Brush Up! 権利の変動篇
保証の過去問アーカイブス 昭和44年 連帯保証と単純保証の違い
Aは,BがCより借金をする際に,Bの連帯保証人となった。Cは,弁済期が到来したので,Aにその返済金の支払を請求した。保証債務に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和44年,1969) |
1.「Aは,Cに対して,まずBに請求するべきことを主張できる。」 |
2.「Aは,たとえBに返済のための資力があっても,支払わなければならない。」 |
3.「Aは,Bについて破産手続開始の決定があったとき,または行方がわからなくなったときにのみ,支払えばよい。」 |
4.「Aは,Bに返済のための資力があることを証明すれば,支払わなくてもよい。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
1.「Aは,Cに対して,まずBに請求するべきことを主張できる。」 |
【正解:×】 ◆催告の抗弁権はない ┌ B (主たる債務者) 連帯保証人には,「催告の抗弁権」はないので,Cから請求があったときに,まず主たる債務者Bに請求するようにと主張することはできません。(454条) |
2.「Aは,たとえBに返済のための資力があっても,支払わなければならない。」 |
【正解:○】 ◆主たる債務に対して補充性を有しない ┌ B (主たる債務者) 保証人(単純保証)は,主たる債務者が債務を履行しないときにはじめて自己の債務を履行する責任を負います。(446条)しかし,連帯保証人にはこの『主たる債務に対する補充性』はありません。債権者は,主たる債務者・連帯保証人のどちらに対しても自由に請求することができます。 連帯保証人には,催告の抗弁権も検索の抗弁権もないので,債権者の請求を受けたときは,直ちに支払わなければいけません。(454条) |
3.「Aは,Bについて破産手続開始の決定があったとき,または行方がわからなくなったときにのみ,支払えばよい。」 |
【正解:×】 ◆保証人に催告の抗弁権が認められない場合→債務者の破産・行方不明 ┌ B (主たる債務者) 保証人(単純保証)は,いつでも催告の抗弁権を行使できるというわけではなく,行使できない例外が2つあります。 ・主たる債務者について破産手続開始の決定があったとき この2つの場合では,催告の抗弁権を行使できません。(452条) しかし,連帯保証人は,そもそも催告の抗弁権を有していないので,このような規定はありません。 註 仮に,Aが保証人(単純保証)だったとしても,本肢は○にはなりません。主たる債務者Bが債務を履行しないときには自己の債務を履行する責任を負っているからです。(446条) |
4.「Aは,Bに返済のための資力があることを証明すれば,支払わなくてもよい。」 |
【正解:×】 ◆検索の抗弁権はない ┌ B (主たる債務者) 債権者が主たる債務者に催告した後で保証人(単純保証)に請求してきたときは,主たる債務者の資力が債務の全額を弁済できるものではないとしても,<主たる債務者に資力がありかつ執行の容易であること>を証明したときは,保証人(単純保証)は,まず主たる債務者の財産から執行せよと債権者に主張することができます。(453条,大審院・昭和8.6.13) しかし,連帯保証人には,この検索の抗弁権はありません。(454条) |