Brush Up! 権利の変動篇 過去問のSummary
無権代理と相続−問題を解く視点とKEY
無権代理と相続の問題を解くポイントを整理してみましょう。 |
●無権代理と相続
本人が無権代理人を単独相続 | → 本人は追認拒絶できる | 未出題 |
無権代理人が本人を単独相続 | → 無権代理人は追認拒絶できない | 平成5年 |
→ この二つはパーフェクト,らくらく宅建塾とも解説しています。
●本人が無権代理人を相続
●参考問題 |
AがBの無権代理人として取引をし,Bが追認も追認拒否もしないうちにAが死亡し,BがAを単独相続した場合,もはやBは追認拒絶権を行使することができない。 |
【正解:×】
B (本人) 判例では,本人Bが無権代理人Aを相続したからといって,Aの無権代理行為は当然には有効にならない(最高裁・昭和37.4.20)としています。 相続により本人の地位と無権代理人の地位が並存するが,本人Bは,本人の地位に基づき信義則に反しない限り,追認を拒絶することができる。(最高裁・昭和37.4.20) |
●追認拒絶した後の話 |
上の判例の後に,関連判例として最高裁・昭和48.7.3がありますが,宅建試験では,本人が無権代理人を相続した場合について出題されるとしても,追認拒絶できるか問う問題が限界ではないかと考えます。
なぜならば,最高裁・昭和48.7.3は,『保証契約+共同相続』の場合であり,最高裁・昭和37.4.20の『引渡し債務+単独相続』とは異なっていたということがあります。法律学者の中にも,引渡し債務であったならば結論は変わっていたのではないかとする議論があるからです。→内田貴・民法1(東京大学出版会),p.175 【最高裁・昭和48.7.3】 相手方が本件の無権代理について善意無過失ならば,(相続とは別に)本人が無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあったとしても,無権代理人の責任の債務を本人だけ免れることはできない。〔本件での本人は無権代理人を共同相続しており,ほかの相続人は無権代理人の責任の債務を承継して,本件での本人だけ無権代理人の責任の債務を承継しないというのは許されない。〕 (→相手方が無権代理について悪意or有過失ならば,無権代理人の責任の債務を本人は免れることができることを示しています。) ⇒ 平成20年問3肢4的中 |
●無権代理人が本人を相続
●参考問題 |
AがBの無権代理人として取引をし,Bが追認も追認拒否もしないうちにBが死亡し,AがBを単独相続した場合,Bが有していた追認拒絶権をAは行使することができる。 |
【正解:×】
B (本人) 無権代理人が本人を相続した場合には,無権代理人は追認拒絶権を行使することはできないとする。(最高裁・昭和40.6.18) 相続という偶然の事情により得た本人の地位に基づき,追認を拒絶することは信義則に反し,許されない。 |
●判例のその後−覚える必要はないと判断しますが,念のため |
・本人が追認しないまま本人が死亡して無権代理人が他の相続人とともに共同相続した場合 (最高裁・平成5.1.21)
≪判例要旨≫ 無権代理人が他の相続人と共同相続した場合,本人の追認権も共同相続される。この追認権は無権代理行為による契約を有効にするものなので,不可分的に行使されなければならず,相続人が共同して追認しない限り,無権代理人の相続分においても無権代理行為による契約は当然には有効とはならない。 |
・本人が追認拒絶して死亡し,無権代理人が本人を相続 (最高裁・平成10.7.17) B (本人) 追認拒絶して死亡 ≪判例要旨≫ 本人を相続した無権代理人は,生前に本人がした追認拒絶の効果を主張できる。(主張は信義則に反しない) 本人が追認拒絶した時点で無権代理行為は無効と確定しているので,追認拒絶の後は、本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができず,この追認拒絶の後に無権代理人が本人を相続したとしても,この追認拒絶の効果に何ら影響を与えるものではない、というのが判決理由でした。 |