Brush Up! 権利の変動篇
保証に関する基本問題 単純保証 債権譲渡・法定代位
保証債務に関する次の記述は,民法の規定及び判例によれば,○か×か。 |
1.「保証債務は主たる債務とは別の債務であるから,主たる債務につき債権譲渡が行われても,保証債務までは移転しない。」 |
2.「主たる債務が譲渡された場合,随伴性に基づいて保証債務も移転するが,譲渡の通知が主たる債務者に対してだけでなく保証人に対してもなされなければ,譲受人は債権譲渡を保証人に対抗することができない。」 |
3.「保証人が主たる債務者に代わって弁済をした場合,保証人は,債権者の主たる債務者に対する債権を担保するための抵当権を実行して,弁済を受けることができる。」 |
4.「保証人が主たる債務者に代わって弁済をした場合において,債権者の主たる債務者に対する債権を担保するための抵当権の目的となっている建物が第三者に譲渡されているときは,保証人は,その抵当権によって弁済を受けることはできない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
1.「保証債務は主たる債務とは別の債務であるから,主たる債務につき債権譲渡が行われても,保証債務までは移転しない。」 |
【正解:×】 ◆債権譲渡によって移転する ┌B(債務者) 主たる債務につきAからDに債権譲渡されると ┌B(債務者) 保証債務は主たる債務を担保するものなので,主たる債務につき債権譲渡が行われると,保証債務もともに移転します。〔保証債務の随伴性〕 |
2.「主たる債務が譲渡された場合,随伴性に基づいて保証債務も移転するが,譲渡の通知が主たる債務者に対してだけでなく保証人に対してもなされなければ,譲受人は債権譲渡を保証人に対抗することができない。」 |
【正解:×】 ◆保証人と債権譲渡 保証人に対して債権譲渡を対抗するには,主たる債務者に対して譲渡人が通知するか主たる債務者の承諾が必要とされています。(大審院・昭和9.3.29) したがって,保証人に通知していなくても,主たる債務者に通知していればよいので×です。 ▼保証人に対して債権譲渡の通知をしても,主たる債務者には債権譲渡を対抗できません。 |
3.「保証人が主たる債務者に代わって弁済をした場合,保証人は,債権者の主たる債務者に対する債権を担保するための抵当権を実行して,弁済を受けることができる。」 |
【正解:○】 ◆保証人の弁済による代位 保証人は,弁済したことにより求償権を持ち,求償する手段として債権者に代位して(500条),債権者が有していた抵当権を実行することができます。(501条本文) B(主たる債務者,抵当権設定者) → 求償権の範囲内において代位することに注意。 |
4.「保証人が主たる債務者に代わって弁済をした場合において,債権者の主たる債務者に対する債権を担保するための抵当権の目的となっている建物が第三者に譲渡されているときは,保証人は,その抵当権によって弁済を受けることはできない。」 |
【正解:×】 ◆保証人と第三取得者 B(主たる債務者,抵当権設定者) ―― D(第三取得者) 債権者の主たる債務者に対する債権を担保するための抵当権の目的となっている建物が第三者に譲渡されているときでも,下記の要件を満たしていれば,保証人は,その抵当権によって弁済を受けることができます。 弁済によって債権者に代位した保証人が,弁済後に出現した第三取得者に対して抵当権を実行するためには,(弁済の後に)あらかじめ附記登記をしておく必要があります。(501条但書)附記登記をしておかないと,弁済をした保証人が代位権を行使するかどうか,抵当不動産を取得しようとしている第三取得者にはわからないからです。 弁済前の第三取得者に対しては附記登記をしておかなくても対抗できます。(最高裁・昭和41.11.18)第三取得者は登記簿を見れば抵当権が設定されていることを容易に知ることができ,抵当権の負担というリスクを覚悟しているはずだからです。 |