Brush Up! 権利の変動篇
意思表示の過去問アーカイブス 第三者の詐欺 (昭和53年)
Aは詐欺により,BをしてB所有の土地および建物をCに譲渡させる契約を結ばせた。次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和53年) |
1.「B,C間の売買契約は何らの意思表示をすることなく無効である。」 |
2.「B,C間の売買契約は,詐欺がAによって行われているので,AとCが共謀していなければBは取り消すことができない。」 |
3.「B,C間の売買契約について,CがAの詐欺の事実を知っていれば,AとCが共謀していなくともBは取り消すことができる。」 |
4.「B,C間の売買契約については,AとCの関係いかんにかかわらず,Bは常に取り消すことができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
【正解:3】 ◆第三者の詐欺 : 相手方が悪意のときに限り,取り消すことができる 詐欺による意思表示は,取り消すことができるのであって無効ではありません。ダマされてもそのままにしておいていいと思えば,その詐欺による意思表示の効力に影響はありませんが,表意者が「やはり納得できない」と思えば,その意思表示を取り消して,その効力を否定することができます。 したがって,1の『無効』であるとする記述は×です。 ┌Aの詐欺 ふつうの詐欺、つまり、意思表示の相手方が詐欺を行った場合は、常に取り消すことができますが、第三者が詐欺を行った場合には事情が変わります。→ 4は×
AとCがグルになっていれば,Cは当然Aの詐欺を知っているはずですが,AとCがグルになってなくてもCが知っているということはありえます。したがって,次のように整理できます。→ 2は×
このようにしているのは次の理由があります。 もし相手方Cが、第三者のAが詐欺を行ったことを知らないのに、Bが自由に取り消すことができるとすれば、相手方のCには著しい不利益となるため、Bの取消には制限がかかっています。〔善意の相手方の保護〕 ただ、相手方が善意のときに取消はできないにしても、詐欺を働いた第三者に対して不法行為による責任追及をすることは可能だと考えられています。(最高裁・昭和38.8.8) |