Brush Up! 権利の変動篇 借地借家法
借地権の過去問アーカイブス 平成6年・問11 借地権の譲渡・転貸
AがBの土地を賃借して建てた建物の所有権が、Cに移転した。Bは、Cが使用しても何ら支障がないにかかわらず、賃借権の譲渡を承諾しない。 |
1.「Cの建物の取得が売買によるものであるときは、Cは、当該建物の所有権移転登記をすれば、裁判所に対して、Bの承諾に代わる許可の申立てをすることができる。」 |
2.「Cの建物の取得が競売によるものであるときは、Cは、競売代金支払い後2月以内に限り、裁判所に対して、Bの承諾に代わる許可の申立てをすることができる。 」 |
3.「Bが賃借権の譲渡を承諾しないときは、Cは、Bに対して、借地権の価額に建物の価額を加算した金額で、建物の買取りを請求することができる。」 |
4.「CがBに対して買取請求権を行使した場合、Cは、その建物を使用していても、Bが買取代金を支払うまで建物の引渡を拒むことができ、その間の地代相当額を不当利得として返還する必要はない。」 |
【正解】2
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
AがBの土地を賃借して建てた建物の所有権が、Cに移転した。Bは、Cが使用しても何ら支障がないにかかわらず、賃借権の譲渡を承諾しない。 この場合、次のそれぞれの記述は、借地借家法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。 |
1.「Cの建物の取得が売買によるものであるときは、Cは、当該建物の所有権移転登記
をすれば、裁判所に対して、Bの承諾に代わる許可の申立てをすることができる。」
【正解:×】
◆転借人(建物売買での譲受人)は、『地主の承諾に代わる許可』の申立てはできない 建物は、土地と別の財産権なので、借地人はその所有する建物を自由に処分することができます(民法第206条)が、建物は土地がなければ存在し得ない特殊な財産権なので、借地権設定者Bの承諾のないとき、借地権者Aの申し立てによって、裁判所はその承諾に代わる許可を与えることができます(借地借家法第19条1項)。 しかし、建物の“譲受人C”は、借地権に関しては第三者のため、建物の所有権移転登記に関係なく、借地権譲渡の許可の申し立てはできません。 借地権者で譲渡人でもあるAだけができます。(借地借家法20条1項) ▼譲渡人Aは、借地権つきの建物を譲受人Cに譲渡する以上、当然に借地権設定者であるBの承諾、または、それに代わる裁判所の許可を得て、適法に建物を使用できるようにする義務を負っているためです。 |
●借地権の譲渡・転貸 | ||||||
B(借地権設定者、土地の所有者) | A(借地権者)・・・C(借地上の建物を取得) [借地権の譲渡・・・Aの借地権が賃借権または、譲渡禁止の特約の地上権の譲渡]、 [転貸・・・Aが転貸人となり、Cに又貸し] 1) 借地権の譲渡・転貸
2) 建物買取請求権 Cの借地上の建物の取得が、売買による場合、競売による場合、どちらでも、Cは Bに対して、建物等を時価で買い取るように請求できる。 |
2.「Cの建物の取得が競売によるものであるときは、Cは、競売代金支払い後2月以内
に限り、裁判所に対して、Bの承諾に代わる許可の申立てをすることができる。」
【正解:○】
◆競売による取得の場合は、競落人が2ヶ月以内に申し立てる 競売という特殊な手続きによる場合は、競落人がまだ不明なため、設問1のケースとは異なり、あらかじめ借地権設定者の承諾を得ることは事実上不可能です。 したがって、その後、競売によって取得した者につき、借地権設定者がその賃貸借の譲渡を承諾しないとき、“取得者C”は、裁判所に対して、賃借権譲渡の承諾に代わる許可の申し立てをすることができ(借地借家法第20条1項)、その申立期間は、建物代金支払い後「2カ月以内」です(〃条第3項)。 |
3.「Bが賃借権の譲渡を承諾しないときは、Cは、Bに対して、借地権の価額に建物の
価額を加算した金額で、建物の買取りを請求することができる。」
【正解:×】
◆建物買取請求権―借地権の価格は加算されない CがBに時価で買取請求できる物は、建物その他借地権者がその権限によって土地に付属させた物であり(第13条1項)、また判例によれば、「建物の時価には、借地権の価格は加算されないが、場所的環境は参酌(参考事項)される」とされ、借地権の価格は加算されません。(最高裁・昭和35.12.20) |
●建物買取請求権 | ||
1) 借地権者・転借地権者の建物買取請求権
借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないとき 借地権者(一般定期借地権、事業用定期借地権を除く) B(借地権設定者、土地の所有者)
転借地権者(一般定期借地権、事業用定期借地権を除く) B(借地権設定者、土地の所有者) 借地権の存続期間が満了した場合における転借地権者も、借地権設定者に『建物買取請求権』を行使できます。
2) 第三者の建物買取請求権 第三者が、賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないとき [借地権の譲渡・・・Aの借地権が賃借権または、譲渡禁止の特約の地上権の譲渡]、 [転貸・・・Aが転貸人となり、Cに又貸し] B(借地権設定者、土地の所有者) Cの借地上の建物の取得が、売買による場合、競売による場合、どちらでも、Cは Bに対して、建物等を時価で買い取るように請求できる。 |
4.「CがBに対して買取請求権を行使した場合、Cは、その建物を使用していても、Bが
買取代金を支払うまで建物の引渡を拒むことができ、その間の地代相当額を不当利得
として返還する必要はない。」
【正解:×】
◆建物買取請求権― 判例によれば、 「買取請求権行使の後、建物の取得者は買取代金の支払までは建物の引渡を拒むことはできるが、そのために敷地の占有を継続している間の地代相当額は、【法律上の原因なくして】Cが利益を得、Bが損失を被っていることから、不当利得(民法第703条)として返還を要する」 とされています。(最高裁・昭和35.9.20) ●関連知識:借地権の消滅が債務不履行解除による場合には、買取請求権はありません。 |