Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

連帯保証に関する問題3  平成7年・問3


【正解】

×

に対する債権(連帯保証人)の時効の中断に関する次の記述は,民法の規定及び判例によれば,○か,×か。(平成7年・問3)

1.「がCに対して訴訟により弁済を求めた場合,の債務については,時効中断の

効力は生じない。」

【正解:×

◆連帯保証人への請求は、主たる債務者の時効中断の効力をもつ

     B (主たる債務者) 連帯保証人への履行請求は、時効中断事由
   /
                        
   \
     C (連帯保証人) Aから履行請求(訴訟により弁済を求められる)

 が弁済請求訴訟を提起したのは、『履行請求』(裁判上の請求)です。

 連帯保証では、「弁済・更改・相殺の連帯保証人による援用」などの、「主たる債務を消滅させる事由」を除く「連帯保証人に生じた事由」が、主たる債務者に効力を及ぼすことがあります。請求や混同がそれです。(458条 : 434条準用)  

【超重要】 連帯保証

     A (主たる債務者)  Aの消滅時効も中断する      
   /                    
                        ↑ 
   \
     B (連帯保証人)   Cから履行の請求を受ける

⇔ 通常の保証債務では、保証人への履行請求は、主たる債務者への効力をもたず、主たる債務の消滅時効は中断しません。

なお、連帯保証人に対する履行の請求は、次のようになっています。

裁判外の催告は、それだけでは時効中断の原因とはならず、その後六月内に裁判上の手続きをとらないと、主たる債務者に対して時効中断の効力を生じない』

 「この平成7年の問題はいきなり訴訟だなんて、メクラマシか」と思ったかもしれませんが、要するに、連帯保証人に対する履行の請求は、もともと裁判上の請求が基本だということです。

2.「に対して訴訟により弁済を求めても,その訴えが却下された場合は,時効

中断の効力は生じない。」

【正解:

◆訴訟の却下 → 時効中断の効力は生じない

     B (主たる債務者) から履行請求(訴訟により弁済を求められる)→却下
   /
                           
   \
     C (連帯保証人)  への訴訟が却下されたため、時効中断は生じない

 訴訟の却下とは、訴えが認められないということ(門前払い)で、中断の効力は生じません。(149条)訴訟の取下げの場合も同様です。なお、判例では、棄却も却下に含まれます。

3.「に対して訴訟により弁済を求めた場合,の債務についても,時効中断の

効力を生じる。」

【正解:

◆主たる債務者への履行請求は、連帯保証人の債務の時効中断の効力をもつ

     B (主たる債務者) Aから履行請求(訴訟により弁済を求められる)
   /
                         
   \
     C (連帯保証人)   消滅時効の中断 

【超重要】主たる債務者の承認、主たる債務者への履行の請求

     A (主たる債務者)        Cに債務の承認をする・
   /                     Cから履行の請求を受ける
                        ↓ 
   \
     B (保証人 or 連帯保証人)  Bの消滅時効も中断する

4.「に対して債務の承認をした場合,が被保佐人であって,保佐人の同意を

得ていなくても,時効中断の効力を生じる。」

【正解:

◆主たる債務者の『債務の承認』は、連帯保証人の時効中断の効力をもつ

     B (主たる債務者、被保佐人) 保佐人の同意を得ずに、Aに債務の承認
   /
                           
   \
     C (連帯保証人)          消滅時効の中断

 主たる債務者の債務の承認は、連帯保証人に対して、時効中断の効力をもちます。

 さて、主たる債務者が被保佐人の場合ですが、『債務の承認』は、保佐人の同意を得ていなくても、被保佐人本人が単独ですることができます。(12条、156条)

 したがって、が被保佐人であっても、の債務の承認は、時効中断の効力を生じます。

債務の承認

 三つの類型とも,債務の承認は,『ほかの連帯債務者』や『主たる債務者』に効力をもたないことに注意してください。

■連帯債務

     B (連帯債務者)         × 効力をもたない
   /
                           
   \
     C (連帯債務者)            債務の承認

■保証債務

     B (主たる債務者)         × 効力をもたない
   /
                           
   \
     C (保証人)                債務の承認

■連帯保証

     B (主たる債務者)         × 効力をもたない
   /
                           
   \
     C (連帯保証人)             債務の承認

対比⇔主たる債務者の「債務の承認」と比較してください。

【超重要】主たる債務者の承認、主たる債務者への履行の請求

     A (主たる債務者)        Cに債務の承認をする・
   /                     Cから履行の請求を受ける

                        ↓ 
   \
     B (保証人 or 連帯保証人)  Bの消滅時効も中断する


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