Brush Up! 権利の変動篇
借地借家法の過去問アーカイブス 昭和61年・問14
借家権 借地借家法の適用
建物の貸借に関する次のそれぞれの記述は、民法及び借地借家法の規定によれば |
1.「一時使用のために建物を賃借したことが明らかな場合には、借地借家法は適用されない。」 |
2.「無償で建物を借りている場合には、借地借家法は適用されない。」 |
3.「営業の用に供する目的で建物を賃借した場合でも、借地借家法は適用される。」 |
4.「賃借権が登記されず、かつ、建物の引渡しがない場合には、借地借家法は適用されない。」 |
5.「建物の賃貸借について、建物が火災で滅失した場合、その賃貸借は終了する。」 |
6.「期間の満了の1年前から6月前までの間に、建物の賃貸人が更新をしない旨の通知をしようとする場合、賃貸人および賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、建物の賃貸人が建物の明渡しの条件または建物の明渡しと引き換えに賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合のその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。」 |
7.「期間の定めのある建物の賃貸借においては、当事者が期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に、相手方に対し更新拒絶の通知または条件を変更しなければ更新しない旨の通知を行わなければ、賃貸借は、期間満了の際、同一の条件で更新されたものとみなす。ただし、更新後の契約期間は定めのないものとする。」改 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
1.「一時使用のために建物を賃借したことが明らかな場合には、借地借家法は適用され
ない。」
【正解:○】一時使用のための建物の賃貸借には適用しない 借地借家法の規定では、 『この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない』(40条) となっています。 ▼定期建物賃貸借契約に関する規定は、一時使用の建物の賃貸借契約には適用されません。 ▼一時使用のための土地の賃貸借では、一部に借地借家法の適用があります。
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2.「無償で建物を借りている場合には、借地借家法は適用されない。」
【正解:○】使用貸借には適用しない 借地借家法は、賃料を賃借人が支払う、建物の賃貸借について適用されるのであって、無償で建物を借りる使用貸借の場合には適用されません。 使用貸借の場合は、民法593条〜600条の規定に従います。(使用貸借権は、借主の死亡によって効力を失い、消滅します。)
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3.「営業の用に供する目的で建物を賃借した場合でも、借地借家法は適用される。」
【正解:○】使用の目的 建物の賃貸借での使用の目的には関係なく、借地借家法は適用されます。使用の目的は、当事者間で自由に定めることができます。 |
●類題 |
1.「建物の一部で独立性のない部分の賃貸借である間借りについては、借地借家法の規定は適用されない。」(昭和49年) |
【正解:○】
借地借家法の規定は、『建物及び建物の一部で構造上独立性の認められる区画の賃貸借』についてのみ認められます。 一室の間借りや下宿については、建物にあたるかどうか、議論がありますが、少なくとも独立性のない部分の賃貸借には、借地借家法の規定は適用されないとされています。 ▼判例 建物の一部であっても、障壁その他によって他の部分と区分され、独占的・排他的支配が可能な構造・規模を有するものは、借家法1条1項の「建物」にあたる。 |
4.「賃借権が登記されず、かつ、建物の引渡しがない場合には、借地借家法は適用され
ない。」
【正解:×】対抗要件と混同しないこと 確かに、賃借権の登記や建物の引渡しは、借家権を第三者に対抗するための要件ですが、建物の賃貸借があれば借地借家法が適用されます。『賃借権が登記されず、かつ、建物の引渡しがない場合に、借地借家法は適用されない』ということではありません。 |
●類題 |
1.「建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対して、その効力を生ずる。」(類・昭和49年) |
【正解:○】
本設問は、借地借家法・31条の1項ソノママです。その建物を譲り受けた者ではなく、 例えば,所有権者だけではなく,抵当権者も該当します。抵当権に後れた賃貸借は,抵当権者の同意の登記がないと賃借人は対抗できませんが,抵当権が設定される前に引渡しがあった賃借人は抵当権者に対抗できることになります。 |
◆借地借家法が適用されないもの ・一時使用のための賃貸借 (借家は適用されない。借地は一部適用される。) ・使用貸借 (借家、借地とも適用されない) |
5.「建物の賃貸借について、建物が火災で滅失した場合、その賃貸借は終了する。」
【正解:○】滅失による賃貸借の終了 建物が火災により滅失 → 賃貸借の終了 賃貸借の目的物が滅失し、使用収益させるべき賃貸人の債務が履行不能になった場合は、契約の期間満了前であっても、賃貸借契約は終了するものと解されています。 【類題】H2-12-1 |
6.「期間の満了の1年前から6月前までの間に、建物の賃貸人が更新をしない旨の
通知をしようとする場合、賃貸人および賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要と
する事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、
建物の賃貸人が建物の明渡しの条件または建物の明渡しと引き換えに賃借人に対して
財産上の給付をする旨の申出をした場合のその申出を考慮して、正当の事由があると
認められる場合でなければ、することができない。」
【正解:○】賃貸借の更新拒絶での正当事由 建物の賃貸人が更新拒絶または解約の申入れをするのは、 ・賃貸人および賃借人(転借人を含む)が建物の使用を必要とする事情 ・建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況 ・建物の明渡しの条件または建物の明渡しと引き換えに賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出を賃貸人がした場合のその申出 などを考慮して正当の事由があると認められる場合でなければすることができないとしています。(借地借家法・28条) |
7.「期間の定めのある建物の賃貸借においては、当事者が期間満了前の1年前から
6ヵ月前までの間に、相手方に対し更新拒絶の通知または条件を変更しなければ更新
しない旨の通知を行わなければ、賃貸借は、期間満了の際、同一の条件で更新された
ものとみなす。ただし、更新後の契約期間は定めのないものとする。」(昭和62-13-3)
【正解:○】賃貸借の更新拒絶などの通知 借地借家法26条1項ほぼソノママの問題文です。当事者となっているので、少し驚いたかもしれませんが、借地借家法ではこのようになっています。条文を見ておく必要を確認させる問題です。 賃貸人はこの規定を守らなければいけませんが、賃借人(借主)からの更新拒絶の通知または条件を変更しなければ更新しない旨の通知は、特約により「期間満了前の1年前から6ヵ月前までの間」を短縮することができます。賃借人にとって不利な特約とはいえないからです。(借地借家法30条) |
●類題 |
1.「建物の賃貸借においては、その存続期間は、20年を超えることはできない。」(平成2年問12肢2) |
【正解:×】
建物の賃貸借の存続期間は、民法と借地借家法では異なっています。 民法604条1項では、賃貸借の存続期間は20年を超えることはできません。もし、これより長い期間を定めたときは20年に短縮されます。 しかし、借地借家法・29条2項により、民法では認められていない存続期間が20年を超える建物の賃貸借も有効になります。 【借地借家法・29条2項】民法604条1項の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。 |