Brush Up! 権利の変動篇

共有の過去問アーカイブス 昭和57年・問8


不動産の共有に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。(昭和57年・問8)

1.「各共有者は,共有物の全部につき,その持分に応じた使用をすることができる。」

2.「共有者の1人が,相続人なくして死亡すれば,その持分は無主の財産となり,国庫に帰属する。」

3.「各共有者は,共有者になったときから5年以内に限り,共有物の分割を請求することができる。」

4.「共有物は,他の共有者の同意がなければ,自己の持分を放棄することはできない。」

【正解】

× × ×

1.「各共有者は,共有物の全部につき,その持分に応じた使用をすることができる。」

【正解:

◆共有物の使用は持分に応じたもの

 各共有者は,共有物の全部につき,その持分に応じた使用をすることができます。(249条)具体的な使用方法は、共有者で協議しますが、この使用方法の協議は管理行為になり、各共有者の持分の価格に従いその過半数で決します。(252条)

●持分の割合
 各共有者の持分の割合は,当事者の合意によって定められ,法律の規定(241条但書,244条,900条など)当事者の意思で定まらないときは,各共有者の持分は相均しいものと推定されます。(250条)

 持分の割合は,共有物の使用(249条)管理費用の負担(253条)共有物分割による担保責任(261条)などの基準になります。

 共有物の管理(249条)は『持分の価格の割合』によります。

2.「共有者の1人が,相続人なくして死亡すれば,その持分は無主の財産となり,

国庫に帰属する。」

【正解:×

◆共有者の一人が死亡→その持分は他の共有者に帰属(特別縁故者がいないとき)

 共有者の1人が,その持分を放棄したとき又は相続人なくして死亡したときは,その持分は他の共有者に帰属します。(255条)

共有者の1人が,その持分を放棄

共有者の1人が,相続人なくして死亡したとき
(ただし,特別縁故者がいない場合)

   その持分は他の共有者に帰属

 したがって、本肢は×になります。

判例では,共有者の一人が相続人なくして死亡した場合、特別縁故者(958条の3)他の共有者の順に受け継がれるとしています。(最高裁・平成元.11.24)

 特別縁故者に分与 > 他の共有者に帰属

 平成4年の問題では、「特別縁故者に対する財産分与もなされない場合」となっており、この判例が出されたことによって出題の仕方が変わっていることがわかります。

●無主の財産
この設問2は,以下の条文と255条を混同している受験者を狙い撃ちにしたものです。

 無主の不動産は,国庫の所有に属す。(239条2項)

 特別縁故者に分与されなかった相続財産は国庫に帰属する。(959条)

 この二つの規定から、相続人なくして死亡した者の相続不動産は,通常は

    特別縁故者に分与 > 国庫に帰属

 ということになりますが、255条、上記の判例は、この239条2項及び959条の例外規定になっています。

3.「各共有者は,共有者になったときから5年以内に限り,共有物の分割を請求する

ことができる。」

【正解:×

◆共有物分割請求の自由

 各共有者は,いつでも分割請求することができ(256条1項)また5年を超えない期間で分割しないとする特約をすることもできます。(256条1項但書)

 共有物の分割はまず協議により行われ(258条1項)、共有者全員でしなければいけません。(大審院・明治41.9.25)共有者の協議が調わないときは裁判所に分割を請求することができます。(258条1項)

4.「共有物は,他の共有者の同意がなければ,自己の持分を放棄することはできない。」

【正解:×

◆持分の処分,放棄では他の共有者の同意は要らない

 各共有者は,他の共有者の同意を得なくても,自分の持分権を自由に処分する(譲渡・抵当権などの担保設定・放棄)とができます。したがって、×になります。

 →関連・昭和63年・設問1


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