Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

代理の複合問題2 (未成年の代理人・第三者の詐欺)


【正解】

1 2 3 4
× × × ○

 Aが未成年者Bに土地売却に関する代理権を与えたところ,Bは,Cにだまされて,善意のDと売買契約を締結した。しかし,Aは,Bがだまされたことを知らなかった。この場合,下記のそれぞれの記述は民法の規定によれば,○か×か。(平成4年・問2)

《ナビ》
           C(詐欺)
           ↓
(A‥‥‥‥‥‥B)━━━━━━━ D(善意)
 代理権授与     売買契約

解答のヒント:民法102条、96条2項、101条1項。

1、ABとDとは契約当事者の関係にある。

2、DはBがCにだまされてDと契約に至ったことを知らない。

1.「Aは,Bが未成年者で,法定代理人の同意を得ないで契約を締結したことを理由に,

当該契約を取消すことができる。」

【正解:×】

◆代理人は能力者でなくてもよい

 A (本人)
 |
 B (代理人)− C (相手方)
  未成年

 代理人は、未成年者を含めた制限行為能力者でもなることができ(民法第102条)、また本人Aも制限行為能力者であることを承知で未成年者Bを代理人に選任したのであり、少なくともAは、Bの行為能力の制限を理由に、当該契約を取消すことはできません。

(任意代理では,代理権授与のとき,代理人は行為能力者でなくてもよい。しかし,法定代理人では,行為能力が要求されることがある。833条,847条,867条など。)

2.「Aは,自らがだまされたのではないから,契約を取消すことができない。」

【正解:×】

◆代理人が詐欺に遭ったときには,本人が取消権をもつ

 この設問は、代理の複合問題1出題分の「設問3」と関連しています。

  →代理の複合問題1・解説

 A (本人)
 |       ┌Cの詐欺
 B (代理人)―――――――D (相手方)

1) 代理行為の瑕疵での考え方=代理人を基準に判断,取消権は本人

 代理行為に瑕疵(キズ・欠陥)がある場合は、代理人において判断され(第101条1項)、また、代理人の行為は本人に及ぶため、本人Aが詐欺にあったか否かに関係なく、詐欺を理由とする取消権が発生すれば(第96条1項)、本人が取消権を取得します

(第120条2項)。

《ナビ》
           C(詐欺)
           ↓
(A‥‥‥‥‥‥B)━━━━━━━ D(善意)
 代理権授与    売買契約

2) 本設問

 本設問では、「Aは、自らがだまされたのではないから、契約を取消すことができない。」

となっていますが、上の1)より代理行為の瑕疵では,

   Bがダマされた→Aもダマされたことになる
   
「A自らがだまされたのではなくても」→Aは取り消せる

ことになるため、誤りということになります。

 代理行為に瑕疵(キズ・欠陥)がある場合は、代理人において判断され、

また、代理人の行為は本人に及ぶ。

 したがって、代理人が詐欺にあった場合は、本人が詐欺にあったと同じに考えて、

本人には

詐欺を理由とする取消権が発生すれば(第96条1項)、本人が取消権を取得します。

3.「Aは,BがCにだまされたことを知らなかったのであるから,契約を取消すことができる。」

【正解:×】

◆相手方が善意なら,第三者による詐欺では,本人から取り消すことはできない

 A (本人)
 |       ┌Cの詐欺
 B (代理人)―――――――D (相手方)善意

 当事者以外の第三者が詐欺を行ったことで意思表示をした場合,相手方が第三者の詐欺について善意・悪意で取り消しできるかどうかが決まります。

 相手方が“善意”…表意者の意思表示は取消できない

 相手方が“悪意”…表意者の意思表示は取消できる

 したがって本設問では,代理の瑕疵の原則からA(本人)に取消権はありますが,この第三者の詐欺の規定から相手方Dが善意の為,AはDに対して取消できません。

≪まとめ≫

 当事者ではない第三者Cの詐欺による意思表示の取消しの場合は、たとえ代理における本人Aが善意であっても、相手方Dが詐欺の事実を知っている“悪意者でない限り”、Aは取消すことはできません(第96条2項)。

〔第三者の詐欺では,相手方が善意だと,表意者は保護されない。〕

4.「CがBをだましたことをDが知らなかったのであるから,Aは,契約を取消すことができない。」

【正解:○】

◆相手方が善意なら,第三者による詐欺では,本人から取り消すことはできない

 A (本人)
 |       ┌Cの詐欺
 B (代理人)―――――――D (相手方)善意

  設問3のヒックリ返し問題です。ここでは,第三者の詐欺をもう少し詳しく見ていきます。

 第三者の詐欺によって意思表示した者は、相手方がその事実を知っていたときに限り(悪意のとき)、取り消すことができます。(96条2項)

 第三者の詐欺による意思表示は、どちらかの一方が詐欺の事実を知っている悪意者(詐欺の共犯者かも?)であれば、善意者の保護が必要であり、善意者側から取消すことができます。

 しかし、契約の当事者同士が、第三者による詐欺の事実を知らなかったとき、つまり詐欺につき善意者同士であれば、両者はマッタク対等であるため、その両者のバランス上、双方の意思表示通りの効果が生じ、お互いに取り消すことはできません。

 また、詐欺を働いた第三者に対して不法行為による責任追及をすることも考えられます。(最高裁・昭和38.8.8)

▼代理での『第三者の詐欺』のポイント

 相手方が悪意  本人は相手方に無効を主張できる
 相手方が善意  本人は相手方に無効を主張できない

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