Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

連帯保証に関する複合問題 平成6年・問5


【正解】

×

に対する債務について、の連帯保証人となるとともに、の所有地にの抵当を設定し、その登記をしたが、その後は、その土地をに譲渡し、登記も移転した。

 この場合、次のそれぞれの記述は、民法の規定及び判例によれば○か、×か。

    A (主たる債務者)
   /
  ・・・・・Aの所有地(抵当権設定) → D (Aから譲渡され、移転登記)  
   \
     C (連帯保証人)

1.「は、その土地をに譲渡する際、及びに通知する必要はない。」

【正解:

     A (主たる債務者)
   /
  ・・・・・Aの所有地(抵当権設定) → D (Aから譲渡され、移転登記)  
   \
     C (連帯保証人)

 抵当権付不動産でも自分のモノに変わりなく、その所有者Aは、所有権に基づき、自由に譲渡することができます(民法第206条)。

(もっとも、抵当権付なので時価では売れないでしょうが)

 そのときAは、抵当権者B及びAの連帯保証人Cに通知する義務はありません

2.「は、抵当権を実行する際、あらかじめに通知しなくてもよい。」

【正解:

     A (主たる債務者)
   /
  ・・・・・Aの所有地(抵当権設定) → D (Aから譲渡され、移転登記)  
   \
     C (連帯保証人)

 法改正前は,抵当権者が抵当権を実行するときは,第三取得者にその旨を通知する義務がありました。(旧・381条) 法改正によりこの規定は削除されたので,抵当権者は第三取得者に通知する義務はありません。

3.「の取得前にに弁済した場合は、に対してに代位することができるが、

に対しては、代位の附記登記をしておかなければ、に代位することができない。」

【正解:

     A (主たる債務者)
   /
  ・・・・・Aの所有地(抵当権設定) → D (Aから譲渡され、移転登記)  
   \
     C (連帯保証人) Dの取得前に、全額弁済 
                         ↓
                 Aに対してBに代位する

附記登記をしておかないと、Cは

Dに対してBに代位することはできない

            

 連帯保証人Cは、弁済するにつき、正当な利益を有するので、弁済をすることができ(第474条2項)、弁済をすることによって、債権者Bに代位(入れ替わる)します(第500条)。

 しかし、Cは、あらかじめその抵当権の登記にその代位を付記しなければ(代位の附記登記第三取得者Dは知りようもないので、BからCに代位したことを主張することができません(第501条1号)。

第三取得者Dの現れた後に、保証人が弁済したときには、附記登記は不要。(最高裁・昭和41.11.18)

4.「に弁済した場合は、及びに対してに代位することができる。」

【正解:×

     A (主たる債務者)
   /
  ・・・・・Aの所有地(抵当権設定)→D(第三者弁済)  
   \
     C (連帯保証人)  

 債権者Bに弁済した第三取得者Dは、Bに代位(法定代位)したことを、主たる債務者Aに主張できますが、保証人Cに対しては代位できません(第501条2項)。つまり、保証人Cに弁済を請求できないということです。

 このように、“第三取得者より保証人の方が保護されている”その理由は、第三取得者の場合は、登記簿等によって担保物権(抵当権)の存在を知ることができ、それによって、予め危険性を覚悟(逆に考えれば「安く買いタタケル」)しており、また、代価弁済(第377条)や抵当権消滅請求(第378条)などの保護手段が与えられているからです。

 しかし、保証人の場合は、特約のない限り、利息、損害賠償、違約金など、主たる債務者と同じ義務を負う(第447条)ことになるため、第三取得者に比べて負担も大きく、また保証人は、債務者の無資力を予想して保証するわけでもないため(本来は無資力が予想される債務者の保証人にはなるべきではナイ!)、不測の損害を受けるおそれもあるためです。


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