Brush Up! 権利の変動篇
意思表示の過去問アーカイブス 錯誤 (平成13年・問2)
Aが,Bに住宅用地を売却した場合の錯誤に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。(平成13年・問2) |
1.「Bが,Aや媒介業者の説明をよく聞き,自分でもよく調べて,これなら住宅が建てられると信じて買ったが,地下に予見できない空洞(古い防空壕)があり,建築するためには著しく巨額の費用が必要であることが判明した場合,Bは,売買契約は錯誤によって無効であると主張できる。」 |
2.「売買契約に要素の錯誤があった場合は,Bに代金を貸し付けたCは,Bがその錯誤を認めず,無効を主張する意思がないときでも,Aに対し,Bに代位して,無効を主張することができる。」 |
3.「Aが,今なら課税されないと信じていたが,これをBに話さないで売却した場合,後に課税されたとしても,Aは,この売買契約が錯誤によって無効であるとはいえない。」 |
4.「Bは,代金をローンで支払うと定めて契約したが,Bの重大な過失によりローン融資を受けることができない場合,Bは,錯誤による売買契約の無効を主張することはできない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
1.「Bが,Aや媒介業者の説明をよく聞き,自分でもよく調べて,これなら住宅が建てられると信じて買ったが,地下に予見できない空洞(古い防空壕)があり,建築するためには著しく巨額の費用が必要であることが判明した場合,Bは,売買契約は錯誤によって無効であると主張できる。」 |
【正解:○】 ◆要素の錯誤 A(売主)―B(買主、要素の錯誤) ◇住宅用地として買ったが、防空壕があり、建築には、巨額の費用がかかる。 本設問を整理してみると ・Aや媒介業者の説明をよく聞き,自分でもよく調べて→重大な過失はない。 ・住宅が建てられると思い住宅用地として買ったのに、建物が建てられない。 →要素の錯誤
よって、本肢問は、〇になります。 |
2.「売買契約に要素の錯誤があった場合は,Bに代金を貸し付けたCは,Bがその錯誤を認めず,無効を主張する意思がないときでも,Aに対し,Bに代位して,無効を主張することができる。」 |
【正解:×】 ◆第三者の無効の主張 C(債権者、Bに貸し付け) ↓ A(売主)―B(買主、要素の錯誤) ◇要素の錯誤はあるが、Bは錯誤を認めず、無効を主張する意思はない。 第3者が無効を主張するには,以下のことが必要でした。
しかしながら、本肢問の場合は、 ・Bがその錯誤を認めず,無効を主張する意思がない となっているため、×になります。 |
3.「Aが、今なら課税されないと信じていたが,これをBに話さないで売却した場合,後に課税されたとしても,Aは,この売買契約が錯誤によって無効であるとはいえない。」 |
【正解:○】 ◆動機の錯誤 A(売主、動機の錯誤)―B(買主) ◇Aは課税されないと信じて契約 宅建試験ではよくあることですが、他の肢問では、Bの錯誤なのに、本肢問は、Bではなく、Aが錯誤に陥っています。この戸惑わせる出題はよくあります。 Aの動機に錯誤があります。原則として、動機の錯誤では無効を主張することができません。
本肢問では、 ・Aが、今なら課税されないと信じていたが (動機),これをBに話さないで※ となっているため、動機は意思表示の内容にはなっておらず、要素の錯誤にはなりません。つまり、Aは、錯誤無効の主張はできません。よって、本肢問は〇になります。 ※題意から,本肢の場合は,黙示の表示には該当しないと考えるしかありません。 |
4.「Bは,代金をローンで支払うと定めて契約したが,Bの重大な過失によりローン融資を受けることができない場合,Bは,錯誤による売買契約の無効を主張することはできない。」 |
【正解:○】 ◆重過失が表意者にあるときは無効の主張はできない A(売主)―B(買主、要素の錯誤) ◇Bはローンで支払うと契約 本肢問では、
となっており、ローンで支払えると思っていてその旨約定したにもかかわらずローン融資が受けられなかったというのは要素の錯誤であり、表意者Bには,重大な過失があります。
この95条の規定により、Bは錯誤による無効を主張できません。 |
●参考問題 |
1.「民法上,錯誤の場合には,無効を主張することができる期間についての定めはないが,詐欺の場合には,取消権を行使することができる期間についての定めがある。」(司法書士・平成6年・問5・エ) |
【正解:○】 錯誤・・・無効の主張には期間の制限はない。(95条) 詐欺・・・追認することができる時から5年間,または行為の時から20年間行使しないとに取消権は消滅する。(126条) |
2.「錯誤の場合には,表意者Aはすべての第三者に対して,無効を主張することができるが,詐欺の場合には,表意者Aは,すべての第三者に対して取り消しを主張できるわけではない。」(司法書士・平成6年・問5・オ) |
【正解:○】 錯誤・・・すべての第三者に対して主張することができる。(95条) 詐欺・・・取り消し前の善意の第三者には主張できない。(96条3項) |