Brush Up! 権利の変動篇
共有の過去問アーカイブス 平成3年・問5
A・B・C3人の建物の共有(持分均一)に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。(平成3年・問5) |
1.「その建物の増築は,A・B・C3人の持分価格の過半数の同意があれば,することができる。」 |
2.「その建物をDに賃貸している場合において,Dに賃貸借契約解除の事由があるときは,Aは,B及びCの同意を得ることなく,Dとの契約を解除することができる。」 |
3.「A・B・Cは,その合意により建物の分割をしない契約をすることができるが,その期間は5年を超えることができず,また,更新することができない。」 |
4.「その建物の管理に関してAがB及びCに債務を負っている場合,B及びCは,Aがその債務を支払わずに持分をEに譲渡しても,Eに対して,その債務の支払いを請求することができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「その建物の増築は,A・B・C3人の持分価格の過半数の同意があれば,すること
ができる。」
【正解:×】 ◆変更行為 共有物の物理的な変更(土地の形状変更・増築・改築・建替えなど)、法律的な処分(売買契約の締結・取消・解除)をするなど、共有物の性質や形状を変更することには、共有者全員の同意が必要です。 |
2.「その建物をDに賃貸している場合において,Dに賃貸借契約解除の事由がある
ときは,Aは,B及びCの同意を得ることなく,Dとの契約を解除することができる。」
【正解:×】 ◆利用・改良行為−持分価格の過半数で決する (任意規定) 共有物の目的物の管理に関する事項は、以下のものがあり、持分価格の過半数で決します。(252条本文) 使用方法の協議 → 共有物をどのように使用・収益するか、方法を協議すること。 利用行為 → 共有物全体から収益を図る行為。例・賃貸借契約の締結・取消・解除 改良行為 → 共有物の経済的な価値(使用価値や交換価値)を増加させる行為。 管理行為の出題 → 平成4年肢1(管理費用) |
●共有物の保存・管理・変更 | ||
保存行為 | 共有物の現状を維持する行為 | 単独でできる |
管理行為 | 使用方法の協議
利用行為 (収益を図る) 改良行為 (経済的価値を増加) |
共有者の持分の価格に従い,
その過半数で決定する |
変更行為 | 物理的な変更
法律的な処分 |
全員の同意が必要 |
3.「A・B・Cは,その合意により建物の分割をしない契約をすることができるが,
その期間は5年を超えることができず,また,更新することができない。」
【正解:×】 ◆共有物の不分割契約は更新可能 各共有者は,いつでも分割請求することができ(256条1項)また5年を超えない期間で分割しないとする特約をすることもできます。(256条1項但書) この不分割契約を更新することもできますが、更新のときより5年を超えない期間となっています。(256条2項) |
4.「その建物の管理に関してAがB及びCに債務を負っている場合,B及びCは,
Aがその債務を支払わずに持分をEに譲渡しても,Eに対して,その債務の支払い
を請求することができる。」
【正解:○】 ◆管理費用の負担−共有者間での債権債務関係 各共有者は、その持分に応じて管理の費用を払うほか、その他の共有物の負担もしなければいけません。(253条1項) 管理の費用とは、具体的には、税金などの租税公課、共有物の保存・利用及び改良・変更行為に伴うものを意味します。 共有者がその費用を支払ったときはほかの共有者に対して当然、償還請求をすることができます。 共有者間で、管理の費用についてこの債権関係がある場合は、例えば本肢のように、管理に関してAがB及びCに債務を負っている場合、B及びCは、Aがその債務を支払わずに持分を第三者Eに譲渡しても、Aの特定承継人Eに対して、その債務の支払いを請求することができます。(254条) |