Brush Up! 権利の変動篇 過去問のSummary
代理行為の瑕疵:代理と詐欺を中心に−問題を解く視点とKEY
代理と詐欺の問題を解くポイントを整理してみましょう。 |
●代理と詐欺の過去問出題
A (本人)
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B (代理人) ―― C (相手方)
相手方が詐欺 | 本人が知らない | 平成2年 |
本人が事情を知っているor 有過失 | 平成3年,(13年) | |
第三者の詐欺 | 平成4年 | |
代理人が詐欺 | 平成8年 |
※このほかに出題された『代理行為の瑕疵』
・相手方が強迫…昭和61年
・代理人の錯誤…平成14年
●代理行為の瑕疵の考え方
代理人の意思表示に瑕疵があった場合−心裡留保・虚偽表示・錯誤・詐欺・強迫の存否,特定事情についての善意・悪意〔売買の目的物の隠れた瑕疵など〕,過失の有無は,代理人を基準に判断されます。(101条1項)
たとえば,代理人が詐欺・強迫を受ければ,本人が詐欺・強迫を受けていなくても,本人は取り消すことができます。〔本人が善意無過失であることが必要〕 しかし,代理人が特定の法律行為の委託を受け本人の指図に従って行為し,本人がその事情について知っていたり,過失で知らなかった場合には(悪意有過失),代理人が知らなかったことや代理人の無過失等を相手方に主張することができません。(101条2項) |
●参考問題 |
代理行為について瑕疵があるかどうかは,いかなるときにも代理人自身について瑕疵があるか否かによって決定される。 |
【正解:×】
代理人が意思表示をするので,原則として代理人自身の意思表示に瑕疵があるかどうかで判断しますが,例外として,特定の行為を委託された代理人が本人の指図に従った場合,本人は自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを相手方に主張できないので,この場合は,本人について判断していることになります。 したがって,×になります。 |
●相手方が代理人を騙す−本人が事情を知らない場合−
Aは、Bの代理人として、C所有の土地についてCと売買契約を締結した。
CがAをだまして売買契約を売買契約を締結させた場合は、Aは当該売買契約を取り消すことができるが、Bは取り消せない。(平成2年・問5・肢3) |
【正解:×】 ◆代理の瑕疵−相手方の詐欺を本人が知らない場合 B (本人) 本人はCの詐欺を知らなかった。 (B‥‥‥‥‥‥A)━━━━━━━ C 相手方Cが代理人Aをだまして契約を締結させた場合、だまされた側は当該契約を取り消すことができますが(民法96条1項)、Aの代理行為の効果は本人Bに帰属するため、取り消すことができるのは本人Bということになります。(101条1項,120条2項) 代理人Aは、本人Bから当該契約を取り消すことについて代理権を与えられていない場合は、取り消すことができません。 |
●参考問題 |
代理人が相手方に詐欺された場合には,代理人がその意思表示を取り消すことができるのであって,本人は取り消すことができない。(司法試験・択一・平成5年) |
【正解:×】
A (本人) 上述の平成2年の宅建の問題とほぼ同一の後追い問題。『BがCにダマされること』をAが事前に知っていたかどうかは問題には書いていませんが,素直に『代理人が詐欺に遭ったときに取消権を持っているのは誰か』を問うているものと思われます。 |
●相手方が代理人を騙す−本人が事情を知っている場合−
AがBから代理権を与えられて,契約を締結した。
AがCにだまされて契約を締結した場合においても,Bは,Cの詐欺を知っていたときは,その契約を取り消すことができない。(平成3年・問3・肢2) |
【正解:○】 ◆代理の瑕疵−相手方の詐欺を本人が知っていた場合 B (本人) 本人はCの詐欺を知っていた。 本肢では,BはCの詐欺を知っていたので,BはCに対して詐欺による取消はできません。(101条2項) |
●第三者の詐欺
Aが未成年者Bに土地売却に関する代理権を与えたところ、Bは、Cにだまされて、善意のDと売買契約を締結した。しかし、Aは、Bがだまされたことを知らなかった。 |
2.「Aは、自らがだまされたのではないから、契約を取消すことができない。」 |
3.「Aは、BがCにだまされたことを知らなかったのであるから、契約を取消すことができる。」 |
4.「CがBをだましたことをDが知らなかったのであるから、Aは、契約を取消すことができない。」 |
2.「Aは、自らがだまされたのではないから、契約を取消すことができない。」 |
【正解:×】 ◆代理人が詐欺に遭ったときの取消権者は本人 代理人が詐欺に遭った場合,本人がダマされたのではなくても,本人が取消権をもちます。(101条1項) 本設問では、「Aは、自らがだまされたのではないから、契約を取消すことができない。」となっているので誤りになります。 |
3.「Aは、BがCにだまされたことを知らなかったのであるから、契約を取消すことができる。」 |
【正解:×】 ◆第三者の詐欺 A (本人) DはCの詐欺を知らなかった。 当事者以外の第三者が詐欺を行ったことで意思表示をした場合,相手方が第三者の詐欺について善意・悪意で取り消しできるかどうかが決まります。(第96条2項) 相手方が“善意”…表意者の意思表示は取消できない 相手方が“悪意”…表意者の意思表示は取消できる したがって本設問では,代理の瑕疵の原則からA(本人)に取消権はありますが,この第三者の詐欺の規定から相手方Dが善意の為,AはDに対して取消できません。 → 相手方Dが詐欺の事実を知っている“悪意者”であれば、Aは取消すことができます。 |
4.「CがBをだましたことをDが知らなかったのであるから、Aは、契約を取消すことができない。」 |
【正解:○】 ◆第三者の詐欺 A (本人) DはCの詐欺を知らなかった。 設問3のヒックリ返し問題です。 第三者の詐欺による意思表示は、どちらか一方が詐欺の事実を知っている悪意者(詐欺の共犯者かも?)であれば、善意者の保護が必要であり、善意者側から取消すことができますが、契約の当事者同士が、第三者による詐欺の事実を知らなかったとき、つまり詐欺につき善意者同士であれば、両者はマッタク対等であるため、その両者のバランス上、双方のもともとの意思表示通りの効果が生じ、Aは取消すことはできません。 また、詐欺を働いた第三者に対して不法行為による責任追及をすることも考えられます。(最高裁・昭和38.8.8) ▼代理での『第三者の詐欺』のポイント
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●代理人が詐欺
Aが、Bの代理人として、Cとの間でB所有の土地の売買契約を締結した。 |
【正解:○】 ◆代理人の詐欺−代理人の行為のリスクは本人が負担する B (本人) (B‥‥‥‥‥‥A)━━━━━━━ C 代理権授与 売買契約 詐欺に遭う(Aにだまされる) 本人は、代理人を使用することによって利益を受けるものであるため、その代理人の行為から受ける不利益も受けることになります。〔代理人の詐欺は,第三者の詐欺にはならない。〕→代理人の行為のリスクは本人が負担する。 したがって、意思表示するにつき瑕疵(虚偽表示・錯誤・詐欺・強迫・悪意・有過失・・・)があるときは、本人ではなく、代理人について考えればよく(第101条1項・判例)、 代理人Aが相手方Cをだましたということは、本人Bの善意・悪意には関係なく、相手方CはAによる詐欺を理由に、本人Bに対して当該契約を取消できます。(第96条1項) (大審院・明治39.3.31,昭和7.3.5) |