Brush Up! 権利の変動篇

意思表示の過去問アーカイブス (平成2年・問4)


所有の土地が,からから善意無過失のへと売り渡され,移転登記もなされている。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。(平成2年・問4)

1.「が成年被後見人の場合,は,契約の際完全な意思能力を有していても,AB間の契約を取り消し,に対して所有権を主張することができる。」

2.「が未成年者の場合,は,法定代理人の同意を得ずに契約をしていても,成年に達すれば,AB間の契約を取り消すことができなくなる。」

3.「が要素の錯誤により契約をした場合,は,重大な過失がないときは,AB間の契約の無効を主張し,に対して所有権を主張することができる。」

4.「が差押えを免れるため,と通謀して登記名義をに移した場合,は,AB間の契約の無効を主張することはできるが,に対して所有権を主張することはできない。」

【正解】

×

1.「が成年被後見人の場合,は,契約の際完全な意思能力を有していても,AB間の契約を取り消し,に対して所有権を主張することができる。」

【正解:

◆成年被後見人

 AB間の契約締結の際に、成年被後見人の意識が回復していて、完全な意思能力を有していたとしても、成年被後見人は取り消すことができ、この取消しの効果を相手方だけでなく、第三者にも対抗することができます。(120条)

 第三者の善意・悪意は関係ありません。

 したがって、は,が移転登記を受けていても、に対して所有権を主張することができます。

2.「が未成年者の場合,は,法定代理人の同意を得ずに契約をしていても,成年に達すれば,AB間の契約を取り消すことができなくなる。」

【正解:×

◆未成年 : 法定代理人の同意を得ない契約

 未成年者は法定代理人の同意を得ずに、土地の売買契約をしたときは、その契約を取り消すことができます。(4条2項)

また、法定代理人の同意を得ずにした契約は、行為能力の制限により取り消す場合には、法定代理人の同意は不要です。(120条)

 成年になってからでも、未成年のときに法定代理人の同意を得ずに締結した契約は、行為能力の制限を理由に取消す場合、その取消権の行使期間〔除斥期間〕は、

成年に達したときから起算して5年間

・または、法律行為をしたときから20年

で消滅します。(126条)

 したがって、本肢では、『成年に達すれば,AB間の契約を取り消すことができなくなる』となっているので×になります。

3.「が要素の錯誤により契約をした場合,は,重大な過失がないときは,AB間の契約の無効を主張し,に対して所有権を主張することができる。」

【正解:

◆錯誤

 には,重大な過失がなく、要素の錯誤により契約をしているので,AB間の契約の無効を主張し,に対して所有権を主張することができます。

▼錯誤の主張をする要件

1.その錯誤がどの段階で生じているか? → 動機の錯誤は×

  例外・動機が表示されている場合は

2.その錯誤が重要な部分(要素)で起きているか? → 軽微な勘違いは×

3.本人に重大な過失はないか? → 著しい不注意による勘違いも×

  例外・相手方が悪意の場合,相手方の詐欺による錯誤の場合は

4.「が差押えを免れるため,と通謀して登記名義をに移した場合,は,AB間の契約の無効を主張することはできるが,に対して所有権を主張することはできない。」

【正解:

通謀虚偽表示 : 善意の第三者には対抗できない

 −通謀虚偽表示−(善意無過失)

 通謀虚偽表示の無効は、善意の第三者には対抗することができません。(94条2項)

AB間の譲渡は当事者AB間では無効であっても、にとっては有効だとみなされるからです。

 判例では、善意の第三者として保護されるには、ただ単に善意でありさえすればよく、登記がなくても(大審院・昭和10.5.31)、また過失があっても(大審院・昭和12.8.10)、善意の第三者に対抗できる、としています。


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