Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

連帯債務に関する問題6  平成13年・問4


【正解】

× × ×

AとBとが共同で、Cから、C所有の土地を2,000万円で購入し、代金を連帯して負担する(連帯債務)と定め、CはA・Bに登記、引渡しをしたのに、A・Bが支払いをしない場合の次の記述は、民法の規定によれば○か、×か。(平成13年・問4)

1.「Cは、Aに対して2,000万円の請求をすると、それと同時には、Bに対しては、

全く請求をすることができない。」(昭和55年)

【正解:×

◆履行の請求

     A Cから2,000万円の請求
   /
  
   \
     B 

 連帯債務では、債権者は、債務者の1人または全員に対して、同時にまたは順次に、債務の全部または一部の履行を請求することができます。(民法432条)

 したがって、Cは、Aに対して2,000万円全額の履行を請求していても、それと同時に、Bに対しても、2,000万円を請求することができます。

2.「AとBとが、代金の負担部分を1,000万円ずつと定めていた場合、AはCから

2,000万円請求されても、1,000万円を支払えばよい。」

【正解:×

◆全額について責任を負う

 連帯債務とは、連帯債務者の各人が、それぞれ、その債務の全額につき責任を負うものです。(民法432条)

 したがって、負担部分が1,000万円と定められていても、債権者に対しては、2,000万円全額について連帯債務を負い、Cから2,000万円請求されたら、2,000万円全額を支払わなければなりません。

 なお、連帯債務の1人が債務の全部を弁済すれば、その債務者は他の債務者に対して、その負担部分(頭割り分)につき、求償することができます(第442条)

3.「BがCに2,000万円を支払った場合、Bは、Aの負担部分と定めていた1,000万円

及びその支払った日以後の法定利息をAに求償することができる。」

【正解:

◆求償での法定利息・損害賠償

     A 
   /
           ↑ 求償Aの負担部分・法定利息・費用・損害賠償
   \
     B Cに2,000万円を弁済

 債務者の1人が、弁済などの自己の出捐(しゅつえん)によって、全ての債務者のために共同の免責を得たとき(債務を消滅または減少させたとき)、各自の負担部分に応じて分割した額の求償を求めることができます。(442条1項)

 その求償には、免責のあった日以後の法定利息、および避けることができなかった費用その他の損害賠償も含まれます。(442条2項)

 したがって、Bは、Aの負担部分と定めていた1,000万円及びその支払った日以後の法定利息をAに求償することができます。

4.「Cから請求を受けたBは、Aが、Cに対して有する1,000万円の債権をもって相殺

しない以上、Aの負担部分についても、Bからこれをもって相殺することはできない。」

(昭和59年)

【正解:×

◆相殺

     A Cに対して1000万円の反対債権を持っている
   /
  
   \
     B Aの負担部分のみ相殺を援用できる

 Cから請求を受けたBは、Aが債権者Cに対して反対債権を持っているのに、Aが相殺しない間は、Aの負担部分のみについて、相殺を援用することができます。(436条2項、判例) 

 相殺を援用することによって、債権全額2,000万円からその相殺分1,000万円を減じた額の連帯債務になります。つまり残りの1,000万円の連帯債務をABは負担することになります。

▼注意

 本設問では、Aが有する反対債権が1,000万円でちょうどAの負担部分と同額でした。もし、Aが有する反対債権がAの負担部分より多かったらどうでしょうか。

 例えば,AがCに対して有する1,500万円の債権をもっていたときは,次のようになります。

1) AがCに対して相殺の意思表示をした場合は、その反対債権全てについて相殺することができ、債務者全員がその金額だけ債務を免れます。

 この場合は、2,000万円−1,500万円=500万円、つまり残った500万円の連帯債務をABで負担することになります。

     A Cに対して1,500万円の反対債権を持っている
   /    Aが相殺を援用 → 2,000万円−1,500万円=500万円
                   全員の連帯債務は500万円に 
   \
     B 

2) しかし、Bが相殺を援用した場合は、Aが有する反対債権全額を相殺することはできずAの負担部分(1,000万円)しか相殺することはできません

 この場合、2,000万円−1,000万円=1,000万円、つまり残った1000万円の連帯債務をABで負担することになります。

     A Cに対して1,500万円の反対債権を持っている
   /
  
   \
     B Aの負担部分のみ相殺を援用できる → 2,000万円−1,000万円=1,000万円
                                全員の連帯債務は1,000万円に

 このように、債務者のうちの誰が援用するかによって、連帯債務の金額が異なりますので、注意してください。

●Aの反対債権が2,000万円のとき

1) AがCに対して相殺の意思表示をした場合は、その反対債権全てについて相殺することができ、債務者全員がその金額だけ債務を免れます。

 この場合は、2,000万円−2,000万円=ゼロ、

     A Cに対して2,000万円の反対債権を持っている
   /    Aが相殺を援用 → 2,000万円−2,000万円=0
                   全額弁済になり、AはBに1,000万円求償できる 
   \
     B 

2) しかし、Bが相殺を援用した場合は、Aが有する反対債権全額を相殺することはできずAの負担部分(1,000万円)しか相殺することはできません

 この場合、2,000万円−1,000万円=1,000万円、つまり残った1000万円の連帯債務をABで負担することになります。

     A Cに対して2,000万円の反対債権を持っている
   /
  
   \
     B Aの負担部分のみ相殺を援用できる → 2,000万円−1,000万円=1,000万円
                                全員の連帯債務は1,000万円に


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