため出捐※ → 担保責任(567条) 先取特権,または抵当権の実行により所有権喪失※ → 担保責任(567条) 目的物が質権の目的になっていたことに買主が善意のとき → 担保責任(566条) |
※不動産質権が設定されている場合にも適用される。〔通説〕
●チェック |
Aは,その所有する不動産につき,債権者Bとの間で抵当権設定契約を締結したが,その登記をしないうちに,この不動産をCに売却して所有権移転の登記をした。Cは,Bの抵当権が存在することを理由に,Aに対して売買代金の全部または一部の支払を拒むことができる。(司法書士・平成4年・問13) |
【正解 : ×】
債権者B・・・抵当権の設定契約を締結したがその登記はしていない。 確かに,登記されている抵当権があるときは,買主は,抵当権消滅請求をすることで抵当権の実行を免れることができるため,抵当権消滅請求の手続が終わるまで代金の全部または一部の支払いを拒絶できますが,本肢では抵当権に登記がないので,この場合には代金支払いを拒絶することはできません。 |