Brush Up! 権利の変動篇
借家に関する問題 更新時の借賃増減請求・解約の申し入れ・造作買取請求
建物賃貸人をA、建物の賃借人をBとすることに関する次のそれぞれの記述は、民法及び借地借家法の規定によれば○か、×か。 |
1.「建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、Aが期間満了の1月前から6月前までの間にBの借賃の値上げに応じなければ更新しない旨を通知しなければ、Aは、値上げによる更新をすることはできない。」 |
2.「BがAから買い受けた建物に付加した造作がある場合、Bは建物の賃貸借が終了するとき、Aに時価で買取請求することができるが、Aが時価の半額で買取りする旨の定めをすることもできる。」 |
3.「建物の賃貸借期間を1年未満と定めたとき、Bが賃貸借の解約の申入れをした場合において、Bの解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。」 |
4.「建物の借賃が、租税その他の負担の増減により、その他の経済事情の変動により不相当となったとき、契約の条件にかかわらず、A又はBは、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができるが、一定の期間は増額しない旨の特約があれば、その定めに従う。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | ○ |
1.「建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、Aが期間満了の1月前から
6月前までの間にBの借賃の値上げに応じなければ更新しない旨を通知しなければ、Aは
、値上げによる更新をすることはできない。」
【正解:×】家賃の変更の通知 家賃の変更の通知は、期間満了の「1年前」から「6月前」になすことを要し(借地借家法第26条1項)、1月前の通知では認められません。 なお、1月前の通知でもBが了承した場合は、合意更新扱いとなります。 |
2.「BがAから買い受けた建物に付加した造作がある場合、Bは建物の賃貸借が終了す
るとき、Aに時価で買取請求することができるが、Aが時価の半額で買取りする旨の定め
をすることもできる。」
【正解:○】造作買取請求 造作とは、畳、建具、埋め込み式エアコンなど、建物に作り付けた物(取り外しても他の場所には設置できないもの、又は他の場所に設置できても、著しく価値が損なわれる物、若しくは他の場所に移動するには著しく経費を要する物)のことをいい、当該造作は買取請求できるのが原則です(借地借家法第33条1項)。ただし,賃貸人の同意を得て付加されたもの又は賃貸人から買い取ったものに限る。 しかし、「半額で買取りする旨」若しくは「買取りをしない特約」も有効であり(借地借家法第37条)、両者間の契約に柔軟性がもたらされています。 つまり、買取しなくても良いなら造作の設置に同意する、という家主の事情と、使い捨て等のつもりで家主の承諾を得て造作を設置し、快適な住環境を享受したい、という借家人との関係が合理的に図られています。 |
3.「建物の賃貸借期間を1年未満と定めたとき、Bが賃貸借の解約の申入れをした場合
において、Bの解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。」
【正解:×】解約の申し入れ 建物の賃貸借期間を1年未満と定めたとき、期間の定めがないものとみなされ(借地借家法第29条)、賃貸人(家主)Aからの明渡しの申入れの場合は、賃借人(借家人)Bの保護のため6月経過後に終了(借地借家法第27条1項)しますが、Bから解約の申入れの場合は、借地借家法に規定がないため、民法の基本原則に戻り、3月経過後に終了(民法第617条1項2号)します。 また、定期建物賃貸借契約(更新がなく、期間満了と共に賃貸借契約が終了する)では契約期間1年未満の契約も有効であり、床面積200平方メートル未満の居住用建物の場合、賃借人からの途中解約の申入れも可能であって、申し入れてから1月経過することにより終了します。(借地借家法38条5項) |
4.「建物の借賃が、租税その他の負担の増減により、その他の経済事情の変動により
不相当となったとき、契約の条件にかかわらず、A又はBは、将来に向かって建物の借賃
の額の増減を請求することができるが、一定の期間は増額しない旨の特約があれば、
その定めに従う。」
【正解:○】賃料の増減額請求 建物の借賃が、租税その他の経済事情の変動により不相当となったとき、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額を増減請求することはできますが、一定の期間は「増額」しない旨の特約があれば、その定めに従います。(借地借家法第32条1項但書) |
●類題 |
1.「Aは、BからB所有の建物を賃借して、居住しているが、Bがその建物をCに売却して登記も移転した。CがAに賃料の増額を請求した場合、Aは、その増額を相当でないと考えたときは、相当と認める賃料を、直ちに供託すればよい。」(H2-13-3) |
【正解:×】
賃貸人から賃料の増額請求が行われ、借家人Aがその増額が相当ではないと考えた場合、まず相当と考える賃料を賃貸人Cのところに持参し弁済を提供する必要があります。〔弁済の提供〕(民法493条、借地借家法32条2項)Aが支払うと口頭の提供をしているにもかかわらず、Cが受領するのを拒否〔受領遅滞〕したときに、Aは、債務不履行〔履行遅滞〕の責めから免れます。(民法492条) しかし、弁済の提供をしただけでは、債務を果たしたことにならないため、Aはさらに、Cが受領するのを拒否したことを理由に、Aが相当と認める賃料を、供託する必要があります。(民法494条、借地借家法32条2項) 本設問では、この弁済の提供については何も述べられておらず、「Aは、その増額を相当でないと考えたときは、相当と認める賃料を、直ちに供託すればよい。」となっているため、×になります。 【借地借家法・32条2項】 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。 |