Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
履行請求の基本問題−多数当事者の債権関係 平成2年・問7
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | × | ○ |
▼学習効果のため、肢問の順番を代えています。原題は、1-3-4-2の順番でした。
AのBに対する債権(Cも、Aに債務を負い、又はBの債務を保証している)についてのAの履行請求に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。(平成2年・問7) |
1.「BとCが分割債務を負う場合、AのBに対する履行の請求は、Cに対しては効力を
生じない。」
【正解:○】 ◆分割債務では、他の債務者に履行請求の効力は及ばない。 B 分割債務 債務者の1人に対する履行請求 分割債務(427条)では、債務者の一人に生じた事由は他の債務者に影響を及ぼさないのが原則です。債務者の1人の履行遅滞、消滅時効の完成や混同による債務の消滅、債務者の1人の者への免除は他の債務者に影響しません。 従って、Bに対する請求はBだけにとどまり、Cにまで請求したことにはなりません。 |
●分割債務の問題点 |
B 分割債務 無資力になった / 債権者A ↓ \ C 分割債務 AはCにBの分も併せて請求できない 分割債務が連帯債務と大きく異なるのは、債務者の一人が無資力になった場合です。BCがAから共同で土地を分割債務で購入した場合を考えてみます。土地の価格を1億円とすると、BCはそれぞれ分割された5,000万円ずつの債務を負担することになりますが、もしここでBが無資力になったときに、AはCにBの分も併せて負担してくれとは要求できません。(Cには5,000万円しか請求できない。)連帯債務なら、Bが無資力になっても、AはCに1億円全額を要求できます。 |
2.「BとCが連帯債務を負う場合、AのBに対する履行の請求は、Cに対しても効力を
生じる。」
【正解:○】 ◆連帯債務では、他の債務者にも履行請求の効力が及ぶ。 B 連帯債務 連帯債務者の1人に対する履行の請求 連帯債務では、分割債務と異なり、債権者Aの債務者Bへの履行請求は、他の債権者Cにも効力が及び、消滅時効も中断します。(民法434条)
|
3.「CがBの保証人の場合、AのBに対する履行の請求は、Cに対しては効力を生じない。」
【正解:×】 ◆保証債務では、従たる債務者(保証人)にも履行請求の効力が及ぶ B 主たる債務者 主たる債務者への請求 保証債務では、主たる債務者Bに対する履行請求は、保証人Cにもその効力が及びます。(民法457条1項) したがって、本設問は誤りになります。 ▼債権者が保証人(連帯保証人ではないとする。)に請求しても、その効力は、主たる債務者には及ばず、主たる債務の消滅時効は中断しません。 ・保証人(連帯保証人ではないとする。)は、主たる債務者がその債務を履行しないときにはじめて自己の債務を履行する責任を負います。 保証人C(連帯保証人ではないとする。)がAから請求を受けた場合は、催告の抗弁権(452条)、検索の抗弁権(453条)を主張できます。 ・保証人C(連帯保証人ではないとする。)が、BのAに対する債務を承認したとしても、主たる債務者にはその効力は及ばず、主たる債務の消滅時効は中断しない。 |
4.「CがBの連帯保証人の場合、AのCに対する履行の請求は、Bに対しても効力を生じる。」
【正解:○】 ◆連帯保証では、主たる債務者にも履行請求の効力が及ぶ B 主たる債務者 主たる債務者Bにも効力が及び、消滅時効も中断 連帯保証債務では、連帯保証人に対する履行の請求は、主たる債務者Bにもその効力が及びます。(458条:434条を準用)
|