Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
保証債務に関する問題1 平成6年・問9
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | × | ○ |
Aは、BのCに対する1,000万円の債務について、保証人となる契約を、Cと締結した。この場合、次のそれぞれの記述は、民法の規定及び判例によれば○か、×か。(平成6年・問9) |
1.「CがAを保証人として指名したため、Aが保証人となった場合、Aが破産しても、
Cは、Bに対して保証人の変更を求めることはできない。」(関連 : 昭和63年)
【正解:○】 ◆債権者の指名した保証人が破産 B (債務者) 債権者が保証人を指名したとき、その保証人が破産しても、債権者は、その保証人を変更する申入れをすることはできません(民法第450条3項)。 <コメント> 債権者が、「指名した保証人が破産したから取り替えろ」とはズウズウシイばかりではく、その債権者の見通しの甘さが追及されてしかるべきでしょう。 ▼債務者が法律上または契約上により保証人を立てる義務がある場合において、保証人が弁済の資力を有する要件を欠くことになったときは、債権者は代わりの保証人を立てることを請求できます。(民法第450条2項) |
2.「BのCに対する債務が条件不成就のため成立しなかった場合、Aは、Cに対して
保証債務を負わない。」(昭和63年)
【正解:○】 ◆主たる債務が不成立 → 保証債務も不成立 保証債務の附従性 B (債務者) 主たる債務が不成立 保証債務は、あくまでも主たる債務に付従するものであって(第447条1項)、したがって主たる債務が成立しなければ、保証債務の責任も発生しません。 |
3.「AC間の保証契約締結後、BC間の合意で債務が増額された場合、Aは、その増額
部分についても、保証債務を負う。」(昭和50年)
【正解:×】 ◆保証契約締結後に主たる債務が加重 → 債務額・条件・期限が加重されても、保証債務には影響しない。 B (債務者) 主たる債務が増額 Aは、1,000万円について保証したのに、Aは合意なしに、BCが保証契約締結後になってから増額した分まで、Aは保証することはできないでしょう。(民法448条) なお、少し前から、ワク限度を保証するいわゆる“根保証”という保証債務が社会問題となっていますが、保証人になるとき、その額をキチンと確定しておかなかった結果、悲劇が起こるわけです。 少なくとも保証人になるときは(ならないことが一番ですが)、その保証が普通の保証債務なのか連帯して保証するのか、債務の限度はどこまでなのかをきちんと把握し、最悪の場合のことも考えた上で署名・捺印すべきです。決して債権者のペースに巻き込まれてはなりません。 ▼保証債務について特約がない場合、保証債務の範囲は、主たる債務の元本・利息・債務不履行があったときの違約金、損害賠償その他債務に従うものを含みます(447条1項)が、本設問の主たる債務の加重とはまた、別の話です。 |
4.「CがAに対して直接1,000万円の支払いを求めてきても、BがCに600万円の債権を
有しているときは、Aは、Bの債権による相殺を主張して、400万円を支払えばよい。」
(昭和50,58年)
【正解:○】 ◆保証人が、主たる債務者の相殺を援用 B (債務者) Cに600万円の債権を有している 主たる債務者が債権者に対して反対債権を持っているときは、保証人はこの反対債権を利用して相殺することができます(第457条2項)。 しかし、主たる債務者が保証人の反対債権を援用することはできません。 本問の場合、保証人Aは、債務者Bの債権者Cに対する反対債権600万円の相殺を主張して、Aは残額の400万円を支払うことで決着をつけることができます。 主たる債務1,000万円−相殺600万円 = 400万円 <関連> 主たる債務者に対する「履行の請求」「差押・仮差押・仮処分」「債務者承認」による時効の中断等、主たる債務者について生じた事由は、保証人に対しても効力を生じます(第457条第1項)。 |
●相殺の主張についてのまとめ | |||||||||
B (主たる債務者) Cに反対債権を有している
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●参考問題−保証債務の成立 |
保証債務が成立するためには、債権者・債務者・保証人になろうとする者の、三者の合意が必要である |
【正解:×】
保証契約は、債権者と保証人になろうとする者の合意により成立します。 |