Brush Up! 権利の変動篇 借地借家法
借地権の過去問アーカイブス 平成9年・問11 借地条件・借地権の譲渡
Aが、Bの所有地を貸借して木造の家屋を所有し、これに居住している場合に関する次のそれぞれの記述は、借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。(平成9年・問11) |
1.「『土地の使用は木造3階建の家屋に限る』旨の借地条件があるとき、借地借家法に定める要件に該当すれば、Aは裁判所に対して借地条件の変更の申立てができるが、Bは申立てができない。」 |
2.「 増改築禁止の借地条件がある場合に、土地の通常の利用上相当とすべき改築についてBの承諾に代わる許可の裁判をするときでも、裁判所は、借地権の存続期間の延長まですることはできない。」 |
3.「Aに対する競売事件でAの家屋を競落したCは、Bが土地の賃貸借の譲渡により不利となるおそれがないにもかかわらず譲渡を承諾しないとき、家屋代金支払後借地借家法に定める期間内に限り、裁判所に対して、Bの承諾に代わる許可の申立てをすることができる。」 |
4.「Aが家屋をDに譲渡してもBに不利となるおそれがないときには、Dは、Aから家屋を譲り受ける契約をした後、裁判所に対して、土地の賃借権の譲渡についてのBの承諾に代わる許可を申し立てることができる。」 |
【正解】3
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
Aが、Bの所有地を貸借して木造の家屋を所有し、これに居住している場合に関する次のそれぞれの記述は、借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。 |
1.「『土地の使用は木造3階建の家屋に限る』旨の借地条件があるとき、借地借家法に
定める要件に該当すれば、Aは裁判所に対して借地条件の変更の申立てができるが、
Bは申立てができない。」
【正解:×】
◆借地条件の変更=借地権者、貸主とも申し立てることができる 建物の種類、構造、規模または用途を制限する旨の借地条件がある場合において、土地利用規制の変更(たとえば容積率の変更)などがあるために、借地条件と異なる建物が相当であるとき、当事者間に協議が調わない場合、裁判所は「当事者(この場合のAとB)」の申立てにより、その借地条件を変更することができます(借地借家法第17条1項)。 |
2.「増改築禁止の借地条件がある場合に、土地の通常の利用上相当とすべき改築に
ついてBの承諾に代わる許可の裁判をするときでも、裁判所は、借地権の存続期間の
延長まですることはできない。」
【正解:×】
◆増改築の裁判所の許可 増改築を制限する旨の借地条件がある場合、土地の利用上相当とすべき増改築につき裁判所が許可を与えるとき、当事者間の利益の衡平(バランス)を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じる(増改築により期間の延長を認めるが、その代わり認め料を支払え、など)ことができます。(第17条3項)。 |
●類題 |
1.「Aが建物の増改築を行うことについてAB間に協議が調わない場合には、裁判所はAの申立てによりBの承諾に代わる許可を与えることはできない。」(昭和59年) |
【正解:×】 借地人が増改築を行うことについて、協議が調わないときには、借地人は裁判所に対して土地所有者の承諾に代わる許可を求めることができます。(借地借家法・17条2項) |
●借地条件と増改築 | |||||||||
B(借地権設定者、土地の所有者) | A(借地権者)
転借地権が設定されている場合は、2つとも転借地権者の申立てであることに注意. 1) 建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合 法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立てにより、その借地条件を変更することができる。 2) 増改築を制限する旨の借地条件がある場合、増改築の許可 土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。 3) 裁判所 ・裁判をする場合において、当事者間の利益の衝平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。 ・裁判所は、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮しなければならない。 ・裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。 |
3.「Aに対する競売事件でAの家屋を競落したCは、Bが土地の賃貸借の譲渡により
不利となるおそれがないにもかかわらず譲渡を承諾しないとき、家屋代金支払後、
借地借家法に定める期間内に限り、裁判所に対して、Bの承諾に代わる許可の申立て
をすることができる。」
【正解:○】
◆借地権の譲渡=競売では、競落人が裁判所に申し立てる 競売の場合は誰が取得するか分からず、あらかじめ借地権設定者に、借地権の譲渡を承諾させることが事実上不可能であり、そのため、借地上の建物を競落した第三者は、たとえ借地権設定者に借地権の譲渡を拒否されても、“建物の代金を支払った後「2月以内」”であれば、裁判所に申し立てることにより、借地権設定者の承諾に代わる許可がもらえます(第20条1項、3項)。 |
4.「Aが家屋をDに譲渡してもBに不利となるおそれがないときには、Dは、Aから家屋を
譲り受ける契約をした後、裁判所に対して、土地の賃借権の譲渡についてのBの承諾に
代わる許可を申し立てることができる。」
【正解:×】
◆借地権の譲渡=借地人が裁判所に申し立てる 借地上の建物を第三者に“譲渡しようとするとき”、借地権者(A)は裁判所に申し立てることにより、借地権設定者(B)の承諾に代わる許可がもらえます(第19条1項)。 しかし、建物を取得した第三者(この場合のD=まだ土地に関しては無権利者)は申し立てできません。 |
●借地権の譲渡・転貸 | ||||||
B(借地権設定者、土地の所有者) | A(借地権者)・・・C(借地上の建物を取得) [借地権の譲渡・・・Aの借地権が賃借権または、譲渡禁止の特約の地上権の譲渡]、 [転貸・・・Aが転貸人となり、Cに又貸し] 1) 借地権の譲渡・転貸
2) 建物買取請求権 Cの借地上の建物の取得が、売買による場合、競売による場合、どちらでも、Cは Bに対して、建物等を時価で買い取るように請求できる。 |
●第17条(借地条件の変更及び増改築の許可) |
1 建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合において、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立てにより、その借地条件を変更することができる。
2 増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。 3 裁判所は、前2項の裁判をする場合において、当事者間の利益の衝平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。 4 裁判所は、前3項の裁判をするには、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮しなければならない。 5 転借地権が設定されている場合において、必要があるときは、裁判所は、転借地権者の申立てにより、転借地権とともに借地権につき第1項から第3項までの裁判をすることができる。 6 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第1項から第3項まで又は前項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。 |