Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

不法行為に関する問題1


【正解】

× × ×

不法行為に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。(平成4年・問9)

1.「不法行為の被害者は,損害賠償債権を自働債権として,加害者に対する金銭返還債

務と相殺することができない。」

【正解:×

◆不法行為の損害賠償と相殺

 不法行為の加害者は(損害賠償に関しては債務者)側からは相殺できません(民法第509条)が、被害者(損害賠償に関しては債権者)側からであれば、相殺できます

 

  (金銭消費貸借の債権者)―  (金銭消費貸借の債務者)
   (不法行為の加害者)        (不法行為の被害者)

 たとえば、は、に1万円貸しているが、に催促しても一向に返済してくれないため、アタマにきた債権者は、の頭をナグりつけ(不法行為)、発生した1万円の治療費(損害賠償債務)をもって、加害者側のから差引きはできません(不法行為を助長するため、自力救済の禁止)。

 しかし、反対に、被害者側のBからであればに対して何らかの債務があるときであれば、に対して、その不法行為によって生じた損害賠償債権によって相応する分につき、相殺できます。

2.「不法行為に基づく損害賠償債務は,被害者が催告をするまでもなく,その損害の発生

のときから遅滞に陥る。」

【正解:

◆損害賠償の履行遅滞の起点

 不法行為に基づく損害賠償債務は、判例によれば、被害者救済の観点から、被害者からの催告を待つまでもなく、不法行為による“損害の発生と同時”に、履行の遅滞となります。

<参考>

不法行為による損害賠償請求権は、被害者(または法定代理人)がその事実(損害及び加害者) を

ア.“知ったとき”から3年後」に時効消滅する。

イ.知らなかった場合でも“不法行為のとき”より「20年経過」で消滅する。(除斥期間)(724条)

3.「売主及び買主がそれぞれ別の宅地建物取引業者に媒介を依頼し,両業者が共同して

媒介を行った場合において,両業者の共同不法行為により買主が損害を受けたときは,買

主は,買主が依頼した業者に損害賠償を請求することはできるが,売主が依頼した業者に

損害賠償を請求することはできない。」

【正解:×

◆共同不法行為

 これも被害者救済の観点から、数人が共同の不法行為をして他人に損害を与えたとき、各人は連帯して損害賠償の責任があります(第719条)。

 したがってこの場合の買主は、いずれの業者に対しても損害賠償を請求することができます。

4.「従業者が宅地建物取引業者の業務を遂行中に,第三者に不法行為による損害

を与えた場合は,その損害を賠償しなければならないが,に対してその求償をすること

はできない。」

【正解:×

◆使用者責任、不真正連帯債務

 ある事業のために他人を使用するものが、その被用者がその事業につき第三者に損害を与えたとき、これもまた被害者救済の観点からその使用者は、その被害者に損害を賠償する責任を負います(第715条1項)。

 そのとき、その使用者は、被用者に対して、その損害賠償額につき求償権を行使することもできます(〃3項)。


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