Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

保証債務に関する問題2  昭和58年・問7


【正解】

×

AがBに対して負う債務について、Cは保証人(ただし、連帯保証人ではない。)となった。この場合、民法の規定によれば、次の記述は、○か、×か。(昭和58年・問7)

1.「BがCに保証債務の履行を請求してきたときは、原則として、Cは、『まずAに

催告せよ。』とBに請求することができる。」(昭和60年、昭和63年)

【正解:

◆催告の抗弁権

     A (主たる債務者)
   /
  
   \
     C (保証人)  催告の抗弁権

 保証債務は、保証人と債権者との間の保証契約により発生します。

 連帯保証ではない保証契約は、主たる債務とは別個の債務であり、債権者が債務者から債権を回収できない場合にはじめて保証人に、債務者の代わりに弁済することを請求できるものです。(446条)(連帯保証では、債権者が主たる債務者・連帯保証人のどちらからでも自由に選んで請求できることになっていますから、この点が大きな違いです。)

 このため、保証人には、催告の抗弁権(民法452条)検索の抗弁権(民法453条)が認められています。(連帯保証人には認められていません。)

催告の抗弁権(民法452条)・・・「まず、主たる債務者に催告(請求)せよ」と
                   債権者に主張できます。

検索の抗弁権(民法453条)・・・債権者が主たる債務者に催告した後で、
                   保証人に請求したとしても、保証人は、

                   「まず、主たる債務者の財産を強制執行にかけて、
                   それで回収できなかったら請求せよ」と
                   債権者に主張できます。

                   検索の抗弁権を主張するには、
                    ・債務者に弁済の資力があること。
                    ・執行が容易であること。
                   この二つを立証しなければなりません。

保証人がこれらの抗弁権を行使したのにもかかわらず、債権者が催告や執行をしていなかったために、主たる債務者から全額の弁済が受けられなくなった場合には、債権者は、保証人に対して、主たる債務全額の請求ができなくなります(民法455条)               

●参考問題−検索の抗弁権
1.「主たる債務者に強制執行が容易な財産がある場合でも、その財産に最近全額の弁済をするだけの価値がないときは、保証人は、検索の抗弁権を行使することはできない。」 
【正解:×】 

 判例によれば、『弁済の視力』とは、債権全額の弁済をする資力である必要はなく、執行が容易であれば債権の一部弁済をするだけの資力であってもよいとされる。(大審院・昭和8.6.13)

2.「AがBに対して債権を有しているときは、Cは、この債権により相殺をもってBに

対抗することができる。」(平成6年)

【正解:

◆相殺

     A (主たる債務者) Cに対して反対債権を持っている
   /
                    ↓
   \
     C (保証人)     相殺を援用できる

 主たる債務者が債権者に対して反対債権を持っているときは、保証人はこの反対債権を利用して相殺することができます(第457条2項)

しかし、主たる債務者が保証人の反対債権を援用することはできません

●相殺の主張についてのまとめ

          B (主たる債務者)          Cに反対債権を有している
        /
 (債権者)                              ↓
        \
          A (保証人or 連帯保証人) BのCに対する反対債権で相殺できる

       保証人or 連帯保証人A
 主たる債務者Bの有する
 債権者Cへの反対債権で
 相殺できるか?
 主たる債務者B
 保証人or 連帯保証人Aの有する
 債権者Cへの反対債権で
 相殺できるか?
 保証債務   できる   できない ×

 連帯保証

 できる   できない ×

3.「Cの保証債務は、AがBに対して負う債務の元本及び利息についてのみであり、

Aに債務不履行があった場合の違約金、損害賠償等を含まない。」(昭和50,60年)

【正解:×

◆保証債務の範囲

     A (主たる債務者) 債務の元本・利息・違約金・損害賠償その他
   /
                    ↓
   \
     C (保証人)     保証債務の範囲になる

 保証債務について特約がない場合、保証債務の範囲は、主たる債務の元本・利息・債務不履行があったときの違約金、損害賠償その他債務に従うものを含みます。(447条1項)

4.「Cは、自己の保証債務についてのみ違約金又は損害賠償の額をBと約定する

ことができる。」(昭和60年)

【正解:

◆保証債務についての違約金・損害賠償の予定

      A (主たる債務者) 債務の元本・利息・違約金・損害賠償その他
   /
                    ↓
   \
     C (保証人)     保証債務の範囲になる

 保証契約は、主たる債務とは別個の契約であることから、保証債務についてのみの違約金や損害賠償額の予定をすることができます。(447条2項)

■保証債務の附従性

 主たる債務について消滅時効が完成し、債務者Aが援用すると、保証人は、主たる債務が消滅したので、保証債務も消滅したと主張することができます。(判例)

 【主たる債務の時効完成】

       A (主たる債務者) 消滅時効が完成して、債務者が援用。
     /
                          ↓
     \
       B (保証人)      保証債務も消滅

判例では、主たる債務者が時効の援用をしないで債務を承認した場合(主たる債務者が時効利益を放棄)でも、保証人は援用することができるとしています。(大審院・大正5.12.25)

●参考問題
 主たる債務者の消滅時効が完成したとき、保証人がこの時効を援用すれば、保証債務を免れる。
【正解:】 

     A (主たる債務者) 消滅時効の完成       
   /                    
                     ↓        
   \
     B (保証人)     援用することができる     

 主たる債務の消滅時効が完成したとき、保証人は、『主たる債務の時効によって直接利益を受ける者』として時効の援用権者とされます。(大審院・大正4.7.13)

 たがって、保証人もこの時効を援用すれば保証債務を免れます。

●時効完成についてのまとめ

          B (主たる債務者)      Cに対する債務が消滅時効完成
        /
 (債権者)                              ↓
        \
          A (保証人or 連帯保証人) 時効を援用することができる

       保証人or 連帯保証人A
 主たる債務者Bの消滅時効
 が完成したとき援用できるか?
 主たる債務者B
 保証人or 連帯保証人Aの消滅時効
 が完成したとき援用できるか?
 保証債務   できる   できない ×

 連帯保証

 できる   できない ×

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