Brush Up! 権利の変動篇

保証の過去問アーカイブス 昭和47年 連帯債務


に対して90万円の連帯債務を負っている場合,次の記述のうち,誤っているものはどれか。ただし,の内部関係における負担部分は平等であるとする。(昭和47年,1972)

1.「に対し,90万円の請求をしながら同時にに対し90万円の請求をすることはできない。」

2.「に対して20万円の債権を有しているときは,に対して90万円を請求したときでもは70万円を支払えば債務を免れることができる。」

3.「に対して債務免除をしたときは,に対しても60万円しか請求できない。」

4.「から履行の請求をうけると,についても履行の請求をうけたのと同一の効果が生じる。」

【正解】

×

1.「に対し,90万円の請求をしながら同時にに対し90万円の請求をすることはできない。」

【正解:×

◆連帯債務での履行請求

 連帯債務とは,複数の債務者が同一内容の債務について,各別に全額弁済する義務を負い,そのうちの一人が全額を弁済すれば,ほかの債務者の弁済義務も消滅するというものです。

 そのため連帯債務では,債権者は,連帯債務者の一人に対して,または同時にそのうちの何人に対しても,または全員に対しても,債権の全部または一部を請求することができます。(432条)

 したがって,本肢は<に対して請求しながら,同時にに対して請求することはできない>としているので×です。

2.「に対して20万円の債権を有しているときは,に対して90万円を請求したときでもは70万円を支払えば債務を免れることができる。」

【正解:

◆相殺

 (i) が相殺を援用するとき

  は,債権者に対して20万円の反対債権を有しているので,が相殺の援用をすれば,その額は弁済されたものとみなされ,にもこの効果が及びます(436条1項)

 したがって,本肢の場合,に対して90万円を請求したときでも,は,が援用した20万を差し引いた70万円を支払えばよいことになります。→この場合は,は70万円の連帯債務になる。

 (ii) が相殺の援用をしないとき

 が相殺の援用をしなくても〔正確には『が相殺を援用しない間は』〕,は,に対して有する反対債権の金額のうち,の負担部分の範囲内〔負担部分は平等なので,の負担部分は90万円×1/3=30万円〕ならば,相殺を援用することができます。(436条2項)

 したがって,本肢の場合,に対して90万円を請求したときでも,に対して有する反対債権の20万はの負担部分30万円の範囲内なので,は,20万を差し引いた70万円を支払えばよいことになります。→この場合は,は70万円の連帯債務になる。

 の有する反対債権のうち,の負担部分の範囲なら相殺を主張することができる。

 まとめ

 本肢では,(i)・(ii)のどちらでも,は70万円を支払えば債務を免れることができます。

3.「に対して債務免除をしたときは,に対しても60万円しか請求できない。」

【正解:

◆一人に対する債務免除はその負担部分だけ効力を生じる

 連帯債務者の一人に対して債権者が債務免除すると,その債務者の負担部分についてのみ,ほかの連帯債務者の利益のために効力が生じます(437条)

 本肢では,の負担部分は30万円なので,の負担部分30万円を差し引いた60万円をに支払えばよいことになります。→この場合は,は60万円の連帯債務になる。

 が債務の全額免除を受けた場合,の負担部分のみ債務を免れる。

本肢は,一部免除〔に対して30万円の債務免除〕の問題でしたが,改題しました。

4.「から履行の請求をうけると,についても履行の請求をうけたのと同一の効果が生じる。」

【正解:

◆連帯債務での履行請求の効力

 債権者が連帯債務者の一人に履行請求すると,ほかの債務者に履行請求をしていなくても,履行の請求があったのと同一の効力を持ちます。(434条)わかりやすくいえば,一人の連帯債務者に履行請求するとほかの連帯債務者の消滅時効も中断します。(147条,148条)


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