Brush Up! 権利の変動編

借地権の基本問題 建物の再築

正解・解説


【正解】

×

 借地権者を,借地権設定者をとする,借地権の存続期間が満了する前に建物が滅失した場合に関する次のそれぞれの記述は,借地借家法の規定によれば○か,×か。

1.「が,の承諾を得ないで,残存期間を超えて存続すべき建物を築造したとき,当該滅失が当初の期間又は更新後の滅失であった場合であっても,は,当該契約の解約の申入れをすることができ,借地権は,その申入れの日から3月を経過することによって消滅する。」

【正解:×

◆承諾を得ないで再築―当初の期間での滅失と更新後の滅失との違い

 当初の期間に滅失し,
 承諾を得ないで再築
 存続期間に延長はなく,期間満了後に
 借地権設定者から更新拒絶されることがあり得る

 更新拒絶されても建物買取請求権はある。

 更新後の期間に滅失し,
 承諾を得ないで再築
 借地権設定者は解約の申入れをすることができる

 解約になったときは,建物買取請求権は認められない

 借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したとき、当該滅失が更新“後”の滅失の場合であれば、は、当該契約の解約の申入れができ(第8条2項)、その申入れ後3月経過することにより借地権は消滅します(〃3項)。しかし、「当初の期間内の滅失」における築造については、この規定は適用されません(第7条各項)

 つまり、「たとえ承諾のない建物の築造であっても、少なくとも、当初の期間くらいは保護してあげよう」という趣旨であり、再築後も本来の存続期間には変わりはありません。この場合において当初の期間満了“後”に契約の更新がないとき(つまり、信頼関係破壊の定理により借地権設定者による更新の拒絶)、時価での買取請求に代えています(第13条各項)

●当初の期間の滅失と再築

 借地権設定者が再築について承諾  20年の期間延長がありえる。

 〔当事者の間でこれより長い期間を
 定めたときはその期間延長される。〕

 ※残存期間が20年より長いときは
 期間延長はない。

 みなし承諾

 借地権設定者が再築の通知から
 2ヵ月以内に異議を述べない

 再築を強行

 承諾なし
 異議あり
 交渉なし
 交渉まとまらず

 期間延長はなく,更新拒絶される可能性がある。

 更新拒絶されても建物買取請求権はある。

※再築せずに土地の使用を継続することもできるが,期間満了時点で建物がないので,法定更新はない。

2.「に対し,残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造すべき旨を通知した場合において,が2月以内に異議を述べなかったとき,その建物を築造するにつきの承諾があったものとみなされるが,契約の更新後の場合においては,この限りではない。」

【正解:

◆滅失による再築の『みなし承諾』―当初の期間での滅失と更新後の滅失との違い

 → 更新後の期間に『みなし承諾』はないが,承諾に代わる裁判所の許可の申立ては
   できる。

 当初の期間に滅失  ・再築の承諾を得れば,20年の期間延長があり得る。
 (または当事者がこれより長い期間を定めたときはその期間)

 ・借地権設定者が再築の通知から2ヵ月以内に
  異議を述べないと承諾があったものとみなされ,
  20年の期間延長があり得る。

 ・残存期間が20年より長いときは期間延長はないことに注意

 更新後の期間に滅失  ・再築の承諾を得れば,20年の期間延長があり得る。
(または当事者がこれより長い期間を定めたときはその期間)

(残存期間が20年より長いときは期間延長はないことに注意)

 ・再築することについてやむを得ない事情があるにも
  かかわらず借地権設定者が承諾しないときは,裁判所は,
  借地権設定者の申立てにより,承諾に代わる許可を与え,
  20年とは異なる期間を定め,借地条件を変更して,
  財産上の給付を命じるなどの相当の処分をすることが
  できる。

 当初の期間内の滅失については、建物を築造する旨の通知より、借地権設定者が「2月以内」に異議を述べなったとき、建物を築造するにつき借地権設定者の承諾があったものとみなされます(第7条2項本文)が、この規定は、更新“後”については適用されません(〃〃但書)

 つまり、更新“後”ということは、当初から通算すれば、借地権者は既に少なくとも30年以上は借地していることになり、の借地権の目的は当初の期間内で一応は達成されたものとみなされ、更新の後までもが、築造の通知をしたのに、借地権設定者が、2月以内に異議を述べなかっただけで“黙認”とみなすのは借地権者の保護のし過ぎであり、黙認とみなされるのは「当初の期間内」に限定されます。

 もちろん、更新後であっても、築造するにつき借地権設定者の承諾があれば、次の設問3のようになります。

3.「が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したとき,その建物を築造するにつき,の承諾がある場合に限り,借地権は,承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続するが,残存期間がこれより長いとき,又はABがこれより長い期間を定めたときはその期間による。」

【正解:

◆滅失による再築−承諾があれば期間延長がありえる〔当初の期間&更新後の期間〕

 借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したとき、築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、「承諾があった日」又は「建物が築造された日」の「いずれか早い日から20年間」存続し、残存期間がこれより長いとき、又はこれより長い期間を定めたとき、その期間となります(第7条1項)

4.「契約の更新後に建物の滅失があった場合において,は,当該契約の解約の申入れをすることができ,借地権は,その申入れの日から3月を経過することによって消滅する。」

【正解:

◆契約更新後の滅失−再築しないで解約することもできる

 契約の更新“後”に建物の滅失があったということは、当初の契約から通算すれば、借地権者の借地期間は既に少なくとも30年以上経過しています。

 その間にの家族構成や経済環境も変わって来る事もあり、「もっと狭い土地でもよい」とか、逆に「広い土地が欲しい」ということもあります。そのようなときは、あえてこの意に沿わない30年以上も昔の契約を継続することもないと思われ、そこで更新“後”においては、建物が滅失したのを機会に、借地権者に解約権が与えられており(第8条1項)の解約の申入れにより「3月経過後」に借地権は消滅します(〃3項)

再築しなくても,契約期間満了まで土地の使用を継続することはできます。建物は建てられなくても,例えば,駐車場などとして使用することはできるからです。ただし,期間満了時点では建物がないので,法定の更新はありません。

念のため ― 当初の期間に建物が滅失して再築を諦めたとしても,借地権は消滅せず,借地権者から解約の申入れはできないものと考えられます。〔合意があれば別〕

●更新後の滅失と再築
再築しないとき

 承諾なし
 交渉なし
 交渉まとまらず

 借地権者から解約申入れ。3ヵ月後に借地権消滅
  or
 借地権者は再築しないでそのまま使う。
 〔法定更新はない〕

 借地権設定者が再築について承諾  20年の期間延長がありえる。

 〔当事者の間でこれより長い期間を
 定めたときはその期間延長される。〕

 ※残存期間が20年より長いときは
 期間延長はない。

 承諾に代わる裁判所の許可  裁判所は,20年と異なる期間を
 定めることができる。

 再築を強行

 承諾なし
 交渉なし
 交渉まとまらず

 借地権設定者からの解約あり→  解約より3ヵ月経過後に
 借地権は消滅

 建物買取請求権はない。

 借地権設定者からの解約なし→  期間延長はなく,
 更新拒絶される可能性が
 ある。

 更新拒絶されても
 建物買取請求権はある。

●基本チェック―平成2年・問12・肢1、3
1.「建物の賃貸借において,期間満了前に当該建物が第三者の放火により全部滅失したときは,当該賃貸借は終了する。」

【正解:

 建物の賃貸借の場合は、建物が契約期間満了前に、契約の目的物が滅失したときは、滅失した時点で当該賃貸借契約は終了します。

 賃貸借契約の目的物である建物が滅失したということは、賃貸人が借主に使用収益させる義務を果たせなくなり、履行不能になるため、当該賃貸借契約は終了します。 

2.「建物の所有を目的とする土地の賃貸借において,当該建物が借地人の失火により滅失したときは,賃貸人は,解約の申入れをすることができる。」

【正解:×

 借地上の建物が、借地人の失火により滅失しても,借地権は消滅せず、賃貸人は,解約の申入れをすることができません。(借地借家法3条)

 建物が滅失し、再築する場合のことについては、上の解説参照。

 上の1と区別してください。

●借地契約の更新後の建物の再築の許可 第18条
1 契約の更新の後において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造することにつきやむを得ない事情があるにもかかわらず借地権設定者がその建物の築造を承諾しないときは、借地権設定者が地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができない旨を定めた場合を除き、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、延長すべき借地権の期間として第7条第1項の規定による期間と異なる期間を定め他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。

2 裁判所は、前項の裁判をするには、建物の状況、建物の滅失があった場合には滅失に至った事情、借地に関する従前の経過借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。)が土地の使用を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。


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