Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
隔地者間の契約の成立に関する問題 1
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
隔地者間の契約(民法521〜527条)
面談や電話による対話者間の契約のほかに、郵便によって文書をやり取りして交渉し契約を成立させることがあります。 隔地者間での申込の意思表示は、民法では原則として到達主義をとっています。(民法97条)
▼契約は、原則として、当事者の意思表示の一致により成立します。(諾成契約) 当事者の合意のほかに物の引渡しが契約の成立に必要な契約(要物契約)ありますが、「隔地者間の契約の成立」の問題では、その契約は諾成契約として考えてください。 |
契約の成立に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。 (昭和57年・問7) |
1.「承諾の期間の定めのある申込みは、原則として、申込者がその期間内に承諾の
通知を受けないときは、効力を失う。」(類:昭和59-10-1)
【正解:○】 承諾の期間の定めがあるときは、その期間内に承諾の通知を受けないときは、原則として、申込みは効力を失い、契約は成立しません。(民法521条2項) 申込者に、来るか来ないか分からない承諾の通知をいつまでも待たせておくのは酷な話であり、承諾期間が過ぎれば、申込者はほかをあたろうとするかもしれません。民法は、このような場合の申込者を保護する規定になっています。
●承諾期間の定めのある申込みの効力 申込 承諾期間が経過 ●――――――――●―――――――――――― 申込の撤回不可 申込の効力は消滅(承諾適格なし) 承諾不可 →遅れて届いた承諾は新たな申込とみなすことができる |
2.「承諾の期間を定めないで、隔地者に対してなした申込みは、いつでも取り消す
ことができる。」
【正解:×】 承諾の期間を定めないで隔地者にした申込みは、承諾の通知を受けるのに要する相当な期間は取り消すことができません。(民法524条)
▼なお、ここでいう申込みの取り消しは、制限能力・詐欺・強迫を理由とする取り消しとは別のものであり、行為能力の制限・詐欺・強迫を理由とする取り消しの場合は、「追認をすることができるときから5年、または行為の時より20年」を経過すると取消権は消滅します。(除斥期間) ●承諾期間の定めのない申込みの効力(通説) 承諾の通知を受けるのに 申込を取消できるときから 申込 相当な期間が経過 相当期間が経過 ●――――――――●――――――――――――●―――――――――――― 申込の撤回不可 申込の撤回可能 申込の効力は消滅 承諾不可 |
3.「隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。」(出題:昭和50,57)
【正解:○】 ◆契約成立での発信主義 隔地者間の契約は、申込みに対して承諾の通知を発したときに成立します。(民法526条) ▼民法では、意思表示の効力の発生時期は到達主義が原則ですが、契約の成立では、例外的に発信主義にしました。 ▼契約は、『申込の意思表示』と『承諾の意思表示』が合致することによつて成立すると考えられています。 |
承諾の期間の定めがあるときは、その期間内に承諾の通知を受けないときは、申込みの効力は失われ、契約は成立しません。(民法521条2項) ⇔この規定と526条の「隔地者間の契約は、申込みに対して承諾の通知を発したときに成立する」を合わせて考えると次のようになります。 大雑把に言えば、承諾が承諾期間内(承諾の期間の定めのない申込みの場合は相当期間内)に到着すると、承諾の意思表示が発信されたときに契約は成立します。 逆にいえば、承諾の通知が承諾期間内に発信されたものであっても、承諾の通知が承諾期間を過ぎて到達した場合は、契約は成立してないことになります。 |
4.「申込みに変更を加えた承諾は、申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたもの
とみなされる。」(出題:昭和50,57)
【正解:○】 契約交渉の上では、申込に対して修正や変更を加えることが起こります。 民法では、取引を円滑化するため、承諾者が申込に条件を付けるなど申込みに変更を加えてこれを承諾したときは、その申込を拒絶した上で新たな申込をしたものとみなされます。(民法528条) ▼承諾の内容は、申込の内容と一致していなければ効力を持たないのでこのような規定になっています。 |