Brush Up! 権利の変動篇
意思表示の過去問アーカイブス 善意の第三者 (昭和56年・問2)
法律行為または意思表示に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和56年・問2) |
1.「未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は取り消すことができるが,この法律行為の取り消しは善意の第三者には対抗することができない。」 |
2.「公の秩序または善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は無効であるが,この法律行為の無効は善意の第三者には対抗することができない。」 |
3.「相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効であるが,この意思表示の無効は善意の第三者には対抗することができない。」 |
4.「強迫による意思表示は取り消すことができるが,この意思表示の取り消しは善意の第三者には対抗することができない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
◆表意者が、善意の第三者に対抗できないのは限られています。 無効・・・通謀虚偽表示・心裡留保 (錯誤による無効は対抗できる) 取消・・・詐欺 (取消前の善意の第三者)・ |
1.「未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は取り消すことができるが,この法律行為の取り消しは善意の第三者には対抗することができない。」 |
【正解:×】 ◆未成年者の取消は、取消前の第三者にも対抗できる 未成年者が法律行為を行うには、原則として法定代理人の同意が必要です。(4条1項) 未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は、未成年者・法定代理人どちらからも取消すことができ(4条2項)、取消し前の善意の第三者にも対抗することができます。 〔未成年者が取消すのに法定代理人の同意は不要。⇔追認は同意が必要。〕 |
2.「公の秩序または善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は無効であるが,この法律行為の無効は善意の第三者には対抗することができない。」 |
【正解:×】 ◆公序良俗違反は無効 公序良俗に反する契約は無効です。いくら“契約自由の原則”といっても、法律行為の目的が反社会的なものであったり、人倫に悖る(もとる)ものであるならば、そのような法律行為には効力を与えるべきではありません。(90条) したがって、公序良俗に反する契約の無効は、誰からも、また誰に対しても、いつどこででも主張できるものです。 本肢では、『法律行為の無効は善意の第三者には対抗することができない』となっているため、×になります。 ▼無効について 無効には、無効を主張できる範囲に制約があるもの(錯誤など)、無効であることを当事者が知って追認することにより新たな法律行為をしたものとみなされるもの(119条但書)、一部分だけが無効になるものなどいろいろあります。 その中で、公序良俗に反する契約の無効のように、全部無効とされているものは、このほかに『強行法規に反する法律行為』(91条の反対解釈)などがあります。 |
3.「相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効であるが,この意思表示の無効は善意の第三者には対抗することができない。」 |
【正解:○】 ◆通謀虚偽表示 : 善意の第三者には対抗できない 例 A−通謀虚偽表示−B−C(善意) 通謀虚偽表示の無効は、善意の第三者には対抗することができません。(94条2項) AB間の譲渡は当事者AB間では無効であっても、Cにとっては有効だとみなされるからです。 判例では、善意の第三者として保護されるには、ただ単に善意でありさえすればよく、登記がなくても(大審院・昭和10.5.31)、また過失があっても(大審院・昭和12.8.10)、善意の第三者CはAに対抗できる、としています。 |
4.「強迫による意思表示は取り消すことができるが,この意思表示の取り消しは善意の第三者には対抗することができない。」 |
【正解:×】 ◆強迫 強迫では、詐欺と異なり、強迫されて行った意思表示の取消は取消前の第三者に対抗できます。(96条3項の反対解釈) したがって、強迫を理由とする取消は、取消前の善意の第三者にも対抗することができます。 |