Brush Up! 権利の変動篇 借地借家法
借地権の過去問アーカイブス 平成8年・問13 借地権の対抗問題
Aは,建物の所有を目的としてBから土地を貸借し,建物を建築して所有しているが,その土地の借地権については登記をしていない。 |
1.「Aが,Aの名義ではなく,Aと氏を同じくするAの長男名義で,本件建物につき保存登記をしている場合,Aは,借地権をCに対抗することができる。」 |
2.「Aが自己の名義で本件建物につき保存登記をしている場合で,BからCへの土地の所有権の移転が,当該保存登記後の差押えに基づく強制競売によるものであるとき,Aは,借地権をCに対抗することができる。 」 |
3.「本件建物が火事により滅失した場合,建物を新たに築造する旨を本件土地の上の見やすい場所に掲示していれば,Aは,本件建物について登記していなかったときでも,借地権をCに対抗することができる。」 |
4.「借地権が借地借家法第22条に規定する定期借地権である場合,公正証書によって借地契約を締結していれば,Aは,本件建物について登記していなかったときでも,借地権をCに対抗することができる。」 |
【正解】2
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
Aは、建物の所有を目的としてBから土地を貸借し、建物を建築して所有しているが、その土地の借地権については登記をしていない。 |
1.「Aが、Aの名義ではなく、Aと氏を同じくするAの長男名義で、本件建物につき
保存登記をしている場合、Aは、借地権をCに対抗することができる。」
【正解:×】
◆登記は本人名義でなければ、対抗できない 借地権(土地の賃借権または地上権)はその登記がなくても、土地の上に“借地権者が、登記されている建物を有する”ときは、これをもって第三者に対抗することができます(借地借家法第10条1項)。 しかし、判例によれば、「登記名義人は“借地人”であることを要し」、借地人の長男名義の登記では対抗できません。(最高裁・昭和41.4.27) ▼この登記は、建物の表示の登記でもよいとされています。 |
2.「Aが自己の名義で本件建物につき保存登記をしている場合で、BからCへの土地
の所有権の移転が、当該保存登記後の差押えに基づく強制競売によるものであるとき、
Aは、借地権をCに対抗することができる。」
【正解:○】
◆登記のある建物で対抗できる 設問1でも解説しましたが、借地権はその登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗できますが、競落人Cは、この場合(借地権の関係においては)の第三者です。 |
3.「本件建物が火事により滅失した場合、建物を新たに築造する旨を本件土地の上
の見やすい場所に掲示していれば、Aは、本件建物について登記していなかったとき
でも、借地権をCに対抗することができる。」
【正解:×】
◆建物を新たに築造する旨の掲示 → 滅失した建物にもともと登記してないとダメ 建物が滅失すれば登記があったとしても建物の登記は無効となり、このままにしておくと肢1・2の第三者への借地権の対抗力は失われます。この建物滅失による対抗力の喪失を避けるため、借地借家法では、滅失しても建物を特定するのに必要な事項〔その登記(表示の登記でもよい)の表示事項。〕、その滅失のあった日、及び建物を新たに築造する旨を土地の見やすい場所に掲示すれば、暫定的に対抗力を付与することにしました。(10条2項) この掲示をすることによって、建物が滅失してから2年が経過するまでの間は、その間に土地の譲渡があったとしても土地の譲受人に対して、借地権の登記がなくても借地権を対抗することができます。 本設問では、もともと建物に登記をしていなかったために、建物を新たに築造する旨のみの掲示をしていますが、建物の保存登記(表示の登記でもよい)がしてなかった場合は、基本となる証拠がないために保護されず、新たに建物を築造する旨を掲示しても、対抗することができません。
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4.「借地権が借地借家法第22条に規定する定期借地権である場合、公正証書によって
借地契約を締結していれば、Aは、本件建物について登記していなかったときでも、
借地権をCに対抗することができる。」
【正解:×】22条 → 一般定期借地権
◆借地権の対抗問題と定期借地権 不動産の賃貸借は、その“登記”があれば第三者に対抗でき(民法第605条)、また設問1の解説のように、「借地権」はその登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を有するときは、これをもって第三者に対抗できます。しかし、公正証書による定期借地権契約にかかわらず、そもそも“建物の保存登記”(または建物の表示の登記)がなければ、借地権をCに対抗することはできません。 つまり、公正証書による定期借地権契約とは、単なるカザリ文句であって、借地契約の形態を当事者間において確定するだけのことであり、第三者に対して借地権があるかどうかの対抗力を確定するものではありません。また、第三者は、登記簿の謄抄本(または登記事項証明書)の交付の申請や閲覧をすることができますが、公正証書は法律上の利害関係を有することを証明できる者でなければ第三者は閲覧等できないので確認のしようもありません(公証人法44条)。
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