Brush Up! 権利の変動篇 借地借家法

借地権の過去問アーカイブス 平成5年・問10 借地上の建物の競落人


から土地を賃借して,建物を建て,その登記をした後,その建物にの抵当権を設定して,登記をしたが,が弁済期に履行しなかったので,が抵当権を実行して,がその建物を競落した。この場合,民法及び借地借家法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(平成5年・問10)

1.「は,抵当権を実行する際,及びに通知しなければならない。」

2.「は,競落により建物を取得したのであるから,土地の賃借権も当然に取得し,に対抗することができる。 」

3.「は,土地の賃借権の譲渡についての承諾を得なければならず,が承諾しないときは,に対抗する手段がない。」

4.「の土地の賃借権の譲渡を承知しないときは,は,に対しその建物を時価で買い取るよう請求することができる。」

【正解】4

× × ×

 AがBから土地を賃借して、建物を建て、その登記をした後、その建物にCの抵当権を設定して、登記をしたが、Aが弁済期に履行しなかったので、Cが抵当権を実行して、Dがその建物を競落した。この場合、民法及び借地借家法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。(平成5年・問10)

1.「Cは、抵当権を実行する際、A及びBに通知しなければならない。」

【正解:×

◆抵当権消滅請求を拒絶するときの通知義務

                  (抵当権者)
                 |
  (土地の賃貸人) ――  (土地の賃借人,抵当権設定者)

 抵当権者は,第三取得者〔抵当不動産の譲受人〕からの抵当権消滅請求を拒絶して抵当権を実行すること〔競売の申立〕ができます。このとき,抵当権者は,第三取得者から抵当権消滅請求の書面の送達を受けてから2ヵ月以内に,債務者及び抵当不動産の譲渡人に競売の申立をする旨を通知しなければいけません。

 しかし,本問題では,から抵当不動産を譲渡された第三取得者はいないので,この規定は適用されません。したがって本肢は×です。

注意【抵当権消滅請求を拒絶する場合の抵当権実行】

 下記のように第三取得者がいて,抵当権者がその第三者からの抵当権消滅請求を拒絶する場合には,は競売の申立をする旨をに通知しなければいけません。〔が抵当権を実行すると,第三取得者は譲り受けた抵当不動産の所有権を失うことになるので,の弁済を促すためと考えられます。もし第三取得者が競売の実行により抵当不動産の所有権を失うとは担保責任を負うことになります。〕

                  (抵当権者)
                 |
  (土地の賃貸人) ――  (土地の賃借人,抵当権設定者)
                 |譲渡
                第三取得者

2.「Dは、競落により建物を取得したのであるから、土地の賃借権も当然に取得し、

Bに対抗することができる。」

【正解:×

◆競落と借地権の取得

                  (抵当権者)
                 |
  (土地の賃貸人) ――  (土地の賃借人,抵当権設定者)
                 |競売で取得
                 

 借地上の建物を競売または公売によって第三者(本問ではD)が取得したとき、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者(地主:B)に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者が賃借権の譲渡を“承諾” しないとき、「裁判所はその第三者(D)の申立てにより、借地権設定者(B)の承諾に代わる“許可”を与えることができる」(借地借家法第20条)とされ、競落によって、“自動的に”賃借権が取得できるものではありません

3.「Dは、土地の賃借権の譲渡についてBの承諾を得なければならず、Bが承諾しない

ときは、Bに対抗する手段がない。」

【正解:×

◆借地権の譲渡への地主の承諾

                  (抵当権者)
                 |
  (土地の賃貸人) ――  (土地の賃借人,抵当権設定者)
                 |競売で取得
                 

 設問2の関連問題です。

 建物は、土地がなければ存在し得ない特殊な財産権であり、また社会的な財産という認識もされており、法律も“建物をなるべく保存する方向に規定”されていますので、建物の買受人は、土地賃借権の取得につき、賃借権設定者の“承諾”が得られなかったとき、裁判所に申立てれば、その承諾に代わる“許可”が得られます

4.「BがDの土地の賃借権の譲渡を承諾しないときは、Dは、Bに対しその建物を時価

で買い取るよう請求することができる。」

【正解:

◆建物買取請求権

                  (抵当権者)
                 |
  (土地の賃貸人) ――  (土地の賃借人,抵当権設定者)
                 |競売で取得
                 

 借地権設定者が賃借権の譲渡を承諾しないとき、その土地上の建物の譲受人は、その建物を持ってどこかへ行かなければなりませんが、設問3の解説と同じ理由により、その不経済性を回避するため、建物の譲受人は、借地権設定者に「建物その他の物を時価で買い取るよう請求」することができます(借地借家法第14条)。

●地主が借地権の譲渡を承諾しないときの対抗手段
(1) 借地上の建物が競落された場合

 ・建物の競落人が、裁判所に申立て、その承諾に代わる“許可”を得る。

 ・建物買取請求権は,建物の競落人が請求する

(2) 借地上の建物が譲渡される場合

 ・建物の譲渡人(借地権者)が、裁判所に申立て、その承諾に代わる“許可”を得る。
   (≠建物の譲受人 に注意!)

 ・建物買取請求権は,建物が譲渡されていれば,建物の譲受人が請求する


借地権のトップに戻る

Brush Up! 権利の変動のトップに戻る