Brush Up! 権利の変動編

正解・解説

代理に関する基本問題2


【正解】

× ×

5.「法定代理人の代理権は,代理人の死亡・後見開始の審判を受けたとき・破産手続

開始の決定によって消滅するが,本人が後見開始の審判を受けたとき・破産手続開始

の決定によっては消滅しない。」

【正解:

◆代理権の終了

 代理行為はすべて本人に及びますので、代理の問題は、『本人保護』の観点から考えてみてください。 

 本人が、後見開始の審判を受けたときや、破産手続開始の決定を受けても、本人保護のため法定代理人の代理権は消滅しませんが、逆に法定代理人が後見開始の審判を受けたときや破産手続開始の決定を受けたときは、本人の保護のため、代理権は消滅します。

委任による代理の場合は、「本人の破産」によっても消滅します。

  ×は,代理権は消滅しない。

 ●代理権の消滅原因
    死亡       破産手続開始の決定       後見開始の審判
 本 人    任意代理 
 法定代理 ×
 ×
 代理人      

6.「無権代理人の相手方は,相当の期間を定めてその期間内に追認するかどうか
催告することができ、その期間内に確答がないときは、追認をしたものとみなされる。」

【正解:×

◆催告に確答なし→追認拒絶

相当の期間内に確答がないとき、本人にとってその無権代理行為はあずかり知らぬことなので、黙殺(追認拒否)とみなされます。

※参考までに、制限行為能力者側への催告の場合」

1カ月以上」の期間内に確答のないときは、

・未成年者と成年被後見人」の法定代理人への催告の場合は『追認』、

   (後見監督人の同意を要しない行為のとき)

被保佐人・被補助人本人への催告の場合は『取消』、

   (保佐人・補助人の同意を要する行為のとき)

保佐人・補助人への催告の場合は『追認

   (保佐・補助監督人の同意を要しない行為のとき)

となることを思い出してください。→詳細は、制限行為能力者の相手方の保護

7.「無権代理人が締結した契約は,本人が追認しないうちは,善意の相手方に限り
取消すことができる。」

【正解:

◆相手方の取消

 無権代理人の相手方は、いつ追認拒絶されるのか分からないので、きわめて不安定な立場におかれるため、少なくとも「善意」の相手方(注:”無過失”である必要はない)は保護の必要があり、本人の追認権に対し、善意の相手方に取消権が与えられ、両者のバランスが図られています。

無権代理人の相手方が「悪意」の場合は、無権代理人の相手方は取消すことができません。

 催告  相手方は,善意・悪意どちらでも,催告できる。
 取消  相手方は,善意なら,取り消すことができる。
 無権代理人の責任追及  相手方は,善意無過失でなければ,追及できない。

相手方からの取消しの意思表示は、本人・無権代理人のどちらでも構わないのですが、本人の追認の前であることが必要です。(問題文)

もし無権代理人に故意・過失があり、相手方に損害が出ている場合には、相手方から無権代理人に対して不法行為による賠償請求も可能です。

「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う」(709条)

8.「無権代理人が,その代理権を証明できないとき,又は本人の追認を得られない
とき
は,その代理行為は無効となる。」

【正解:×】 相手方の無権代理人への責任追及

◆無権代理人の責任追求−相手方が善意無過失のとき

 相手方の保護のため、無効になるのではなく、無権代理行為を行った者が、相手方の選択により「履行」又は「損害賠償」の責任をとらなければなりません。

→自分の相手方が無権代理人だったらどうすることができるかイメージすると、理解がはやまるでしょう。

 この責任追及には、次の五つの要件が必要とされています。

(1) 代理人が代理権を証明できないこと(117条1項)

(2) 本人が追認をしないこと(117条1項)

(3) 無権代理について、相手方が善意・無過失であったこと(117条2項)

(4) 相手方が取消し権を行使していないこと

(5) 無権代理人が能力者であること(117条2項)

この中で特に覚えておくべきなのは,取消権を行使していないこと相手方が善意無過失であること無権代理人が制限能力者でないことの三つです。


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