Brush Up! 権利の変動篇 借地借家法
借地権の過去問アーカイブス 平成4年・問10 増築・再築
Aは, 木造の建物の所有を目的として,Bが所有する土地を期間30年の約定で賃借している。この場合,民法及び借地借家法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(改題)(平成4年・問10) |
1.「期間満了前にAが鉄筋コンクリート造りの建物を無断で増築した場合,Bが遅滞なく異議を述べなければ,借地権の存続期間は,増築のときから20年となる。」改題 |
2.「期間満了前に建物が滅失し,Aが再築をしない場合,期間満了の際にAが契約の請求をしても,Bが異議を述べたときは,当該契約は更新されない。」 |
3.「期間満了後Aが建物ある土地の使用を継続している場合,Bが遅滞なく異議を述べなければ,期間の定めのない借地権が設定されたものとみなされる。」改題 |
4.「期間満了前に建物が火災によって滅失し,Aが木造の建物を再築することについて通知して,Bがその通知から2ヵ月以内に異議を述べなければ,借地権の存続期間は建物滅失の日から20年となる。」改題 |
【正解】2
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
Aは, 木造の建物の所有を目的として,Bが所有する土地を期間30年の約定で賃借している。この場合,民法及び借地借家法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(改題) |
1.「期間満了前にAが鉄筋コンクリート造りの建物を無断で増築した場合、Bが遅滞なく
異議を述べなければ、借地権の存続期間は、増築のときから20年となる。」改題
【正解:×】本肢は増築なので再築の問題ではないことに注意!
◆増築(期間満了前、当初の期間中) 当初は「木造の建物の所有」を目的に借地権の設定の約定を締結しており、「鉄筋コンクリート造りの建物」では、借地条件に変更があることになります。 増改築禁止の特約に違反したり、建物の規模や構造などの借地条件に違反があり、Bの承諾もそれに変わる裁判所の許可もなく(借地借家法17条)、無断で増築した場合、地主BはAの無断増築を理由に解除権を行使できます(民法第540条)。 しかし、Bがそのとき“遅滞なく異議を述べなかった場合”でも、Aの借地権の残存期間は、当初の約定の30年の残存期間であることに変わりはなく、増築のときから自動的に20年と延長されるわけではありません。 つまり、この場合は既存建物についての“増築”なので、建物が滅失したときの“再築”(借地借家法第7条)と混同しないようにしましょう。 <コメント> 最初の借地契約の期間中に、借地上の建物が滅失し、“再築”した場合の定めについては、スペースの関係上ここでは解説できませんが、再度基本書の該当部分をザッと通し読みをして、全体像を把握しておきましょう。→関連問題〔設問4〕 |
●過去問チェック |
1.「借地契約に増改築禁止とする特約がある場合であっても、土地の通常の利用上相当とすべき増改築は、土地の所有者の承諾が得られないときはこれに代わる裁判所の許可により、行うことができる。」(昭和60) |
【正解:○】 増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。 (借地借家法17条2項) |
2.「期間満了前に建物が滅失し、Aが再築をしない場合、期間満了の際にAが契約の
請求をしても、Bが異議を述べたときは、当該契約は更新されない。」
【正解:○】
◆再築しないで〔借地上に建物がない状態で〕期間満了を迎えたとき−更新の請求 期間満了の際に借地人Aが契約の更新請求をしたとき、「建物がある場合に限り」法定更新されます(借地借家法第5条1項)。 しかし、本問の場合は期間満了のときにおいて“建物は滅失”しており、かつ、地主Bが“異議を述べている”ので、当該契約は更新されません。 |
●類題 |
1.「借地権の存続期間満了の際、借地人が契約の更新を請求したときは、建物がない場合でも、その借地人に正当な理由があれば、前契約と同一の条件をもって更に借地権を設定したものとみなされる。」(昭和59年) |
【正解:×】 借地権者の請求により、借地権が更新されるのは、建物が存在しているときに限られ、「建物がない場合でも」としているので×。 |
●期間満了による法定更新 |
建物が滅失して存在しない → 建物がないため、「法定更新」はない。
建物が存在する → 1) 借地権者が契約の更新を請求し、地主が異議を述べない。 【系】地主が遅滞なく異議を述べた場合でも、その異議に 正当事由がないときは、契約は更新したものとみなす。 2) 期間満了後、土地の使用を継続し、地主が異議を述べない。 【系】転借地権が設定されている場合は、転借地権者の土地の 使用を借地権者の土地使用の継続とみなす。(5条3項) |
3.「期間満了後Aが建物ある土地の使用を継続している場合、Bが遅滞なく異議を
述べなければ、期間の定めのない借地権が設定されたものとみなされる。」改題
【正解:×】
◆期間満了後に使用を継続→法定更新 期間満了後に借地人が土地使用を継続しているとき、地主が遅滞なく異議を述べなければ、「地代の支払い時期など」従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法第5条2項)。 また借地権の「存続期間」については、20年(2回目以降は10年)となり(第4条)、期間の定めのない借地権が設定されたとみなされるわけではありません。 |
4.「期間満了前に建物が火災によって滅失し、Aが木造の建物を再築することについて
通知して、Bがその通知から2ヵ月以内に異議を述べなければ、借地権の存続期間は
建物滅失の日から20年となる。」改題
【正解:×】
◆期間満了前の再築 存続期間満了前に建物が“滅失” し、借地権の残存期間を超えて存続すべき建物を借地人が“再築”(増築はダメ)したとき、そのことにつき地主の承諾があったとき、「承諾の日」または「再築の日」か“いずれか早い日” から「20年間」存続するのが原則です(借地借家法第7条1項)。 また、借地人が「再築しますよ」と地主に一方的に“通知”しても、地主が2カ月以内に異議を述べなければ、その異議を述べなかった時点(=“通知”より2ヵ月後)または再築の日〔再築後に通知したとき〕のどちらか早い日から同じく「20年間」存続します(〃2項)。 いずれにせよ、建物“滅失”の日から20年となるのではありません。 <関連> 借地権のもともとの残存期間が20年以上あるのであれば、この規定は適用されず、「残存期間」によることになります。 <参考> ◆地主の「更新拒絶」の要件=“異議”に対する正当な事由 [1]借地権設定者(地主)及び借地権者が自ら土地を使用する必要性(天秤にかける) [2]借地に関する当事者間での経過 [3]土地の利用状況 [4]土地の明渡しに際し、借地権者に対して財産上の給付(立退料)があるかどうか。 これらを考慮し、正当な事由があると認められる場合に借地権設定者(地主)は“異議”を申し立てることができます。 |
●借地権設定後の当初の期間の再築でのフローチャート |
┌ 承諾あり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・存続期間の延長があり得る | | ┌ 異議なし〔みなし承諾〕・・存続期間の延長があり得る | ┌ 通知した| └ 承諾なし | └ 異議あり・・・・・・・・・・・・・・再築してもしなくても延長はない | └ 通知しない〔無断再築〕・・・・・・・・・・・・存続期間の延長はない |