Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

無権代理の基本問題  平成9年・問3


【正解】

× × ×

が,の代理人として所有の土地をに売却する契約を締結した。しかし,に代理権を与えたことはなく,かつ,代理権を与えた旨の表示をしたこともない。 この場合,次のそれぞれの記述は,民法の規定によれば,○か×か。(平成9年・問1)

【解答の前提知識のナビ】

>に代理権を与えたことはなく、

>かつ、代理権を与えた旨の表示をしたこともない。

  Aは、Bから代理権を与えられていないのに、
  
勝手にの代理人として所有の土地をに売却する契約を締結したことになります。

 ‥‥‥‥‥‥A ━━━━━━ C
 ×代理権授与      売却

   無権代理人の勝手な行為に対して本人、無権代理人、
   そして契約の相手方は、何ができるか表にしてみました。

 取消権  催告権  追認/追認拒絶権
 本人  ×  ×  
 相手方      −
 無権代理人  ×  ×  −

  (ただし、契約時に無権代理であることを知らない時に限る。
     本人が追認するまでなら可能

1.「契約は,又はのいずれかが追認したときは,有効となる。」

【正解:×

◆追認するのは本人

  (本人)
 |
 (無権代理人)(相手方)

 この場合の無権代理人であり、本人が追認すればその効力を生じますが、本人が承知していない代理行為の相手方に、権利を生じさせることを認めるわけにはいかず、無権代理人の相手方は、本人に催告することはできますが追認権はなく(民法第113条1項)、仮にが追認しても、本人に対して何の効力もありません

 少なくとも、無権代理行為の相手方から本人に追認をしても本人にとっては“何のコッチャ?”と寝耳に水の話であり、何の効力も生じません。

2.「は,の追認のない間は,契約を取消すことができる。」

【正解:×

◆相手方は無権代理を理由に取消すことができる

  (本人)
 |
 (無権代理人)(相手方)

 の行為は無権代理行為であり、相手方は善意であれば、本人が追認するまで取り消すことができます(第115条)。

 しかし、無権代理行為をしたは、その行為の責任をとるべき者であり(第117条1項)、したがって、Aには取消権ナドありません(第115条)。

3.「に対し追認をするかどうか確答すべき旨催告し,が確答をしないときは,は追認を拒絶したものとみなされる。」

【正解:×

◆催告するのは相手方

  (本人)
 |
 (無権代理人)(相手方)

 相手方が本人に対し相当の期間を定めて追認を催告し、Bがその期間内に確答しないとき追認を拒絶(黙殺)したものとみなされる規定はあります(第114条)が、勝手に代理行為をしたが本人に催告しても何の効力もありません。

 つまり、「無権代理行為の相手方は、善意・悪意にかかわらず、催告権はあります」が、無権代理行為者には催告権などナシ。

4.「が追認を拒絶したときは,は自ら契約を履行する責任を負うことがある。」

【正解:

◆善意無過失の相手方は,無権代理人の責任を追及できる

  (本人)
 |
 (無権代理人)(相手方)善意無過失

 本人追認を拒絶したとき、若しくは相当な期間を定めて催告したにもかかわらず、確答のないとき相手方が善意無過失ならば,無権代理行為をしたは、相手方の選択により、履行または損害賠償の責任を負います(第117条1項:マイたタネは自分で刈り取れ)。

無権代理人の責任追求(代理の基本問題2の問8の解説)


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