Brush Up! 権利の変動篇 過去問のSummary
無権代理−問題を解く視点とKEY
無権代理の問題を解くポイントを整理してみましょう。★・・・見落としが多いので注意。 |
●表見代理と無権代理
┌代理権授与表示
┌表見代理┤権限ゆ越
広義の無権代理┤ └代理権消滅
└狭義の無権代理
●無権代理の法的効果−効果不帰属←無効,有効とも確定しない宙吊り状態★
無権代理人と相手方の法律行為(契約)は,代理権が存在していないために,本人にその効果が帰属しない。(113条)
本人が,追認することによって,反対の意思表示がなければ,契約成立時に遡ってその効力を生じ,確定的に有効となる。(116条) |
→ 『無権代理行為は無効である』という表現がされる場合がありますが,その場合は,
『本人にその効果が帰属しない』という意味での無効です。本問題集では,「無効な行為は
追認できない」(119条)こと,また他の単元での整合性から,『無権代理行為は効果不帰属』
とする表現を用います。
●無効,有効とも確定しない宙吊り状態からの脱却★
この宙吊り状態は,本人と相手方双方のアクションによって解消されます。
そのアクションには以下のものがあります。
有効とも無効とも確定しない宙吊り状態からの脱却手段 ・『本人による追認』〔契約の有効が確定〕 ・『相手方からの取消』,『本人の追認拒絶』〔契約の無効が確定〕, ・『相手方から本人への催告』〔契約が有効or無効を確定させるためのきっかけ〕 |
●相手方のとり得る手段−『相手方からの取消』,『相手方から本人への催告』
無権代理の相手方ができること | 相手方が無権代理について | ||
善意無過失 | 善意有過失 | 悪意 | |
本人に対して 、相当の期間を定めて
催告 ・期限までに確答がないときは追認拒絶とみなす。 ・期間内に確答があれば、無権代理契約は、有効 または無効なものとして効果が確定。 |
○ | ○ | ○ |
無権代理人または本人に対して
取消 本人が追認していないことが要件 (本人が追認した場合はその事実を了知するまでの間) ・取消権の行使があると本人は追認できない。 ・遡及効により契約は最初からなかったことになる ので無権代理人の責任追及は、不法行為に基づく 損害賠償請求ができることになる。(民法709条) |
○ | ○ | × |
無権代理人(能力者)に対して
履行請求 (可能な場合) or 損害賠償請求 (本人が追認をしないこと・代理人が代理権を証明でき ないこと・相手方が無権代理につき善意無過失・無権 代理人が制限行為能力者でないこと・取消権を行使 していないことの5つが要件。)(117条) なお、無権代理人の責任は無過失責任です。 |
○ | × | × |
●参考問題 |
AはBの代理人と称して,B所有の土地を代理権がないにもかかわらず,Cに譲渡したが,Aが無権代理人であることをCが過失により知らなかった場合でも,CはAに対して無権代理人としての責任を追求することができる。 |
【正解:×】
B (本人) 相手方Cが,無権代理人としての責任を追及するには,Aが無権代理人であることについて善意無過失であることが必要です。(117条) |
●参考問題 | |
AとCの取引で,Aの代理人Bが,Cの代理人Dに代理権のないことを知らないことに過失があったとしても,Aは,Dに対して無権代理人の責任を追及することができる。 | |
【正解:×】
A (本人) C (相手方)
代理行為における意思表示の効力が,ある事情を知っているまたは知らなかったことについて過失があることで影響を受けるときで,本人が知り得ない場合は,原則として,その過失の有無は代理人で判断しました。(101条1項) → 過去問出題事項 代理行為の瑕疵 本肢では,『Aの代理人Bが,Cの代理人Dに代理権のないことを知らないことに過失があった』とあるので,このことをベースに無権代理人の責任を追及できるか考えることになります。 無権代理人の責任を追及できるのは,無権代理人の相手方が無権代理について善意無過失のときに限られていました。 したがって,本肢では,Aの代理人Bが有過失なので,Aは,無権代理人Dの責任を追及できません。(117条2項) |
まとめ★
催告 | 相手方は,善意・悪意どちらでも,催告できる。 |
取消 | 相手方は,善意なら,取り消すことができる。 |
無権代理人の責任追及 | 相手方は,善意無過失でなければ,追及できない。 |
┌催告 ・無権代理人が制限行為能力者のときは,無権代理人の責任の追及はできない。 ・無権代理人の損害賠償責任は,履行利益の賠償〔転売利益の相当額など〕を意味する。(最高裁・昭和32.12.5) |
●本人のとり得る手段−追認・追認取消・催告に確答しない
◆追認
本人が相手方に追認することで契約は契約成立時に遡って有効であることが確定し,
本人に効果が帰属します。〔相手方が取り消す前であることが必要〕
⇔追認は,本人が相手方にその意思表示をしなければなりません。代理人に対して
追認の意思表示をしただけでは,相手方が取消権を行使した場合に追認の効力を
対抗できません。〔相手方がその事実を知っていた場合を除く〕(113条2項)
◆追認拒絶
本人が相手方に追認拒絶することで契約の効果が本人に帰属しないことが確定。
◆催告に確答しない
相手方からの催告の期間内に確答しないと,追認が拒絶されたものとみなされる。
●参考問題 |
無権代理人が代理行為をなした後に本人が追認した場合,別段の意思表示がない限り,追認の時から本人に効果が帰属する。 |
【正解:×】
無権代理人が代理行為をなした後に本人が追認した場合,別段の意思表示がない限り,代理行為時に遡って,本人に効果が帰属します。(116条) |