Brush Up! 権利の変動篇

意思表示の過去問アーカイブス (平成6年・問2)


は,『近く新幹線が開通し,別荘地として最適である』旨のの虚偽の説明を信じて,の所有する原野(時価20万円)を,別荘地として2,000万円で購入する契約を締結した。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(平成6年・問2)

1.「は,当該契約は公序良俗に反するとして,その取消しを主張するとともに,の不法行為責任を追及することができる。」

2.「は,無過失のときに限り,法律行為の要素に錯誤があるとして,その無効を主張することができる。」

3.「は,当該契約の締結は詐欺に基づくものであるとして,その取消しを主張することができるが,締結後20年を経過したときは,取り消すことができない。」

4.「が被保佐人であり,保佐人の同意を得ずに当該契約を締結した場合,は,当該契約の締結にはの同意がないとして,その無効を主張することができる。」

【正解】

× × ×

1.「は,当該契約は公序良俗に反するとして,その取消しを主張するとともに,の不法行為責任を追及することができる。」

【正解:×

◆公序良俗違反による無効

 この事案は、詐欺という視点だけでなく、公序良俗違反(暴利行為)不法行為責任(709条)錯誤などからも処理することができます。

 原野(時価20万円) → 別荘地として2,000万円

 というのは、暴利行為による公序良俗違反(90条)になります。公序良俗に反する契約は無効であり、誰からも主張することができます。

 公序良俗に反する契約は、本肢の問題文の言うように、『取り消しうる法律行為』ではありません。

2.「は,無過失のときに限り,法律行為の要素に錯誤があるとして,その無効を主張することができる。」

【正解:×

◆錯誤による無効の主張

 Aは、要素の錯誤があり、重過失がなければ、錯誤があるとして,その無効を主張することができます。つまり、無過失までは要求されていません

 したがって、本肢は×になります。

▼錯誤の主張をする要件

1.その錯誤がどの段階で生じているか? → 動機の錯誤は×

  例外・動機が表示されている場合は

2.その錯誤が重要な部分(要素)で起きているか? → 軽微な勘違いは×

3.本人に重大な過失はないか? → 著しい不注意による勘違いも×

  例外・相手方が悪意の場合,相手方の詐欺による錯誤の場合は

3.「は,当該契約の締結は詐欺に基づくものであるとして,その取消しを主張することができるが,締結後20年を経過したときは,取り消すことができない。」

【正解:

◆詐欺による取消の除斥期間

 (売主)←詐欺−(買主)−(善意の第三者)登記
 
取消

 は,当該契約の締結は詐欺に基づくものであるとして,その取消しを主張することができますが、取消権の行使には、時間制限があります。

 取消権の行使がいつまでもできることになると、いつ取り消されるか予測がつかないので、相手方やAB間の取引を信頼した第三者の地位が不安定になります。

 そこで、民法では、取消権の行使期間を『追認をすることができる時から5年間,または,契約締結後20年間』と定め、期間の経過により、取消権は消滅するとしています。(126条)

4.「が被保佐人であり,保佐人の同意を得ずに当該契約を締結した場合,は,当該契約の締結にはの同意がないとして,その無効を主張することができる。」

【正解:×

◆保佐人の取消

 被保佐人が、保佐人の同意(または家庭裁判所の許可)を要する行為で、保佐人の同意を得ずにしたものは、取り消すことができます。(12条4項)

 取り消すのは、保佐人・被保佐人ともできます。(120条1項)←平成12年の法改正点

 したがって、保佐人は、保佐人の同意を得なければいけないのに、保佐人の同意を得ないで、被保佐人が単独でした法律行為を取り消すことができますが、本肢は、「無効を主張することができる」となっているため、×になります。

 ← 問題文では、『取り消しうべき法律行為』と『契約の無効』と混同しています。

12条1項3号・・・不動産その他重要なる財産に関する権利の得喪を目的とする行為(例えば本肢のような土地の購入契約を締結)をする場合には、保佐人の同意が必要です。


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