Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
不法行為に関する問題3 平成8年・問6
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
AがBとの請負契約によりBに建物を建築させてその所有者となり,その後Cに売却した。Cはこの建物をDに賃貸し,Dが建物を占有していたところ,この建物の建築におけるBの過失により生じた瑕疵により,その外壁の一部が |
≪関係図≫
B(請負建築) ― A(注文者、売主) ― C(買主、賃貸人) ― D(占有者、賃借人) E(通行人、重傷) |
1.「Aは,この建物の建築の際において注文又は指図に過失がなく,かつ,その瑕疵を過失なくして知らなかったときでも,Eに対して不法行為責任を負うことがある。」 |
【正解:×】 注文者は、注文又は指図をするにつき過失責任を負います(民法第636条)。 しかし、そのとき過失がなければ、不法行為責任を負うことはなく(第716条)、請負工事者の責任となります(第634条2項)。 |
●関連問題 |
1.「注文者は、注文又は指図について過失がなくても、請負人がその仕事について第三者に加えた損害の賠償責任を負う。」 |
【正解:×】
請負での注文者は、注文または指図について過失があり、そのために他人に損害が生じたときは、賠償責任を負いますが、過失がなければ損害賠償責任を負うことはありません。(民法・617条但書) |
2.「Bは,Aに対してこの建物の建築の請負契約に基づく債務不履行責任を負うことがあっても,Eに対して不法行為責任を負うことはない。」 |
【正解:×】 Bの過失により生じた瑕疵によってEが損害を受けているのであり、したがって損害の原因を生じさせたBは、Eに対して不法行為責任を負わなければなりません(第709条)。 |
3.「Cは,損害の発生を防止するため必要な注意をしていたときでも,瑕疵ある土地の工作物の所有者として,Eに対して不法行為責任を負うことがある。」 |
【正解:○】 土地の工作物に瑕疵があることによって他人に損害を与えたとき、その工作物の占有者(この場合のD)が賠償責任を負いますが、その占有者が損害発生防止のため必要な注意をしていたときは、最終的には所有者(この場合のC)が責任を負うことになります(第717条)。 つまり、土地の工作物の占有者等は、その工作物より有形・無形の利益を受けているため、まずその“占有者”に責任を負わせ管理を徹底させ、それでも第三者に損害を与えたときは、その“所有者”に責任を負わせ、被害者の救済が万全となるように図られています。 |
4.「Dは,損害の発生を防止するため必要な注意をしていたときでも,瑕疵ある土地の工作物の占有者として,Eに対して不法行為責任を負うことがある。」 |
【正解:×】 設問3に大きく関連していますが、“占有者”が損害発生防止のため必要な注意をしていたときには、占有者の責任は免除され、最終的に“所有者”若しくは“請負業者”の責任となります。 |