Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

連帯保証の基本問題1


【正解】

× × ×

Aは,Bが購入した住宅の代金支払債務につき連帯保証人となる契約を,売主Cと締結した。次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和53年)

1.「BC間の売買契約が錯誤により無効であった場合でも,AC間の連帯保証契約は

有効である。」

【正解:×

◆売買契約が無効

     B (主たる債務者)  CB間の売買契約が無効
   /
                       
   \
     A (連帯保証人)   AC間の連帯保証契約は効力を持たない

 保証は、あくまでも、主たる債務の履行確保が目的であり、主たる債務に付従するものです。主たる債務が無効で不成立ならば、当然、保証債務も成立しません。

■対比 ⇔ 連帯債務

 連帯債務では、連帯債務者の一人に、無効や取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務の効力には影響を及ぼしません。

     B (連帯債務者)         無効
   /
                       
   \
     A (連帯債務者)   AC間の債務は効力を持つ。

2.「Cが売買代金につき,Bに請求せず直接Aに請求してきた場合,AはCに対して,

まずBに請求するよう要求することができる。」

【正解:×

◆連帯保証人には、催告の抗弁権はない

     B (主たる債務者)  
   /
                       
   \
     A (連帯保証人)  Cから履行の請求→連帯保証人には催告の抗弁権はない 

 通常の保証債務では、債権者が保証人に債務の履行を請求したときに、「まず主たる債務者に催告せよ」と主張する催告の抗弁権がありますが、連帯保証人には認められていません。(454条)

3.「AC間の連帯保証契約が締結された後,BC間の合意で売買代金が増額された

としても,Aはもとの代金の限度においてのみ連帯保証債務を負えばよい。」

【正解:

◆保証債務は、主たる債務よりも重くなることはない

     B (主たる債務者)  CB間の合意で、売買代金が増額
   /
                       
   \
     A (連帯保証人)   もとの代金の限度でのみ連帯保証債務を負う

 保証債務は、主たる債務よりも重くなることはないとされています。民法では、「保証人の負担が、主たる債務の目的・態様について主たる債務よりも重くなるときは、主たる債務の限度に縮減する」(448条)という規定があります。

 保証債務の範囲は、特約のない限り、元本・利息・違約金・損害賠償その他すべてその債務に従たるものとを包含することになっています。(447条1項)

 厳密に考えれば、保証契約締結時には発生していない利息や違約金などを含んでいてその分、元本よりも重くなってはいます。しかし、これは、BC間の合意で元本を勝手に増額するというものとは性質が異なり、保証債務の性質上当然発生するものです。

連帯保証契約が締結された後に、特約もないのに、売主と買主の間で、売買代金が増額された場合

その増額分にまで保証債務が及ぶことはない

と通説・判例では考えられています。 

4.「Aが,その債権額の一部の免除を受けた場合,その免除額については,Bの

債務も免除を受けたことになる。」

【正解:×

◆連帯保証人が、連帯保証債務を一部免除される

     B (主たる債務者) 主たる債務には影響しない 
   /
                       
   \
     A (連帯保証人)  Cから連帯保証債務を一部免除される 

 Aの連帯保証債務は、BC間の契約に付従するものですが、BC間の契約とはもともと別の契約です。

 債権者の、連帯保証人に対する免除は、連帯保証債務を一部免除するだけであって主たる債務そのものまで一部を免除するものではありません。

 したがって、主たる債務者Bは、連帯保証人Aが債務の一部の免除を受けても、その免除額について、主たる債務も免除を受けたことになるわけではありません。

●保証債務と連帯保証の大きな違い

履行の請求

保証債務では、保証人への履行の請求は、主たる債務者に効力を及ぼさない

 

 連帯保証では、連帯保証人への履行の請求は、主たる債務者に効力を及ぼす

補充性−催告の抗弁権と検索の抗弁権

保証債務では、催告の抗弁権、検索の抗弁権が保証人にある

 

 連帯保証では、催告の抗弁権、検索の抗弁権が連帯保証人にはない

(連帯)保証人に生じた事由の効力

保証債務では、保証人に生じた事由の効力は、弁済その他債務を消滅させる行為のほかは、主たる債務者に影響を及ぼさない。

 

 連帯保証では、原則として、連帯保証人に生じた事由の効力は、弁済その他債務を消滅させる行為のほかは、主たる債務者に影響を及ぼさない。

 しかし、債権者の請求・混同など、ごく僅かだが、連帯保証人に生じた事由の効力が主たる債務者に影響を及ぼすものがある。

分別の利益

保証債務では、複数の保証人の共同保証で、特約がなければ分別の利益がある。

 

 連帯保証では、複数の連帯保証人の共同保証で、分別の利益がない。


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