Brush Up! 権利の変動篇

共有の過去問アーカイブス 昭和63年・問7


共有に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。(昭和63年・問7)

1.「各共有者は,他の共有者の同意を得なければ,自己の持分を処分することはできない。」

2.「各共有者は,他の共有者の同意を得ないで,共有物に関する保存行為をすることができる。」

3.「共有物の分割の請求は,原則としていつでもすることができるが,3年を超えない範囲内に限り,その分割をしない契約をすることができる。」

4.「共有者の一人が持分を放棄したときは,その持分は,放棄した人の相続人のものとなる。」

【正解】

× × ×

1.「各共有者は,他の共有者の同意を得なければ,自己の持分を処分することは

できない。」

【正解:×

◆持分の処分,放棄では他の共有者の同意は要らない

 各共有者は,他の共有者の同意を得なくても,自分の持分権を自由に処分する(譲渡・抵当権などの担保設定・放棄)とができます。したがって、×になります。

 →関連・昭和57年・設問4

●関連問題
1.「3分の23分の1の持分で不動産を所有している。Aが自己の持分に抵当権を設定する場合には,Bの承諾を必要とする。」(司法試験・択一・昭和53年)
【正解:×

2.「各共有者は,他の共有者の同意を得ないで,共有物に関する保存行為をする

ことができる。」

【正解:

◆保存行為

 共有物の現状を維持するための以下の行為は、他の共有者の同意を得なくても、各共有者が単独ですることができます(252条)

・共有物の補修・修繕
・共有物の侵害に対する妨害排除請求
・不法占拠者に対する返還要求
・所有権保存登記

●共有物の保存・管理・変更
 保存行為  共有物の現状を維持する行為  単独でできる
 管理行為  使用方法の協議

 利用行為 (収益を図る)

 改良行為 (経済的価値を増加)

 共有者の持分の価格に従い,

 その過半数で決定する

 変更行為  物理的な変更

 法律的な処分

 全員の同意が必要

3.「共有物の分割の請求は,原則としていつでもすることができるが,3年を超えない

範囲内に限り,その分割をしない契約をすることができる。」

【正解:×

◆共有物の不分割契約

 各共有者は,いつでも分割請求することができ(256条1項)また年を超えない期間で分割しないとする特約をすることもできます。(256条1項但書)

 この不分割契約を更新することもできますが、更新のときより5年を超えない期間となっています。(256条2項)

4.「共有者の一人が持分を放棄したときは,その持分は,放棄した人の相続人の

ものとなる。」

【正解:×

◆共有者の一人が持分を放棄→その持分は他の共有者に帰属

 共有者の1人が,その持分を放棄したとき又は相続人なくして死亡したときは,その持分は他の共有者に帰属します。(255条)

共有者の1人が,その持分を放棄
共有者の1人が,相続人なくして死亡したとき
(ただし,特別縁故者がいない場合)
   その持分は他の共有者に帰属

 × 放棄した人の相続人のものになる →  他の共有者に帰属

 したがって、本肢は×になります。 

●関連問題
1.「不動産の共有者の一人が持分を放棄したときは,その持分は国庫に帰属する。」(司法試験・択一・昭和55年)
【正解:×

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