Brush Up! 権利の変動篇 

借地借家法の過去問アーカイブス 平成5年・問12改題

借家権 貸主の賃料増額請求・1年未満の契約・造作買取請求権


がその所有する住宅をに新たに賃貸した場合に関する次のそれぞれの記述は,借地借家法の規定によれば○か,×か。(平成5年・問12改題)

1.「賃貸借の期間を10月と定めた場合において,その賃貸借が一時使用によるものでないときは,が解約の申入れをしても,その申入れの日から6月を経過しないと,契約は終了しない。」

2.「『賃料は2年の契約期間中増額しない』と特約した場合,は,当該期間中増額請求をすることができない。」

3.「その住宅が,法令または契約により一定の期間を経過した後に取り壊すことが明らかな場合は,ABの間で『建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する』旨の特約を定めることができるが,この特約は建物を取り壊すべき理由を記載した書面によってしなければならない。」法改正のため新作問題

4.「『が大型エアコンを設置することは認めるが,は契約終了のときその買取りをしない』と特約しても,その特約は、無効である。」

【正解】

×
1.「賃貸借の期間を10月と定めた場合において,その賃貸借が一時使用によるものでないときは,が解約の申入れをしても,その申入れの日から6月を経過しないと,契約は終了しない。」

【正解:

 借地借家法の規定によれば、1年未満の建物の賃貸借契約は、借家人の保護の観点から、期間の定めのない建物の賃貸借とみなされます。(借地借家法第29条)

 またその場合、賃貸人Aの解約の申入れの日から「6ヵ月(=6月)」賃借人からの申出であれば「3ヵ月」経過することによって契約は終了します(第27条1項)。

<参考>

民法第617条1項2号の規定によれば、「“当事者”の申入れより3ヵ月」であることに注意しましょう。

2.「『賃料は2年の契約期間中増額しない』と特約した場合,は,当該期間中増額請求をすることができない。」

【正解:

 一定期間、建物の借賃を増額しない特約があるとき、その増額しない旨の特約は優先します(第31条1項、但書)

●類題
1.「一定の期間賃貸人が家賃の増額を行わない旨の特約がある場合、地価の上昇などにより家賃が不相当となったときには、賃貸人は当該期間中であっても家賃の増額請求ができる。」(昭和62-13-2)
【正解:×

 当事者が賃料の増減請求ができる場合として借地借家法32条1項は、「土地もしくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地もしくは建物の価格の上昇もしくは低下その他経済事情の変動により、また近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」としています。

 しかし、これには但し書きがあり、「ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合は、その定めに従う」となっていて、本設問はこのケースにあたります。したがって、×になります。

3.「その住宅が,法令または契約により一定の期間を経過した後に取り壊すことが明らかな場合は,ABの間で『建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する』旨の特約を定めることができるが,この特約は建物を取り壊すべき理由を記載した書面によってしなければならない。」法改正のため新作問題

【正解:

◆取り壊し予定の建物の賃貸借

 法令または契約により一定の期間を経過した後に取り壊すことが明らかな場合に建物の賃貸借をするときは、『建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する』旨の特約を定めることができます。(第39条1項)

 ただし、この特約は建物を取り壊すべき理由を記載した書面によってしなければなりません。書面によらない場合はこの特約は無効とされ、普通の借家契約になります。(第39条2項)

原題は旧・38条の「賃貸人の不在期間の建物賃貸借」が出題されました。しかし,この規定は平成11年の借地借家法の改正により廃止されたため,現行の39条の問題に差し替えました。

4.「『が大型エアコンを設置することは認めるが,は契約終了のときその買取りをしない』と特約しても,その特約は、無効である。」

【正解:×

 賃貸人の同意を得て建物に付加した造作(畳、建具、エアコン等)について、賃借人は、賃貸借期間が満了によって終了するとき〔または解約申入れによって終了するとき〕に、賃貸人に買取請求できるのが原則です(第33条)。しかし、この規定は“任意規定(第37条)”とされており、買取請求しない特約も有効です。

<ちょっと詳しく>

◆造作買取請求権(任意規定)

(1) 借家人は家主に対し、家主の“承諾”を得て造作を取り付けた場合「時価」で買取請求をすることができます。また、家主から買い取った造作も、家主に請求できます。

 〔注意!〕
 買取請求の結果、売買契約が成立したにもかかわらず、賃貸人が代金を支払わない場合であっても、賃借人は「造作の代金をもらうまでは出て行かない」と建物の明渡しを拒むことはできません。〔留置権はない〕⇔「借地権での建物買取請求には留置権がある

(2) 契約により「買い取らない」「半額で買い取る」旨の特約をつけることができます

(3) 転借人も、賃借人と同様に扱われます


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